ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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規律性

「話は聞いた!人類は滅亡する!!」

 

「うるさい」

 

昼飯時、こんにちは。相変わらず伊吹と仲良くなれてるのかイマイチ分からない俺は浅井虎徹です。

 

「伊吹は今朝のやつ見た?」

 

「……見たけど」

 

間違いなく今1番盛り上がってる話題でもある、嘘まみれ新聞。今日は2号。

 

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【日刊半分嘘新聞】 No. 20002号 

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この新聞は、半分が事実です。

この新聞は、半分が嘘です。

 

本日は5つの情報をお届けします。

 

 

① 橋本正義はバイセクシャル

 

② 鬼頭隼は食人経験がある

 

③ 浅井虎徹は暴力団関係者

 

④ 櫛田桔梗さんは可愛い

 

⑤ 龍園翔は人を殴り殺して川に捨てた過去がある

 

 

以上です。

 

また明日お会いしましょう。

 

 

情報募集してます

Email:[email protected]

 

誰か分からないようにちゃんと匿名アドレス取って、そこから送信して下さいね。

 

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「今日のだと何が気になる?」

 

「別に……。アンタのやつはマジなの?」

 

「んはは!さぁ、どっちでしょうか!?」

 

「ふん」

 

聞いた癖に、どうでも良さそうな感じだ。まぁ俺が何を言っても別に信憑性無いからかな?

 

「伊吹はどう思ってる?この状況、変な嘘が流れまくってる感じ」

 

我らが龍園クラスですら、小声で噂について話してたりするからね。まぁまぁ話題になってるのは間違いない。

 

「……どうせアンタ達でしょ」

 

鋭い、その通り。ほぼ俺だけど。

 

「違うよ!俺じゃないよ!?信じて!俺は世界平和を願ってるよ!?」

 

「……。」

 

冷たい目線だね。

 

「それは置いといて、どれが本当でどれが嘘だと思う?ほらこれ2枚」

 

出した2枚のプリントを軽く見ただけの伊吹は、

 

「ふん。どうせ全部嘘でしょ」

 

「おぉ……やるねぇ」

 

いや、マジで良く気付いたね……。ちょっとビックリ。全部が嘘という訳ではないんだけど、その可能性を1番に考えるのは偉いな。マジで。

 

「これ、嘘だったとしても、それを言われた人間の印象が悪くなるのがタチ悪い。考えてるヤツ、めっちゃ性格悪いでしょ」

 

そう言いながら軽く睨みつけてくる伊吹。

 

「……多分、ソンナコトナイヨ?」

 

「ふん。アホ」

 

めちゃくちゃバレてる感じあるね。別に良いけど。

 

 

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内容としては、本当か嘘かって、それはどうでもいいんだよね。『もしかしたら』と思わせた時点で目的は達成という。

 

「あ、1つ聞きたいのあった。昨日の坂柳ニュースどう思った?寿命が数年ってやつ」

 

「……寿命は嘘だとは思う。けど、体が弱いっていうのはホントだと思うから、なんか、可哀想」

 

「うん。まぁ、そうだよね。……やっぱ優しいよね伊吹」

 

「……。」

 

「あれ?なんで?」

 

軽く睨みつけられた。ここはちょっと照れる場面ちゃうんか……。

 

「でも、やっぱ坂柳が一之瀬イジメをしてたってことなの?アンタが昨日Aクラスに行って終わらせたとかいう話じゃん」

 

伊吹まで知ってんのかい。思ったより学年に広まっちゃってんのかな。

 

「まぁ、証拠は無いけど、状況的にそうだと思うよ」

 

「ふーん。……性格悪いんだアイツ。あんまり目立ってないけど、葛城の足を引っ張ってたのも坂柳なんでしょ」

 

「性格が悪いって、まぁ、そうとも言えるのかも?」

 

「体が悪くて、性格も悪いって。いくら頭が良くても、Aクラスなのがちょっと変かも」

 

「え?……そう?」

 

「私以外にも思ってるヤツそこそこ居るでしょ。一応はエリートを集めたクラスで、なんで坂柳も居るんだ?って。……バランス調整とかいう話もあったけど」

 

えー!?

 

「いや俺は坂柳ほどAクラスに相応しい人間も居ないと思うけど……。えっ、マジか」

 

「……なんで?」

 

「坂柳がAクラスの理由?」

 

「そう」

 

「そりゃ……。もしかしたら、みんな『Aクラス』っていうのを過剰評価してるんじゃね?そりゃクラスごとの色もあるけど」

 

「色?」

 

あれ?言ってなかったっけ。あ、ハリポタに例えて言ったのって龍園にだけか?

