ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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次回から21時更新になるかもです


仮面不良会

『今すぐ指定した物を買ってこい』

 

もう夜19時だけど、いきなりチャットで謎の命令を受けた俺は石崎大地だ。龍園さんからの命令、内容はレインコートと顔を隠せるものを5個ずつ?何に使うんだろうか。いやなんで指示されたか分からないことの方が多いけど、今回は特に分からないな……。なんとなく悪いことに使いそうな雰囲気はある。

 

まぁ言われたからにはやるだけだ。『了解です』っと……。

 

金に関しては、龍園さんがしっかり後から出してくれるし、少しオマケで小遣いもくれる事もある。そういうのやっぱちょっと嬉しい。

 

ただ、そういうのが無かったとしても、きっと俺は龍園さんの指示で動くと思う。

 

入学してからずっと舎弟みたいに扱われて、色々とこき使われて大変だったりする。けど、そんな立場だからこそ、あの人の圧倒的な『勝利への執念』が分かる。学校の見えないルールを見つけ出すために、めちゃくちゃ色々と試したり、バレたらヤバい事を怖がらずやったり、あえて減点されてみたり。

 

ここまでやってる人は俺たち1年の中じゃ他に居ないし、もしかしたら学校に今まで居た生徒の中でも史上最高なんじゃないかと思う。それくらい俺達に色んな指示を出してたし、色んなことをやった。

 

ちなみに、そんな感じのことを虎徹に話したら「龍園部かよ」「ほぼブラック企業」「10代で過労死すんなよ」「奴隷じゃん」とか散々言われちまった。いや、そういう所あるかもしんないけどさ……。

 

虎徹と龍園さんの関係は、今でも全然分からない。夏合宿で同じ部屋になった時とか、なにかと良く会話してるから『喧嘩するほど仲が良い』と思ってた。

 

けど夏休み明け、体育祭前くらいに虎徹は龍園さんに『お仕置き』されてた。フトモモのあたりが大きいアザになって、歩くのがやっとってなってたやつ。

 

やっぱ仲悪い?と思ったら、Dクラスの須藤が停学になったのは龍園さんだけじゃなく虎徹も関わってたっていう噂もあるし……。本当に分からない。2人ともお互いを嫌ってる様子も、好きそうな様子も無い。ホントに不思議だ。

 

そして最近は、今度は虎徹から龍園さんに何かを頼み込む?ような姿を見た。初めて見た姿。龍園さんは嫌そうだけど拒否しきれず、虎徹はなんか申し訳無さそうにお願いしてるような、不思議な光景だった。何を頼んでたんだろか?

 

なんだかんだ、やっぱり仲は良いんだと思うんだよな。じゃなきゃ龍園さんも相手にしないだろうし、虎徹も話しかけないと思うし……。

 

まぁいいや。頭が良くて、勝つために努力を惜しまない人が上に立ってリーダーやってくれてるんだから、バカな俺は言われたこと、やれることをやればいいはずだ。

 

 

---------------------------------------

 

 

「龍園さん!買ってきました!」

 

店に行って色もサイズも迷ったけど、その場でメッセージ送ったらすぐ指定してもらえたので、その通りに買ってきた。青のXLサイズ、俺でも余裕で着れそうなやつ。お面は顔が完全に隠れる大きめのやつで、白い顔のやつにした。

 

日頃から「分からなかったらすぐ聞け」と虎徹からも龍園さんからも言われまくってるので、その通りにしてる。変に悩まなくていいし、龍園さんはすぐ返信してくれるし、『頼っていい』と言われてるみたいで結構ありがたい。

 

「おう。……石崎、お前自分の部屋からカーテン外して持ってこれるか」

 

「え?はい、了解です。荷物は、」

 

「置いとけ。いくらだった?」

 

「レインコート2500円、お面が200円で、5個ずつだったので……1万3500円?でした」

 

「ppだけどな。分かった、金は送っておく。カーテン持って来い」

 

「了解っす!」

 

カーテン、何に使うんだろう……。

 

 

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龍園さんの部屋で指示されながら、通路にカーテンを取り付けた。玄関からの奥の部屋が見えないように。

