ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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坂柳との意見交換

金曜日の放課後。フライデー

 

前回のAクラス勉強会からちょうど1週間が経ち、また今日もAクラス勉強会に参加させてもらう。なぜか今日になって突然テスト範囲がかなり変更されたのもあり、是非とも坂柳に教えてもらいたかったりする。

 

アルベルトとは月から木まで4日も続いたので、今日は休みにしようと言ってある。……本人がやる気なら土日もちょっと勉強会しよう。範囲変更が地味に痛い。多分、大丈夫だとは思うんだけど。

 

確かに『熱心に少しでも多く勉強させたい』という学校側の意図があるとしたら、この途中でのテスト範囲変更は正しいかもしれないが……、凄まじく迷惑だな。まともに勉強してたこの1週間どうしてくれんの。今日を含めてあと13日、流石にまた来週金曜に、あと1週間切った状態で再々度テスト範囲変更なんてされたらやべぇぞ……。

 

「お邪魔しまーす……」

 

Aクラスの教室に入る。内装から席の数まですべて一緒のはずなのに、なぜか空気がちょっと違うように感じられる。不思議だ。……掃除の質の差か?

 

「……また君か」

 

「おいっす」

 

名も知らぬAクラスのメガネマンがまた話しかけてくる。名前……知らない。覚える気もない。

 

「こんにちは、浅井くん。今日も来たんですね」

 

「おっす坂柳、今日も可愛いね~!」

 

「……どうも」

 

ちょっと勇気を出して言ってみたが、全然喜んでる様子が無い。まったく変わらないいつもの笑顔だ。

 

「えっと、坂柳、クラス分けの面白い分類を見つけたから勉強会の後で意見聞かせて欲しいんだよね」

 

「……えぇ、分かりました。楽しみにしておきます。では、始めましょうか」

 

そして俺にとって2回目のAクラス勉強会が始まった。

 

 

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「では、そろそろ終わりましょうか。続けたい人は続けてもらって構いません」

 

ジャスト2時間くらい。……今日は特に質問も出来なかった、せっかく来たのにちょっと勿体無かったな。テスト範囲変更が今日発表されたせいで、その範囲内での難問なんてまだ確認出来ていなかった。まぁ……仕方ないか。

 

「……それで、浅井くん。クラスの見分け方とは?」

 

そうだそうだ、坂柳がどう思うか聞いておきたかったんだ。

 

「これ俺が見つけたやつだからね?横取りしちゃダメだよ?」

 

「……はい」

 

適当にもったいぶったが、ちょっと真面目な顔で返してくれる。……反応は嬉しいけど、無駄にハードル上げすぎたかも?

 

「えーっとまずは……、あ、坂柳はハリーポッター読んだ?」

 

「?……はい、英語版だけですが目を通しましたよ」

 

「英語版!?ひぇ~」

 

やっぱ学年一の頭脳ともなればそういうレベルなのか。すっげ。

 

「それで、ハリーポッターがどうしました?」

 

「うん、あの作品内でのホグワーツの組分けがかなり当てはまると思ったんだよね」

 

「……なるほど」

 

えっ、理解が早すぎません?何も説明してないのに納得されちゃった気がするけど……、一応伝えておこう。

 

「Aクラスはレイブンクロー、そもそも成績が良かったり、こうやって自然とクラスの大半が勉強会に参加したりすることからも『知性』を重んじるクラスに見えるんだよね」

 

「……理解できます」

 

周りも数人聞き耳を立てているっぽい。……ちょっと言いにくいけど言っちゃおう。

 

「んでもって……、Aクラスは他クラスを見下す感じとか『傲慢』として、ついでに他クラスと関わる気があんまり無い感じが、ちょっとだけ『根暗』っぽさあるかも。あえて弱点言うとしたらそこかもって思ったよ」

 

「ふふふ、面白いです」

 

坂柳は本当に面白そうにしてるが、周りからの何か言いたげなキツイ目線が痛い!

 

「次にBクラス、ここは完璧にハッフルパフだね。『調和』を重視して『優しさ』を表すクラス。……んでもって、それがそのまま弱点になって『間抜け』的な所がありそうかな」

 

「ふふ、そうかもしれません。それで、Cクラスは?」

 

「Cクラスは、まず雰囲気だけでもスリザリンだね。『純血』なんて現実に無いけど、それでも組織内の『団結』とかはあるかもしれない。んで何より『狡猾』って感じが……龍園にはあるかな」

 

「ふむ……」

 

考えてみると龍園はまだ対外的に何もしてないってことになってんのか?クラス対抗戦をかなり早い段階で聞き出してたり、そういう情報収集での狡猾さは流石に伝わってないか。……あれ?言い過ぎてないよな俺?大丈夫か?

