俺、浅井虎徹としては意外と珍しいブチ切れ&怒鳴りで疲れた日の夜、龍園からのメッセージが来ていた。
【龍園 翔】:何があったか説明しろ
うーん……めんどくさいっちゃ……。でもまぁDクラス選抜基準っぽいやつは伝えておいた方がいいな。……でもチャットだとあまりにも面倒だな。電話してみるか。
「…………あ、龍園?もしもーし」
「……説明しろ」
「何を?」
「今日図書館であったことに決まってんだろうが」
うん?なんかイライラしてる?めんどくせぇやつ。
「えーっと……、アルベルトと2人で普通に勉強してたら、Dクラスの人間が来てたんだよね。でもそいつらがすっげぇうるさいから見に行った感じ。それでそういや偵察してくれ言われてたなーってのも思い出してね」
「……で?」
「んで盗み聞きしてたら、堀北とかいう女が一緒に居た男子達に『勉強できないなら退学しろ』みたいにアホ言ってて、勝手に勉強会が崩壊してたって感じ」
「……その後は?」
「その後?あぁ、堀北にムカついたから『お前が出てけよ』とか言いまくったんだよね。図書館の人に大声をめちゃ怒られちゃったよ」
「ハァ……。勝手に騒ぎを起こすな」
「はぁ……?お前の部下でも無いんだし、いちいち『これから騒ぎを起こしていいでありますか!?サー!』なんて確認取るわけ無いじゃん。バカか?」
「チッ……」
「あ、その代わりって訳じゃないけど、櫛田と話しててDクラスの選抜基準みたいなの分かったと思うよ」
「……言ってみろ」
徹底して偉そうなやつだな。「教えてくれ」とか言えや。
「えーっと、多分2パターンある。『優等生だけど欠点があるタイプ』と『劣等生だけど一芸があるタイプ』って感じ。短所か長所があるって感じだと思う、んでもって長所は勉強以外のなかなか評価しにくい項目とかなんじゃないかな」
「……なぜそう思った」
「俺が知り合ったDクラスってのは櫛田と平田だけだったんだよね。だからそもそも『Dクラスは不良品の集まりだ』なんて言われたってイマイチ分からなかった訳よ、2人共かなり優秀そうに見えたしね。社交性で見たらこの2人に勝てそうな人間、Cクラスに多分居ないじゃん。……お前もちょっとは見習えよ」
「うるせぇ。続けろ」
「でも確かにDクラスが騒がしい小学生の集まりみたいな様子だったのも見てたから、まぁ劣等生も結構多いのかな……と思ってた訳よ。で、今日の騒ぎで須藤?とかいうやつが運動は相当出来るみたいな話を聞いたのね。だから、運動だけはピカイチで優秀みたいな奴が居るなら……で仮説を立てたって訳」
「他にサンプルはあんのか」
サンプル?例だっけ?
「えーっと……『一芸劣等生タイプ』としては、その赤髪の運動は出来るらしい須藤、んで今日居た、名前忘れたけど、2人は勉強も運動も出来ないけど社交性があるらしい。ってか、これに関してはそもそもDクラスに成績悪い生徒だらけってのも判断材料にして良い気がするんだよね」
「欠点があるヤツは?」
「代表例は堀北、勉強も運動も出来るらしいけど、性格が超クズ、ドクズ。人間失格だなあれは、社会出ても恨まれて殺されかねないレベルだぞマジで。龍園お前の方がまだマシかもしれない異常なレベルだよ」
「……。」
「あとは櫛田と平田だけど……、2人とも勉強も運動も結構出来るらしいんだよね、確認はしてないけど。まぁそんな嘘は付かないと思うけど……。ともかく、社交性まで含めて何の欠点も無いように見えたけど、ふと思ったのが『社交性の高さが災いしたことあるんじゃね?』ってね。櫛田とかが本気で人を操ったら、それこそカルト宗教みたいに自分のため死ぬようなコマを作れる可能性すらあるんじゃねぇの?と。まぁそこまでいかなくても、過去になんか人間関係によるミスがあったっぽいかな、やりすぎた的な。普通に聞いたら冗談っぽく『どうかな~?』なんて言ってたけど、多分なんかあったんだとは思うよ。何があったのかなんて知らんけど」
「……平田とかいうヤツは」
「平田は、あれめっちゃ優しいけど、そのせいで女同士で喧嘩になっちゃったとかじゃない?んで、調和を重視した性格になった、なりすぎたとか?まぁ何があったか分からないけど、何か『前科』みたいなものがあったんじゃないかと思うんだよね。櫛田にしろ平田にしろ」
「フン……。まぁ参考にはなった」
クソ偉そうに。ムカつく奴だ。
「嘘でも喜んで感謝しろやアホめ。情報に感謝しないヤツに情報が集まってくると思うか?バーカバーカ!アホ!」
「……参考になったっつってんだろうが。だが所詮はお前の妄想だろ」
「はあ?他人の意見をなんつー言い草だよ。……そもそも役に立ったか役に立たなかったかで判断すべきじゃないだろが、仮にも人の上に立つなら、『次も情報を持ってこよう!』と思わせないとダメだろうが。バーカ。そんなんだからアホヤンキーなんだよボケ」
「チッ……」
「せっかくDだけじゃなくてABCDの特色を上手く表現する考え方を思いついてたのになぁ……、なんだか言う気無くなっちゃったなー!!!」
端末に向かってわざとらしく大声を出す。
「うるせえ。…………教えてくれ、頼む」
えっ?今なんて?
