ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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消えたNO勉プラン

こんにちは、テスト勉強に対するモチベーションかなり高めの優等生の俺は浅井虎徹です。

 

前までのルールで坂柳が率いるガリ勉軍団のAクラスがテストの全問を作ってたら、本当に赤点退学になってたと思う。

 

けど、対戦相手が確定したタイミングで、自作テストの仕様に『全問4択の選択問題』と『全50問中25問は学校側が用意した問題』という2つが追加された。

 

後出しすんな……と思ったけど、無いよりは良い。

 

俺はもう関わってないけど、テストを作るメンバーからしたら労力半減って感じかな。科目によってはもう作り終わってるのもあるだろうし、ここから難易度を上げていけそう。

 

そして何より、俺達にとっても退学の可能性が大きく下がった。90%→10%くらいかな。しっかり勉強したら……大丈夫なはず、って感じ。うん、ひと安心。

 

「浅井、ついて来い」

 

隣でスマホいじりまくってた龍園が声をかけてきた。

 

「坂柳のとこ?」

 

「それ以外ねぇだろ」

 

いちいち言い方がウザい。そのロン毛切れアホ。

 

 

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「おじゃま~」

 

Aクラスにまた来た。放課後だというのにクラスの半分くらいが残ってるし、龍園を見た瞬間めちゃくちゃ警戒した様子で坂柳の周りに集まり始めた。俺より遥かに警戒されてんな!ざまぁ見ろ不良!

 

「こんにちは虎徹くん、龍園くん。例の件ですね」

 

「そうそう」

 

「契約として1つ調整したいのは、私の提示したのは『提出する半分の問題』でしたが、こうなると25問中13問なのか12問なのか、ですね」

 

「ん?……まぁ、うん」

 

昼は『25問の解答を【ア】にする』って言ってなかったっけ?龍園にそう伝えちゃったけど……俺の聞き間違いだったかも。いやまぁ意味としては『提出問題の半分』だったし、状況が変わればそうなるんだけど。なんか龍園に文句とか言われそうで嫌だな。

 

「坂柳、25問すべてだ。それと引き換えに月々40万ppの支払い減額なら認めてやるよ」

 

あ、龍園がハッキリ訂正した。でもそれはキツくね?流石に俺達に有利すぎるでしょ。

 

「……無理ですね」

 

「あァ?」

 

当然でしょうに。何をキレてんだよ。

 

「50点のハンデは私達に不利すぎます。つまり今回の試験におけるCP100の増減も決定することになるでしょう、ありえない取引です」

 

CP100?えっ、CP50じゃなかったのか。完全に勘違いしてた。

 

「フン。……だったら契約全て、pp支払い全額を無くしてやるってならどうだ」

 

つまり、CP250相当の月100万pp没収はやめてやるから、今回の試験に勝たせろってか。

 

「あら?CPよりppを重視する方針じゃなかったんですか?意外ですね龍園くん」

 

確かに意外。これで勝ったとしても、ppだけ見たらCP100増えて、CP250相当が減るから、CP150相当の超赤字ではある。……いや、相手のCPも100減るのもカウントしてるのかな?それならCP50分だけの赤字なのかも。

 

「うるせぇ。答えろ」

 

「……それでも無理ですね。ありえません」

 

「チッ……」

 

「結局、卒業時までにCPを最大値にしたクラスの勝ちです。ppはあろうが無かろうが、勝敗条件には影響しませんから。……もちろん、無意味なポイントとは言いませんが」

 

今回の勝敗によっては、しっかりAクラスとBクラスの俺達が逆転しちゃうもんな。Aクラスから見ても、損の方が大きいか。

 

「なら、この話は無しだ」

 

そう言うと、龍園は1人でさっさと出て行っちゃった。勝手なやつ……。

 

 

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せっかく来たんだし色々聞いてみるか。

 