 

「えーっと、Dクラスは……アズカバァン!」

 

「ふふっ」

 

わざとらしく言ったら笑ってくれた。見たか龍園、これが正しい反応だ。

 

「気持ちよくDクラスはグリフィンドールって言いたかったけどさ……、どうにも『勇敢』って感じも無いんだよね……。『考えなし』の『バカ』って言ったら当てはまるかもしれないんだけどさ。まぁ、まだ入学から2ヶ月も経ってないからイマイチ分からんわな」

 

「そうですね、確かにDクラスには色んな特徴のある人が居ますが……、全体としての統一性は無いように思えます」

 

「そうそう、だからアズカバンだね」

 

「ふふふ」

 

「……ちょっといい?」

 

お、坂柳の従者っぽい神室じゃんか。

 

「なに?」

 

「Aクラスが学力重視、Bクラスが人間関係を重視ってのは分かるし、Dクラスが寄せ集めっぽいってのも分かるんだけど……、アンタの居るCクラスはどういう生徒が多いのよ」

 

えぇ……、直接聞いてくんのか?一応敵対組織なんじゃないの?Aクラスに来てる俺が言えたことじゃないが……。

 

「うーん、ウチは……アホが多いね」

 

「はぁ?……誤魔化してんの?」

 

「いやいや。リーダーやってる龍園なんかまともに勉強してないアホだし、石崎とか不良上がりのアホっぽすぎる奴らも結構居るし。伊吹なんて可愛い顔して男みたいな口調ばっかのアホだし。勉強は出来る椎名ですら、ちょっと空気読めずに妙なアホっぽさあるし。……アホのクラスだね。アホじゃないのは真面目で性格も良くてムキムキのアルベルトだけだよ」

 

いや……、アルベルトも龍園をめちゃ好きっぽいのはアホだな。

 

「ふふふ、浅井くんはどうなんですか?」

 

「俺?フフフ……、俺に欠点は無い!」

 

「……アンタ、バカでしょ」

 

おぉ、神室はしっかりツッコんでくれる良いヤツだな。

 

「まぁ、マジな話、クラス対抗戦って判明してからも他クラスと交流しようとしてる俺はちょっとアホかも?っていう自覚はあるよ。あとはまぁ、ついついやっちゃう衝動的なアホさもあるね」

 

ついつい龍園を殺しかけちゃったり、先日ついつい図書館で堀北に怒鳴りつけちゃったり。……実際にやってる事だけ見たら龍園よりアホかも?いやそんなバカな……。

 

「……Cクラスの特色は他に何かありますか?」

 

坂柳からの質問、ちょっと緊張しちゃうな。情報収集だろうけど、変なこと言ったらCクラスにダメージになったりする?うーん……、でも答えちゃう!だって俺はアホだから!

 

「そうだなぁ……。もしかしたら、暴力への慣れが他クラスより多いかもしれないかな」

 

「暴力、ですか?」

 

「うん、まぁ言い換えちゃえば、単に不良っぽい生徒が多いってだけだけれど。それに加えて上が龍園だから、他の生徒もそういうの見慣れちゃってるね」

 

「ふむ、そうですか……」

 

「神室もCクラスに入れそうだね」

 

「は?」

 

ほら、その殴ってやろうかと言わんばかりの視線よ。ウェルカムだよ~。

 

「んで坂柳は組分け判定っぽいっての、どう思った?」

 

「……えぇ、大変興味深いですし、かなり納得いく部分も大きかった面白いお話でした。ありがとうございます」

 

見たか龍園、これが上に立つ人間としての完璧なリアクションだ。見習え!

 

「そこで、情報をもらってばかりでは何なので……、私から見たDクラスがどうかをお伝えしましょう」

 

「おっ!やったぜ」

 

良いじゃん。俺が知る限り、人生全体で会った中でも一番頭が良い人間っぽいのが坂柳だ。どういう意見でも多分嬉しい。

 

「Dクラスの生徒は良くない劣等生の集まりと思われていますが、数人は飛び抜けた才能やポテンシャルを持つ生徒が居ます。その代わりに何か欠点を持ち、『今のままでは良くない』という判断をされるであろう生徒、そういう人達が多いクラスと見ています。そして、クラスの半数以上は『成績では測れない特徴を持つ生徒』だと睨んでいます。……私が言うのもなんですが、何の特技も特徴もない、ただの劣等生が入れる学校だとは思っていませんので」

