愚者は惑えど勇者は懼れず   作:佐々木剣蔵

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初投稿です。
なるべく原作の設定と矛盾が出ないよう心掛けましたが、考察班には遠く及びません。
設定ガバ、誤字脱字ガバ、ハーメルンの機能使用ガバなどがありましたら、すみません。


鷲尾須美の章
第一幕


■Avant ‐敵意(弟切草の花言葉)

 

 

後に「国造り」と呼ばれる計画。

その前哨・確認のために、大赦の神官が壁の上の結界を越えた――それが、本来の世界との小さな違いであった。

 

灼熱に包まれた世界、無数に飛び回る得体の知れない、おぞましき敵の姿。

それを実際に目にした神官が—ほんの数秒、放心してしまったことを、誰も責めることはできないだろう。

 

――それを喰らおうと、群がる星屑どもがいた。

――そして、それを目敏く見つめる射手座型(サジタリウス)がいた。

 

 

どちらか一方であれば問題なかった。

星屑が何百群がろうと、堅固な神樹の結界を越えることなどできはしない。

いかに射手座型の下部射出口から放たれる巨大な矢(ロングレンジアロー)が強力でも、結界には小さな穴が空く程度で、それも数瞬で修復される。

 

 

ただ、何の因果か運命か—神掛かったタイミングで空いた穴から、たった1体の星屑が、神樹に守られた四国に、入り込んだのだった。

 

時は神世紀298年5月。

鷲尾須美、乃木園子、三ノ輪銀の三人が初陣で勝利を収めた、翌日のことである。

 

――なお、この神官の記録は、現在の大赦には()()()()()という。

 

 

 

 

■Chap.1 ‐運命的な出会い(ハーデンベルギアの花言葉)

 

 

その日は何という事はない一日だったと覚えている。

坂出駅前の大型ショッピングモール「イネス」は、平日通りの客入りだった。

少なくとも、フードコードの一角にあるジェラート店で勤務している分には、変わったことなど何もなかった。

 

授業がないのか、午前中から友人とおしゃべりに夢中な女子大学生。

買い物袋を手にした奥様が、小さな子供にせがまれて、「しょうがないわね」なんて言いながら、きっちり自分の分も買って楽しんでいる。

 

そんないつもの風景の中、少し毛色が違うお客様がいらっしゃったのは、夕方ごろのことだった。

大橋の近く、つまりこのイネスからもそう遠くない位置にある名門『神樹館小学校』の制服を着た小学生3名。

 

一人は、見覚えがあった。

元気いっぱい、という感じで、残りの2人を引っ張ってきた娘は、よくこのイネスに買い物に来ている子だ。

家族で来たときは、年下の男の子たちの世話をせっせと焼いて、自分のジェラートを溶かしかけていたりしていたから、印象に残っている。

 

あとの二人は、初めてだと思う。

—亜麻色の髪で、のんびりと話す、リボンを付けた女の子。

—綺麗な黒髪で、澄んだ翡翠のような瞳の女の子。

全員が、人を惹きつける魅力を持った子供たちだと思った。

 

「ジェラートください!アタシは『しょうゆ豆』味で!」

 

「私は~、ほうじ茶とカルピン味をハーフ&ハーフで~。」

 

「じゃ、じゃあ、私は『抹茶』*1と…」

 

各々の個性が感じられる注文を聞き、代金を受け取り、お釣りを渡そうカウンターの先に目を移した時…そこには、()()()()()()()

 

何が起こったかわからないまま、お釣りを持って周りを見渡す。

カウンターから出て、フードコートの席やフロア全体まで見たが、3人は影も形もなくなっていた。

 

はて、食い逃げかと思えど、代金はいただき、3人分のジェラートもカウンターに置いたまま。

さらにお釣りすら受け取っていない。

 

一体何が起こったのかも分からないまま、俺は茫然と立ち尽くすしかなかったのである。

 

 

 

■Chap.EX ‐大切な友達(ライラックの花言葉) 語り部:三ノ輪銀

 

 

その日、お気に入りのイネスのフードコートに向かったのは、放課後のこと。

アタシこと、三ノ輪銀は、浮かれていたと思う。

 

なんせ、あのカタブツ委員長の鷲尾さんが、「祝勝会」を提案してきたからだ。

 

 

3人で「御役目」なんてものに選ばれたときは…正直不安だった。

でも、なんとか初戦の敵を打ち破って、「なんとかなるんじゃないか」という気持ちになっていた。

でも、「一人では勝てない」と実感した一戦でもあったと思う。

少なくとも、前衛アタッカーのアタシ一人では、勝てるとは思えなかった。

 

そういった事情もあったりするが—とにかく、仲間の2人とは、仲良くなりたかった。

 

 

――2回目の「御役目」は突然だった。

ジェラートを注文して、代金を支払っている最中、周りの動きが、音が、空気が、時間が、すべてが止まった。

 

お釣りをもらおうにも、止まった手の中のお金を取るわけにもいかず、どうしようか悩んでいる間に、樹海化が始まってしまった。

ジェラートを泣く泣くあきらめ、「気を抜くなよ!」なんて言いながら大橋へ向かったけど………一向に敵が来ない。

 

端末のレーダーを見ると、少し離れたところに、小さな点が一つだけ。

明らかに昨日と比べて、小さくて遅かった。

 

たっぷり2分は待っただろうか。ようやく敵が遠くに見えるようになった。

見た目は白い、プランクトン?だっけ?理科で習った、ミジンコみたいなやつ。でも正面に、大きな口がついていて(口しかついていなくて)ひどく不気味だと思った。

 

まっすく飛んでいるわけでもなく、ふよふよと、ふらふらと、こちらに向かってきている。

 

「迎撃します!」

そう言って、鷲尾さんが弓を引いた。

 

「防御は任せて!」

そう言って、乃木さんが槍の前方の盾を広げて、アタシの前で構えた。

 

 

どんな能力かわからない。

攻撃を受けたらいきなり巨大化するのか、分裂するのか…アタシたちなりに精一杯気を張って、その一射の行方を見守った。

 

その矢は見事、白いプランクトンを貫いて

 

――そのまま、光になって消えたのだった。

 

 

余りにあっけない結果に、全員ポカンとしてしまっていたと思う。

そのまま樹海化が解かれた後になって、ようやく勝った、と実感できた。

迎えを待ちながら、乃木さんと2人で「鷲尾さんスゲー」と褒めたり撫でたり抱きついたり。

 

本人はすごく照れくさそうだったけど、「那須与一になった気分…」と難しい喜び方をしていた。

 

予想外の襲撃だったらしく、迎えが来るのが少し遅くて、暗くなってきたので、祝勝会は明日に延期することになってしまった。

でも、今回の戦いで結果的にアタシたちの仲は深まり、呼び方が少し変わった。

 

これからもよろしくな、須美、園子。

 

*1
アニメ原作では何とのハーフか明かされない




Q.なんでこんなややこしい構成なん?chapとか何やねん。

A.はじめはアニメっぽくAvant/Aパート/Bパート/Cパートにしようとしたんです。
 でもそんなに構成上手くなくて…短くてもそれぞれ1話にしようとしたんです。

 そしたら…今度はAvantが1000字に遠く及ばなくて、1話にできなかった。
 EXはあくまでChap1のオマケなので、独立した話にできなかった。

Q.はぁ~つっかえ。1話がこれじゃ低評価待ったなしやな。

A.本当に申し訳ない(某博士風)
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