愚者は惑えど勇者は懼れず   作:佐々木剣蔵

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NARUKOのチャット画面、うまく表現できないですかねえ。
あの独特の「ゆるさ」を表現するのに、せいぜいキャラの名前をひらがなにするくらいしかできず…

文才の無さが恨めしい。


第四幕

■Chap.5 -好奇心(プラタナスの花言葉) 語り部:三好夏凜

 

 

「すいませーん」

 

「いらっしゃいませ、ただいま伺います。」

 

驚きで次の言葉が出てこない中、店のドアベルが鳴った。

店長が接客のためにそちらへ向かう。

 

「適当にドリンク飲んだら、解散してくれ。そろそろ日が傾く頃だしな。」

 

スマホを私たちに預けたまま、そう言い残して、席を立った。

 

 

「夏凜、その写真、アタシたちの端末に送れる?」

 

聞こえないように小声で、風がとんでもないことを言い出した。

 

「お姉ちゃん、店長さんのプライベートのスマホだよ⁉︎」

 

「いえ、これは我が勇者部メンバーと、御役目に関わる話よ!とはいえ、流石に悪いと思うから、一番仲がいい夏凜に操作してもらおうかと…」

 

「お姉ちゃんはほとんど興味本位でしょ?無責任だよぉ…」

 

 

「…ちょっと待って、それにはアドレスを手打ちしないと…」

 

「夏凜さんまで⁉︎」

 

「ううん。店長さんはこの間の誕生日会の時、勇者部のアドレスにメールをくれてる。きっとメールが残ってるから、写真を付けて再送信して。アタシのスマホで受け取れるから。」

 

店長とは気のおけない仲だと感じているものの、それでも悪いという自覚はあった。

でも、私は店長が言う三人組、その内の一人の『結末』を知っている。そしてその残酷な報せを伝えることは、きっと出来ない。

 

そう、現状、先代勇者から『端末を引き継いだ』のは完成型たる自分だけ。なら、残りの二人には会えるはずだ。

そう考えたら、自然に体が動いた。

 

 

「風、私から勇者部に依頼を出すわ。『鷲尾須美という少女の秘密を探って』よ!」

そう言って、送信ボタンを押した。

 

「あいわかった!」

 

「いいのかなぁ…」

 

『勇者部員による特殊依頼』

それは、彼だけでなく、この世界にとっても転機となる部活動になるのだった。

 


その晩、風と樹にチャットを送る。

 

かりん『今日の依頼の件だけど今いいかしら?』

風  『良いわよー』

いつき『はい、まだ起きてます』

風  『あ、まずはこの写真ね』

風  『tencho.jpg』

かりん『ありがと』

いつき『見れば見るほど似てますねぇ』

かりん『風はどう思う?』

かりん『私は中1の東郷は見たことないから…』

風  『これは同一人物よ!』

いつき『根拠は?』

風  『見た目もそうだけど、このメガロポリスよ』

風  『少なくともこのサイズ以上に育ってるわけでしょ?』

風  『そんな中学生、東郷以外ありえないわよ』

いつき『お姉ちゃんサイテー』

風  『なんで⁉︎』

 

かりん『明日、やりたいことがあるわ』

風  『アタシも』

いつき『私からも1つ』

 

かりん『東郷をこの写真と同じ髪型にして、写真を撮りたい』

いつき『わかりやすくていいですね』

風  『じゃあヘアアレンジの依頼でもでっち上げましょ。ブラシと髪留め持って行くわ』

かりん『ありがと』

 

風  『アタシは直球』

風  『この制服、神樹館小学校のでしょ?』

風  『卒業生がウチの中学にいないか、探したい』

かりん『風にしてはいい案ね』

かりん『知っている人がいれば、全部決着がつくかも』

いつき『ちょうど各学年ひとりずつですから、各学年で聞き込み?』

風  『異議なし!』

風  『これは「カワイイ制服ランキング」を作ってるってことにしましょうか』

かりん『了解』

いつき『わかった』

 

いつき『私のは思いつきなんですけど』

いつき『東郷先輩の瞳、珍しい色ですよね?』

いつき『ご両親とか、血縁の方はどうなのか、聞いてみたいです』

かりん『普通に聞けば答えてくれそうだけど』

風  『それなら漫研の依頼に合わせましょうか』

風  『ちょうどいいのがきてるの。任せて』

 

風  『特になければ、こんなところね』

かりん『大丈夫よ』

いつき『はい』

風  『じゃあまた明日、おやすみなさい』

かりん『お休み』

いつき『zzz』

 


