■Chap.12 -決意(ゼラニウムの花言葉)
「…それでも、よくみんな帰ってきてくれた。無事で本当に良かった。」
とりあえず、誰かが
言ってしまえば、不意に正体不明と思われていた、敵の本拠地を覗いてしまった形。
何があっても、おかしくなかった。
「店長さんは…落ち着いているんですね。」
結城さんは「やっぱり大人ってすごいですね」という感じで言ったんだろうが、そうじゃない。
力なく首を横に振る。
俺は実際にその世界を見ていないし、バーテックスとかいうエイリアンを見たこともない。
唯々、実感が湧かないから、落ち着いているように見えるだけだ。
俺だけが物語の『登場人物』の役を演じているようにさえ思う。
「その上で、情報を整理して、
「直近…ですか?」
答えた結城さんを始め、皆の反応を見ると、そこまで頭が回っていないようだ。
もう少し、今の状況をかみ砕いてから、次に進めるべきか。
「今の話を聞いて、皆『これからずっと、戦闘不能になるまで戦い続けなきゃいけないの?』と考えていると思う。」
皆の悲壮な顔を見渡して、言葉を続ける。
「残酷なようだが、それは一面的には事実
「いいかい?希望が全くない訳じゃない。」
「少なくとも、今までのように『満開せず勝利』すれば、状況は
「そう…ですね。牛鬼たちが守ってくれてるから、死んでしまうような怪我は、今までしていません。」
「なら、今はとにかく時間を稼ぎながら、状況を良くする手立てを考えるしか、無いと思う。」
「そんな都合のいい手立て……………有りますか?」
樹ちゃんの弱々しい質問に、なるべく希望を持たせるように、答える。
「例えば、勇者の増員はどうだろう?先代は、俺が知っている限りだが…多分3人だけだ。それが今、君らは5人。」
「もっと増やして12人になれば、たとえ敵が総攻撃してきても、一人一体相手にすれば良い計算になる。以前夏凜は一人で一体、倒したんだろう?」
「……そうね。」
肯定する夏凜の口調は重い。
「他には…修復中の敵を、毎日少しずつでも邪魔するとかはどうだ?」
「あの世界は…よく見なかったけど、地面も煮えたぎっていたように見えたわね。どうしても、東郷頼りになってしまうわ。」
「なら、全員が何らかの遠距離用の攻撃方法を考えればいい。それは不可能じゃないはずだ。」
どうしてもネガティブな反応が返ってくるが、とにかく希望の種になりそうなものを撒く。
「今、俺みたいな素人が即興でも、これくらいは思いつくんだ。時間を掛ければ、もっといい対策ができるはずだ。」
「思い出してくれ、『乃木さん』はこの真実と共に、『絶望しないで』と言ってた!」
「きっと…希望はある!」
最後は、ほとんど俺の『願い』だった気がする。
「…………………」
それでも、反応は、弱い。
皆、俯いてしまって、動かない。
この雰囲気で、次の話題に進めるのは厳しいか…心を折りかねない、と考えたときだった。
「…そうね、だから、『直近』の問題をどうするか、か。」
「…ええ、私は店長さんの言いたいことがわかってからは、そっちの対策を考えてた。」
それでも夏凜と東郷さんが、話の流れを元に戻した。
顔を上げた二人の眼には光が、力が灯っていた。
「店長、その先は大丈夫よ。そんな嫌われ役みたいなこと、『特別顧問』にはさせられない。」
「店長には中立の、冷静な立場でいてもらわなくちゃ。」
「ええ。皆、よく聞いて?…直近の問題というのは、『明日にもあの7体が攻めてきそう』ということよ。」
東郷さんが、冷静に、淡々と重要な事実を述べた。
「「「!!!!!!!!」」」
「店長が言った増員みたいな希望は、ない。アイツらの性質もわからない。切り札のリスクはそのまんま。そんな中での、7体の総攻撃……戦える?」
「私は、戦うためにここに来た。だから、リスクを恐れないわ。例え、10回満開したって、全部蹴散らしてやる!」
「だけど、あんたたちは別。神樹様に選ばれた、ただの女子中学生なんだから。満開なんて、しなくていい。恐ければ、変身だってしなくていい。」
「夏凜ちゃん…」
