ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

126 / 139
大グループ決め

夕方16時頃、上級生に呼び出されて体育館に集合した1年集団の中で、見慣れたメンツの近くに来て、ちょっと懐かしい気持ちになってる俺は浅井虎徹です。

 

「虎徹!お前も別グループ組なのか?」

 

ん?石崎は龍園のとこ居ると思ったけど違うんだ。

 

「石崎も?なんで?」

 

「いやぁ、分かんねぇ……。アルベルトと他3人くらいと一緒にどっか入って、絶対に責任者はやるなって言われてた。虎徹はどうしたんだ?」

 

「Aクラスのとこ入ったよ」

 

「は?あそこ?えぇ……?」

 

なんだその反応。っと、目立つ金髪の上級生が出てきた。

 

「よく来た1年、悪いな呼び出して。だが意味もなく20時まで待つ必要も無いし、時間がもったいないから、早めに大グループを決めて親交を深めようぜ。その方が良いだろ?」

 

別に良いけど、責任者だけ呼べば良くね?南雲スマイルが妙にムカつく。

 

「オイ、1年が指名して決めさせろ」

 

「おっと、生意気な1年だな。噂以上じゃないか、龍園」

 

こうやって見ると、龍園と南雲、闇のチャラ男と光のチャラ男って感じがする。それにしても龍園を前にしても全く緊張しないでリラックスした笑顔を見せるヤツは珍しいね、流石に2年を制覇した生徒会長なだけある。

 

「もう1年で指名順まで決めてんだよ」

 

「そうか。……お前が責任者もやってるのか?」

 

なんとなく1年を見渡す南雲、一瞬だけ俺と目が合ったけど、当然お互い何の反応もしない。

 

「当然だ。オイ、もう指名するぞ」

 

「1年の持つ情報は少ない。公平性に欠けているとも言えるが」

 

あ、堀北兄が出てきた。やっぱ1年の堀北に似て空気を読めないのかと思ったけど、無表情で分かりにくいだけでこっちの心配してくれてるのかもしれない。

 

そんな訳で、元生徒会長、不良っぽい生徒会長、不良の3人が揃った。学年ごとの代表者にしては変な集まりだな。

 

「堀北先輩、公平に決めることなんて不可能です。結局持ってる情報に差はあるんですから」

 

「まぁ、1年自身が納得しているなら良いだろう。全学年、小グループごとに固まるように」

 

そう言うと自分自身も小グループの方に向かった。そっか選ばれる側になるのか。

 

「全学年、堀北先輩の言う通りにして、1年の責任者6人は壇上のこっちに来てくれ!」

 

堀北兄と南雲、さすが元生徒会長と生徒会長だからか話が早い。そして段取りも良い。体育館の壇上に呼んで、上から見渡して指名させるのか。

 

あと……なるほど、責任者だけだと小グループがどういうメンバー構成なのか分からないから、全生徒が集まらなきゃいけなかったのか。サボらなくて良かったかも。

 

 

---------------------------------------

 

 

石崎とアールからまた離れ、居心地の悪いAまみれグループに戻ってきた。みんな不安そうな目で壇上に向かうハゲの方を見てるけど、指名順が最下位でもなんとか良いグループ選んでくれ、って感じかな?

 

けど……今回に限れば、もう龍園クラスが9割くらい勝つの確定してると思う。

 

その理由は『龍園が指名順1位』っていうのも当然あるけど、それと別にバス内で送られてきたメールがあったから。匿名の送信元で、メールアドレスも英数字のランダムで長ったらしい、捨てアカウントからのメール。特別試験について説明を受けた直後に送られてきた。

 

そこに書かれていたのは、

 

『借りは返す』

 

『堀北学と同じグループを全体1位にしてやる』

 

『他クラス、他学年に情報を漏らしたら約束しない』

 

『分かりやすいようお前が責任者をやれ』

 

とか、こんな感じ。

 

まぁ……十中八九、南雲からのメールでしょ。他に心当たりがまったく無いし、例のテロ騒動をやった貸し借りみたいなものを精算したいだろうからね。見返りがこの今回の試験で1位が確定するなら、そう悪いリターンでもない。最大でCP数百もアップするんだし。

