愚者は惑えど勇者は懼れず   作:佐々木剣蔵

19 / 20
今回も幕間はあっさり終わらせます。


幕間(2)

■Chap.EX -胸のときめき(ネムノキの花言葉) 語り部:乃木園子

 

 

私はその日少し、『勝手』をした。

 

私の理解だと、バーテックスは1回倒せば、修復するまで時が稼げる。

そして、現在の勇者は十二体すべてを倒したと聞いた。

 

つまり、暗号でやりとりしている彼女たちが、私が提案したところの『神様に認めさせる』方法を思いついたとしても、実行できるのは『まだ先』ということだ。

 

 

簡単に言えば、我慢出来なくなった。

『ともだち』に、どうしようもなく、会いたくなってしまったのだ。

 

トッキーからの連絡は、凪いでいた私の感情を掻き立ててくれた。

でもそれは、逆に寂しさや羨望といった、『身体が動かせないから』と諦め、押し殺していた感情も甦らせてしまった。

 

戦いがひと段落したのだから、と何度交渉しても、大赦を通した面会は叶わなかった。

そんな折にやってきた、『生き残り』という好機。

 

私は、100%わがままで、神樹様に少しだけ干渉したのだった。

 

 

こちらに呼び出せた(待ち合わせに来た)のは、二人だった。

ああ、懐かしい、この2年、何度も会いたかった『ともだち』が、そこにいる。

 

ただ、様子がおかしい。

そう遠くない場所にいる私に、全く気づかない様子で、とても慌てている。

 

「…夏凜ちゃん!………夏凜ちゃんは⁉︎」

 

「東郷さん!落ち着いて!ここ、学校の屋上じゃないよ!風先輩と樹ちゃんもいない!」

 

「え⁉︎…ここは…どこ?大橋?いや、それより…」

 

混乱極まった二人に声をかける。

 

「タイミングが…悪かったかな?『わっしー』。」

 

「「!!!!!!」」

 

私の呼びかけに反応し、目を見開く二人。

それは、きっと人がいたことと、聞き慣れない呼び方をされたこと、そして…今の()()()()を見たからだろう。

ベッドから動けず、顔もほとんど包帯で隠れた、この姿を。

 

「ごめんね。このタイミングを逃しちゃうと、次はだいぶ時間が開きそうだったから。」

「どうしても、会いたくなっちゃったんだぁ。」

 

「ごめんなさい、ちょっと今は「東郷さん!」

 

それでも、心ここにあらずで取りつく島もないわっしーの返事に、赤い髪の…確か『結城さん』が、割り込んだ。

 

「私が風先輩に連絡するから、落ち着いて?今は、とっても大切な機会のはずだよ。」

「お友達に、ちゃんと向き合って!」

 

強く、わっしーの両肩をつかんで、正面から目を見て、言ってくれた。

 

「………ありがとう、友奈ちゃん。そうね。」

「ごめんなさい、『乃木』さん。取り乱してしまって。」

「私も、会えてとても嬉しいわ。特に、『真実』を私たちに教えてくれて…助けてくれて、本当にありがとう。」

 

「ふふ、『わっしー』でわかってくれるんだぁ。きっとトッキーのおかげだね。嬉しいなぁ。」

 

「そう。店長さんが教えてくれたの。本当は、『そのっち』と呼ぶ方が良いのかもしれないけど…覚えてない私がその呼び方をするのは、なんだか失礼な気がして。」

 

「気にしないで。忘れちゃったの、わっしーのせいじゃないんだから。」

 

「ううん。いくら謝っても足りないの…ごめんなさい。」

 

「それは、何に対して?」

 

「…あなたたちのことを、忘れちゃって…ごめんなさい。」

「そんな身体になるまで、戦わせてしまって…ごめんなさい。」

「一人だけ戦いから逃げてしまって、ごめんなさい。」

「……あなたのことを知った時、『どうして会いにきてくれないの』なんて、言って、しまって……ごめんな…さい…。

 

息を吐く暇もないくらい、一気に気持ちを吐き出した。最後の方は、嗚咽混じりで、こっちも泣きそうになっちゃう。

 

「わっしーは2年経っても…泣き虫なところは変わらないね。」

 

頭を撫でてあげたいけど…手が動かないのが恨めしい。

 

「…結城さん、今なら大丈夫だよ。」

 

少し離れたところで、様子を伺っていた結城さんに声をかける。

 

「…すいません。」

「東郷さん!連絡取れたよ。夏凜ちゃん、怪我はしてるけど命に別状はないって!これから病院に行くみたい。」

 

「…!!……良かった…」

 

 

「怪我?『生き残り』がそんな強かったの?それは、本当に悪いことをしちゃったかな…?」

 

彼女たちが慌てていた原因が分かったが、今一つピンと来ない。

精霊のおかげもあって、総力戦以外、ほぼ無傷で乗り切っていた彼女たちから、負傷者が出るとは思えなかったからだ。

そんな一大事に、勝手なわがままで呼び出してしまったのかと、罪悪感を覚える。

 

 

「いえ、今回は私たち、『無茶』をしたんです。」

 

なぜか誇らしい表情で話す結城さんと、涙を拭いながら、頷くわっしー。

 

「どうなるかは、まだ分かりませんけど…『もしかしたら』と思うくらいには、うまくいきました。」

 

彼女たちの表情と話の内容は、不可解だった。

だって、直近のトッキーからの連絡だと、まだ『神様に認めさせる方法』は、何も思いついていなかったはず。

 

「園子様!」

 

良い所で、大赦の神官たちが屋上の扉を開けて、駆けつけてきた。

 

ちょっと黙ってて!彼女らは私のお客さんだよ。…何かしたら、許さないんだから。」

 

精一杯の怒りを込めて、牽制する。

 

「仲間のところに行きたいだろうけど。…何をやったか、聞いても良い?」

 

向き直って、真剣に話しかける。

 

「ちょっと、長くなるかもしれませんが、大丈夫ですか。」

 

結城さんは、私の状態を見て気遣ってくれたらしい。

寒さを感じる季節じゃないけれど、確かに暗くなっては話どころじゃない。

 

「じゃあ、部屋で聞くよ。…ねえ、お願いできる?」

 

さっき感情的に怒りをぶつけた、神官たちの手を借りないと部屋に行けないのが恨めしい。

一応、努めて冷静に、声を掛ける。

 

「かしこまりました。」

 

今日はわがままで勝手なことをしたし、理不尽な怒りも見せた。

それでも、この大人たちの態度は変わらない。

14の小娘に対して、まるで崇めるような、いつも通りの対応で、答えた。

 

 

 

その後、部屋で聞かされたのは、驚きの内容。

まさか、変身しないでバーテックスを斬ってしまうなんて。

2年前わっしーは、弓を使わず矢を直接敵に突き刺したことがあったけど。

今回のそれは比べ物にならないくらい無茶苦茶だ。

 

でも、ヒトの手でそんな奇跡を起こしたのなら――

 

 

―――今、私が感じている()()()()()は、果たして本当に、『感情』が揺れ動いている()()なのだろうか。

少なくともこの2年間、感じたことがない感触だと言うことだけは、確かだった。

 




この話の裏側で、負傷した夏凜を見た樹ちゃんがガチ泣きしてると思います。
風パイセン、救急搬送大変やったやろうな…

次回、結城友奈の章最終話。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。