競技スタート
「よし良いぞ虎徹~!行け行け行け!!抜かせー!!!!!」
こんにちは、石崎のクソやかましい声援を背に、100メートル走を必死に走っている俺は浅井虎徹です。はぁ、もうしんどい。あとアイツの声どんだけデカイんだよ、めちゃくちゃ変に目立ってる気がする。
「ハァ……、ハァ……」
やっと走り切れたけど、長い、100メートル、これ、長いって……。短距離走じゃねーよ、長距離だこんなん。
「虎徹ドンマーイ!惜しかったぞー!!」
うるせぇ……惜しくねぇよ。4位だぞバカ。1クラス2人ずつだから8人のレースで4位、それの何が惜しいんだよ。アホか。
「お前が龍園のとこの浅井か?」
「ハァ……。そうだけど、何……?」
なんか一緒のレースで走った、ちょっと小さいけど元気ハツラツとしたヤツに話しかけられてしまった。
「俺は一之瀬クラスの柴田だ。どうだった?俺、めっちゃ早かっただろ?」
「あぁ……?そうね……」
そりゃ1番取ってたんだから早いでしょうに。それにしても嫌味の無い爽やかな笑顔だ。ちょっと童顔かもしれないけど、人気のあるスポーツ少年って感じのヤツ。どっかで見た気がするな。
「俺これからも第一走者やるだろうから、また会ったらよろしくな!」
「……よろしく」
元気すぎるだろ。それにしても、また同レースになるかもしれないの?やだもう。
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最初の競技が終わったけれど、あと何個あったっけか。体育祭の途中だからスマホが無くて不便だ。貼られてる予定表を見てみると……
<全員参加種目>
①100メートル走
②ハードル競争
③棒倒し(男子限定)
④玉入れ(女子限定)
⑤綱引き(男女別)
⑥障害物競走
⑦二人三脚
⑧騎馬戦
⑨200メートル走
<推薦参加種目>
⑩借り物競争
⑪四方綱引き
⑫男女混合二人三脚
⑬3学年合同1200メートルリレー
種目が多いな~。ただまぁ、俺は推薦競技に入ってないはずだし、午前でほぼ終わりか。……入ってないよね?少し心配しながら、クラスのグループチャットにある画像を確認したけど、うん、大丈夫だった、入ってない。
足も速いか微妙だし、嬉しいことなんだけど、『四方綱引き』とかいうのに入ってないのだけは少し意外かも。腕力で言ったら流石に半分より上に居るだろうし、女子より男子の方が参加させたいだろうから、俺が選ばれてもおかしくない気がするけど……。なんでだろう?龍園の優しさ?いやそれは無いな。
「よう虎徹!お前ちゃんと見てたか!?」
競技の終わった石崎が来た。
「見てない」
「うぉい!見てろよ!」
なんでコイツこんなにテンション高いんだよ。バカだから体を動かしてるとこうなんの?
「あ~、100メートル何位だったの?」
「フフフ、何位だったと思う?」
うざっ。
「知らんよ……。2位とか?」
「なんと、1位だ!すげーだろ!?」
「え?マジ?すげーじゃん」
コイツそんなに足速かったっけ?背も高いし筋肉あるし、平均よりは上だったとは思うけど。……メンバー分けのアタリ引いたのかも。全部のレースに優秀なやつを出すってのは無理だし、そんなに運動が得意じゃないメンバーばっかりのレースだったのかもしれない。
「せっかくだし虎徹と一緒に走りたかったぜ。その方が楽しそうだし」
えぇ……。バカかよ。
「それで、石崎の方が速かったら、俺の順位が確実に1つ下がるじゃん。嫌だよ」
「ん?……あっ、そっか。いや~、ごめんな!速くて!」
「うるせぇバカ」
「フハハ!」
嬉しがり過ぎだし、なんだそのツッコミ待ち。テンション上がりすぎだろって。
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『1年、100メートル走、女子第10レース。開始30秒前です』
ずっと同じような機械的な放送が流れてきた。メンバーを言うわけでもないし、時間ギリギリの最低限のやつ。警戒してなきゃ不参加になりそうすぎてヤバい。
「んじゃ、そろそろ俺の番だから行くよ」
「もう時間か?」
「なぜか全レース第1走者にされてるから多分これの次なんだよね。次のハードル走もまた最初だし」
「そうなのか。頑張ってこいよ!」
「はいはい」
女子が走ってるのを一緒に見てた石崎に別れを告げて、待機列の方に行く。……あ、そうか。ハードルを並べる時間があるから少しだけ余裕あるみたいだ。
運営テントの方や、良く分からないゴール付近のカメラ、写真判定するためのやつ?を眺めながら、あれいくらするんだろう?なんて考えていると、同クラスの一緒に走るやつに話しかけられた。
