愚者は惑えど勇者は懼れず   作:佐々木剣蔵

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結城友奈の章の終わりが見えてきました。
次?ハハッ。


第十四幕

■Chap.17 -希望(スノードロップの花言葉) 語り部:三好夏凜

 

 

まだ暑さも盛りである8月の末、勇者部に予期せぬ知らせが届いた。

 

バーテックスに、『生き残り』がいるらしい、と。

それと共に渡された箱には、勇者端末が4台。

 

すでに受け取っていた私以外の4人にも、勇者端末が戻ってきたのだ。

 

「うわぁ⁉︎………犬神?」

 

箱を開けた瞬間、風に飛び込んだ犬神を皮切りに、精霊たちが次々に飛び出してくる。

その中には、満開後の『レベルアップ』の証、新しい精霊も含まれている。

 

友奈は火車――焔を纏い亡骸を攫う化け猫。

東郷は川蛍――火のない水場で蓑を焼く怪炎。

風は鎌鼬――疾風と共に人体を刻む妖怪。

樹は雲外鏡――その実態は真実を映す鏡。

 

それぞれが名に恥じぬ力を以て、私たちを助けてくれるはずだ。

 

そして、これは()()でもある。

それぞれが一部を捧げて失った事で得た力であることを、忘れないための。

もしこのことに何も感じなくなったら、そのまま私たちは、都合よく使い潰されるだろう。

 

まだ引き返せる『今』だからこそ、持ちかける。

 

 

「ねえ皆、聞いて欲しいことがあるの。」

「できれば、もう少し自分の中でも時間が欲しかったのだけど…『延長戦』が予告されてしまった今、あんまり猶予がなさそうなの。」

「今日、このまま私の家に来てくれないかしら?」

 

「おお~!!お呼ばれだ!行く行く!」

 

「じゃあお土産を用意しないと…」

 

『多分マジメなお話だと思います…』

 

樹が一応は(筆談で)ツッコミを入れてくれたが、そんな軽いノリで、今まで誰も迎えたことがない我が家に、初めて勇者部一同が集まるのだった。

 

「適当に座って。飲み物とにぼしくらいは出すわ。」

折り畳みのテーブルを広げ、いそいそと飲み物を用意*1する。

 

 

「なんか色気のない部屋ねぇ〜。」

 

「わぁ~、これスポーツ選手みたい!」

 

リビングから自由なコメントが聞こえる。

 

「ちょっと、変に触ったりしないでよ!」

 

慌ててキッチン越しに声をかけ、ため息をついてそちらを向くと、樹がキッチンの手前にいた。

 

『お手伝いします』

 

スケッチブックを胸元に掲げる。

 

私の足のことを気遣ってくれたのだろう。

素直にお礼を言って、お盆を運んでもらった。

 

 

「友奈、ソワソワするのはその辺にして、落ち着きなさい。」

「…で、どんな話なわけ?『みきお』に集合しなかったし、店長さんにも話せない内容なの?」

 

まだソワソワしている友奈のテンションを落ち着けて、風が切り出した。

いや、あんたも好き勝手してた組なのに、素知らぬ顔で話を進めるのか……

 

 

気を取り直して。

 

「まずは、見て欲しいものがあるわ。ちょっと待ってて。」

 

そう言って、部屋にある神棚の前、祀るように飾った『太刀』を、皆の前に持っていく。

先ほど声を掛けたが、友奈や風が変に触ったりしなくて、本当に良かった。

 

「夏凜ちゃん…?何…ソレ?」

 

友奈が少し、怯えている。

全員少なからず、この太刀が放つ異様な空気を感じてもらえたらしい。

 

 

「これは、私の2体目の精霊がくれた力。」

「私はこれを使って、『勇者』じゃなく、『ヒト』の力を証明しようと思ってる。」

 

方法は、ぼやかした。

まだ『生身で戦う』と宣言するのは、怖かった。

―――特に、みんなの反応が。

 

 

「それって………まさか夏凜ちゃん、変身しない気なの⁉︎」

 

ただ、察しのいい東郷が歯に衣着せぬ言葉で確かめてくる。

それを聞いて、今一つピンときていなかった面々が、一斉に騒ぎ出した。

 

「いやいやいやいや、おかしいでしょ!前にアンタに言われたセリフ*2、そのままお返ししましょうか⁉︎」

 

「危ないよ!絶対にやめたほうがいいよ!」

 

『死んじゃいますよ!』

 

「防御については、正直精霊頼みのところはあるわ。ただ、勝算はあると思ってる。」

「店長が言ってたでしょ?『精霊』は勇者から犠牲が出ないようにって願いを、叶えたものだろうって。」

「歪んで叶えられた力だけど…()()()、信用してる。」

 

「………」

 