「ごめん聞こえなかったからもう1回」
「ふざけるな」
「幻聴だと思ったんだけど。頼むって言った?」
「……あぁ」
まぁ龍園にしては良く頑張りましたね!って感じか。
「じゃあ言っておくよ。なんだかんだ話す相手としてお前が一番良いだろうし、……お前に言わなかったら坂柳と議論して楽しもうと思ってたけど」
いや坂柳とこれ議論するのは楽しそうだな。龍園関係なしに今度話してみよう。
「……早く言え」
「えーっと……、クラスそれぞれの特徴というか特色が、ハリーポッターのホグワーツ組分けと酷似してるんだよね。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。4つの寮」
「は?」
「Aクラスはなんだかんだ全員が勉強する意識もあるし、環境としても自然とみんな勉強重視で頑張ってると思う。だから『知性』を表すレイブンクローが当てはまるね。もっと言えば選民意識みたいなので、『陰湿』『傲慢』『根暗』っぽい裏要素もあるし。ドンピシャだよ。現代社会では相当強いわな、知識を身につけるのが好きなタイプは」
「……。」
あれ?反応が無い。もしかしてハリーポッター読んでないのか?おいおいおい、シリーズとして世界で一番売れた作品だぞ。無視して続けちゃおう。
「Bクラスはみんな仲良し、人間関係を重視するまさにハッフルパフだな。『調和』とか『優しさ』をこの上なく表しているクラス。俺もBが良かった……。ついでに言うと、優しすぎるがゆえの『間抜け』っていう裏要素も当てはまっちゃいそうだね。龍園からしたら御しやすい相手だろうけど、一之瀬のことあんまりイジメんなよ。お前みたいなアホが遊び気分で邪魔したら可哀想だ」
「うるせぇよ」
「そして我らがCクラス、これは迷うことなくスリザリン、蛇寮。『狡猾』にずる賢く動こうとする龍園クラスだな。ハリポタの中では『純血』という文化から組織内での『団結』があったし、そういう統一性も似てるかも。ついでに言うと『独善』という裏要素も当てはまりそうだし。『狂信』なんていう雰囲気もいつか出来てくるのかも。ただ……お前が居なかったらどうなったかは正直分からんな、他にリーダータイプ居ないし。ただの不良チームになってそうな気もする……」
AとBは坂柳&一之瀬が居なかったとしても他の人間がリーダーになって似たようなクラスになってそうだけど、Cクラスだけは龍園じゃないとザコザコクラスになってそうだ……。
「……ククク」
ん?笑ったのか?別にそこまで褒めてないが……。
「んで最後にDクラス。ここは……、アズカバン!」
「……。」
反応が無い。クソつまらんヤツめ。
「残ってるのはグリフィンドールだけど、別に『勇敢』なクラスとも思えないし……。っていうかクラス全体の共通部分が無くないか?あえて言うならカオスだよ、みんな自分勝手。適当に特徴ある生徒を集めましたっていう……『その他』って感じがすごい。なんでもアリ感。『暴走』っていう裏要素がもしかしたら当てはまるけど……うーん、別に……?しっくりこないんだよなぁ。『バカ』が集められたとしたら、そういう気はするけど」
「……不良品共だろう」
それでもイマイチ分からない。もうちょい他の生徒も見たり、クラス全体での動きを見てから判断かな。
「Dだけちょっと検討の余地ありだけど、こんな感じ。どう?スリザリン生」
「……フン、まぁ……、悪くなかった」
お、ちょっとは対応が良くなったか?こんなアホ話でもちゃんと受け入れるのは偉いじゃんか。成長したね~、よちよち。
「てか今日はもう疲れた……。あれ?そういえば図書館のこと誰から聞いたの?」
「……アルベルトからの報告と、Cクラスの人間を図書館に置いてたんだよ」
「はぇー、なるほどね」
ま、どうでもいいけど。
「じゃ、そろそろ寝るわ。おやすみ」
「あぁ」
こうして龍園との長電話は終わった。チャットよりラクでいいかもしれんな。