 

方法としては左右両側の壁にクギをガンガン打ち込んで付けたんだけど……大丈夫なのかなこれ。めっちゃしっかり穴を開けちゃった。先生にバレたら普通に怒られそう。

 

あと叩く音が結構うるさかった、夜だしヤバいかも。

 

そんな大工作業みたいなのをやった後、龍園さんからは晩メシ食って21時半にまた来いと言われ、その通りにまた来たのが今だ。

 

「これを着ろ。そして端末を俺に預けろ」

 

「了解っす」

 

さっき買ってきたやつを渡される。んで、スマホ取られちゃうのか……。出来たら今日中に返してもらえたらいいな。

 

「あと、一言もしゃべるな」

 

「え?あ、はい」

 

「オイ」

 

ん?……あっ、

 

「す、すみません……」

 

「黙れ」

 

「ッス……」

 

思わず返事しちゃった……。無視した時が怖くて、つい。

 

怒られないよう急いでレインコートとお面を着けてみると、ちょっと暑苦しいなこれ。冬だからまだマシだけど、夏はちょっと無理かも。

 

「そのまま待ってろ」

 

「は……」

 

あぶねっ。ギリギリ我慢してクビを縦に振って返事にする。

 

けど、何するんだろか。ちゃぶ台にトランプが置いてあるだけだ。

 

謎の状況でちょっとソワソワしながら、スマホ取り上げられたから何も出来ずに待ってると、部屋のチャイムが鳴って誰かが入ってきた。

 

「来たぞ龍園」

 

「まずは学生証端末を渡せ」

 

「……勝手に使うなよ」

 

「知るか。電源落とせよ」

 

「そうさせてもらおう。……しかし、なぜ」

 

「オイうるせぇぞ。中にもう1人居るんだ、お互い誰か分からない状態にしてんだよ。理由?ただの暇潰しだ。嫌なら帰れ、他のヤツを呼ぶ」

 

「……。」

 

「ルールの確認だが、『2時間後に2万ppずつ獲得』『声を出すたびに1000ppの減額』『自分の正体がバレたら5000pp減額』これだけだ。そして『途中退室は5万ppの罰金』とさせてもらう。良いな?」

 

「あぁ、分かった」

 

俺は何も聞いてないルールなんだが……。俺も2万もらえんのかな?何にせよ言われた通り黙っておこう。そしたら、とりあえず怒られはしないはず。

 

「声を出すな。これを着けろ」

 

「……視野が狭いな」

 

「オイ、黙れ。そこを超えた瞬間からゲーム開始だ」

 

 

---------------------------------------

 

 

同じ格好になったヤツが入ってきたけど何も話せないから、なんかすげぇ変な空気のまま待ってると、他にも2人増えた。1人ずつだったから時間ズラして指定されてたのかな。

 

俺も含めて4人全員が青いレインコートで、白い顔のお面。変なオバケが集まってるみたいだ。ほぼヤバい集団っぽい。

 

「メンバーはこの4人だ」

 

そうなのか。他3人、みんな……割りと背が高いかも。俺もだけど170cmありそうな奴らだ。

 

「ルールは書いておいた、常に確認することだな」

 

そう言って机に置かれた手書きの紙には、以下のように書いてあった。

 

~~~~~

 

・ゲーム時間は約2時間、24時まで

 

・終了時に2万ppずつ配布する

 

・声を出した人間は1000ppの減額

 

・自分の正体がバレたら5000ppの減額

 

・途中退室は5万ppの罰金

 

~~~~~

 

ふむふむ……。

 

「トランプは好きに使え」

 

おぉ、ありがたい。流石にしゃべれず何もしないで、ってなるとキツすぎる。

 

「そして言い忘れてたが、参加料は3万だ」

 

「は?」

 

「ッ……」

 

「えっ!?」

 

「……。」

 

あっ、思わず声出しちゃった。2人は黙ったままだったのに。

 

「クク……嘘だ」

 

「えー!?」

 

あっ、また声出しちゃった……。今度は俺だけだった。

 

