父親だから我慢できて運命を乗り越えた話   作:竈門家を幸せにし隊

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柱合会議

 

 

雪が降る冬の日、鬼殺隊の柱たる私は鬼殺隊本部にて会議に臨んでいる。

 

お館様の体調を考慮して屋敷の中での話し合いとなった。

 

以前見た時よりもお館様の顔の痣が広がっている。

 

お抱えの医者も原因は不明と言うし、本当にお館様が言われるように一族の呪いなのかしら。

 

そもそも医学に精通しているわけでもない私では、それが病であることすら理解できないのだけれど。

 

呪いだというなら、私たちにできるのは少しでも早く鬼舞辻無惨を殺してお館様を解放することだわ。

 

だけど、今は会議に集中しないと。

 

今日の議題は私にも深く関わっているのだから。

 

 

「おはよう、わたしのこどもたち。今日は中々冷えているね。どうか身体には気をつけておくれ」

 

「お館様におかれましても、ご壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」

 

「ありがとう、槇寿郎。……さて、早速だが本題に入ろうと思う。緊急で柱合会議を開いたのは他でもない、上弦が欠けた可能性がある」

 

「何とッ!?」

 

「それは真ですか、お館様」

 

 

最初に反応したのは炎柱の煉獄槇寿郎さん。

 

奥さんを亡くしてから、どこか調子を落としているように思える。

 

任務での負傷も増えているらしい……心配だわ。

 

続けて真偽を訊いたのが岩柱の悲鳴嶋行冥さん。

 

彼は私たち姉妹の恩人でもある。

 

家族で鬼に襲われた時に救けてくれた隊士が彼だったのだ。

 

今日の柱合会議には炎柱、岩柱、音柱の宇髄さん、が出席している。

 

他の柱は緊急の会議だったこともあり、参加ができなかったようだ。

 

私含めても四人、柱の定員の半分も参加できていないがそもそも現在の柱は七人しかいない。

 

加えて言うなら二人の柱が高齢を理由に引退を考えているらしい。

 

もうじき甲の隊士から、柱への昇格があるかもしれないとの専らの噂だ。

 

水柱の冨岡くんは柱としての後輩だし、話したかったのだけど仕方ないわね。

 

 

「まずはカナエから話を聞こうか。報告は受けているけど、当事者からの方がより詳しい話が聞けるだろうからね」

 

「では、私から経緯について説明をします。まず理解していただきたいのは、これから話すことは全て事実だということです」

 

 

前置きをして話し始める。

 

信じ難い内容の説明である以上疑われるのは仕方ないにしても、その程度をできるだけ下げたい。

 

柱だろうが、いや柱だからこそ受け入れるのは難しいだろう。

 

それぞれ一体以上の下弦の鬼を殺したからこそ私たちは柱としてここに居る。

 

そう、十二鬼月といわれる鬼の中でも下弦の鬼だけだ。

 

下弦だからと馬鹿にはできない、相性や条件次第では柱であっても殺されることもある。

 

事実、欠けた先任の柱は下弦の鬼に殺されている。

 

そして上弦の鬼はここ百年程は殺したという記録はない。

 

だから隊士でもない一人の男性が、単独で上弦の鬼を殺したと言われても信じるのは難しいと思う。

 

私だって実際に見ていなければきっとそうだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪が積もるくらいの寒い夜だった。

 

私は妹のしのぶと他にも二人の隊士と共に任務についていた。

 

その街では若い女性が十五人も行方不明になっていた。

 

そして先に任務についた筈の隊士たちが無残な姿で発見された。

 

その中の一人が甲の隊士だったため、柱の私に任務がきた。

 

それなりに大きな街だから、それぞれに分かれて鬼を探すことにした。

 

十二鬼月が居る可能性が高いのに戦力を分散させるのが愚策だというのもわかっている。

 

だけど、私たちは鬼殺隊だ。

 

この街に暮らす人々を守ることが使命。

 

私はそのように思っている……。

 

中には鬼を殺すことしか考えてないような人も居るのだけど、守るべき存在のことを忘れてはいけないと思うから。

 

そして、各自鬼を見つけたら鎹烏で連絡をとることを言いつけてから別れた。

 

しのぶのことは気がかりだった。

 

筋力が足りず鬼の首を切れないから、ではない。

 

私の継子として修練も積んできたし、毒という鬼殺隊の歴史でも新しい鬼への対抗手段を生み出した妹だ。

 