「浅井氏、お疲れ様です」
相変わらず律儀っぽいやつだな。こんな喋り方をしてくるやつは1人しか知らない。
「よっす金田。……さっきのレースも一緒だったっけ?」
「そうですよ。自分は最下位でしたけどね」
「あ~……ドンマイ!」
背も低め、丸メガネで、見るからに運動より勉強の方が好きそうなオカッパ。めっちゃ運動苦手そうだし、実際に得意じゃないみたいだ。
「いえ、競技ごとにある最下位での1000pp没収のペナルティも、総合成績下位者になった時の中間試験における10点の減点ペナルティも、自分にはそれほど痛くないですから大丈夫です」
そういう問題か?いや本人が良いなら良いけどさ……。
「総合成績下位者のペナルティって何人だっけ?」
「学年で10名ですね。恐らく自分はそこに入ります」
「なにその覚悟……」
もう諦めてんのかよ。意外と不真面目なのかな?
「自分の運動神経は分かってますので。恐らく全部最下位です」
「あー、それは、まぁ……ドンマイ」
そんなに絶望的だったんかい。
「いえ、大丈夫です」
「けど……あれ?ならなんで俺は金田と一緒なのかね?」
「……今回、浅井氏と自分が組まされた理由は、浅井氏の順位を1つでも上げるというのが目的ではありません。もしかしたらそういう意図もあったかもしれませんが」
「ん?……どゆこと?」
「勉強も運動も両方苦手という生徒の順位を少しでも上げるため、あえて1人が最下位を取るようにというメンバーの組まれ方もされてますが、浅井氏と自分は違います」
そこまで龍園に気を使われてんの?変なの、と思ったら違うんかい。
「あ~……え?なんで?」
「不自然にならないよう、あまり目立たずに浅井氏に裏事情を話せる相手として自分が選ばれました。ついでに競技に関して最初に参加して、何か気付くことがあったら報告するようにと」
「なるほど?……相変わらず、なんか酷使されとんね」
「いえ、龍園氏の役に立てるのは嬉しいですよ。それはつまり、クラスの勝利に貢献出来てることですから」
すげぇ龍園信者じゃん……。こわっ。
「えーっと、それで……話しておきたい事があるの?」
「はい。Dクラスの割り振りをズラされたので、ほとんど計画が無意味になってしまいましたが……。あ、そろそろ時間ですね。ハードル走の後にしましょうか」
「はいよ」
『1年、ハードル走、男子第1レース。開始30秒前です』
金田が最下位を確保してくれるのはありがたいけど、もし負けた時に戦犯にならない程度には頑張っておこうかな。
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「浅井氏、先程の話の続きをしてもいいですか?」
今さっき、ハードルを全部倒す勢いで倒しまくってた金田が『何かありました?』みたいな顔をして話しかけてきた。記憶もう消えてんのかな、気にして無さすぎてちょっとだけ怖い。メンタル強いな。
「ええよ」
ちなみに、俺はハードル走はなんとか3位になれた。他クラスのメンバーはちょっと違ったりしたけど、柴田とかいうヤツは前と同じように居て、当然のように1位を取ってた。あれもしかしたら学年1位かもしれないね、ちょっと別格だった。俺らのクラスの運動部が居ても負けてたかもしれないし、そう考えたら俺が順当に1位取れないのは良かったのかも。潰れ役としては丁度いいでしょ。
「ここは人が多いので、ちょっと離れましょうか」
「オッケー」
……なんでこんなやつと2人きりの状況になろうとしてんだ俺。
「さて、この辺なら大丈夫でしょうか」
「まぁ平気だと思うよ」
小声になった金田。いや、その……別に嫌いな相手じゃないけど、ホモ疑惑あるコイツと2人きりで内緒話って、なんか嫌だなこれ。伊吹とか、可愛い女子とのドキドキシチュエーションでやらせてくれよ……。
「ではまず、……今回の体育祭に関して、浅井氏は本当に何も聞いてないのですか?」
「聞いてないけど……え?なんで?体育祭の最中にやることなんて何も無いと思うし、メンバー表とか龍園に全部任せたまま何も関与してないよ」
元から任せるつもりだったし、しかも今回は須藤の件でそこそこ忙しかったもんなぁ。
「いえ、浅井氏も計画作りの段階で関与してたのではないかと思いまして……」
「んん?いや関わってないよ」
妙に疑ってくるね。
「そうですか……。では説明しておきましょうか。今回の体育祭、ターゲットはDクラスでした」
「ふむ?」
須藤を潰す計画をやらなかった場合かな?