「お前は1000pp、そしてお前は2000pp減点だ。終わるまで100分以上あるが……楽しみだなオイ?」

 

これキツいかも……。でもせっかくやるなら俺も金欲しいし、もう何も言わないように気をつけよう。

 

 

---------------------------------------

 

 

「もう終わっていいぞ」

 

色んな妨害があるかと思えば、最初の嘘だけで、特に何もなかった。

 

困惑しながら4人で無言のトランプ大会をやって、なんとか2時間経ったらしい。疲れた。

 

そもそも何をするかを決めたり、それをみんな理解するのも地味に難しかった。無言でトランプで例を見せて、2人くらいで実際にやってる光景を見て予想したり。

 

ずっとババ抜きやってたけど、途中で他のやつが違うのやろうとアピールしてきたけど、結局分からなかった。アレなんのゲームだったんだ?

 

ちなみに龍園さんは部屋の片隅でスマホをいじりながら、声を出さないか監視してるだけだった。意外と妨害みたいなのは無かった……。たまに席替えさせられたけど。

 

いや、1回だけ寝そうになってるヤツにデコピンしようとしてたな。超楽しそうな笑顔だった。

 

「ふぅ~~~……。疲れた」

 

「お前、1000pp減額」

 

えっ!?……あっ、まだ24時になってない!時計は23時40分だった。完全に引っかかった。

 

「時間内だが、もう1人ずつ出て行け。カーテンの向こう側で貸した衣装を返してな。5分区切りで次のやつも外に出すから、正体がバレたくなきゃさっさと自分の部屋に帰れ。じゃあ、まずお前だ」

 

俺か。えーっと、レインコートとお面を外して、すぐ帰れって事……だよな?

 

「……あぁ、端末を返さねぇとな。これか?」

 

ちょっと不安で戸惑ってるとスマホを返してもらった。そういえば預けてた。ロック画面の壁紙で自分のやつだと確認して受け取り、言われた通りにカーテンの玄関側に行く。

 

「じゃあな」

 

挨拶できない気まずさと、ひたすらトランプやってた疲労で意外とかなり疲れちゃったよ。早く帰ろう。

 

何回か減点されちゃったけど、ゼロにはなってない。俺も金もらえんのかな?「お前には無い」って言われてもおかしくないし、ちゃんと報酬もらえる気もする。つまり分からない。

 

イベント自体も正直なにがなんだか良く分からなかったけど……。龍園さんが俺以外の3人の、思考とか何かを見てたとか?

 

いやまぁ、龍園さんが何考えてるか分かったこと無いし、別にいいか。気にしなくて。

 

疲れた。帰ってすぐ寝よう。

 

 

---------------------------------------

 

 

『---します。本日、全生徒は登校せず、寮自室にて待機して下さい。』

 

ん~?……なんかすっげぇうるさい放送に起こされちまった。ってか寮でも放送って出来たんだな。初めて聞いたと思う。

 

『学生寮からは絶対に出ないで下さい。例外はありません。部活動も禁止します。……繰り返します。本日、全生徒は登校せず、寮自室にて待機して下さい。学生寮からは絶対に出ないで下さい。』

 

なんだなんだ?何があったんだ?

 

『繰り返します。本日、全生徒は登校せず、寮自室にて待機して下さい。学生寮からは絶対に出ないで下さい。例外はありません。部活動も禁止します。』

 

ずっと同じことを言う放送を繰り返してる。

 

「うわっ!うるさっ!」

 

玄関ドアを少し開けてみたら、廊下の放送音がデカすぎて耳に痛いくらいだった。

 

……スマホを見たら学校からの緊急メールが届いてる。今日の登校は禁止、許可が出るまで自室から出るのも禁止。食事に関しては12時までに必ず再通達するから待て、とかなんとか。

 

「えぇ~?」

 

何が起きてんだ?

 

クラスのグループチャットでも龍園さんから『放送通り寮に居ろ』っていうシンプルな指示があった。

 

けど、なんか……、なんとなーく、ちょっと嫌な予感がする。

 

昨日のアレ、あの集まりが、龍園さんが関係してそうな……。

 

……俺、大丈夫かな?


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