それでも、しのぶがどれだけ強くなろうともきっと私は妹を心配してしまうだろう。

 

それこそ自分より強くなったとしても、変わらない確信がある。

 

実力を信じていないわけではないのだが……。

 

妹を持つ姉というのはみんなそうだと思う。

 

いつだって不安に思っているし、今夜も例外では無い。

 

嫌な予感がする……。

 

鬼殺隊として鬼を狩っていくうちに自然と身についた、鬼の気配を肌で感じるような感覚。

 

かつてない程に強く、重く、悍ましい何かが確かにこの街には居る。

 

できることなら私の前に来い……。

 

そう願いながら探索を続け、朝が近づいてきた頃だ。

 

私は、絶望と出会った。

 

道沿いの屋敷の塀に背をつけ、その鬼はこちらを見ていた。

 

何が面白いのか感情の籠らない笑みを浮かべ、話しかけてきた。

 

 

「やあ、可愛らしいお嬢さん。俺の名は童磨。良い夜だねぇ。少し話さない?」

 

「……鬼と話すことはないわ」

 

「そうかな、俺たち仲良くなれると思うんだけど」

 

 

刀を抜いた。

 

確かに私には夢がある。

 

今のところ出会ったことはないけれど、きっと仲良くできる鬼もいると、私は信じている。

 

だけど目の前の鬼は違う。

 

絶対に仲良くなんてなりはしない。

 

明らかに数百では足りない数の人を喰っている。

 

かつて滅殺した下弦の鬼とも比べものにならない程の存在感。

 

虹色に光る瞳には、上弦の弐という文字。

 

嫌な予感が当たってしまったようね。

 

ヘラヘラと此方に向く様子は隙だらけだが、その強烈な気配からして、油断できる相手ではない。

 

何かをされる前に、仕掛ける。

 

 

「おいおい、無抵抗の相手に酷いな」

 

「くッ……」

 

 

だが、届かない。

 

花の呼吸の型で振るわれる刀が、鬼の両手に持つ扇に阻まれその首にまで届かない。

 

身体に当たってはいる。

 

腕を半ばまで落としかけたし、胴体にも深い傷を刻みつけた。

 

しかしそれらは瞬く間に治癒し、次の型を振るう前には完治している。

 

更に恐ろしいのが、この鬼の学習能力だ。

 

一度目は腕を切りつけた肆の型が、二度目には扇で防がれ、三度目には動作に入った時点で両の扇を振るわれて刀で防ぐのが精一杯という有様だ。

 

戦闘が長引く程に、私の手札は減っていく。

 

四半刻も経っていないのに、私がまともに振るえる型は既に無くなっていた。

 

 

「もう終わりかな?花の呼吸を使う剣士は初めてだったし、美しくてつい見惚れてしまった。さて、あまり長引かせるとあの方に怒られてしまう。君も、救ってあげよう」

 

 

そして、この鬼は血鬼術を使っていない。

 

言葉の通り、見に徹して扇で弾く、受け流す、止めるとしてはいたがそれらしき術は依然として使わない。

 

それから、何か輝くものを撒き散らし始めた。

 

扇で風を起こし、此方にも流れてくる。

 

加えて気温が下がったように感じる。

 

これがこの鬼の血鬼術?

 

どうすべきか。

 

一度引く?

 

いや、駄目ね。

 

簡単に逃してはくれないだろうし、この街の人々に狙いが向く可能性もある。

 

それなら、応援を待ちつつ情報を得るために戦闘を続行が最善。

 

弱気になってしまっている、しっかりしろと自分を鼓舞する。

 

常中の呼吸を意識して深める。

 

刀を構えて、踏み込んだ瞬間。

 

 

「失礼、危険な状況だったため介入させて貰った」

 

 

男の人が後ろから飛び込んできた。

 

黒い刀を片手に横に振るい、凄まじい剣速により起きた風で鬼が撒き散らした何かは全て吹き飛んだ。

 

その動きは殆ど見えなかった。

 

後ろから私を追い抜き、更に刀を振るったというのにそれらを一瞬の間に終わらせている。

 

仮にも柱である私が見えない動きとは何なのか。

 

しかしそんなことは気にならなかった。

 

今も私に背を向ける男の人は、鬼殺隊には見えない。

 

刀は握っているが、着物から覗く手足は驚くほど細いし、此方に視線を向けた時に見えた顔もひどく痩けている。

 

柱として、鬼殺隊として一般人の犠牲はあってはならない。

 

