summer pockets reflection blue 前章[Asterlore] 作:八咫鏡光
やっと第一話始まりました。皆さん最後までよろしくお願いします。
「…………なく……鳥白町漁港に到着します」
船内のアナウンスの音声で目が覚める。俺は大きく伸びをして、前方に見える島に目をやる。アナウンスに反応して、船のデッキにぞろぞろと乗客が現れはじめた。改めて島のほうに視線を戻す。島に近づくにつれ、幾つか家屋が見えはじめている。思えばこの島の名前も知らなかったな。
「鳥白島か……」
いったい何が由来なのだろうか? 鳥とかに関する伝承とかそういうのがあるのだろうか。まあ、今の俺には知ったことではない。
『鳥白島へ来ませんか』
そんな手紙がきたのは、7月の中旬、夏休みに入る少し前のことだった。先月、母方の祖母が亡くなった。変わり者だったらしいが、ただ自分は祖母と顔を会わせた記憶がないので、どういった人だったのかよく知らない。
母曰く祖父が定年退職した後、祖父と祖母はよく海外に出て過ごしていたらしい。たまに訪れた国のお土産や写真が俺の家に届いてくることが、一番印象に残っていた。
そんな祖母の遺品が家に数多く残っていて、それを整頓するにしても、その中には家族の思い出も含まれている。さすがに業者にまとめて頼むことはできない。とはいえ、大人は忙しいので親戚の子供で且つ一番暇な人間を寄越すのが適任ということで、俺が選ばれた。だんだん島が近づいてくる。
港には、幾つか漁船と思しき船が何艘が見え、漁師と思しき人が何人か歩いていた。中には観光客と思しき人も見えていた。小さい島ながらも結構賑やかな所なのだろう。頭上には二羽の鳥が少し風に煽られながらも、飛び回っている。二羽とも怪我でもしているのか、お互い励ましあいながら飛んでいるように感じた。不意にこんな言葉が頭に浮かんだ。
「さしずめ俺は・・・」
「傷ついた渡り鳥というところかな?」
「まあ、そうか・・・な!?」
自分が思いついた言葉を、急に自分の口から発したものとは別の声が聞こえて、思わずそこから飛び退いた。その声の主の姿を、警戒しながら凝視する。相手の男は黒髪にまるで海を内包するかのような綺麗な青色の瞳。それと同じ色をした青い長袖の服、黒のジーパンという出で立ちをしていた。見た感じ俺と同じか少し年上だろうか?
「アンタ、どうして俺がそういうこと考えてるって分かった?」
警戒を続けながら、相手に質問する。
「ん?いやさっき君、飛んでる鳥を見てたでしょう?だからそういう言葉呟きそうだなって思って」
いや、だからって思いつかないだろう。その言葉。
「てかアンタ、俺になんの用だよ。急に話しかけてきて一体何なんだ?」
「何なんだって言われても・・・うーん・・・」
男は少し考えるように下顎に手を当て、こう答えた。
「俺、あの島に移住するんだ。んで船には俺と同い年の人となかなか見かけないなと思って回ってたら・・・」
「偶然俺を見かけたと?」
「うん」
いや、だからって普通声かけないだろう。
「君も鳥白島に住むの?」
「いや、住まない。うちのばあさんが亡くなってさ。そのばあさんの遺品整理のために、この夏休みを利用して島に来たんだ。だから夏休みの間しかあの島には滞在しないよ」
「ふーん。あっ!もう島につくよ」
彼の話に集中していたせいか、島が目前に迫っていることに気づかなかった。急いで降りる準備をすすめる。
「あっそういえば君の名前聞いてなかった」
「そう言われるとアンタの名前も聞いてないな」
「鈴白七夜・・・」
「ふぇっ?」
突然、名乗られて思わず変な声が出てしまった。
「鈴~白~七~夜だよ!」
「あっああ。俺は鷹原羽依里」
「鷹原羽依里くんね。夏休みの期間だけの友人関係になるけど、よろしく鷹原くん」
友人関係?
