ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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なぜか★9、★8付けてくれた人の方が多くて笑いました。
高評価付けてくれた方みんなありがとうございます。嬉しいです。大好き。


Destroyed勉強会

放課後、俺はアルベルトと共に図書館に来ていた。

 

2日前の月曜日にCクラス数人と仲良くなり、予定ではもうちょい勉強会の輪を広げる予定だったけど……、アルベルトの成績が正直ちょっと不安なので2人での勉強会を優先してやることにする。

 

そういう訳で昨日と今日は2人での勉強会だ。場所はCクラスの教室でやろうと思ってたのだが、龍園からなぜか図書館でやれと言われた。別に良いけど……、意味分からん。もしかして他クラスの動向探るとか?そういやDクラスの偵察しろ言われてたっけ?忘れてたよ。

 

「アルベルト、昨日言った範囲やってくれた?」

 

「……this」

 

ノートを見せてくる。俺から宿題のようなものを出したのだが……、うん、しっかりやってくれている。文字がちょっと不慣れなのも、なんか頑張ってる感じが出てて良いね。考えてみると日本語ちょっと不慣れなのにここまでやれるのは凄いな。この調子でやったら間違いなくテストで赤点は取らずに済むだろう。

 

それにしても真面目で、無口だけど性格良くて、ムキムキなのにCクラスってどういうことなんだ?日本語がそれほど堪能じゃないってだけか?……それだったらなんだか悲しい話だ。それとも……筋肉が凶暴ってことか?なら仕方ないか?

 

「よっしゃ、しっかりやってくれたね。ありがたい、この調子であとちょうど2週間かな?やれば間違いなく赤点取らずに済むと思う」

 

「……。」

 

あ、思わず日本語で結構しゃべっちゃった。

 

「えーっと、グッジョブ!And……If you continue this, I think you will win the test.」

 

「……。」

 

よし、伝わった。アルベルトは軽くうなずいて返事をすることもちらほらある。結構日本語を理解してるっぽいけど、しゃべる方はまだ恥ずかしいっぽいかな。

 

「じゃあ……、今日もまずはテスト形式でやってみようか」

 

「……OK」

 

 

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……うるせぇな!

 

1時間弱そこそこ集中して勉強していたのに、なんだか騒がしい奴らが来ていた。

 

明らかに図書館で許される私語の音量を超えている声量でギャーギャー騒いでる方を見てみると……、明らかに知能が低そうな赤髪の不良っぽいヤツなど数人が言い合っていた。なんだアイツら?1年っぽい?

 

「アルベルト、あのゴミ共が誰か分かる?」

 

「……I think, they are D class.」

 

なぜかずっとかけてるサングラスのせいで分からないが、ちょっと真剣そうな雰囲気で騒ぎの方を見ている。かなり興味あるみたいだ。

 

「あー、そういや龍園に言われてた……He said to me, search the D class.ちょっと見てくるから、危なそうだったら助けに来てよ」

 

「……OK」

 

Dクラス偵察とか訳分からんし面倒だからやってなかったが、こういうことなら行って偵察しなきゃダメだろう。勉強の邪魔されてムカつくので「うるせんだよクソボケ共!どうせDだろ?この不良品共が!!」なんて言ってみたい気持ちはあるけれど、流石にやめておく。後で龍園に何言われるか分からんし。

 

アルベルトには申し訳ないが、巨体ムキムキの黒人が近くに行くだけで警戒されるだろうからちょっと離れた所で待機してもらう。そして俺1人で、本棚で隠れながら近付き、本棚の隙間から様子を見てみると……、

 

「……あなたはきっと自分に都合の良いルールでバスケットに取り組んで来たんじゃないかしら。本当に苦しい部分には勉強のように背を向けて逃げていたんじゃない?練習に対しても真摯に取り組んでいるようには思えないし。何より周囲の和を乱すような性格。私が顧問ならレギュラーにはしないわ」

 

「っ!」

 

赤髪の知能低そうな顔した男が罵倒してる女生徒の胸ぐらを掴んだ。ここ図書館だよ?バカだろお前ら。

 

「須藤くんっ!」

 

あ、櫛田じゃん。将来のNo1キャバ嬢候補の美少女が慌てた様子で赤猿の腕を外そうとしてる。

 

