父親だから我慢できて運命を乗り越えた話   作:竈門家を幸せにし隊

2 / 3
お気に入りと評価ありがとうございます。

続きを書いてくれ、との声がありましたので書いてみました。

戦闘描写とかほんと苦手です。

私の文才ではこれが限界なので許して下さい。




ヒノカミ神楽

 

 

 

戸を閉め、山道の方へ視線を向ける。

 

後ろに荒々しく、それを噛み締めるような息遣いを感じる。

 

見るなとは言っていない。

 

戸の隙間からか、炭治郎は見ていることだろう。

 

それでいい。

 

今のうちに相手のことをよく見ておくんだ。

 

鬼殺隊へと入るのかは炭治郎に委ねる。

 

だが戦うことを選べばその時に、きっと役に立つ。

 

強大な存在感が近づいてきた。

 

山の中腹ほどに急に現れたことから、何かしら移動の手段を持っていることはわかっている。

 

そして現れたのは、異形だ。

 

 

「貴様が、童磨を殺した男か」

 

 

外見は人、に擬態した鬼といった姿だ。

 

整った容貌に洋風の服装、青白い顔色をしている。

 

だが内に秘めるものは、人や他の鬼ともかけ離れている。

 

脳を五つ、心臓を七つ持つ存在。

 

以前見た、恐らく鬼の中でも上位の個体とすら比較にならないほどの存在感。

 

細胞の一つ一つに果てしない力が込められているのがわかる。

 

鬼の始祖の言葉に返すことなく、刀を抜く。

 

 

「ふん、その身体で何が出来る」

 

 

集中。

 

これから先は瞬きも碌に出来ない時間が続く。

 

呼吸を更に深める。

 

無意識に行なっている肉体への強化の倍率を、意図的に跳ね上げていく。

 

鬼の身体が蠢いている。

 

―――来る。

 

鬼は、背から伸びる“管”を此方に振るう。

 

家を、ひいては家族を殺されては堪らない。

 

 

【円舞】

 

 

数歩前に出て、両手で構えた赫刀で切り落とす。

 

 

【碧羅の天】

 

 

不意討ちを切り捨てられ、呆けている今が好機。

 

一瞬で距離を詰めて、鬼の目の前で地面と垂直に円を描くように刀を振り、再び“管”を切断する。

 

驚愕の表情、再生出来ないことに漸く気づいたか。

 

だが次の瞬間には全身を蠢かせ、腕、脚、胸、腹、背から“管”を生やした。

 

合計二十本の“管”を、先程以上の超高速で振るってきた。

 

確かに速い、夢で見たものとも比べ物にはならない。

 

だが対応できない程ではない。

 

 

【烈日紅鏡】

 

 

あえて動かず左右に刀を振るい、全ての“管”を左右に振るった刀で切り落とす。

 

このまま斬るつもりだったが、鬼はもう動き始めていた。

 

 

【黒血 枳棘】

 

 

鬼は腕、いや全身から血を吹き出した。

 

流れていく筈の血液が固まり、無数の棘を持つ鞭へ姿を変え私を包み込むように動き出した。

 

だが、固形化しているならばむしろやりやすい。

 

 

【灼骨炎陽】

 

 

立ち止まらず、角度を変えて動きながら太陽を描くように刀をぐるりと回す。

 

包囲しつつあった鞭は全てが張り詰めていた力を無くし地に落ちた。

 

距離をとっていた鬼は両手を合わせ、振り上げた。

 

それはみるみる内に巨大化し、上空から回転させながら一気に振り下ろした。

 

躱すのは容易だが、背後にある家が巻き込まれてしまう。

 

 

【陽華突】

 

 

柄を右手で握り柄尻を左の掌で包み、刀を押し上げるように天を突く。

 

見て理解した肉の塊の中心を正確に突き刺す。

 

膨大な質量に、立つ地面が多少凹んだが受け止めることには成功した。

 

踏み出すのに合わせて刀を握り直し、切り上げることで刀を抜く。

 

それから刀で貫いていた拳の部分に更に二、三刀を振るい駆け出す。

 

 

【日暈の龍 頭舞い】

 

 

相手に何かをさせる前に斬り続ける。

 

常に動き、未だに伸びたままの両腕を幾度も刻みながら鬼との距離を詰める。

 

あと二歩で刀の距離まで近づいた時。

 

鬼の身体に何かが出来る兆候を見つける。

 

 

【斜陽転身】

 

 

嫌な予感に従い跳び上がる。

 

一瞬遅れて、鬼の身体に無数の口が生まれ大気を吸い込んだ。

 

だが宙にいる私には届かない。

 

そのまま天地を入れ替え、鬼の首を断つ。

 

 

【飛輪陽炎】

 

 

何が起きたかわからない様子だが、手は緩めない。

 

鬼の目の前に着地するのに合わせて刀を振り下ろす。

 

強い踏み込みを利用することで揺らぎが起きるため避けることも叶わない。

 

左肩から右腰までを刀が通り、鬼の身体がずれた。

 

 

【輝輝恩光】

 

 

そのまま倒れるように体勢を低く構え、一閃。

 

膝上で両脚を切り落とした。

 

上半身がずれて、立っていることも出来ない鬼は地面に崩れ落ちた。

 

 

「なぜだ?どうして命を奪う?」

 

 

会話をするつもりは無かった。

 

だが夢で見ただけではなく、己の目でこの鬼を見て聞きたくなった。

 

躊躇い等無く、私を攻撃してきたこの鬼に。

 

元は人間だった筈だ。

 

奪った生命への罪悪感を持たないのか。

 

刀が届く距離で立ち、落ちた首の眼前に赫刀を向けながら問いかける。

 

 

「人を殺すのは楽しいか?面白いか?命を愛しいと思ったことは無いのか?」

 

 

生きるため?