 

「そう。初期Aは真面目タイプ。初期Bは仲良しタイプ。我らが初期Cは手段を選ばない極悪非道タイプ。そして初期Dは……バカ達なのかな」

 

レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリン、グリフィンドール。Dだけ質が悪いのが露骨に多い気もするけど。

 

「……。」

 

「ただ、それと別に、絶対的にあった基準っていうのは『規律性』だけだと思うよ。『ルールをどれだけ守れるか』って」

 

「どういうこと」

 

「入学してからの1ヶ月、ノーヒントで『どれだけルールを守るか』によって、CPがどれだけ減点されるかが決まって、それでクラスが決まった訳じゃん?結局、ABCDのクラス分けなんて、規律性のある生徒をABCD順にして、その上で学力と身体能力の総合バランス良くしただけなんだと思うよ」

 

理屈の上では、最初の1ヶ月でクラスがどこになるか自分達次第で決められたというのはある。

 

「まぁ……。分からなくもない。基本的に『行儀の良いヤツ』順にクラス分けされたっての」

 

「おぉ、分かりやすい表現するね。行儀の良さ順」

 

「私達だって、……いや、なんでもない」

 

口ごもったけど、まぁそうだよね。俺達のクラス、荒っぽいのが妙に多い自覚は当然みんなある。

 

「俺達が不良っぽいの多くて、Bクラスは良い子達だけど仲良しすぎてルール軽視することありそうだし、Dクラスはルール守った事が無いようなヤツが多かったんじゃないかな?」

 

5月にCPゼロになってたの、学級崩壊したんかってレベルだもんね。

 

「そして、Aクラスは、とにかくルールを守るヤツ」

 

「そうそう。結果として、ルールをしっかり守るような真面目タイプだと、勉強もちゃんとするし、運動もちゃんとするから、文武両道タイプっぽいのが多くなって、総合力が高くなってる……っていうのが現状だと思うよ」

 

「まぁ、そうかも。例外も居るだろうけど」

 

「バランス調整のための例外、クラス競争を成り立たせるための配属はその通り間違いなく居ると思う」

 

「うん」

 

櫛田、平田がすぐ思いつくし。あと逆にAクラスにも足引っ張るようなヤツ居るのかも?名前出てこないけど。

 

「あとついでに言うと、Aクラスの減点ゼロっていうのも、クラス内に坂柳の影響力があった上での結果かもしれないし、そうなると周囲にもルールを守らせるような規律性があったのかもしれないじゃん?そう考えたらめちゃくちゃAクラスに相応しいと思うんだけど」

 

「……だから、そもそもAクラスはエリートが集められた訳じゃないって?」

 

「俺はそう思うよ。『規律性』だけトップクラスを集められたと。良い子ちゃん達」

 

1年近く過ごしてきて、明確にクラスごとの差が生まれたのは最初の1ヶ月の結果だけだからね。そこから逆算したらそれしか明確な基準が無いんだし。

 

「坂柳の身体能力が低すぎても、問題ないって?」

 

「そういうこと。むしろ、どうしても真面目に両方出来ちゃうタイプが集まりやすくなっちゃうからこそ、ハンデを持つ生徒を入れて、学年全体のバランス良くして競合性を高めようとか思ったんじゃないかな。めちゃくちゃAクラスに相応しい頭脳がありながら、身体能力は最低レベル。学校としては、1番にAクラスにしたと思うくらいドンピシャな配置だと思うよ。そうじゃなきゃ他クラスが勝負にならないからね」

 

「つまり、Aクラスだけが勝ち過ぎないように、試験欠席が多くて減点されるような生徒を入れたってか」

 

「えっ?……そうなる、のかも?いやまぁ、そっか、試験の性質上かなりの割合で参加出来なくて、それそのままクラスの減点になるから……そうかもしれない」

 

総合ステータスのバランスだと思ってたけど、そういう視点もあるか。可哀想だけど、それ納得感が結構あるな……。坂柳にこれ言って煽ったらガチギレされそう。

 

「Aクラスだけがエリートかっていうのは疑問だったから、ただ規律性が高いっていうのだけがAクラス基準っていうのは、まぁ、分かる」

 

「そっか。良かった」

 

「けど……坂柳ってクラス内でリーダー争奪戦してたんでしょ?」

 

「ん?それは別に良いんじゃないの?何もルールは破ってないし。規律性とは別でしょ」

 

「納得出来ない」

 

えっ?