「まず、龍園さんは複数の情報源から得た情報で、Dクラスの『参加表』をすべて完璧に把握していました。それを元に、我々の割り振りも決められました」
「それは不思議じゃないかな」
情報の大事さはしっかり分かってて、俺が及びもつかないレベルで情報収集してるみたいだし。全部知ってたって言われても、そりゃそうだろ感ある。
「Dクラスが運動優秀な生徒を出す時は、運動苦手な生徒を出す。相手が運動苦手な生徒を出す時は、運動普通の生徒を出す。相手が運動普通の生徒を出す時は、運動得意な生徒を出す。簡単にこの3パターンですね」
「えーっと、なるべく僅差で勝つ的な?」
「そうなります」
「なるほどね。総合点で圧勝しようと」
全部勝つのは流石に無理だもんね。
「はい。……それを完全に読み取られていたとしたら、逆に我々が完敗するようなメンバー決めもありえたのですが、なぜか今回Dクラスは『レースを1つずつズラす』という対処しかしてきませんでした。正直、謎です。Dクラスは高円寺という不参加者が居ますし、ただでさえ不利な状況だったので、完全に読み切った上で対応した参加表にして、そこでやっと五分五分くらいの勝率に出来たはずなのですが……」
「対処した癖に、勝つ気が無いのが変ってこと?」
「もしくは、それでも勝つ手段があるのかもしれない、と。それで色々と観察してはいたのですが、そういう訳でもなく、順当に4クラスの中で最下位になりつつありますね……」
「ふーん。……なんか間違えて参加表を提出しちゃった、っていう可能性もあるんじゃない?」
「それは、確かにあるかもしれませんが……」
でも確かになんか変な話だな。Dクラス、意味分からん。モヤッとする。須藤が消えた時点で勝ちが消えたと思ったなら、参加表もそのままにしとけばいいし、変えたにしても勝つ可能性を上げたにしては徹底してないし。うーん?
「まぁいいや。龍園が企んでたのって、その話?」
「いえ。クラス全体で完勝するのを第1段階として、第2段階、第3段階もありました」
「なんじゃそら」
変にカッコイイな。金田そういうの好きなんかね?
「まず、クラス全体で勝つ。そして、第2段階というのは、ルールに違反しない範囲で須藤健と堀北鈴音に攻撃を加えるというものです。その主な舞台となるのが、次の競技である『棒倒し』でした」
「ふ~ん。俺まだやったこと無いけど、どさくさに紛れて殴ったり出来そうな競技ってやつだよね?」
「はい。故意ではないと判断されやすい場で、実行しやすいそうです」
「……あれ?女子も棒倒しだっけ?」
「いえ、違います。堀北に関しては、木下がレース中に事故を装って転倒に巻き込む、なんていう計画がありましたが……参加表を変えられたことで、不可能になってしまいました」
「へぇ~、なるほどね。……いきなり違う女子にやれって言っても、練習とか心構え出来ないもんね。失敗したら危ないし」
「はい。そういう理由から今回は断念したそうです」
だからなんか朝ちょっと不機嫌そうだったのかもね、龍園。堀北をいじめられないからって。
「それで、第3段階っていうのは?」
「須藤健を挑発し、暴行させるなり、体育祭から除外する。また、堀北鈴音が木下に危害を加えたということにして、罰金を払わせ、心を折る。……それが龍園氏の作戦でした」
「うわエグいね~。2つもやろうとしてたんかい」
しかも内容もなかなか酷いね。夏休み前までの俺だったらちょっと反対してたかも?