「夏休みの間だけど、同じ島に住むことになるんだし、またどこかで会うんだからさ」
「ああっそうか。そうなるのか?」
また会うかもしれないけど、友人関係になるかどうかなんて・・・。
「なるよ友人に。何か不満かい?」
またコイツ、俺の心見抜きやがった。なんか怖い。
「お前さ、俺の心読めるの?」
「そういうってことは、そう思ってたってこと?」
「い、いや・・・」
「鷹原くんは顔に出てるんだよ。顔に。分かりやすいくらいに」
「な、なるほど・・・」
そこまで顔に出てたか。
船から港に降りると、七夜は俺に向かって大きく手を振ってきた。
「改めて、夏休みの間だけどよろしくね鷹原くん」
「ああ、よろしく鈴白」
俺も大きく手を振りながら、そう答えた。
「俺のことは七夜でいいよ!」
「なら七夜も、俺のことは羽依里でいいよ」
「そうかい。わかったよ羽依里」
そういって、七夜は大きなカバンを右肩にかけて去っていった。七夜が自分の視界からいなくなるまで、俺はずっと彼の背中を見届けた。思えば結構変なやつだったな。夏休み期間の間だけど、友人関係か。そうなればいいんだがな。
「なあ?今日はどうだった?」
「いや、一昨日と同じでスッカラカンだわ。お前さんは?」
「俺もだ。ここんとこ不漁続きだ。どうなってんだろうねぇ」
俺のすぐ近くで、漁師さんのそういう会話が聞こえた。さっきの会話を聞くからには、あまりよろしくない状況なのだろう。そんな漁師さん達の横を急いですり抜け、地図を開いて目的の家まで目指した。
それにしても、かなり暑い。青々と茂る草木からいろんな虫の鳴き声が聞こえる。特に蝉なんかは、やけにギャーギャーとけたたましく鳴いていた。そんな夏の暑さと、照りつける太陽の光に必死にこらえ、歩き続ける。ようやく住宅街のようなところが見えてきた。ここまでまだ誰一人、住民の姿は見ていない。地図のとおりなら、もうそろそろ目的の祖母の家に辿り着けるのだが。
「加藤・・・加藤っと」
ちなみに姓名は加藤。俺の母も結婚する前は加藤の姓だった。そして、俺に遺品整理の手紙をくれた叔母の人も加藤だ。そんな手紙をくれた叔母の名前は、鏡子さん。俺の母の妹にあたる人らしいが、どんな人なのか面識がないので分かっていない。歩き続けて50分。ようやく『加藤』の表札を見つけた。ここでいいのかな?おそるおそるチャイムを押す。
「ごめんくださーい」
返事がない。留守にしているのだろうか?もう一度、チャイムのボタンを押そうと手を伸ばすと。
「あれ?もしかして羽依里くん?」
「!?」
声のするほうへ振り返ると、そこには大きなビニール袋を手に下げた女性がいた。
「あ、あのそうです。鷹原羽依里です。あの、もしかして鏡子さんですか?」
「ええ、そうよ。ごめんね。夕方に来ると思ってたから、さっき買い出しに行ってて」
そのビニール袋がそうか。
「なるほど・・・。はじめまして。今日からお世話になります」
「と、とりあえず家にあがって」
「・・・はい」
鏡子さんに言われるとおり、玄関からあがっていく。
「お邪魔します」
後ろでは、鏡子さんがなにやらどうしたものかと考えるような仕草をしていた。改めてみると、俺の母の妹にあたる人だから結構な歳なはずなのに、今の鏡子さんの姿からは、そんな感じが微塵も感じないくらいの美人さだ。
「本来なら、港で羽依里くんを迎えにいくはずだったんだけど、迷わなかった?」
「大丈夫でした。地図がありましたしね」
「そ、そう。よかった」
リビングまで付くと、鏡子さんから『お茶を用意するから、そこで待ってて』っと言われ、俺はリビングの畳の上で座って待った。リビングは外の暑さをあまり感じないくらいに、少し涼しかった。しばらくして、麦茶をもった鏡子さんが現れた。さっとテーブルの向こうに座り、コップに麦茶を注いでくれた。
「いただきます」