 

「なんで?」

 

「和を乱してるでしょ、そんなヤツ」

 

「それ別に……まぁ、乱してるかも?」

 

「無駄に争い起こして。どこが規律正しいっての」

 

そう言われると、そうかもしれないけど……。

 

「俺から見ると、坂柳は必要なことやってるだけで別に責めるようなもんでもない気がするんだけどね……」

 

「は?どこが?」

 

「ハゲと派閥戦争してたってのも、クラス内がゴタついたのは事実だったとしても、リーダーになるために力を見せる必要があったんだから仕方じゃない?」

 

「なんでよ?」

 

「身体能力で劣るんだから頭脳勝負で優位性を見せなきゃいけないんだし、そのためにちょっとした競争になるのは仕方ないと思うよ。何もなかったら何もさせてもらえないようなタイプだろうし、それを素直に受け入れるタイプでもないだろうし」

 

「……。」

 

「あと、優秀な方がリーダーになった方がクラスが強くなるのは間違いないから、少しくらい荒れてもメリットの方が大きいんじゃない?別に良い事だと思うけどね」

 

ヤクザの権力闘争なんかと違って、人が怪我したり死んだりもしないんだから、好きなだけやればいいと思うし。せいぜい人気集めみたいな事でしょ?

 

「……なにそれ」

 

あれ?不満顔だ。

 

「あと、その時期にCP減点されてない事からも、ルールは間違いなく守ってやってた訳じゃん?やっぱり『規律性』は最大評価されておかしくないと思うけどなぁ」

 

「絶対に裏では何かやってたでしょ。バレなきゃいいって?」

 

「そりゃ、何してもバレなきゃやってないのと同じでしょ」

 

「は?」

 

あれ?違うの?

 

「坂柳に関して言うと、ルールを守る精神は最大限あるからこそ、今回の一之瀬イジメの件でも証拠を残さないように動いたんだと思うよ。結局、誰も何の証拠も掴めてない訳だし。状況的に99%だったとしても、推測でしかないからね」

 

「……。」

 

この思考に関しては、坂柳と比べて俺なんかめちゃ雑だね。『どうせバレる』『バレても仕方ない』くらいに思ってる所ある。龍園だって別にバレるのを怖がってないだろうし。

 

「一之瀬イジメだって、現状Aクラス最大の脅威を排除するために動いてるんだから、そりゃそうだろと思うけどね俺は。ごくごく普通の行動というか」

 

気になるのは、ただ悪評を広めた所で、そんなので一之瀬が潰れるかね?という疑問。なんか裏情報を握ってるような気がするけど、そもそも一之瀬が潰れるほどの情報なんてあんの?とかも思ったりする。

 

「性格が悪くても、ルール守れば他人を攻撃して問題ないって?……そんなのクズでしょ」

 

「んはは!……あれ?マジの感じ?」

 

結構本気でキレてる?

 

「アンタも同類だろ」

 

「えぇ?いやまぁ、うーん?……何にキレてんの?」

 

「ハァ……。人をイジメて、不登校にさせて。そんなクズが、バレてないから許される?ムカつくね」

 

「えっ?一之瀬って不登校になってんの?」

 

「そうだよ」

 

マジかい。それは可哀想。

 

「それは知らんかった……。そして、まぁ、それなら怒るのも分かるけど……、残念ながら世界ってそういうもん、だよ?」

 

むしろ俺なんて善人なんだけどね……。今回なんてただの嫌がらせレベルで抑えてるし。

 

「……。」

 

「龍園みたいに堂々とルール破りまくってる人間より、徹底してルールを守ってるように見せてルール破ってる人の方が怖いでしょ。警戒させないし、思考幅も別に狭くなってないというか。世の中の悪人なんて大半がこういうタイプだと思うよ。バレないようにしたり、ヘイトを集めるデコイ使ったり」

 

そういうのに関しては、龍園はステレオタイプというか、堂々と分かりやすい悪役で愛嬌あるよね。

 

「デコイ?」

 

「あー、囮のこと。おとり捜査とか言うじゃん。代役というか、怒りの矛先とか注目が自分にいかないように自分より目立つ人を用意する感じ」

 

「こそこそ隠れて、人に責任を押し付けて、それこそクズじゃん。……自分のこと言ってんの?」

 

