愚者は惑えど勇者は懼れず   作:佐々木剣蔵

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この話、今までになく日数が過ぎるくせに、ほとんど中身がない。


第十一幕

■Chap.13 -感謝(カンパニュラの花言葉)

 

 

勇者部とバーテックス7体の総力戦は、それから2日後の7月7日だった…らしい。

俺は止まった時の中で起こった一大決戦を、犬吠埼部長から届いた勇者部代表のメールで知った。

 

犠牲者は…なし。

7体の敵は、見事殲滅された。

ただ、全員が1回ずつ満開をして、何かを失ったと、書かれていた。

 

結城さんは味覚。

東郷さんは左耳の聴力。

部長さんは右目の視力。

樹ちゃんは声。

夏凜は右足。

 

連絡をもらった翌日に一度お見舞いに行き、全員の退院を、待つことになった。

お見舞いの品は、結城さんのことを聞いていたので切り花にした。

 

その際、真実を偽った病院の説明に荒れる夏凜と部長さんを宥めたり、静かに憤る東郷さんを鎮めたりするのが大変だったのは言うまでもない。

 

 

 

検査が長引いた東郷さんが退院した翌日。

全員が「みきお」に集まった。

 

「皆、退院おめでとう。」

「そして、お見舞いの時には言えなかったが…『世界を守ってくれて、ありがとう』。君たちのおかげで、俺たちは今も生きている。」

 

「アタシたちの頑張りを、誰かが知ってくれているって言うだけで、少し救われるわね…」

 

部長さんが、しみじみ言う。

 

「ただ、『直近』の問題をクリアしたのだから、()()()()()()()に、目を向ける番だ。」

 

皆、問題続きで少しうんざりという表情だが、自分のことなので、しっかり聞いてもらう。

 

「俺は、この期間中も、『乃木園子』さんと短編を通じた暗号連絡を続けていた。」

「その上で、いくつか分かったことと、俺なりの判断を伝えたい。」

 

ここで言葉を切ってから、続ける。

 

「まあ、壁の外の奴らをどうするか…だな。皆戦闘不能(リタイア)するまで戦いたくなんてないだろうし、戦いの在り方も変えたいだろう。」

「だが、結論から言って、問題の根本、つまり外の敵をどうこうするってのは、先送りだ。」

「なぜなら、十二体を倒した事で、期間が空く可能性が、高いらしい。」

「だから、まずは『入ってきた敵を』『安全かつ代償を払わないように』倒す、そんな戦い方に変えるところからだと、考えている。」

 

 

「そんなこと…できるの?」

 

夏凜が訝し気に尋ねてくる。

もっともな疑問だ。

 

()()()…というと聞こえが悪いが、神樹様次第では可能と『乃木さん』は考えているようだ。」

「それには、我々『ヒトの力』を、神に認めさせる必要がある、とも。」

 

『乃木さん』の暗号は、あまり具体的なことは教えてくれなかった。

だから、独自に調べたことを交えた想像を、語る。

 

「これはその暗号を受け取ってから調べて初めて知ったんだが…」

「古来、人が神と干渉することは、大きな代償を伴うらしい。基本的には祀り、敬い、願って、『叶えていただく』。その方法は全て神様次第になる。」

「精霊も、満開も、基本的にはその方法で得られたと、俺は想像している。」

 

「大赦は……『犠牲』が出た時に『勇者が絶対に死なないようにしなければ』と願った。」

 

もう会うことができない、三ノ輪さんのことが頭をよぎる。

 

「一方で、欠けた戦力を補い、『勝率を上げられる力を』とも。」

 

それぞれが何かを失った、皆の顔を見る。

 

 

「この『願い』は勇者のためを思った、至極真っ当なものだと思わないか?」

「ただ、神樹様に『叶えていただいた』力は、組み合わせ次第では……例え五体や、五感も失っても、死なずに戦い続けられるという――最悪の結果も生みかねないものだった。」

 

全員の顔から血の気が引いたのが分かった。

 

「だが、神から授かったものを『これじゃダメだから変えてください』って、できると思うか?」

 

 

 

「納得は…あまりしたくないけど、理解はできるわね。」

 

少し時間が空いてから、苦々しく、部長さんが言うと、皆も首肯した。

 

「リスクを説明し、君たちが怖気付いて戦わなければ、世界は滅びる。なら君たちを騙し、真実を隠してでも…というのが、『大人』の事情だったんだろう。」

 