俺は、鏡子さんが注いでくれた麦茶を一気に飲み干す。外はすごい暑かったから、本当に助かった。
「一応、この家を任されているんだけど、とにかくうちのおばあちゃん何でも残してたから物が結構あって、正直私一人ではと途方に暮れてたの。来てくれて本当に助かるわ」
そういって、もう一度冷たい麦茶をコップに注いでくれた。
その後、二階の部屋へと案内された。鏡子さんが夏休みの間泊まることになる俺のために、掃除と片付けをして用意してくれたみたいだが、長く物置部屋だったせいかまだ埃臭かった。だが古っぽい部屋特有の臭いも相まって、今の俺にはぴったりだった。そのことをぽつりを鏡子さんの前で呟いてしまって、鏡子さんに首を傾げられた。『ひとまず、ゆっくりして』とは言われたものの、特に何かあるわけでもなく、俺は用意された部屋でしばらく休んだ。
「・・・・・・?」
目を開けると、部屋の周りはすっかり暗くなっていた。
「やべ、寝すぎた」
慌てて、俺は部屋を出る。リビングには鏡子さんが一人、テレビを見ていた。
「あっ羽依里くん。少しは休めた?」
「おかげさまで。すいません、来て早々・・・」
「いいのよ。ただ問題は・・・」
「問題は?」
鏡子さんが気まずそうに、鼻をかく。
「羽依里くん、今お腹すいてるとは思うんだけど、私が晩ご飯作ってあげられたらいいんだけど・・・」
「けど?」
「私が作る料理は・・・・・・、その・・・・・・個性的で人様に出せるものじゃないから・・・・・・ごめんね」
鏡子さんは申し訳なさそうに、そういった。
「いえ、お気になさらず。俺も料理やったことがないので・・・。何か買ってきましょうか?」
「うーん。一応買ってきてあるものはあるんだけど、育ち盛りの男の子にこれはねぇ」
そういって大量のレトルト食品が出てきた。育ち盛りでなくても、毎日これは健康上よろしくない。
「そうだ。この家来るときに坂道上ったでしょう?下りたところにすぐ食堂があるのよ」
「ああ、あった気がします」
「そこに行くといいわ。おいしいと思うから」
「わかりました。じゃあ、そこに行ってきます」
「うん。道、暗いけど、歩けないほどじゃないと思うから」
「はい」
俺が家を出る前に、鏡子さんにお小遣いを貰った。最初は悪いと思って断ったが、遺品整理の名目で来ているし、バイト代は出せないけどちょっとしたお小遣いにとしぶしぶ受けとった。
夜の坂道はやはり暗かった。街灯とかはあるにはあるのだが、それでも見えないくらいに暗かった。一本道だから迷うことはないはずだけど。しばらく進んで、ようやく食堂と思しきところへ着いたが・・・・・・。
「臨時休業・・・・・・」
どういうわけか店はお休みだった。
「仕方ない・・・。いったん戻るか」
ため息をついて、鏡子さんのところへ戻ろうとしたとき、一つの人影がこっちに近づいてきた。
「あれ?羽依里?」
人影の正体は七夜だった。
「まさか、また会おうと言っておいて、こんな早く再会するとはな」
「まあ、この島は狭いしね。そういう羽依里は何してたの?」
「晩ご飯食べようと食堂へ行ったんだけど、開いてなくて」
「ホントだ、閉まってる。うぅ・・・久しぶりにここの食堂のご飯食べようかなって思って来たのに」
「お前もか。てか久しぶりって?」
まるで前、この島に来たような言い方だったが。
「ああ、そういえばまだ話してなかったね。実は1年前の夏にもこの島に来たことがあったんだけど、そのときはまだ移住するって考えがなかったからさ・・・」
なにか気まずそうに頭の後ろをかいた。
「悪い。なんか聞いちゃまずかったか?」
七夜は首を横に振る。
「ううん。あの時は両親が亡くなってあまり時間が経ってないときだったから。その、両親はこの島の出身でさ、二人が結婚してすぐ島を出たらしいんだけど、小さい頃よくこの島のこと話してた」
一つ一つ思い出していくように、七夜はゆっくり話を進める。
