まあ、みきお君は主人公というか『キーパーソン』なので、ヨシ!(開き直り)
■Chap.9 -メッセージ(アイリスの花言葉)
『乃木園子』からのメッセージは、3日後、俺が思っていたよりは早く届いた。
しかし、その内容は一筋縄では行かないことを示していた。
件名:Re:ヘイ、そのっち、ご機嫌いかが?
『タイムズ・ラヴァー時本』の感想、ありがとう!
今も筆を取ることが難しいのですが、短編を書き上げました。
私の込めた想いを、仲間たちと分かち合ってください。
S・Nより声に乗せて
「送った内容への答えになってないわよね?否定はされてないけど、人違いだったのかしら?」
ちょうど店に来ていて、カウンター向かいでこれを読んだ夏凜は首を傾げている。
だが、俺にはこれが『人違い』でないことが理解できた。
「イニシャルも合ってるし、間違いなく『乃木さん』本人からの返事だろう。」
「さらに言えば『エンジョイしてる?』は彼女の定番の挨拶だったし、俺のメッセージには書いてない『時本』に触れたことからも、送り主が『俺』だってことにも気付いてる。」
「じゃあ、なんで普通に返事をして来ないのかしら?」
「夏凜はこんな話を聞いたことないか?警察に、宅配ピザの注文の電話が入る話なんだが…」
「なにそれ?」
「お前が警察官で、そんな電話を受けたらどうする?」
「イタズラするんじゃない!って怒って切るわ。」
「うん。だがな、それは
「…!なるほど、犯人にその会話を聞かれてる状態だから、カモフラージュしたのね。」
「さすが、冴えてるじゃないか。『乃木さん』の返事も、同じ状態の可能性があると思わないか?」
「彼女は前言ったように、遊びに誘えば飛んできそうな感じだ。こんな遠回しの伝え方をする子じゃない。」
「そう考えると、他にも不自然なところはあるわね。特に最後、『声に乗せて』?普通なら『愛を込めて』とかでしょう?ボイスメッセージならともかく、活字よ?」
「…ああ、気にはなるが、今の段階だと何もわからんな。」
「なんにせよ、短編の方に、本命のメッセージが込められてるはずよね。早速、読んでみましょう?」
「…そうだな。」
【はじめのコトバが ホントの気持ちだよ】
300/07/03 22:42
「漫画みたいな恋をしたくないか?」
「会議の最中にいきなり何を言い出すのよ」
「二十四日がもうすぐだからね。」
「は!貴方ってそんなにロマンチストだったかしら?」
「リミットが近いんだ。25歳までに運命の人を見つけないと、親が用意した人と結婚しなきゃいけないんだ、俺は。」
「スキでもない人と?そんなの、酷いわね。」
「クリスマスの夜、空けておいてくれないか?」
「がんばってみるけど、保証はできないわ。貴方のこと、どこまでホンキになれるか、いまでもわからないもの。」
「ああ、それで構わない。」
「ルビーの指輪なんかじゃ、絆されないわよ、私は。もちろん、ダイアモンドでも。」
……………
………
…
…俺は一体何を読まされているのだろう。
『乃木さん』のメッセージであろう短編はダダ甘い恋愛小説だった。
地の文がない台本形式のようだ。
夏凜によると、俺がモデルの時本とは全然違うキャラクターらしいが、その影がチラついて全く頭に入って来ない。
執筆活動を休止していた先生の短編とのことで、感想欄はお祭り騒ぎのようだ。
だが、やはりブランクは隠せないのか、先生らしさがない、もっと伏線をうまく使えたはず、なんていう失礼な奴らもチラホラ見受けられる。
…このメッセージの解読については、あまり力になれそうにない。
ここは彼女と感性が近い同じ女子中学生、勇者部の力を借りるとしよう。
■Chap.10 -隠された心(ヤブランの花言葉) 語り部:三好夏凜