 

 

次の日、少し早めに家を出た。

もちろん、神樹館小学校の卒業生の聞き込みのためだ。

 

「おはよう」

 

そう言って中に入ると、まばらにだが教室に同級生がいる。

 

「ねえ、ちょっといい?いま勇者部で『カワイイ制服ランキング』を作ってるんだけど、神樹館小学校の卒業生だったりしない?それか、知り合いにいないかしら?」

 

手当たり次第に声をかけてみるが、反応は芳しくない。

私は今月この学校に来たばかりの転校生だから、クラスメイトの出身は、全然想像がつかない。

 

そもそも神樹館小学校といえば、かなりのお嬢様校。そこから公立の讃州中学に進学するというのは、よっぽどのことだろう。

 

そうこうしているうちに、友奈と東郷が登校してきた。

…これ以上は難しいわね、一旦諦めましょう。

 

 

つまらない授業を終えて、ようやく放課後。

友奈と東郷に声をかけて、部室に向かう。

 

「お、来たわね。今日は2つ、依頼が来てるわ」

 

「お!どんなのですか?」

 

「デート用のヘアアレンジの依頼*1と、漫研の依頼。1つ目は、髪の長さが東郷くらいらしいから、協力してもらえる?」

 

「もちろんです。」

 

「ありがと!じゃあ早速。ブラシと髪留め、その他ヘアピン、ヘアゴムは用意してるわ!悪いけどいくつか試して、写真撮らせてもらうわよ。」

 

そう言って三つ編み、編み込み、サイドテール…女子中学生が5人も集まれば色んな案が出る。

無邪気に友奈が色々試しては撮影している。

 

 

場が暖まったころに、本命のスタイルを提案する。つまり、写真の『鷲尾須美』のヘアスタイル。

セッティングは、風が買って出てくれた。

 

「わぁ、東郷さん、これも良く似合ってる!」

 

「ふふ、ありがとう、友奈ちゃん」

 

「じゃあ撮るわね〜」

 

果たして撮れた写真は、同一人物説を後押しする1枚となったのである。

 

(でも、友奈も東郷も特に反応なし…か。)

 

少なくとも、友奈に出会ってからは、このスタイルにはしていないようだ。

情報としては弱い。でも、判断材料にはなる。

 

 

 

続けて次の案。

 

「次は漫研の依頼。描いてるキャラクターに似合う眼鏡を考えて欲しい、らしいわ。」

 

「めがね?」

 

「幸い、アタシと樹以外は、それぞれ目の色が違うでしょ?その人の色に、どんな眼鏡が似合うか、考えて、まとめるだけの簡単なお仕事よ。」

 

「はいはーい!東郷さんは、目の色がキレイなので、フレームが無い細身のやつがいいと思いまーす!」

 

「なるほど!『先生』ってカンジ?やだ、こんな色っぽい先生、個別指導してもらいたくなっちゃう!」

 

そんな軽口の間を縫うように、樹が本命の話題を紛れ込ませる。

 

「でも、東郷先輩の目の色、本当に綺麗ですよね。私とお姉ちゃんも、少し緑掛かってますけど、そんなに鮮やかな色じゃないです。」

 

「そう?ありがとう、樹ちゃん。でも、私は樹ちゃんの優しい緑も、友奈ちゃんの強さを感じる赤も好きよ。」

 

「そう言ってもらえると、うれしいです。東郷先輩のご両親も、同じ色をされてるんですか?」

 

「うーん、そうねぇ。母が、私に近いかな。でも確かに、他のご家庭ではあまり見かけない色かしれないわね。」

 

結論から言えば、東郷の母親方の血筋なら、ありえないことはない、か。

確定的な情報を見つけ出せないまま、放課後は過ぎて行く。

 

 

 

「ねえ、風先輩、夏凜ちゃん、私達に()()()()()()()()?」

 

だから、東郷がいきなりそんなことを言い出した時は、心臓が飛び出るかと思った。

『鷲尾須美』について探っていることを勘づかれた?今返事するのはまずい。

挙動不審になっている自信がある。

 

助けを求めて頼れる部長様の方を見ると…目が高速で泳いでいる。

もう…ダメか、と思ったところで、声が響いた。

 

「東郷先輩、友奈さん、ごめんなさい。ちょっと、秘密の依頼をしてたんです。」

樹?いきなり何を言い出すの⁉︎

 