「それで、両親の故郷はどんなところなのか知りたくて、両親が亡くなってから2か月経って、今日と同じように一人で訪れたんだ」
寂しそうに七夜はそう語った。
「ごめんね。なんかしんみりさせてしまって」
「いや、俺のほうこそなんか・・・・・・」
「自分から勝手に耽りながら、話してただけだから。その気にしないで」
そう言いながら、両手をバタバタさせる。
「あっそうだ。よかったら俺が借りてるアパートの部屋へ案内するよ」
「えっ?さすがにそれは・・・」
そんな俺の言葉を無視して、強引に手を引っ張られた。
「それに、1年前に知り合った子も来る約束してるんだよ。俺たちと同い年の子だよ」
「同い年?でもその子も来るなら食堂開いてないこと、知らせないと」
「うん。だからこれで知らせるんだ」
そういって取り出したのは、
「懐中電灯?」
七夜の手には、持ち運びがしやすいタイプの小さな懐中電灯を持っていた。
「それで何をするつもりなんだ?」
「これで相手に伝えるんだよ」
「伝える?」
どういうやって伝えるんだ?てかその相手はどこにいるんだよ?七夜が自分たちがいる坂道から、なにやら懐中電灯の光をパカパカと点滅させたりしている。その先には放送塔と思しきシルエットが辛うじて見えていた。
「もしかして、モールス信号的なあれか?」
「そう!それだよ」
しばらくすると、放送塔のほうから、小さい光が点滅しているのが見えた。さっきので伝わったのか。
「ちょうど、約束の時間が近づいたから放送塔から降りるところだったらしい。役所で待ってるって」
「よく分かったな」
そもそも、モールス信号という手段を考えること自体すごい。もちろん俺は全然分からなかった。七夜の後について歩いて、しばらくすると役所が見えてきた。その役所の扉の前には、
「来たか、鈴白」
背の低い、緑髪の少女が仁王立ちして待っていた。背中には大きな水鉄砲を背負っている。なんで水鉄砲?
「ん?それに見かけない顔が一人いるな。知り合いか?」
「ああ、今日船で会ったばかりなんだ。彼は鷹原羽依里っていうんだ」
「あっどうも・・・・・・」
軽くお辞儀をする。
「どうも」
相手も軽くお辞儀をしてきた。
「その・・・たっ・・・たか」
「鷹原か羽依里。呼びやすいほうでいいよ」
「うむ。鷹原はなぜこの島に?」
「うちのばあさんが亡くなってさ、その遺品整理に来たんだ」
「・・・・・・。もしかしてお前、加藤のおばあさんのとこの」
「あれ?なんで知ってるの?」
七夜が俺の肩を軽く叩いて、こう答えた。
「この島は小さいから、大なり小なり情報は早く伝わりやすいんだ」
「でも俺、島のだれかに言いふらしてなんてないぞ。まさかお前」
七夜が慌てて首を振る。
「羽依里が加藤さんのとこの人だってこと、今知ったところだから俺じゃないよ。たぶん、俺たちがこの島へ来る前からそういう情報が島民につたわったんじゃないかな?」
「そうなると、鏡子さんが島の皆に話したんじゃないか?」
背の低い少女がそう答える。
「そうか。たしかにのみきの言うとおりかも」
「なあ、のみきって?」
七夜がああっと口に手を当てて、背の低い少女が口を開いた。
「それは私の愛称だ。そういえばちゃんと自己紹介していなかったな。私は野村美希。のむらみきだから、皆からはのみき、と呼ばれている」
「なるほど。よろしくのみき」
「うむ。それにしても鈴白。この島に移住する決断をしてくれて、私は嬉しいぞ」
「う、うん。それじゃあ、俺の部屋案内するよ」
七夜に案内されて、アパートへ辿り着く。七夜曰く元は寮として使うために建てられたらしいが、誰一人いないのだとか。
「実は私も鈴白と同じアパートで一人暮らしをしているんだ。鈴白は2階の一番左の部屋か?」
「うん。また正式な手続きを明日、役所に行ってやらないといけないんだけどね」
「じゃあ、実質アパートで暮らしてるのは、七夜とのみきだけか」