私はとりあえず、その小説のURLを勇者部全員のチャットに貼って反応を見ることにした。
かりん『http://kakou.syosetu/xxxxxxx/page=1』
ゆうな『なになにー?』
いつき『もしかして夏凜さんが書いたんですか?』
東郷 『ぼたもち』
かりん『説明書いてる途中でちゃかすな!』
かりん『これは、店長が先代勇者の「乃木園子」さんにコンタクトを取った返事よ』
いつき『返事?』
ゆうな『?????』
かりん『店長の推理だと、何かのメッセージが込められてるみたい。乃木さんは側にいる誰かに見つからないように、それを伝えようとしてくれてる。』
かりん『でも、こういう分野は私も得意じゃないし、店長も役に立たなかった』
かりん『乃木さんからも「仲間たちと分かち合って」と書かれてたから、相談をさせてほしいの』
かりん『詳しくは明日の部活で話すから、各自、一度読んでおいてくれないかしら』
ゆうな『わかったー』
風 『洗い物してたら面白いことになってるじゃない』
風 『…でもこの内容は樹には早ーい!』
風 『樹に恋人なんて認めないわよー‼︎』
いつき『お姉ちゃん…恥ずかしいよ…』
ここで今晩は解散した。
最後の流れで東郷が友奈のことを書かなかったことが、少し気になる。
…やっぱり記憶にない当時の勇者仲間の話、複雑な想いなのだろうか。
月曜のつまらない授業を終えて部活動の時間。
勇者部の面々は少し硬い表情で向かい合っている。
「さて、昨日のことについて、夏凜、詳しい説明をお願い。」
「ええ。この間、店長が特別顧問になった日かな、話してる最中にに思い出したそうなの。『乃木園子』さんは小説を投稿していたはずだって。」
「そこから、なんとか彼女を特定して『ダイレクトメッセージ』でコンタクトを取ったの。それが、こっちの一連のやり取り。」
「…内容がちぐはぐですね。」
「ええ。でも店長によると、『店長のことはわかってる』『近くにいる誰かに見つからないように、大事なことを伝えようとしている』可能性が高いらしいの。彼女の人となりを踏まえて、だそうよ。」
「なるほどね〜。で、彼女の『想い』が込められた短編が、昨日のやつと。」
「そうよ。」
「うーん、単純に『好きだ』『会いたい』っていう想いじゃ、ないんだよね?」
友奈は、読み終えて感じた気持ちこそがメッセージじゃないか、と真っ直ぐ受け取ったらしい。
「その程度を伝えるにはこの短編は長いと思うわ。起承転転転結くらいの展開してるわよ?」
だが、それに対する風の指摘ももっともだ。
「私は…壁ドンあたりの描写が濃厚で恥ずかしくなっちゃいました…」
「やっぱり樹には早かったのよ!おのれ乃木!」
「…東郷さんは、どうだった?」
「…大丈夫よ、友奈ちゃん。複雑な気持ちもあるけど、『乃木さん』は2年前、私の戦友だったのよ?必ず、そのメッセージを受け取ってみせるわ。」
私は、東郷美森という人物を見誤っていたと反省する。
落ち込んでいるかと思っていたが、予想に反して、静かに燃えていたらしい。
「そこで、大日本帝国軍の暗号に照らし合わせて見たのだけど…陸海空、どれも違うみたいだったわ。」
…ただ、確実に方向性を間違えている。
その後も五人で話し合うものの、解決には至らない。
もうそろそろ今日は解散か、という時に、風がふと思い出したように言った。
「しかし、『乃木さん』も、『soda pops』好きなのかしら。」
「風、それどういうこと?」
「ほら、樹の歌特訓のカラオケで、アタシが歌った曲、覚えてない?この作品のタイトル、その歌詞のもじりなのよ。」