「2つと言われると、そうかもしれません。……須藤の方は、既に戦力外となりましたが」
そう言いながら変な目で見てくる金田。なんだよ?
「なに?どしたの?」
「……須藤に関しては、浅井氏も関与したんですよね?」
「まぁ、うん。……あれ?聞いてない?」
「その……聞いていません。状況と、わざとらしい浅井氏との距離感などから見た自分の推測です」
「あらら、言って良かったのかな?……まぁ終わったから大丈夫そう?もし龍園に怒られても金田のせいにするからね」
「了解しました」
しかし意外だな。龍園の一番側近って、やっぱこの金田だと思うんだよね。それなのに知らされてないっていうのは、情報管理として必要最低限だけ知らせておこうって事なのかもしれない。
俺は裏でチャットと電話を少しするくらいの関係だし。他に候補として椎名も居るけど、そんなに関わってなさそうなんだよな。やっぱ金田が一番関わり深そうな気もする。……せっかくの機会だし、もうちょい話しておくか。
「金田は、なんで龍園にそこまで忠実というか、協力的なの?」
「それは……、龍園氏が尊敬できるリーダーだからでしょうか」
なんでちょっと疑問形やねん。
「どういうとこ好きなの?」
「自分は頭脳派だと思ってましたが、龍園氏の作戦には驚かされてばかりでした。ただ勉強してるだけじゃダメだと思わせてくれる、あの発想力。そして実行力。Aクラスに行くには必須のリーダーだと思いますし、少しでも貢献して、そして自分も少しでもそういう『思考の強さ』みたいなものを手に入れたいと思っています」
「は~、なるほど」
結構マジでしっかり尊敬してるみたいだね。ホモとかじゃないのかも。
「自分は、浅井氏にも似たような感情を持っています」
ホモとかじゃないんだよね!?
「……どういうこと?」
「無人島でのスパイ活動前の発言や、干支試験での誘導。そして今回の須藤排除。龍園さんも一目置く、その発想の自由さ。自分には無いものなので、勉強させてもらいたいと考えてます」
「あ~、その、……ありがとう?」
そんなこと言われるの初めてな気がする。あんまり常識無いだけという気もするから素直に喜びにくいけど、まぁ嬉しい、かな。
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「それで、その、もう計画は無くなったと聞いてはいるのですが、自分が調査と検討を命じられた件について、少し教えて頂きたいのですが……」
「ん?……なんのこと?」
内緒話なのは分かるけど、ボヤかしすぎて何も分からん。
「あの、……例の『水工作』についてです」
「あ~、はいはいはい。金田も調べてくれてたんだ」
そりゃまぁ適任だし、信頼度も高いだろうからやってくれてるか。
「はい。自分が校則など調べ直したりした上で、結論として『罰則がどこまで大きくなるか読めない』という報告をしたのですが……」
「ん~……言われてみるとそうなのか」
「なぜあのような計画を立てたのか、……どういう動機だったり、思考を経ての発想だったのか教えてもらえませんか?」
動機って、犯行動機みたいに言うなよな。
「まぁ良いけど……。とりあえず、今回の体育祭って『基本的に損をする』みたいな状況じゃん?CPの没収というか」
「はい。他学年からも影響される紅白でまず勝たなければいけませんし、その上で学年1位になって唯一CPがプラスになるCP50の増加。2位でもギリギリやっとプラマイゼロ。他はもうマイナスしかありえません」
「そうそう。だから動機としては『マイナス200なんてふざけんじゃねぇぞ!』が1番大きかった、かな?」
「……だから、確実に勝てる手を打とうとした、と?」
「そう表現するとカッコイイけど、まぁ、なんていうか、CPの動きが結構大きい癖に、他学年にも影響するっていうのが納得できないから、大会以外でやれることあったらやっておこう、みたいな感じかな」
「なるほど」
「そういう訳で、最初はもうストレートに『貯水タンクに毒入れちゃえば全学年全クラスを体調不良に出来て勝てるんじゃないの?』って考えた」
「流石にそれは……」
「うん、そりゃダメでしょって話だよね。俺でもダメだと分かるよこれは」
