愚者は惑えど勇者は懼れず   作:佐々木剣蔵

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本格的にみきおくんの影が薄くなってきた。


第十二幕

■Chap.15 -変化(アスターの花言葉) 語り部:三好夏凜

 

 

私からのひとつ目のお願いは、自分の勇者端末の返却。調整が済み次第、返して欲しいと頼んだ。

ふたつ目は、とびっきりの大先輩…つまり、初代勇者に関する資料の閲覧。

 

「…何のために?」

 

無機質な返答が返ってくる。兄にとっては不可解だろう。

表向き、私たちの御役目は終わったはずなのだから。

少なくとも向こうは、私たちが『もう御役目は終わったと思っている』という認識のはず。

 

「私は、他の連中よりも少しだけ知ってることが多いのよ。」

「勇者に先輩がいたことと、その一人が亡くなっていること。」

「なら、アイツらが()()()()()()()()()()って考えて当然じゃない?」

「兄貴がどう聞いているか知らないけど、私も満開して、新しい力を得ているはず。――試しておいて、損はないでしょ?」

 

 

『委縮するな』と自分に言い聞かせる。

内心は兄に対する苦手意識でいっぱいいっぱいだが、余裕なフリを貫く。

 

これは、店長と接するうちになんとなく学んだこと。

店長は私たちに「店主と常連」というより、「大人と中学生」として接してくる。

感情を露わにすることもあるけど、そういうのは大抵私たちの安全に関わる話のとき。

 

そんな時ですら店長はあまり私たちを「不安」にさせなかった。

店長だって、()()()()()()()()()()()のに。

良く言えば「落ち着いた」、悪く言うなら「余裕ぶった」態度で、うまく隠していた。

 

今回は少しだけ、それを参考にする。

無理にポーカーフェイスを気取るよりは、店長流の方が私にも向いていそうだ。

 

 

「…そうだとしても、2つ目の件の理由にはなっていない。」

 

――晴信は渋った。大赦にとって、壁の外のことは勿論、初代の『切り札』のことを知られるのも歓迎できない。

そのまま満開のリスクについても勘繰られかねないからだ。

 

 

「…ふうん。むしろ、なぜ見てはいけないの?」

「理由ならいくらでも挙げられるわよ。戦法とか武器とか、参考になるかもしれないじゃない?」

「私は勇者よ?バーテックスという敵がいることも、変身して戦っていることも当然知ってるわ。」

()()()()()()()()()()()()()()()()があるのかしら?」

 

挑発的な言葉で痛いところをついてみる。

それで譲歩してくれれば儲けものだ。

 

 

「………違うな。夏凜、一体何を調べようとしている?」

 

 

完璧超人め。この程度じゃ誤魔化されてはくれないか。

こうなったら情報が手に入らないのは…しょうがない。

でも、『乃木園子』さんとのつながりがバレることだけは、避けなきゃいけない。

 

舌打ち代わりのため息をひとつついて、答える。

 

 

「…はぁ。7日の戦闘記録って、兄貴は見た?」

「私はね、勇者の中で真っ先に満開したの。だから、満開が解けたのも最初。」

「他の皆は満開が解けた瞬間は戦闘不能か疲労困憊で倒れてた。」

「だから、私だけが()()()()()()()()()()()()()()()()()といえば、心当たりはあるでしょ?」

 

「……………」

 

「ただ……安心して。私が調べたいのは、()()()の事じゃないわ。」

「想像がついていることの裏を取るほど、暇じゃないの。」

「私は、それを受け入れたうえで、()()()()()()()調べたいことがある。」

 

 

 

「…わかった。」

意外にも、肯定の返事がもらえた。

 

「資料を自由に読ませることはできないが、歴史研究を行っている者を紹介する。」

「ただし、彼も質問によっては答えられない。」

 

「ええ。それで十分よ。」

 

「…あと、端末の返却についても大丈夫だろう。」

 

――この物語の発端となった星屑の侵入は、ここでも影響していた。

つまり『神託にない敵の襲来』という前例である。

誰も勇者端末を持っていない今の状況は、無視できないリスクを抱えていたのだ。

 

 

「そう。ありがと。じゃあ、詳しいことはメールでお願い。」

 

「…夏凜、お前、少し変わったか?」

 

最後に投げかけられた質問に、どう変えそうか少し迷って。

記憶に新しいキャッチフレーズで返してあげることにした。

 

「『恋は人を強くする』らしいわよ。」

 

「なっ!ちょ――――――*1

 

確実に知れるとはわからない。

でも、可能性は残った。

 


 