「昨日『みきお』で、お客さんが話してたんです。娘さんが小学校に上がるらしくて、カワイイ制服のところないかな、って。」

「その関係で、神樹館小学校の制服の写真が撮れないか、それぞれのクラスメイトに聞いてたんです。正式に依頼を受けたわけじゃないから、その場で聞いた3人で対応してたんですよ。」

 

「なんだ、そんなことならはじめに相談してくれれば良かったのに。手伝いましょうか?」

 

「ううん、大丈夫です。さっきも言いましたが、依頼されてるわけではないので、写真が手に入らないならあきらめようと思ってたところですから…ね?」

 

そう言って目線で合図をくれた樹が、救いの女神に見えた。

このファインプレーのおかげで、ピンチをなんとか乗り切ったのである。

 

 

 

今日の部活も終わり、夕焼けの橙に染まった校門を出て、家の方向へ。

私も皆の後ろをついていきながら、『鷲尾須美』の写真と東郷を、見比べる。

 

私、風、樹の中で、疑惑は確信になりつつある。

だけど、確定的な情報が得られなかったことに、落胆の色がにじみ出た。

 

 

「夏凜ちゃーん、何見てるの?」

 

前で東郷の車椅子を押していたはずの友奈が、いつの間にか後ろにいた。

 

慌てて前を見れば、いつの間にか樹に交代している。

 

「靴ひもがほどけちゃったから、ちょっとの間交代してもらってたんだ。それより、何の写真?見せて見せて!」

 

「あっ…!」

 

驚きで動きを止めた瞬間に、手元のスマホをのぞき込まれた。

 

「あれ?東郷さんの写真?でも、これって私が会うより少し前かな!ほら、お気に入りのリボン、してないもん。」

 

一目で同一人物だと断定して、時期と違いを見破った。

 

「ん~?こっちの子がしてるのが、今東郷さんがつけてるリボンかなぁ。どうしてそんな写真、夏凜ちゃんが持ってるの? ………()()()()()!!」

 

完全にバレた。

こういうときの友奈の勘の良さを恨めしく思う。

東郷に聞こえないように、少し声を落として、手短に説明する。

 

「そう、これは店長が残してたの。正真正銘、『鷲尾須美』さんの写真よ。」

 

「そんな…じゃあ、やっぱり!」

 

「私と風、樹も…多分同一人物だと思ってる。正直、今のアンタの一言で、()()()()わ。」

 

「…実はね、東郷さん、小学校数年間の記憶が、あいまいだって、聞いたことがあるの。その…足の、事故のせいだって…」

 

「友奈、私は近いうちに、このことを東郷に伝えたいと思ってる。」

 

「…っ! …私も、東郷さんの空白を埋めてあげたい。…けど、『怖い』って言ってたの…過去を知るのが。今が幸せだから、変わるのが怖いって!」

 

「……できれば、本人の意志は尊重してあげたいけど、もし同一人物だとすれば…東郷の足や記憶は、バーテックスの攻撃によるものかもしれない。」

 

「でも!私たちは牛鬼たちが守ってくれて!」

 

「実際に、東郷はケガをしてる。精霊のバリアが通用しない敵がいるのかもしれない。」

「ただの興味本位や、店長に『鷲尾さん』のことを教えてあげたいだけでは、ないの。」

 

友奈はそれに反論できない。

 

「だから、友奈、東郷に『覚悟』をさせてあげて。無責任に聞こえるかもしれないけど、私では、それはできないの。」

「東郷の『心』を、少しでも守ってあげて。」

 

ああ、私はやっぱり『大赦の勇者』なんだと自己嫌悪と後悔が押し寄せる。

こんなにも、無責任に、酷いことを仲間に押し付けるのだから。

 

 

「…気持ちを落ち着けたら、東郷さんのところに戻るね。夏凜ちゃん、『みきお』に行く日が決まったら、すぐに教えて。」

 

そんな私を見透かすように、こちらを見つめ返す友奈の目は。

まさしく東郷が言った「強さを感じる赤」だった。

 

*1
ゆゆゆいをしている人にはお馴染み。技うどんの回収効率が良い。




実は結構この話で悩んだのが、「東郷さんは神樹館小学校の制服を持っているか」でした。
事故以前の記憶があいまいといっても、鷲尾家の養子になってから、銀ちゃん園子に出会うまでの記憶も全部消えてんのかなあ?というところ。

一度は、「神樹館小学校の制服なら家にある」が物証になる展開を考えたんですが、ボツにしました。
それでよかったと思ってます。
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