「私はあなたには全く興味ないけれど、見ていればどんな人間かは大体分かるわ。バスケットでプロを目指す?そんな幼稚な夢が、簡単に叶う世界だとでも思っているの?あなたのようにすぐに投げ出すような中途半端な人間は、絶対にプロになんてなれない。もっとも、仮にプロになれたとしても、納得のいく年収が貰えるとは思えない。そんな現実味のない職業を志す時点で、あなたは愚か者よ」

 

ムチャクチャ言いよるなコイツ。なんかされたのか?憎悪してるとしか思えない口の悪さだが。

 

「テメェ……!」

 

死ぬほど言われた赤毛がブチ切れて、もう殴る寸前という様子だ。体格が良いから結構迫力あるな。

 

「今すぐ勉強を、いいえ、学校をやめて貰えないかしら?そしてバスケットのプロなんてくだらない夢は捨てて、バイトでもしながら惨めに暮らすことね」

 

軽々しく夢を諦めてバイトでもしろなんて言うクソ女にドン引きしていると……、

 

「はっ……上等だよ。やめてやるこんなもの。ただ苦労するばっかりじゃねぇか。わざわざ部活を休んで来てやったのに、完全に時間の無駄だ。あばよ!」

 

そう言って赤髪は乱暴に荷物をまとめ始めた。うーん、相手が女だろうが顔面殴りつけていいくらい言われてたとは思うけど。

 

「おかしな事を言うのね。勉強は苦労するものよ」

 

ま、まだ言うんか!?正気かこのアマ?完璧に頭おかしいだろコイツ。

 

「……お前みたいな友達の一人も居ないヤツが、勉強会なんて変だと思ったんだ。どうせ俺たちをバカにするために呼び出したんだろ。女じゃなかったらぶん殴ってるとこだぜ」

 

一緒に居た男子生徒が嫌悪感丸出しでそう言った。女でも殴って良いと思うぞ。

 

「殴る勇気がないだけでしょう?それを性別のせいにしないで」

 

なんかもう、逆に笑えてきた。どれだけ挑発するんだこの女……すげぇなオイ。

 

「俺もやーめよ。なんか、勉強についていけないってのもあるけどさ……正直ムカつく。堀北さんは頭いいかもしんねえけど、そんな上から来られたらついてけないって」

 

「退学しても構わないのなら、好きにするのね」

 

誰に対しても同じような態度なのか。つまり恨みも憎しみも無くその口調?その言い分?すげぇな……、人間と会話した経験が無いのか?

 

「ま、そこはほら、徹夜でもするし」

 

「面白い話ね。自分で勉強できないから、今ここに居るんじゃないの?」

 

「っ……」

 

作り笑いで『勘弁してくれよ』みたいな雰囲気を出してた2人も、流石に表情が固まった。そして2人……もう1人も教材を片付け、出て行ってしまった。残ったのは櫛田、クレイジー女、そして男子生徒が1人だけだ。

 

「……堀北さん、こんなんじゃ誰も一緒に勉強なんてしてくれないよ……?」

 

櫛田が悲しそうに言ってるが、その通りすぎて笑える。あんな説得でやる気が出るのは重度のマゾ豚だけだろう。それも死にかけるほどのプレイとか、預金通帳を嬢に奪われて興奮しちゃうくらいのレベルの豚じゃないと。

 

「確かに私が間違っていたわ。もし、今回あの人たちに勉強を教えて上手く赤点を回避できても、またすぐに同じような窮地に追い込まれる。そうなればまたこの繰り返し。そして、やがては躓く。これは実に不毛なことで、余計なことだと痛感したわ」

 

うーん……、そうかもしれないけど、たった1回すら赤点回避レベルまで勉強教えることが出来なかった人間の言う話じゃないだろ。「合格点取れなかったけど、どうせ取れなくなるから勉強なんて不毛だ」と一緒じゃん。

 

「それって、どういう、こと……?」

 

「足手まといは今のうちに脱落してもらった方がいい、ということよ」

 

……なんかDクラスって対抗戦やる前に崩壊するんじゃないの?こんな奴ら偵察する価値すら無いんじゃねぇ?いやまぁ頭おかしすぎる女を見れたのは面白かったけど。

 

「そんなのって……ね、ねぇ綾小路くん。綾小路くんからも何か言ってよ」

 

「堀北がそう結論付けたなら、それでいいんじゃないのか?」

 

即答でとんでもなく無関心な回答で笑ってしまった。友達って訳でもないのか?