 

この情報が嘘とも考えにくい。100%ホントか?って考えたら、そりゃグループ順位がズレたりする可能性は当然あるけど、それでも信憑性はかなり高いと思う。70%くらいは信じられるかな、全然悪くない賭け。

 

仮に嘘だったとしても……特に何も出来ない気がする。いやまぁ試験内容がハッキリ分かってないけど、堀北学が居て最下位になるとかいう可能性あんのかね?それは正直分からん。

 

俺としては、全然信じて良い情報だと思った。ただ単に『堀北学はすごいぞ!』ってだけの情報かもしれないし。

 

もちろん、龍園にはバス内ですぐメールを見せた。だからこそAクラス退学騒動で、ああいう着地点にしたんじゃないかな。『男子の指名順1位をよこせ』と。女子の方は譲ってたし、誰もが妥当な要求だと思ってた良い交渉だったと思う。

 

あぁ、責任者はもちろんやらないよ。やる訳が無い。もし詰められても『責任感が無いってやらせてもらえなかった』とか適当に言おう。

 

むしろ俺が『正直に言われた通り動いちゃうバカなのか?』を判別するための一文だったんじゃないのかとも思う。

 

あとはまぁ、単純に俺を排除する可能性を作りたかったかもしれないけどね。責任者をやらせることで。俺はそんなつもり無いけど、生徒会長からしたら俺の存在がそこそこリスクかもしれないし。

 

 

---------------------------------------

 

 

「……堀北学、お前のグループだ」

 

あ、指名が始まったっぽい。予定通り、龍園が堀北兄を指名した。ちょっとだけ悩んだフリしてたかな?

 

「ふむ、そうか。俺達のグループは人数は少ないが良いのか?」

 

「構わねぇ」

 

確かに人数は最大数じゃないらしい、12人かな?みたいだけど、落第生ばかりを集めたという様子でもなさそう。

 

「意外と堅実なんだな。もっと面白いヤツかと思ったぜ」

 

「フン、知るか」

 

この龍園の無礼っぷり、変わらないのが初めて頼もしい。あと1年以上は生徒会長やるであろう相手にもそれ言えるのすごいよ。

 

「僕達は………。3年の、そちらのグループでお願いします」

 

次にDクラスの平田が結構しっかり悩んでから指名した。まぁ交流関係めちゃ広いだろうし、そう間違った選択もしないでしょ。

 

「平田、大丈夫なのかよ……。南雲会長のグループまだ余ってんのに」

 

なんか不安そうな声が聞こえてきた。

 

「南雲会長のグループ……不自然なほどAクラスが居ないな」

 

どこかからそんな呟きが聞こえたけど、南雲が自分をハズレの小グループにしてあるっぽいってこと?……何か企んでるのかもね。他グループを勝たせて、自分をエサにするとか?

 

いや分からん、なんだそれ。あんまり関わりたくねぇなぁ。正体を探って実情を知りたいとは思うんだけど、今回は女子も絡んでないから距離を置きたい。

 

「えっと僕達の所は……郷田先輩の居るグループ、お願いします!」

 

3組目、一之瀬クラスの、ちょっと小柄で元気な感じのやつ、柴田だっけ?が恐らく2年のグループを指名した。……あれ?2年と3年って学年問わず選んで良いんだ。1年と3年2つのグループとか、2年が2つのグループとかいう組み合わせもあり得るのか。

 

……そう考えると、自然と1年の6グループが指名する形になったのかもしれないね。1年が3つ集まった大グループとかになったら流石に不平等すぎな気もするし。

 

あと、こういう形なら『3年の最下位グループ』『2年の最下位グループ』とかいう最弱グループにならずに済むっぽいな。それぞれ6グループ、計12グループから順番に選んでいくから、ハゲは6位と12位で選ぶだけだ。6位指名によっては最下位回避も可能性見えてくるね。

 

4組目、5組目も指名が終わり、やっと我らがハゲの指名順だ。マシなの選んでくれよ~。……いつの間に俺も応援しちゃってんな。まぁ仕方ない。

 

「それでは……、南雲先輩のグループでお願いします」

 