「…勝手ね…大人って。」

 

東郷さんの言葉が痛い。

 

 

 

「で、『認めさせる』ってのは具体的にどうするの?」

 

「そこなんだが…正直わからん。もう少し調べてみるが…」

 

「えぇ……?ちょっと、頼りないわねぇ。」

 

「しゃあねえだろ⁉︎専門家でもない俺が、神道の考え方とか古事記とかから調べてんだぞ⁉︎」

 

この人生でこんなに古典を読んだ時期は無いと断言できた。

 

 

「でも…わかった。皆が捧げたものを、返してもらえるくらい、認めさせればいいんでしょ?」

 

「夏凜…お前、そんな態度だと神罰降るぞ?俺も知らなかったが神様って結構バシバシ殺し合ってるような連中だぞ?」

 

「まあ、それはそれよ。ヒントをくれて、ありがとう。店長。」

「…私たちも、考えましょ?他ならぬ、私たちの事だもの。」

 

 

「…うん!」

 

そうしてその日は、解散となった。

 


 

■Chap.14 -心が通じる(ススキの花言葉) 語り部:三好夏凜

 

 

私には、「神に力を認めさせる」と言われても、今一つピンと来なかった。

こういう答えのない課題は、苦手だ。

 

いつか『乃木さん』のアカウントを探してた時と同じように、ベッドに大の字で倒れ込む。

 

いっそバーテックスを100体くらい倒せば良いのかと思ったが、勇者の力は神樹様から借りてるものなので、それを使って成し遂げたことを『ヒトの力』と言い張るのは、さすがにおこがましいかと思い直した。

しかし、それ以外となると、知恵比べでもすればいいのだろうか。

 

学校の勉強も一夜漬けで乗り切っている自分では、とてもじゃないが勝てそうにないな、と自嘲する。

 

そして、仲間はどうだろうかと思った時、手元に『勇者端末』がないことが、どうしようもなく不安だった。

それが、今も壁の外を蠢く敵に対する恐れか…はたまた決戦を通し、心から『仲間』と認めた者たちとのつながりが感じられないからかは、分からなかった。

 

今の自分は勇者じゃないただの人間なんだなあ、と考えた時、ふと一つの疑問が頭をよぎる。

『勇者端末がない時代は、どうやってバーテックスと戦った?』

 

反射的に体を起こし、座り込むように考える。

 

『外はウィルスで滅びた』という常識が崩れた今だからこそ、気付いた。

一般の書籍には絶対に書かれてない。

あるとしたら、大赦にだけ。

 

気は進まないが、確かめる方法はある。

ただ、そこで得られる知識が解決策になるかは分からない。なら、()()()()()()()()()、できれば頼りたくない。

 

悩んでいるうちに、日にちが経っていた。

――そんな折、大赦からのご褒美なのか、勇者部一同に、温泉旅館への小旅行が贈られた。

 

 

 

『仲間』と過ごした時間は、心地良かった。

夜は自然と、ヒトの力の話になったが、先の疑問は、打ち明けなかった。

他のメンバーが知っているとも、調べる伝手があるとも思えなかったから。

そして誰からも、これと言った具体的な案は出なかった。

 

感じる不安を隠すように、お互いの心を支え合って、寝て起きた時―――迷いは晴れていた。

 

 

 

その晩、自宅に帰った私は、今まで知っているだけで、使った事のない連絡先を引っ張り出した。

 

「ああ、兄貴?久しぶり。可愛い妹からひとつ…ううん、ふたつお願いがあるんだけど、聞いてくれない?」




原作の山場を一切描写しない二次創作があるらしい。
そして、主人公が介入して、原作よりも状況が悪化している二次創作があるらしい。

Q.なんで夏凜まで満開してるん?

A.前話で東郷さんが言ってたように、記憶を捧げるかも、と思って、最後まで満開しなかったからです。この世界の夏凜は、どうやら序盤でダウンせずに戦い、満開したみたいですね。主人公の影響かな?えらいぞ。
ただ結局、レオ=スタークラスターの核が宇宙に出現後はどうしようもなく、東郷さんが満開しました。

Q.なんで右足?

A.11話での夏凜の散華順ですが、作者は右腕が1番目になったのは、スコーピオン君の毒針の影響があったと信じてるからです。
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