「あの曲の歌詞は『考えるよりもはじめの衝動が本当の気持ちだよ』。この作品は『はじめのコトバが ホントの気持ちだよ』。ね?」
「…‼︎ 風先輩!それかもしれません!ちょっと待ってください!」
東郷が、声を上げた。
「この作品は全て会話文で構成されてます。なら、それぞれの
「漫画、会議、二十四…?」
「ううん。友奈ちゃん、少し違うわ。多分はじめの一文字だけ。『漫会二はリスクがあル』…勇者の機能、『
「‼︎」
「その調子で、読んでみましょう。」
「『彼女の足とキおクはシんジュに捧下ラレ多』…『
「これって…東郷さんのこと⁉︎」
深く肯いて、東郷は続ける。
「『壁外ノ真事つを見Y0』…『
「『気追付手絶帽し無で』………『気お…
「………これは、予想以上のものが出たわね。でも、よく気づいてくれたわね、東郷。ありがとう。」
「いえ、これは…今日気付けて良かったと思います。」
「…どう…しますか?壁の外、今からでも行ってみますか?」
そう尋ねた友奈の声色は固く、でも恐怖を見せないようにしているのがわかる。
「…………そうね。いや、ちょっと待って。樹海化してない状態でも、変身ってできるのかしら?」
「それは大丈夫のはず。あ、でも大赦には、気づかれるでしょうね。」
この辺りについては、訓練した私の方が詳しい。
「なら、この後『明日の放課後に演習する』って大赦に連絡入れるわ。」
「………
東郷が一言付け足した。
「…色々ショックが大きすぎて、完全にそっちが抜けていたわ。…東郷、ごめんなさい。貴女が一番動揺してるはずなのに。」
明日一日だけでいい。来ないで。
『いつ来ても良い』ように訓練を重ねた私が、心の底から反対のことを、祈ることになった。
「…それが、解読できた内容ってわけか。」
経過を相談すると、店長が重い口調でつぶやいた。
「そういうこと。正直、私も混乱してるから、聞いてくれると助かるわ。」
「風は樹と、友奈は東郷と相談できる距離にいるから、私は特別顧問様にお願いするわ。」
「…しかし、そもそも『満開』ってのは前には聞かなかったが、どういうもんなんだ?」
「…私たちには、ゲージが溜まると使えるようになる必殺技。勇者の『切り札』『レベルアップ』と聞いていたわ。戦力が、一段上がるものだと。」
「しかし、その実情は東郷さんで言えば、
「そうやって考えれば、『声に乗せて』は彼女なりの答え合わせともとれる。おそらく『乃木さん』も腕を捧げて、『筆が取れなかった』と。」
「…なるほど、つじつまは合うわね。一応聞くけど、彼女の悪い冗談か、混乱させるための偽情報ということは…?」
「ないだろうな。冗談にしては手が混みすぎてるし、もしも大赦が偽情報を流すのなら、自分たちに都合がいいものにするだろう。」
「大赦への信用を失くさせて、私たちをうまく利用しようとしているってことは?」
「彼女のメッセージの最後、『絶望しないで』とあるし…その観点については、個人的に彼女を『信じたい』。客観的になれなくてすまない。」
「ううん。参考になった。」
「何にせよ、明日、壁の外の真実ってのが、鍵になるわね。」
「…明日も、無事に帰って来いよ。みんな揃って来てくれても構わない。」
「ええ、鬼が出ても蛇が出ても、誘ってみる。冷静な、大人の意見が欲しいから。」
本話では、ハーメルンの正式な手順を踏んで『sodapops』の歌詞の一部を引用させていただいております。
ただ、作者の機能利用ガバがあった場合、修正が入る可能性がありますので、ご了承ください。
Q.縦書き程度に気付けんとか監視員無能すぎるんちゃう?
A.大赦の監視員も短編全部読むほどヒマじゃないと思います。
そのっちが用事言いつけて、さらに時間を奪う頭脳プレーをしてるかもしれません。