 

「あ、綾小路くんまで、そんなこと言うの?」

 

「あぁ、あいつらを切り捨てたいとまでは思ってないけど、オレ自身教えられるような人間じゃないし、どうすることも出来ないからな。結局は堀北と似たようなもんだ」

 

「……そう。わかった」

 

失望したような様子で立ち上がる櫛田。

 

 

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さてさてさて、龍園からは「偵察しろ」というオーダーではあったけど……、なんとなく良い機会だから接触してみよう。別に「Dクラスに接触せずに情報を集めろ」とは言われてないから良いでしょ。

 

「こんちは。すげーうるさかったねキミ達」

 

去りかけてた櫛田も足を止める。

 

「あなたは……Cクラスの浅井くん、だよね?」

 

おっと、チャットのやり取りもしてないのに1回会っただけの相手を覚えててくれるとは流石だな。水商売でもめちゃくちゃに大事な特技だぞ。

 

「ん、そうだよ。久しぶり」

 

「……他クラスには関係ないはずよ」

 

黒い長髪のクレイジーガールが無条件で睨みつけてくる。まだ何もしてねぇだろムカつくな。

 

「うるさいな、そもそも図書館で騒いで関係ないもクソもあるかよ」

 

「だったらもう終わったわ。心配しないで頂戴」

 

「いやいやいや……。まず言うべきは『迷惑かけてごめんなさい』だろ。さっきの会話からして、お前もしかして人と会話したこと無いんか?」

 

「盗み聞きしてた相手に謝る言葉なんて無いわ。それに大声を出してたのは私じゃない」

 

まぁそりゃそうかもしれないけど……、いやそれにしても死ぬほどムカつく奴だ。この学校入ってブッチギリで1番嫌いな奴だと断言できる。龍園ですら動機には理解が出来たが、コイツはマジでなんなんだ?ただ相手を不快にさせるだけの存在じゃないか。ひたすら相手より上に立とうとする会話しか出来ないのか?

 

うん……、この学校で初めての『敵対者』として認識しようか。

 

「堀北とか言ったか?勉強は出来るみたいだけど、Dクラスだろ?なんでそんなに偉そうに出来るんだ?」

 

「……私はまだクラス分けに納得してないわ」

 

「ん?なんで?」

 

「アナタに言う義務なんて無い」

 

まぁそうだけど。

 

「えっと、勉強もちゃんと出来て、運動も苦手じゃない?」

 

そう言って様子を見ると、……俺を無視して勉強を続けるつもりらしい。一瞬、顔面を蹴り飛ばしてしまおうかなんていう衝動も起きたが、言葉で煽りまくる方向でやってみようか。無視するフリをしたければすればいい。

 

「んー……、少なくとも俺はお前がDクラスの理由は分かるよ」

 

「……。」

 

「その対人能力の低さ、社会に出てどうなるか明らかでしょ。人間失格レベルだよ」

 

「……。」

 

「人と会話するのが苦手とか、異性と話せないとかは理解できるし同情出来るけど、お前のはただの人格否定だろう。勉強が出来ないってだけで人間として否定した上に、相手の夢も否定して、アルバイトでもして暮らせって、マジで何様のつもりなんだ?……あァ!?」

 

「あ、浅井くん、ここ図書館だしその、大声は……」

 

俺の実家には当然だが勉強できない人間ばかり居る。人生で勉強なんてしたことないような奴らばかりだ。そんな奴らでも、昔はスポーツやってたり、趣味でバイクを楽しんでたりするし、仲間と認めた人間に対しては普通の人よりずっと優しい。そりゃ社会規範から見たらすぐ暴力振るったりするクズ共かもしれないが、ちょっと衝動的なだけだ。……ただの高校の勉強ごときで人間失格なんか決めつけられてたまるかよ。ふざけるな。高校入ったばかりのクソガキが何を勝手に決めつけてやがる……。

 

櫛田がこちらを落ち着けようとしてくるが、申し訳ないが無視させてもらう。

 

「ただの、高校の、勉強ごときで、他人にクズとか……テメェの方がクズじゃボケェ!」

 

「……っ」

 