「ふふっ、夏凜ちゃんこそ、嫌われ役みたいな言い方するのに、『戦わなくていい』なんて言ってくれるのね。」
「私も、戦うわ。2年前に退けたはずの相手だもの。今回も、勝ってみせる。」
「でも、できれば満開は、したくないかな。今の、友奈ちゃんや皆との、記憶をまた捧げるのは…絶対にイヤだから。」
「…東郷さん、夏凜ちゃん、私も行くよ。だって、この世界を守りたいから。明日も明後日も、ずっと皆と一緒に、笑っていたいから!!」
「リスクが怖くない…わけじゃない。でも、この世界が、皆との日々を守れない方が、もっと怖いと!思ってる!」
名乗りを上げた夏凜、東郷さんに続いて、結城さんが、彼女らしい理由で、立ち上がる。
「お姉ちゃん、私も行くよ。」
「樹⁉︎」
「こういう時、真っ先に手を挙げるハズのお姉ちゃんが、今何を悩んでいるのか、チョットだけ、想像できるよ。妹だもん。」
「私ね、勇者部に入ったこと、全然後悔してないよ。友奈さんや東郷先輩、夏凜さんにはとっても感謝してるよ。」
「だけどね、全部、お姉ちゃんがいてくれたから、始まったんだ。だから…今度は私がお姉ちゃんと、この世界を、守るよ。たとえ、
4人が、決意を話した。
ただ、部長さんだけが、恐怖ではなく
「どうして………?」
「今日はっきりしたことは、『勇者はとんだ貧乏くじだった』ってことよ?」
「そして、勇者部を作ったのは、紛れもなく…アタシ。大赦に言われたからだけじゃない。都合よく大赦の申し出を…利用したの。」
「なのに…なんで皆アタシを、責めないの⁉︎」
「リスクのある切り札なんて―――全部アタシに押し付ければいい!」
「そうして誰かが一部を捧げちゃったら………アタシはどうやって償えばいいの……?」
そう思い詰めた表情で懺悔する部長さんに対して。
「風……」
夏凜が優しい声色で声を掛け。
「あんた、意外にバカだったの?」
…全力で煽った。
一瞬、時が止まる。
「な、なななんてこと言うの⁉︎勇者部に誘ったアタシが全ての元凶じゃない‼︎」
「そもそも、あんたが部を作ったかどうかなんて、あんまり関係ないのよ?勇者部に入ったら勇者に選ばれるなら、私が必死に訓練した意味は何なのよ。」
「想像つくけど、素質の高い人を監視連絡しやすいように集めたのが勇者部でしょ?」
「樹だって、素質があったから選ばれたわけで、別に裁縫部でも料理研究…部*1でも、結果は変わらないわ。」
「それとも、
「それは……確かに関係ないかもしれないけど…」
「じゃあ、あんたは何も悪くないんじゃない。第一、『誰が』悪いかと言うなら『攻めてくるヤツら』が悪いのよ。」
「そうですよ!それに、樹ちゃんもさっき言ってましたけど、私たちは、勇者部に入ったこと、と~~~~~っても、感謝してるんです。ね、東郷さん?」
「友奈ちゃんの言う通りです、風先輩。初めての時こそ随分怒ってしまいましたが…2年前から、戦うことが私の『御役目』…いえ、『宿命』だったんです。」
「ほら。誰があんたを恨んでる?あんたが勝手に私たちに負い目を感じてるだけ。」
「だから、いつもみたいに、私たちを引っ張っていってくれないかしら?近々、勇者部の大一番があるのだけど。」
「~~~っ!!しょうがないわね!やっぱりアタシがいないと、始まらないものね!」
「だけど、お願い。…絶対に、無理はしないで。…満開はなるべく避けて。どうしようもない時は…アタシがやるから。」
こうして、結局彼女たちはお互いに支え合って、持ち直した。
俺なんていなくても、結局はそうなっただろう。
それでも俺が、少しでも手助けになったのであれば、嬉しく思う。
チームの仲間のことを思いやれる、いい娘たちだ。
ただ、直接敵と戦うのは彼女たちで――――何かを失うのも、彼女たちだ。
俺は俺なりに、できることをしなければならない。
この話で夏凜が妙に頭が回る、というか解説役になってますが、別に頭が良くなったわけではありません。
風への反論については、本人が言っているように訓練による自負の部分が大きいです。
『直近の問題』への気づきは、脳筋思考なので「あ、あの敵倒さなきゃ」という事を、他の子よりも早く思い出しただけです。