「そういうことになるな。長く暮らしてるから慣れてはいるが、今思えばなかなか寂しいところだな」
七夜が部屋の扉の鍵を開け、中へと案内された。
「「お邪魔します」」
部屋は、あまり物とかは置かれていなかった。小さいテレビと大きな旅行カバン、布団と中くらいの机があるくらいだ。キッチンも最低限の調味料や、調理道具一式くらい。冷蔵庫の中は、七夜がこの島に住むに向けて、ある程度の食料と水が入っているだけだった。
「ごめんね。あまりいいもの用意してなくて」
「来たばかりなんだから、仕方がない」
七夜は早速、キッチンへおもむき、冷蔵庫からいくつか材料を取り出して準備をしている。
「悪い。何か手伝うよ」
「大丈夫。羽依里とのみきはリビングでゆっくりしてて」
「すまないな、鈴白」
そういって二人はリビングでお互いに向かい合うように座った。この島へ来て早々、同い年の女子と近くにいることになるとは思ってもいないことだったから、妙に緊張した。
「なんだ?私の顔になにかついているか?」
「いえ、なにも」
いけない。思わず顔をガン見してしまった。
しばらくすると何か炒めるような音が聞こえてきた。キッチンのほうを見ると、七夜がフライパンを必死に振っている様子が見えた。キッチンからいい匂いが漂ってくる。
「もしかして、鈴白はチャーハンを作ってくれているのか」
キッチンから七夜の声が聞こえてきた。
「君たちが教えてくれた、島直伝のチャーハンを作ってるところだよ。ここに来る前に結構練習したんだ」
「島直伝って?」
「この島の住民は皆、チャーハンが大好物なんだ。私も一応作れるんだが、それにしても」
のみきがキッチンにいる七夜に目を向ける。
「いい匂いだな。フライパンを使っているのは些か不満があるが、せっかく作ってもらってるんだ。これ以上文句は言わないでおこう」
「あはは。次はちゃんと中華鍋を用意しておくよ」
七夜は苦笑しながら、出来上がったチャーハンをお皿に盛り付ける。
「なあ、フライパンでも大して変わらないんじゃないか?」
俺はそうつぶやくと、のみきが心底あきれたようにため息をついた。
「お前は何を言っているんだ?真においしいチャーハンを作るなら、フライパンより中華鍋のほうがいいに決まっているだろう。チャーハン舐めるなよ?」
「ええええ~」
ここの島民の中華鍋の信頼はどこから来るんだ?
「さあ、出来たよ!」
七夜の手には3人分のチャーハンが乗ったお盆を持っている。お盆の上にあるチャーハンからリビングにいっぱい美味しそうな匂いを広がらせていた。
「う~ん。1年前よりだいぶ腕を上げたじゃないか」
「ありがとうございます。頑張ったかいがありましたよ」
七夜は嬉しそうにテーブルにチャーハンが乗った皿をそれぞれ座っている位置に置いていく。
「それじゃあ、さっそく・・・」
「「「いただきます」」」
七夜が作ったチャーハンはお店に出してもいいんじゃないかぐらい美味かった。食べ終わった後は何気ないことをただ楽しく会話をした。
「それにしてものみきはなんで、水鉄砲なんて持ってるんだ?」
「ああ、私はこの島の少年団の治安維持執行部に所属していて、島の安全と秩序を乱すものにはやむを得ず、このハイドログラディエーター改で即座に打ち抜いているんだ」
「ほ、ほう」
そのハイドロなんたらを、のみきは窓に銃口を向けて構えるしぐさをしてみせた。
「それにしては、1年前初めて訪れたときは、よくその水鉄砲を使ってた記憶があるんだが」
「ああ、それについてはあの男のせいだな」
「あの男?」
のみきにおそるおそるあの男について尋ねてみた。
「あの男というのは、三谷良一という奴でな。奴はその、よく裸になるんだ」
「はっはだか?」
「うん。彼はそのどういうわけかしょっちゅう服を脱ぐんだよ。そんでいつものみきに打たれてるんだ。1年前初めてその光景を目の当たりにしたときは、けっこう衝撃的だったよ」