 

坂柳のかなり真剣な表情、初めて見たな。こちらも自然と緊張してしまう。

 

「つまり、Dクラスは『不良品の集まり』ではなく『指導の余地がある生徒達』という可能性が大きいのではないかと、そう睨んでいます。そのために、Dクラスには他クラスより多くの苦難、強いストレスを与えて叩き育てようとしているのかもしれません、ここは教育の場ですから。……そして、DクラスはAクラスより多くの手が加えられる可能性が高いとも考えています」

 

なるほど、学校側からしたらそりゃダメな方に多くの手間をかけるか。それは盲点だった。

 

「確かに、Aクラスなんて放っておいても勝手に成長してくれそうだもんね」

 

「ふふ……、えぇ、その通りです。ただし、現時点でAクラスの方が優れているのは明白だとしても、今後Dクラスが成長してどうなるかは分かりません。そして……私はAクラスの良き敵になってくれるようにも願っています」

 

「んはは、怖い笑顔だよ坂柳」

 

めっちゃ競争好きっぽいな。どこぞの戦闘民族かな?

 

別に隠すつもり無かったけど、Dクラス生徒が『短所持ち優等生』か『長所持ち劣等生』かの2パターンっぽいってのも話しちゃっていいか、ここまで把握してるなら。

 

「この前ちょっと図書館でDクラスの生徒と仲良くなったんだけどさ、そこでDクラスの選抜基準っぽいのあるかもって思ったんだよね。1つは『優等生だけど短所がある』で、もう1つは『劣等生だけど長所がある』っていう」

 

「……そうですね。理解できます」

 

「堀北なんていう女生徒は性格が死ぬほど酷いから分かりやすいんだけど、ただこの2パターンに入らないっぽい生徒も多いんだよねぇ……。櫛田とか平田とか。んで、もしかして今は欠点無いけど、昔なんかやらかしちゃったんじゃない?なんて思ったりしたんだよね。人間関係で周りが暴走しちゃった、とか」

 

「……過去何かあって、それが本人の短所として認識されている可能性があると?」

 

「うん。でなけりゃ櫛田平田がDクラスに入ってるの納得出来ないんだよなぁ……。まぁ、まだ入学してそんなに経ってないから表面的な顔しか見れてないかもってだけだけどね」

 

ついでに言えば同クラスでもないし、見えない部分が大きいだろう。

 

「もし、その2パターンでの選抜基準があるとしたら、特徴が無さそうな生徒にも、何か優れた部分があるのかもしれませんね」

 

あれ?なんか俺への返答というより、周りに言い聞かせるような感じで言ったな。Aクラスだからってあんまり調子に乗るなよ的な意味?Aクラスのリーダーとしてやっぱそういう部分で困ってるのかもね。

 

「そうそう。……ただ、1人さ、長所も短所も無いっぽいDクラスのヤツ居たんだよね。本当に良く分からんやつ」

 

「……なんていう生徒ですか?」

 

あれ?意外と興味あるのか。

 

「綾小路とかいうやつ。勉強もそこまで得意じゃないらしいのに、何か特技があるわけでもないらしいし、短所も……あえていうならほぼ全部というか、社交性とか?」

 

「そうですか……」

 

「もしかしたら……、アイツ……」

 

「……」

 

なんかすごい興味あるみたいだな。変なの。

 

「裏口入学なんじゃないかな……」

 

「…………そういうことでは、無いと思いますよ」

 

坂柳が呆れた顔をしていた。えー?ありえると思ったけどなぁ……。言ってしまえば俺も裏口入学みたいなもんだし。

 

「そう?まぁ、こうやって何も情報を明かさない、特技を明かさないのが特技かもしれないね。……そんなん訳分からんけど」

 

「……。」

 

あれ、もう20時近いな。かなり話し込んでいたようだ。

 

「じゃあ、俺は腹減ったからそろそろ帰るね」

 

「えぇ、今日は面白い議論が出来ました。ありがとうございました」

 

「いえいえ。んじゃ!」

 

そう言ってAクラスの教室から退室したが……、もしかしてAクラスに残っていた10人位みんな俺たちの話を聞いてた?そんなことないか?うーん邪魔しちゃったかな。それとも予想以上に面白かったかな?

 

ま、ええか。俺がうるさかったとしても、それを止めなかった坂柳の責任だろう。

 




次回の更新予定は11月1日です。多分。
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