「坂柳、分かんなかったとこ詳しく聞いてもいい?もう話が無くなっちゃったみたいだし」

 

「……はい。何についてですか?」

 

「えーっと、25問の半分、12問か13問?だったら答えを固定してもいいよっていうのは、良い感じのハンデになるから?」

 

「そうなりますね。24点か26点のハンデ、私達は圧倒的不利になりますが、それだけモチベーションも高くなり、良い勝負が出来るだろうと提案しました」

 

傲慢に見えなくもないけど、学力差があるから事実ではある。

 

「なるほど。……それだけのハンデもらえたら、ウチもちょっと安心して試験勉強に手を抜いちゃうかもしれないしね。ホントにそれくらいでギリギリ対等な気がする」

 

「ふふ、そうですか。せっかくの試験ですから、楽しく競えて良いかと思ったんですが」

 

ホントに楽しそうな坂柳。けど、

 

「俺は楽しめなさそうかな……。必死になるだろうけど」

 

「頑張って下さいね」

 

「え?……ありがとう?」

 

なんで応援されたんだ?……そんなにヤバい問題ばっか作れちゃってんの?やめてくれよ~。

 

「質問は以上ですか?」

 

「えーっと、うん。……あ、坂柳は問題作成とかやってて楽しいの?」

 

「はい。もちろん楽しいですよ?」

 

なんで疑問に思うの?みたいな顔されちゃった。やっぱ頭良い人は見てる景色が違うのかもね。

 

「そりゃ良かったよ……」

 

「今回の試験は『赤点回避』という目的でも勉強する動機にもなりますが、『難問を作る』という目的も大きいです。それは学力上位者にとっての活躍の場になりますからね」

 

「は~、なるほど」

 

確かに勉強エリートにとっては頑張り甲斐がある特別試験なのか。

 

「私にとって力の見せ所ですし、Aクラスには良い問題を作ってくれる人が他にも居ますよ。……なので、取引が破棄されたのも正直嬉しいかもしれません。試験を楽しみにしてて下さいね」

 

そう言って笑顔を見せる坂柳。あ、はい……。

 

「……いや、全然楽しみにならんて。超イヤだよ。やだ~!簡単なのにしてよ~!」

 

「ふふふ、お楽しみに」

 

ちくしょう、この銀髪悪魔!

 

 

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自分のクラスに戻ってきたけど、放課後なのに10人くらい残って勉強してた。ホントに俺達のクラスかな?ちょっとビックリ。

 

「虎徹!勉強教えてくれ!っていうか何すればいいか教えてくれ!」

 

いや知らんわ。石崎がテンション高すぎる。

 

「うっさいよ」

 

あれ?伊吹まで残ってたのか。意外だ。

 

「あっ、悪い」

 

「……。」

 

他にはアルベルト、あと試験作ってるっぽい椎名と金田。あと勉強のために1人静かに残ってるのが数人。あとスマホいじって勉強する気配の無い不良が1人。

 

「とりあえず……、先生から指示されてる問題を完璧にしよか」

 

「おぅ!……で、何すればいいんだ?」

 

「ん~、授業中に何度かやった小テストを何度もやり直して、完璧にしよう。持ってる?」

 

「いや、持ってねぇな」

 

なんでだよ。

 

「捨てたん?」

 

「……捨てた」

 

捨てんな!

 

「あ~……じゃあ科目ごとに小テスト集めてコピーするのが最初の作業かな。俺も全部あるか不安だから、あるだけ出すから抜けがあったら教えてくんない?」

 

「おぅ!分かったぜ!」

 

「アールも手伝ってあげてくれない?」

 

「OK」

 

よし、これでしばらく時間稼げたかな。そのうちに龍園に聞いておこう。

 

「龍園、なんで坂柳にまったく譲歩しなかったのか教えてよ。月々40万は大きいけど、それで勝てる確率がゼロから生まれるんだから良かったんちゃうの?説明してよ」

 

「……理由は2つある」

 

「2つ?」

 

「1つは、不確実性だな。アイツらが提出した問題を、その順番通りに試験で出されるかは分からねぇ。全問題がランダムだった場合、解答が固定された所でなんの役にも立たない」

 

提出問題の半分、つまり全体の4分の1で答えが【ア】になるって言われたって、そんなの4択で確率的に同じ……いや、ちょっと【ア】が多めになるくらいの話なのか?