「それに奴の半裸は他人に移る。お前も奴に会ったら気をつけろ」
「は、はい」
半裸が移るとか、初めて聞いた。と、とにかく極力そいつに会わないようにしたらいいか。
しばらく談笑を続けたあと、俺たちは解散した。あまり遅くまでいると心配されるだろうということで、七夜がはやく切り上げてくれた。しばらく放送塔から監視の続きをするとかで、先に出て行った。
「ごちそうさま。今日はありがとうな」
「ううん。羽依里こそ遺品整理がんばれよ」
「ああ」
そういって、お互い手を振って別れた。
「ただいま戻りました」
リビングには鏡子さんがテレビを見ていた。俺を待ってくれてたんだろうか。
「あっ、おかえり」
「すいません。友達の家によってて、遅くなってしまいました」
「えっ?友達?」
「ああっ、船で偶然知り合ったやつで、はじめ食堂へ寄ったんですけど閉まってて」
「それで、その友達の家でご飯食べてきたってこと?」
「はい、そうです」
「そう」
鏡子さんはなんとか納得してくれたようだ。
「本当にすいません。遅くなってしまって」
「いいのよ。ただあまりにも遅いしこの夜道だから、ちょっと心配だったの」
「はい、すいません」
本当に申し訳ないことをしてしまった。
「でも、羽依里くんこの島へ来て早々、友達作っちゃうなんてすごいじゃない。なんだか安心したわ」
「まあ、結構変わったやつでして。突然話しかけてきて、この島に住むことになったって聞いて」
それにあいつを通じて、もう一人同い年の島の子とも仲良くなって。なんていうかここまで早く俺を取り巻く環境が変わるなんて思いもしなかった。
「その島に住むことになった子って・・・」
「鈴白七夜っていうやつで、1年前にも来てたらしいですよ?」
「鈴白・・・。ああ~。1年前のこの日に私に挨拶してきたことがあるから、その子のこと覚えてるわ」
「そうなんですか?」
まあ、同い年の島の子とか何人か知り合ってるらしいから、鏡子さんにもそりゃ知り合ってるだろうしな。ただ、鏡子さんは何か怪訝そうな顔でこう話した。
「ただ、気になることがあるのよ」
「気になるとは?」
鏡子さんは、話すべきなのか悩んだ挙句、おそるおそる口を開いた。
「鈴白って苗字、昔にあったかなって」
「え?」
鏡子さんの一言で、思わず首を傾げた。
「いや、さすがに鏡子さん、長く住んでるとかいえ、そこまでみんなの苗字を覚えられるわけないじゃないですか」
「羽依里くんが言いたいことはわかるけど、でもこの島は小さい島だから、みんながどういう苗字でどういう家族構成なのか一通りは覚えてるつもりよ。でも思い返しても、鈴白って苗字の人がこの島にいた覚えが全くないのよ」
「そんな・・・」
いろいろと納得ができない。できないことがあるが、鏡子さんに反論する言葉が思い浮かばない。『鈴白って苗字の人がこの島にいた覚えがない』ただその言葉が頭の中に渦巻いている。
その後、俺はその言葉に疑問を抱きながら自分の部屋に入った。鏡子さんは、他の人に鈴白っていう苗字の人がいたか、聞いてみるとかいってたけど。
「まあ、たかが人様の苗字で変に悩んでもしょうがないか」
そう自分に言い聞かせ、布団にもぐった。ふと、なぜか七夜がキッチンで調理していた光景を思い返していた。
なんでそんな光景を頭に思い返していたのか、自分でもよく分からない。ただ、ただチャーハンを作っている彼の姿はなぜか、見知らぬ小さな少女の姿に見えてしまった。
一体どうしたらそんな錯覚が見えるのだろう。あらかじめ言っておくが俺は別にロリコンとか、そういう特殊性癖の持ち主ではない。この言い表すことができない
第2話 デジャブへ続く・・・。
以上第一話 傷ついた渡り鳥でした。ほぼ文章は原作に沿いつつ、新たな流れを作っていく感じにしました。第2話もそんな感じでやっていきます。第2話はいろんなキャラがどんどん登場していきますよ。お楽しみに!!!