 

そんな筈はない。

 

明らかに喰ってきた人の量が違う。

 

見て、その生命力を肌で感じて理解する。

 

数万人では足りない人が犠牲になっているのは明白。

 

そもそも態々同胞を作る理由がない。

 

つまり己の何らかの目的のために命を弄んでいる。

 

そんなことをして楽しいのか、面白いのか。

 

長く生きてきて、一度も他者を愛しいと思ったことが無いのかと。

 

そんな問いだったが、鬼からの返事はない。

 

だが答えは返ってきた。

 

身体の前面が大きく裂け、そこから稲妻のように衝撃が放たれた。

 

 

【火車】

 

 

その予兆は見切っていたため、鬼の真上に跳び上がりその頭を斜めに割る。

 

 

「命をなんだと思っているんだ」

 

 

二つに分かれた頭のそれぞれの目が此方に向けられた。

 

それには、先程までと比べて恐怖が宿っている。

 

ふざけるな。

 

恐怖を、恐ろしいと思う感情を知っておいて、他人のそれは無視するのか。

 

お前はなんだ。

 

鬼だから、人間より強いからそれを踏みつけにして許されると思うのか。

 

そこでいくつにも分かれた身体の部位が急激に膨れ上がり、巨大な肉の塊となった。

 

続いて縦へ、横へと全方位にいくつもの亀裂が走り、そこに巨大な口を形成した。

 

そして先よりも強力な衝撃が一気に放たれた。

 

 

【幻日虹】

 

 

それぞれの放つ兆候を見切り、身体を回転させるように捻る動きで衝撃を避ける。

 

一気にとは言ったが、一度にではない。

 

瞬きの十分の一程の時間ごとに、身体を適切な位置に置いていれば当たることはない。

 

残像を囮に欺くことで躱しつつ近づき、その瞬間を待つ。

 

 

【炎舞】

 

 

肉塊の中で、分かれた身体がちぐはぐに繋がりつつあるのは見えている。

 

既に切ったはずの脳と心臓も、再び身体の中で作られかけていた。

 

切られた部位は未だに再生していない。

 

腕も足も、腹や背から生やすことで代用するつもりのようだ。

 

そして新しく脳と心臓の計十二個が作られた瞬間。

 

赫刀を振り下ろすと同時に振り上げて、それらを全て切り捨てた。

 

開かれた肉塊の隙間から怯えに染まった目が覗く。

 

 

「お前は存在してはいけない生き物だ」

 

 

存在していれば、常に人が脅かされることになる。

 

だからここで死んでもらう。

 

油断はしない。

 

慈悲などかけない。

 

このまま夜明けまで付き合ってもらう。

 

もう一度始めようと構えた、その時だ。

 

 

「鳴女ぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

叫んだ瞬間、鬼の背後と私の背後に襖が開いた。

 

同時に鬼の身体が膨れ上がり、破裂した。

 

大小様々な肉片が全方位に向けて飛ぶ。

 

まず私への方向の三百程の肉片を全て切りつける。

 

続けて左右へ飛ぶ八百余を一息で処理する。

 

最後に奥へ、最も数が多い襖の方向に飛ぶ肉片を。

 

先の鞭と同じくらいの速度だ、まだ追いつける。

 

そう踏み込んだ瞬間だ。

 

背後から膨大な三日月の形の斬撃と奇妙な魚が家に向かって(・・・・・・)放たれた。

 

―――しまった。

 

このままでは炭治郎たちがひとたまりもない。

 

方向転換し、襖とすれ違う一瞬に魚のような鬼の首と六つ目の鬼の片手両足を切り飛ばした。

 

六つ目の鬼も首を狙ったのだが、反応され腕を間に入れられて防がれた。

 

刀を持つ腕を落としたので、体勢を崩すために足も切った。

 

六つ目の鬼は襖の此方側に崩れた。

 

魚のような鬼は身体が崩れ始めたようで騒がしい。

 

だが、今はそんなことはどうでも良い。

 

時間がない、首を斬っていては間に合わない。

 

斬撃と魚を追い抜き、家を背に刀を振るう。

 

数秒間斬撃と魚の雨が続くが、全て刀で受ける。

 

その間に鬼の肉片は襖の向こうへ回収された。

 

六つ目の鬼は、新しく地面に開いた襖へ落ちていった。

 

魚の鬼は襖の向こうで身体の半分程が崩れている。

 

そして、襖は音を立てて閉まった。

 

襖を斬ればその先へ繋がるのかと思ったが、実行する間もなく消えてしまった。

 

数分間警戒を続けたが、何も起きない。

 

一人しか殺せなかったが、追い払うことは出来た。

 

鬼の怯えきった様子では、そう簡単に此処に近寄るとは思えない。

 

あとは、今のうちに炭治郎たちを逃すだけだ。

 

 

「炭治郎、もう出てきていいぞ」

 

 

言った瞬間に、壊れる勢いで戸が開きそこから炭治郎が飛び出してきた。

 

そして私に抱きつくと、声を震わせて泣き出した。

 

安心させようと笑ったのだが、更に涙の勢いが増してしまった。

 

 

「良かった。生ぎでる、父さんがぢゃんど生ぎでる」

 

「言ったはずだぞ、私は鬼には殺されないと」

 

 

私からも炭治郎を抱きしめる。

 

温もりを感じ、心の底から思う。

 

あぁ……炭治郎を、家族を守れて良かった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。