捧げた右足代わりの松葉杖を使って、えっちらおっちら大赦の施設を進む。

書庫で迎えてくれたのは一人の仮面の老人で、兄の姿はなかった。

 

「三好様、ようこそおいでくださいました。」

「私は勇者様方の記録・歴史研究を行なっております。前任から語り継いだ口伝のものもございます。本日はなんなりとお尋ねください。」

 

「ありがとうございます。今日はわがままを聞いてもらってすみません。」

「是非、初代勇者様のことについて聞かせてください。」

 

「具体的にはどのような?」

 

「どのように戦っていたのか、というのが近いでしょうか。例えば、先日の戦いで私の剣では全く斬れない敵がいました。」

「当時の戦いぶり、勇者システムの違い、装備や弱点、技術などです。」

 

もっともらしい理由を加える。

最近は、大人のズルさというか、こういう誤魔化しばかりが上手くなった気がする。

 

「…おそらく、参考になるような情報は、お教えできませんな。」

「初代様の記録は300年前にまで遡りますし、勇者システムに関わることの多くは神樹様の御力によるもの。」

「私の研究や知識から答えられることは、人となり、伝わった伝承の方面になります。」

「そうですな。剣ということでしたら、初代()()()()()の話などいかがでしょうか。」

 

「乃木…?」

 

「ええ、今も連綿と続く乃木系は、この若葉様の子孫でございます。」

 

「!…へぇ。」

 

「若葉様は幼少の頃より居合を嗜み、その技術も相なって実力は初代の勇者様方の中でも随一だったとか。」

「神器『生大刀』を振るい、多くの敵を撫で斬りにしたと伝わっております。」

 

「神器?初代勇者の武器は、神器だったんですか?」

 

「左様です。とりわけ『生大刀』は日本神話において大国主命が受け取った神器でございますな。」

「他にも、『神屋楯比売』の力を宿した旋刃盤、『キサガイヒメノミコト』が御使いになったという金弓箭などと伝わっております。」

 

「神器ということは、私の勇者装備のように神樹様の力で生み出すのではなく、実際に存在したということですか?」

 

「その通りです。」

 

「…現存、するんでしょうか?」

 

「………私は、大赦の霊的装具については担当外のものですから、()()()()()()()。」

 

ここで口を閉ざされるのは、本意ではなかった。

「神器」というものから、また違った方法が考えられるかと思ったけれど、それは本命の調べものではない。

なるべく、大赦が触れられたくない方には話を振らず、伝承の方面から、話を続ける。

 

「すみません。話せない内容もあると聞いているので、大丈夫です。」

「神器、というのに興味が湧きました。もう少し、それを手にされたときの話は、ありませんか?」

 

「手にされたとき…とは?」

 

「例えば、それらは元々、神器、つまり謂れのある品として、祀られていたんでしょうか?」

 

「いえいえ、いずれもそのようなものではなかったと。例えば、先の『生大刀』にしても、ただの日本刀が、敵の襲来に際し、神様方の加護を得て神器になったとされております。」

「初代様方は初めてバーテックスが襲来した折、偶然それらを手にされ、撃退されたと伝えられております。」

 

「!………突然、勇者になられたのですか?」

 

「いえいえ、勇者システムが生まれたのはもっと後です。」

「加護はおありだったでしょうが、()()()()()()()()()()()()、多くの人々をこの四国に導いたと伝えられております。」

 

いい情報が聞けた。

あとは、あくまで装備について聞こうとしている、という体裁を整える。

 

「……興味本位ですが、神樹様に加護をいただいて、神器を量産するなんてことはしなかったんですか?」

 

「ほっほ、面白いことを思いつかれますな。…私が知る限りは、そのような記録は見たことがございませぬ。ただ、大赦はこの300年、考えられる対抗策はなんでも試したようでした。『していない』ともまた、言い切れませぬな。」

 

そのあとは、当たり障りのないことをしばらく聞いて、話を切り上げた。

老人は普段話す機会に恵まれないからか、どうでもいい話については、口が軽かった。

 

曰く、若葉様は()()()()だの、バーテックスを()()()にして喰らっただの。

心底どうでもいい情報が増えたが、収穫はあった。

 

帰り際に、調整が終わった勇者端末を受け取って、情報を整理する。

 

 

『勇者じゃなくてもバーテックスには立ち向かえる』

 

それが、今日の収穫だ。

*1
晴信はシスコン




ゆゆゆいを長くやっていると、アニメの夏凜の態度がほとんど思い出せなくなります。
多分今アニメ1期を見たら違和感がスゴイはず。

素直で気遣いができるにぼっしー像が私の中で確立してしまっています。
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