 

「だから提出問題すべての50点分は確証して欲しかったって事?」

 

「まぁな。試験で潰すなら当然の要求だ」

 

「そうかもしれんけど……」

 

だからってCP100がほぼ確定しちゃうんだから、成立する訳ねーじゃん。欲張り過ぎでしょ。

 

まぁ……20点ちょいのハンデだと勝てない気もするから別に良いんだけどさ。

 

「2つ目の理由は、裏切る可能性だ。アイツらが契約放棄した時、一部が退学になるかもしれねぇ」

 

学校側の用意した50点分の他に、50点を確保してるかしてないか。めちゃ勉強モチベーションも変わってきそう。勉強しなくても平気か、絶対にしなきゃいけないかの大きな違い。

 

「そりゃまぁ可能性あるけど……」

 

「言うまでもねぇが、坂柳を信じるな」

 

「なにそれ。……そもそも『競い合いたい』って思ってるのも演技だって?」

 

あれは本音っぽいと思うんだけどなぁ。

 

「フン。何を考えてたとしても、裏切る可能性が消える訳ねぇだろ」

 

うわぁ、思考が暗いヤツ。……まぁ、そりゃそうだけど。

 

「でもさ、その対策のためにも、提出するやつの確認したらいいんじゃないの?」

 

「確認した所で、その問題を入れ替えたり、何かの手段を使って変えられた場合、終わりだ。その証明が出来るかも怪しい」

 

「んー、まぁ、確かに。pp使ってルール外の動き出来るかもしれないもんね、体育祭の参加表を書き換えられたっぽい感じで」

 

あれも結局、期限後にやった説が消えなかったし。

 

「pp契約の破棄と引き換えに俺らの勝利がほぼ確定、ってなる50点ハンデなら、その時はありとあらゆる契約の穴潰しをして、違反時のペナルティも考えたが……」

 

「なーるほど。超めんどくさいなそれ」

 

「あぁ。学校側の協力も必要になるだろうから、契約が成立するのかも怪しいもんだ」

 

坂柳が契約を裏切る可能性を潰すため、そして裏切った時のペナルティの調整。なんか色々と面倒すぎるし、穴を潰しきれる自信も無いや。

 

「……よく分かんないけど、答えを教える取引なんか許されんの?」

 

伊吹が近くで聞いてたみたいで口を出してきた。そう言われると……試験放棄の取引でもあるのか。2クラスが協力して、試験勉強しなくても良くするみたいな。それだったらいいのにな~。

 

もしこれ100点すべて自作テストだったら、まったく勉強しなくても全生徒が100点満点のパターンもありえたのか。『50点分は学校側が用意』って、それの対策でもあったのかも。

 

「そっか、学校側は嬉しくない取引だよね。……ってなると、なおさら契約違反の時とか調べてくれなさそう」

 

勉強しないで退学になった奴ら、見殺しにしそう。

 

「フン。……何にせよ、一応は勉強しておく必要があるってのがマジでクソだ。お前ら、手抜くなよ」

 

お前が言うなや龍園。石崎にも負けろ!

 

「アンタが言うなよ」

 

「おぉっ!よく言った伊吹!」

 

あっ、思わず声に出しちゃった。

 

「……。」

 

龍園に睨みつけられたけど、何も言われなかった。あぶね~。

 

それにしても、やっぱ自覚あるのかよ。じゃあ勉強しろや。

 

……俺もしっかり頑張りますか。結局、サボったら退学になるかもしれないからね。

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