「あぁ、よろしくな」

 

おいおいマジかよ……。よりにもよって。そりゃ流石に南雲が居るグループが7位指名以下、後半まで残るっていうのは考えにくいかもしれないけどぁ。

 

 

---------------------------------------

 

 

2回目のハゲ指名も終わり、ってまぁ残ってた3年を選んだだけなんだけど、そうして全12位までの指名が終わり、合計6つの大グループが結成された。見た限りどこも1,2,3年の混合グループになってるっぽいかな。

 

俺は2年の南雲達、そして3年のあんまり元気が無いように見えなくもない小グループが配置された大グループになった。……3年はDクラス中心で、流石にもうAクラスの可能性がまったく見えないから、とかなのかな?

 

いやまぁAクラスになれなくても、流石に3年近くやってきて、あと2ヶ月ちょいで卒業っていうタイミングで退学にはなりたくないだろうから頑張ってくれると思うけどね。

 

「堀北先輩、偶然にも別々の大グループになったことですし、1つ勝負をしませんか」

 

なんだ?グループ決めが終わった所で、割りとみんなに聞こえるように大声で挑発し始めた。そして3年っぽい生徒からは溜息とかが聞こえてくる。

 

「南雲。これで何度目だ、いい加減にしろ」

 

なんかデカい先輩が出てきた。

 

「何度目とはどういうことでしょうか?藤巻先輩」

 

「おまえがそうやって堀北に対して勝負を挑むことに、これまで口出しすることはしてこなかった。だが今回は1年を含めた規模の大きな特別試験だ。おまえ個人のオモチャにするような行為を認める訳にはいかない」

 

ホントだよ。巻き込むんじゃねぇカス南雲。

 

「どうしてッスかね。この学校では1年も3年もありませんよ」

 

「は?あるだろ」

 

あっ、……幸い俺の呟きは届かなかったみたい。離れてて良かった。

 

「誰が誰に対して宣戦布告することもおかしな話じゃないでしょ。特別試験のルールブックにも禁止とは書かれてなかった」

 

なんだよ宣戦布告って、キメェな。

 

「基本的なモラルの話をしている。書かれていなくともやっていいことと悪いことがある、当然のことだ」

 

ちゃんとしてる先輩だ。葛城の進化形っぽさある。

 

「俺はそう思いませんけどね。むしろ同じ学年の争いだけを望んでいる先輩達こそ、在校生の伸びしろを阻害する邪魔者じゃないスか?」

 

「生徒会長になったからといって、何でも許される訳じゃない。おまえこそ越権行為だと自覚しろ」

 

「そう思うなら自覚させてくださいよ。なんなら藤巻先輩も相手にしましょうか?一応3年Aクラスのナンバー2ッスよね」

 

ニヤニヤ笑いながらポケットに手を入れて挑発する南雲。うわぁ、キモいキモい……。クソ傲慢野郎だ。

 

そんな様子を見た3年の数人が前に出ようとしたが、その動きを堀北兄が制止した。

 

「俺はこれまでおまえの要望を断ってきた。それが何故だか分かるか?」

 

「そうッスねぇ。友人たちは俺に負けるのが怖いからじゃないか?と言うんですが、流石にそれはないでしょう。堀北先輩は俺が見てきた人間の中でも最も優れた人だ。負けることを恐れたりしないし、そもそも負けるなんて思っちゃいない」

 

負けを想定してないで『最も優れた人』な訳ないじゃん。不思議なこと言うね。

 

「……。」

 

そんな意味不明な演説をする南雲を、元会長の堀北は黙って見てるし、2年っぽい奴らの大半はウットリした目で見てる。キモい。友人というか、恩人、尊敬するライバルを見るみたいな目。なんだ?洗脳でもされてんのか?