相手の鼓膜を破る気持ちで声を張り上げたが、それでも女はまだ顔をこちらに向けない。当然だがペンは動いてないので話は一応聞いてるのだろう。

 

「そんなにお勉強が大事なら、こんな学校に来なけりゃ良いだろうが。外の学校だったらどこだって歓迎してくれるだろ、お前みたいな勉強だけは出来るクズを。いくら人間としてゴミだろうが、いくら他人を言葉で傷つけるカスだろうが、勝手に勉強して良い大学行ってくれる人間なら喜んで迎えてくれる学校はいくらでもあるぞ」

 

「……私は、ここでAクラスになって」

 

「お前こそ、この学校を出てけよ。なぁ……」

 

相手の発言をさえぎり、声量をかなり押さえて耳元で囁くように言う。

 

「お勉強が好きなんだろ?お勉強が出来るんだろ?」

 

「……。」

 

「だったら勝手にやって、1人で勝手に大学入って、1人で勝手に医者にでもなって、同僚にも看護師にも患者にも死ぬほど嫌われながら一生過ごせばいいじゃんか。金だけは稼げるぞ。他人に関わるなよ、迷惑だな……」

 

「……。」

 

「あ、でも1つだけ言わせてくれ」

 

めちゃくちゃ悲しそうな顔を演技で作り、顔を覗き込みながら言う。

 

「死んでも結婚だけはしちゃダメだぞ?……だって、お前なんかにもし子供が出来たら、……自殺しちゃうに決まってるよ!!」

 

最後のセリフだけしっかり大声で、悲鳴を上げたかのような口調で叫ぶ。

 

「っ!」

 

少しだけ涙目になっていた堀北?が勢いよく立ち上がり、すごい早さで机の上を片付け始めた。それにしても徹底して目を合わせてこなかったな。

 

「一生お勉強してな!性格ブス!結婚すんじゃねーぞー!早く退学しな!」

 

足早に図書館を出て行くクソアマに大声で言い放った。

 

 

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図書館の人に大声をめちゃくちゃ怒られ、平謝りしてから戻ってみると……、Dクラスの2人がまだ残っていた。

 

「浅井くん、あれは……、その……」

 

「……。」

 

櫛田の方はなんか苦笑いだ、完全に引いてる訳じゃないっぽいのは助かったような気分。

 

そして男子生徒の方は……この騒ぎでも全然表情を変えず、発言も無い。すげぇ変な奴だな。こちらをなんとなく見ているだけだ。

 

「なんかムカついて思わず色々言っちゃった」

 

「そ、そうだね……」

 

「さっき居た赤髪のやつとかも言い返せば良かったのにね?気を使ってたってたのかね?」

 

「うーん……。関わりたくないって思っちゃったのかもね」

 

「なるほど」

 

「……。」

 

それにしてもなんだこの男子生徒、しゃべれるよね?

 

「お前……、名前なんだっけ?」

 

「……綾小路だ」

 

「うい、よろしく。俺は浅井」

 

「……よろしく」

 

綾小路、本当に良く分からないやつだ。今のやりとりを真横で見ていて、それでもなお言いたいことが一切無いっぽいし、俺に対して何か思う事も無いっぽい?感情が死んでんのか?

 

「あー、そういえばDクラスに選ばれる条件みたいなのって何かあんの?」

 

「えっ?……うーん、良く分からないんだよね」

 

困り顔の櫛田、苦笑いも可愛いね。……Dクラスの人と触れ合う機会はあまり無いから、せっかくだし色々聞いてみよう。

 

「平田とかは勉強出来なかったりするの?」

 

「ううん、平田くんは勉強しっかり出来るタイプだよ。今日もクラスで勉強会を開いてくれてるはずだし」

 

うーん……謎だ。

 

「じゃあ運動神経が悪いとか?」

 

「えっと、かなりカッコイイ体だったと思うよ?体育の成績もちゃんとしてたと思う」

 

「えぇ……?」

 

意味分からんな。勉強できて、運動できて、社交性もあって……

 

「平田はなんでDクラスなんだろう?櫛田もだけど」

 

「……なんでなんだろう。私達にも分からないや」

 

ちょっと落ち込んだ感じになる櫛田、思わず謝りたくなる女の顔を見せる奴だ。演技でやってるなら本当に今すぐキャバ嬢になってもめちゃくちゃ売れるぞ。

 