全員納得はしていない様子だが、続きを聞いてくれるらしい。

 

「あと、生身で戦った前例がないわけじゃないの。」

 

「!!!????」

 

「壁の外の真実を知って、疑問に思ったわ。『初めて』バーテックスが来た時、人類がどう対処したのか。」

 

「そうか…ウィルスじゃないんだから…」

 

「当時大勢の人が…アイツらにやられた、ってことね…」

 

「そんな中、バーテックスを撃退して、この四国を護ったのが『初代勇者』。」

「初めて敵が来た時は、『勇者システム』なんてものはなかった。これは調べたから、確かよ。」

「そして、当時は変身して出す武器じゃなく、『神器』で戦ってたそうよ。」

 

「『神器』………」

 

「私が聞けたのは『乃木若葉』さんのお話。偶然だけど、『乃木園子』さんのご先祖様らしいわ。」

「彼女は『生大刀』でバーテックスを斬って、大勢の人を救った、英雄だって伝わってるわ。」

「勇者システムが無いんだから、当然『精霊』もなかったはず。」

「リスクは大きいけど、その分を差し引けば不可能じゃない…と思ってる。」

 

「…その刀の力は、確かなの?」

 

東郷は刀の放つ異様な雰囲気に気圧されながらも、そう尋ねてきた。

 

「日本の『三大怨霊』に数えられるほどの人物が、これでもかってくらい『怨念』を込めてる。そう言う東郷が一番、わかってるみたいだけど。」

 

「ええ…正直、鞘に収まってても怖いくらいよ。」

 

 

「それはそうかもね。これは、『神器』みたいな清らかな力じゃないから。」

「ただし100%、『ヒトの想い*3』の産物よ。」

「…これなら通じると、思わない?」

 

自信を持って、皆の顔を見渡す。

 

「…オンリョウ?怨霊⁉何それ聞いてない!やめて、ちょっと向こうやって!こ゛わ゛い゛か゛ら゛ぁ!」

……頼れるはずの部長が、変な方に反応してしまった。

 

 

「コホン………百歩譲って、その刀が、敵に通じるとするわね?」

「でも、アンタは伝説の『若葉』さんじゃないし、変身しないと片足しか動かないじゃない!」

「それに、敵は飛んだり潜ったり、硬かったり…やりたい放題よ⁉︎」

「たとえ一万歩譲っても勝ち目があるとは思えないわ‼︎」

 

ようやく落ち着いた風の指摘も一理…いや、百理くらいある。

 

「可能性が低いのはわかってる…だから、『出来そうなら』でいいの。どうせこれから先も、敵は来るはず。」

「なら『いつか』チャンスは来る。今回はその1回目のトライでいいから…私たちも『希望』を、持っておきたいの。」

 

 

しばしの静寂が部屋を包んだ。

 

『そんな無茶をさせたくありません』

情報を飲み込んだ樹が、一言書いた。

 

「そうね。特に、仲間一人に危険を押し付ける案ってのが、一番気に食わないわ。」

風が、不機嫌を隠さずに続ける。

 

「ええ。私たちが何も出来ないのが、一番腹立たしいです。…そんなものが、『希望』だなんて。」

東郷が、思い詰めたように締めくくった。

 

 

 

「え?なんで?」

友奈が心底不思議な声を挙げた。

 

「友奈、聞いてなかったの?『ヒト』の力を見せつけるんだから、勇者が手伝っちゃ、意味ないでしょ?」

風が呆れたように言う。

 

「なんで?私たちが手伝うのも、『ヒト』の絆の力だよ?それにね、手伝って『認めてくれなかった』ら、もうダメなの?」

 

「!?」

 

「その時は少〜しだけ、お手伝いを少なくすればいいんじゃないかな?それでダメだったら、その次も。少しずつ減らすの!」

「それならいつか絶対、認めてもらえるはずだよ!」

「ね?夏凜ちゃん。『なせば大抵、何とかなる』だね!」

 

この子は直感で、この考えに行き着ける。

友奈こそが、勇者部の『希望』なのかもしれない。

 

こうして方針は、決まった。

*1
いそいそと歓迎する夏凜は「勇者部所属」2巻(5話~)ちょくちょく描写がある

*2
意外にバカだったの、のくだり

*3
ただし"負"の




夏凜が盛大に勘違いしているのは以下2点。
・初代勇者の場合、神器を持った時点で「力が湧く」(相当の加護を得る)という点。
・その状態で斬ったバーテックスは「星屑」で、進化体ではない点。

この刀は『神器』ではないので、加護は得られず。
そして生き残りは星座型。
精霊の防御を差し置いても、間違いなく若ちゃんよりハードモード。


そして主人公の影、無し!
大丈夫、次はちゃんと主人公視点から始まります。
(途中で代わらないとは言ってない)
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