 

「単純に藤巻先輩と同じ。無益な争いを望まないからッスよね」

 

「おまえの好む争いは他人を巻き込みすぎる」

 

「それがこの学校のやり方であり、醍醐味でもあると思うんですが……。まぁ見解の相違ですね。何にせよ、俺は体育祭のリレーでなら、逃げ場のない勝負が出来ると思ったんですが、惜しくも実現しませんでした。こっちは欲求不満のままなんですよ」

 

「うわ……」

 

クソホモか?気持ち悪ぃな。また声出ちゃった。

 

「2年と3年で勝負することに意味のある試験だとは思わない」

 

「そうでしょうね。先輩はそういう人だ。だけど俺は、あくまでも元生徒会長と現生徒会長の個人的な戦いを希望してるだけです。あなたはもうすぐ卒業していなくなってしまう。その前にあなたを超えることが出来たのかどうか、それを試したいんスよ」

 

じゃあ2人でチェスでも、殴り合いでも、ホモセックスでも、なんでもいいから好きにやりゃいいじゃん。マジで俺らを巻き込むんじゃねぇよ。クソ迷惑な……。

 

「何をもって勝負とするつもりだ」

 

ん?なんか3年が乗り気になった堀北学に驚いた様子を見せた。そんなに何度も断ってたのかね?

 

「どちらがより多く生徒を退学させられるか、というのはどうでしょうか?」

 

は?死ね!……当然ながら1年、3年からどよめきが上がった。

 

「冗談はよせ」

 

「面白いと思うんですけど、今回はやめておきましょう。真面目に提案させてもらうなら、どちらのグループがより高い平均点を取れるか。シンプルですが分かりやすいかと」

 

「なるほど。それならば受けても構わない」

 

俺は死ぬほど嫌だけどな……。めんどくさい。

 

「ありがとうございます。先輩なら引き受けてくれると思ってましたよ」

 

「ただし、あくまでも俺とおまえの個人的な戦いだ。他を巻き込むな」

 

ん?……俺サボってもええんか?

 

「巻き込むな、ですか。しかし特別試験の方法からしても、相手グループの足を引っ張るよう仕向けるのはひとつの作戦だと思うんですが」

 

「それは試験の本質とは程遠い。あくまでもグループでの結束力を問われるもの。間違っても相手グループの隙を突き、撹乱していくものではない。俺の言った条件が飲めないのなら、この話を受ける気はない」

 

うーん、最強メガネの方が好きだ。本人達の意思に関係なく巻き込むのは最悪すぎるからね、ありがたい条件提示だよ。

 

「勝つために堀北先輩の駒を攻撃する方法はなし、ということですね。それでいいスよ」

 

「こちらのグループに限らずだ。他の生徒を転がすようなやり方は認めない。おまえが何かしらに関与したと判明した時点でこの勝負は無効とする」

 

「さすが先輩。見逃してはもらえませんね。堀北先輩のグループ以外に協力を求めて、攻撃を仕掛けさせる、という手も考えていたんですが……」

 

ダメに決まってんだろ。日本語能力が無いんか?

 

「当然認められない」

 

サンキューメガネ。

 

「分かりました。勝負を熱望してるのは俺だけのようですし、ある程度の条件は飲みます。あくまでも正々堂々、どちらがよりグループの結束力とやらで高い点数を取るか。その勝負をしましょう。先に言っておきますが、勝った負けたにペナルティを設ける必要はありませんよね?あくまでもプライドを賭けた戦いということで」

 

さりげなく保険かけてんのか?負けても何にもならないようにって。意外とチキンだな。

 

「……。」

 

ん?堀北兄の方は何も答えなかった。なんでそこで無言になるんだよ?……コイツもやっぱ、何か変なのかも。

 

『プライドを賭けた戦い』とかキモいこと言われたけど、別に勝っても負けてもどうでもいいからプライドに影響も無い、とか?

 

まぁ、何にせよ、……クソほど面倒な事に巻き込まれちゃった。南雲のせいで。

 

俺としては堀北兄のグループが1位取ってくれたら龍園達がCP稼ぎまくってくれるから、勝ちたい理由が特に無い。めちゃくちゃ負けたい。5位になりたい。

 

南雲があそこまで言って最下位になるとは思いにくいし、様子を見ながらサボろうかな……。

 

しかし『堀北学を全体1位にする』って裏で決めてるってことは、南雲は2位以下になるつもりってことでしょ?……どういうこっちゃね?

 

まぁ……別に最下位じゃなきゃ何でも良いけどね。少しだけ気になる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。