「あーごめん、けどさ、今日あの堀北とかいうクソ女を見て思ったのは、『何か1つ短所がある人間がDクラス』なのかも?って思ったんだよね」

 

「……堀北さんにとっては、社交性が足りないからってこと?」

 

「そうそう。人間性がクズって言っても良いけど」

 

「ふふっ」

 

あ、笑った。堀北のこと嫌いなのかな?そりゃ嫌いになるかあんなクソアマ。性格が異常に悪すぎる。

 

「んでもって、赤い髪の……なんだっけ?」

 

「須藤くん?」

 

「アイツは運動が出来るんでしょ?」

 

「うん、1年生でもバスケ部のスタメンになれそうだって言ってたし、体育でもすごかったよ」

 

「じゃあ、さっき居た男子達は?」

 

「池くんと山内くんは、勉強も運動もあんまり出来ないかな……。けれど人当たりの良さとか、コミュニケーション能力は結構あると思うよ!」

 

櫛田が他人にそういう評価をしてても、なんかちょっと嫌味っぽく聞こえてしまうな。そんなつもりないだろうけど。

 

「ということは……、『何か1つ長所を持つ』っていう生徒も入ってるのかもと思うんだよね。だから、Dクラスに所属する生徒は『何か1つ短所がある』もしくは『何か1つ長所を持つ』の2パターンで選ばれてんじゃね?って」

 

「もしかしたら、そうかもしれないけど……」

 

櫛田は困惑顔だ。そりゃ「お前には欠点があるはず」なんて言われたらそうなるだろう。

 

「そう、問題はまさに櫛田と平田だよ。2人とも勉強も運動も苦手じゃなく、社交性もあって……短所が無いじゃん!?そのせいでDクラスが全員不良品って言われるのもどうなんだ?みたいに疑問に思ったんだよね」

 

「……うん」

 

「櫛田は……、もしかしてアレじゃないの……?可愛すぎて男を誑かしすぎたとか、そういう過去あるんじゃない?男子が狂っちゃって殺し合いを始めちゃった的な」

 

「……ふふふっ、どうかな~?」

 

そう言って怪しげな笑顔をわざとらしく作ってくる櫛田。かわゆい~。そういう所だぞ!ドンペリ頼んじゃって!

 

「そういう意味では、平田も仲良くしてた女の子同士で……殴り合いの喧嘩をされちゃった過去とかありそうじゃない?」

 

「そんなこと言っちゃ……、でも、うーん……?」

 

これ割と信憑性ある説だと思うんだよな。後で龍園にも教えてやろう。

 

……なんか1人会話に入れてない綾小路にも話を振ってみる。机囲んで一緒に居るんだからもうちょい発言すりゃいいのに。

 

「あー、綾小路は何か特技あるの?」

 

「俺は……特に無いかな……」

 

えぇ……、俺が知り合った相手は全員イレギュラーっぽいやつだけなのか?

 

「なんか無いの?」

 

「……うーむ」

 

「寝付きが超早いとか?」

 

「そうでもないかな……」

 

「射撃がめちゃくちゃ上手いとか?」

 

「……やったことない」

 

「ロボットと会話出来るとか?」

 

「いや……、できない」

 

「セックスめっちゃ上手いとか?」

 

「それはないな」

 

「なんてこと聞くの浅井くん……」

 

えー、じゃあなんだ?

 

「じゃあ、逆になんか欠点無いの?短所っぽいやつ」

 

「そうだな……。特に無いと思うが……」

 

こいつ何も答えられないやんけ。そんなにアホじゃなさそう顔なのにすげぇアホなのか?それとも個人情報を何一つとして伝えちゃいけないとでも教育されてきたのか?

 

「……綾小路くんは、友達を作るのが下手かもしれないね」

 

ちょっと困った顔で言う櫛田、それに対して綾小路は……否定しないのかよ。寂しいやつ……。勉強もそんな出来る訳じゃないんでしょ?なんか可哀想になってきたな……。

 

「あー、それじゃあ、一応俺と交換しようか」

 

「……あぁ」

 

そうして、Dクラスの知り合いも1人だけ増やせた日になった。

 

 

……あっ、アルベルトを忘れて放置してた。謝らなくちゃ。

 

 


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