 

「あれ、きみ誰だい?」

 

「悪鬼と話すことはない。そして、もう終わった」

 

 

鬼が話している間に肩を掴んででも止めようと手を伸ばしたが、予想外の光景に手が止まった。

 

刀の色が変わっていく。

 

黒から、血のような深い赤へと。

 

刀の色が変わるなんて聞いたことがない。

 

そして動きを止めている間に、本当に終わってしまった。

 

何も見えていない。

 

目を離してはいないのに、今度は姿を見失った。

 

私が見たのは、鬼の前まで踏み込んで両手で握った刀を振り下ろした姿だ。

 

それまでの過程は一切見えなかった。

 

鬼の首は斜めにズレて、ゆっくりと地面に落ちていった。

 

 

「うそ…………」

 

「痛い、痛いなぁ。これ、死ぬの?あぁ、こんなにあっさりと死んじゃうんだ……」

 

 

そう言い残して身体が崩れていき、やがて消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが、私が見た全てです」

 

「むぅ、俄かには信じ難いが……」

 

「胡蝶が見たのは地味に痩せこけた男だったんだろ?鬼一体殺す力があるとは思えねぇが」

 

「……お館様はどのようにお考えですか?」

 

「何とも言い難いね。可能なら本人と話したいと思うが、どうだろう」

 

「それでは、鎹烏を一匹預けていますのでまずは手紙での連絡を……」

 

 

話し終えても、やはりそう簡単には信じて貰えないようだ。

 

私でさえ、血鬼術で幻覚でも見せられたのかと疑ったくらいだもの。

 

それと刀の色が変わったことについて、お館様が言うには過去の鬼殺隊で同じことをやれた人物が居たらしい。

 

歴代の産屋敷当主の手記や文献からも調べてくださるようで、何か掴めるかもしれない。

 

鬼を殺した男の人について話した時、お館様の表情が僅かに陰ったように思えたのだけど気のせいかしら。

 

額の痣について話した時だと思うのだけど……。

 

いや、今は気にしてもしょうがないわよね。

 

お館様に言った通り、彼には鎹烏を預けた。

 

蝶屋敷に招くことも考えたし、実際に訊いたのだけど断られてしまったのだ。

 

家族の下へ帰らなければならない、と。

 

そう言われては無理に連れていくわけにもいかないでしょう。

 

まずは手紙での連絡を提案しようとした時、私の鎹烏が飛び込んできた。

 

 

「緊急ー、緊急ーー!!鬼舞辻無惨ノ人相書キト似タ鬼ガ、竈門炭十郎ヲ襲撃ーーー!!」

 

 

鬼殺隊には、鬼舞辻無惨の人相書きが伝わっている。

 

それをどの鎹烏にも覚えさせているので、鬼舞辻無惨が現れると速やかに居場所が伝わる様になっている。

 

だがまさかこのような形で鬼舞辻の居場所がわかることになるなんて……。

 

迷っている時間もない、今は急いで竈門さんの家に向かわないと。

 

 

「失礼ながら、お館様。会議を途中で退席することをお許しください」

 

「いや、むしろわたしから頼みたい。だけど、鬼舞辻が居るというならば柱単独ではまずい」

 

「ならば私が共に往きましょう」

 

「うん、それなら槇寿郎、カナエ。鬼舞辻が出現したとされる場所まで向かってくれるかな」

 

「「御意」」

 

 

確かに鬼の始祖というのならば、その実力は計り知れない。

 

煉獄さんが共に来てくれるのならば心強い。

 

私たちは共に退室し、それぞれの屋敷に向かうことに。

 

急がなければならないが、準備を疎かにはできない。

 

手早く済ませ、合流することになった。

 

もう一度会って、お礼を言いたい。

 

竈門さん、どうかご無事でいてください。

 

 

 




童磨について。
無限城では無惨様に急かされていたため早々に血鬼術を使っていましたが、童磨は相手の技を見極めてから殺すような描写があったのでこうなりました。
花の呼吸の型は初見だったということで。

鬼舞辻無惨の人相書きについて。
流石に数百年続く組織なわけで、似顔絵くらいあるだろうと。
加えて、浅草で炭治郎が遭遇した時もお館様はそれを把握していたため。

炭十郎に預けた鎹烏について。
ここでは柱は専属の烏以外にも、自由に使える烏を二、三羽任されている、ということで。
預けられたのはそっちの烏です。(専属じゃない)
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