人が死なない弱さの毒で、確実に競技を難しくする体調不良。そのバランスもまた難しいし、専門家でもないと失敗しそうだもんね。
「それで、代わりに『貯水タンクに砂糖を大量に入れる』という発想になったのですか?」
「入れるのは塩でも泥でも良かったんだけど、塩だとなんか配管とか壊れそうな気がしたし、泥だと普通に毒だし」
「だから無害な砂糖を入れてしまうと。……そして、代わりに『ペットボトルに入れた水を用意する』でしたね?」
「そうそう。明言しないように気をつけつつ、『水道が今ちょっと使えません』と同時に、『代わりにこの水を使うと良いよ』くらいの表現して大量に置いといて、業者というか学校側が用意したように見せて、その水を使ったらちょっと体調不良になる、みたいな。3日くらい置いといた、ほんの少し腐った水ならちょうど良く体調不良に出来そうじゃない?」
「……はい、そうかもしれません」
「この準備期間で良く言われてたのが『体調管理は自己責任』ってやつ、教師も偉そうに言いまくってたし、ほんのちょっとの体調不良は無視されると思ったからね。なんか生理の時どうするのみたいな問題もあったし」
「ですが、この作戦が露見した場合、どう考えてもCPの大幅減点や、退学処分ということに……」
「やっぱそうかねぇ?……俺としては『砂糖を入れたイタズラ』でしかないし、水を用意したヤツ、水を使おうよって言ったやつ、それぞれ別々にして、まったく共謀してないよっていう事にしたら、どうにも罰しにくいと思ったんだけどな。『怪しい水を使ったのが悪い』みたいな」
「学校側の調査力も、ちょっと不明瞭な部分が多いので、甘く見ることは出来ませんから……。流石に難しいと自分は感じました」
「まぁ、うん。どうしてもやりたい作戦って訳じゃないから良いんだけどさ」
「……そうでしたか」
ちょっと安心してそう。龍園の部下にしては悪さが足りないと思うけど、まぁ側近ならそれくらいの方が丁度いいかもだな。でも少しだけ勉強っぽくなるよう教えてあげよう、さっき褒めてくれたし。
「でもさぁ金田、今回はCP200くらい、最大の差でいったら250?だけどさ、これがCP500の差が付く試験だったらどうする?または、CP1000の差が生まれるものだったら」
「それは……」
「しかも、高3、卒業まで残り試験が1つか2つくらいかもしれない、みたいな状況だったらどうするよ?」
「……何が何でも、勝つ必要がありますね」
「その通り。今回はリターンが少ないからやらなかっただけで、龍園なら、状況によってはやってたと思うよ。……いや知らんけど」
「…………。」
めちゃくちゃ真剣に考えてんな。
「場合によっちゃギャンブルしなくちゃいけないだろうし、その時になって考えるんじゃ遅いかもしれないからね。クラスが完全に終わるリスクがあったとしても、退学になるかもしれなくても、それでも勝ち抜くため……みたいな思考で遊んでおくのは良いかもしれないよ」
「はい。勉強になります」
まぁ俺はクラスが勝つためじゃなく、可能な限り『様々な悪意』を体験させたいがために考えてたんだけどさ。今言ったのは完璧に嘘の言い訳だ。
「思考の幅なんて、常識が無いほど広がるだろうし、そういう意味では龍園を見てたら自然と身に付くと思うよ」
「そうかもしれません。……浅井氏からも色々と勉強させてもらえそうです」
「なんでだよ……」
常識無い枠には龍園だけにしてくれって。
「よぉ~虎徹!あと金田も。なんでこんな所居るんだ?そろそろ棒倒しだぞ!」
「はいはい」
石崎が来ちゃったし、時間もそろそろみたいだから話は終わりだね。
金田もなんか色々と気付けた?みたいで良かった。
まぁ、個人的には龍園みたいな思考をするやつ、クラスに2人3人と増えていったら、ちょっと嫌だけどね……。坂上先生が可哀想すぎるよ。
原作:よう実
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この中で、話数が1番多い作品が120話くらいで、なんとなく目標にしてたはずなんですけど……なんか無くなっちゃってますね。
なので現在、この作品が一番話数が多くなってしまいました。
嬉しいような寂しいような。