「え!?なんで!?いや違う違う!」

 

なんで俺も同類扱い?龍園に責任を押し付けてるように見えてんの?そんな馬鹿な。

 

「バレずに他者を攻撃していいと思ってるの、アンタもじゃん」

 

えぇ~、地味に傷付くんだけど……。俺そんなにやってきてないでしょ。いや今はめっちゃやってるんですけど。

 

「ん~、ハッキリ否定は出来ないけど……。でも、一応は日本を導く人材育成っていうなら、『他者を潰す強さ』みたいなの必要なんじゃないの?『攻撃なんて一切しません!』なんていう人間に国を率いられるとは思わないけど」

 

「ただの言い訳だろ。楽しんでる癖に」

 

キツいなぁ。まぁ、今ちょっと楽しんでるのはそうだけど。

 

「世界中の人間が一之瀬みたいだったら、他者攻撃なんてほぼ考えず過ごせるだろうけど、世界には龍園ですらザコでしかないような邪悪が沢山いるからねぇ……。俺は、坂柳みたいに他者を攻撃する強さを持つのは大事だと思うけどね。けど、やっぱ日本だと素直に嫌われちゃうのかな?それはちょっと可哀想」

 

価値観の違いってやつかな。

 

「ふん……。クズ」

 

いやまぁ、伊吹も根が真面目で優しいからこそ、そういう現実を認められないのかも。それは良い事だと思う。真っ直ぐな人というか。

 

……もうちょい俺にも優しければいいのにとは思うけど。

 

 

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昼休み終了間際、相変わらず行動パターンが意味不明な龍園が教室に帰ってきた。

 

「ねぇ龍園、学校運営側からの坂柳贔屓ってあると思う?」

 

もしかしたら坂柳の規律性評価、というかAクラス配属に裏事情もあったのかもしれないような気がしちゃって小声で聞いてみた。

 

「フン、どうでもいい」

 

「んじゃそら……。なんか教えてよ」

 

割りと慣れたけど、やっぱコミュ障だよねコイツ。

 

「チッ……。現時点で、Aクラスを潰す上で1番邪魔なのはアイツだ」

 

「それは俺もそう思う。1番の難敵」

 

葛城も優秀だけど、坂柳の方が圧倒的に何を考えてるか分からないし。何か仕掛けてきそうで怖いし。敵としては居ないで欲しい度が段違いに違う。……そうなると、やっぱAクラスが相応しい気がすんだよなぁ。

 

「鈴音と違って、身体能力勝負の場に出てこないのも潰しにくくて厄介だ」

 

うわっ……。

 

「引くわ~。どういう発想してんの?思考が物騒すぎるでしょ。頭ヤバいよ?」

 

あの弱々しい美少女を見てその感想はキチガイだろ。相変わらずだな。

 

「フン。坂柳さえ潰せば、言われた通りに動くだけの、思考力の弱いカスだらけの集団だ。敵じゃねぇ」

 

「ホントかよ……」

 

嘘くせぇな。たまにこういう傲慢さが出るよね龍園。

 

 

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午後の授業準備しようとしたら逆に龍園から話しかけられた。

 

「浅井テメェ、話はまだある」

 

「なんぞ?」

 

嘘新聞に書いた『龍園が人を殺したことある説』のことかな?それくらい良いじゃんか。学年全員が『ありそうだな~』って納得してるだろ。

 

「なぜ櫛田に責任押し付けようとした?聞いてねぇぞ」

 

「は?……え?マジで何の話?」

 

「てめぇ、本気か?……明らかな悪評が広められてる中で、1人だけ好意的な評価されてたらどうなると思ってんだ。アイツも疑われてんぞ」

 

あ、嘘新聞の事?確かに『櫛田桔梗は可愛い』ってだけ入れたけど、それ別に、

 

「ただネタが思いつかなくて、テキトーに入れただけなんだけど……」

 

「は?……馬鹿が」

 

え?櫛田が黒幕の1人みたいになっちゃってんの?

 

もしそうなら……それはマジで申し訳ないな。

 

一之瀬と同じようにスリーサイズのネタだと面白くないし、かといって悪評を広めて攻撃したいほど嫌いでもない。けど女性も居たほうがなんか良さそう、っていう理由で入れたんだけど、そ、そうなるのか……。

 

全く意図しない結果にもなっちゃったな。情報って怖いねぇ……。

 

いや現実逃避してる場合ちゃうわ。櫛田に謝る準備と、そろそろ俺が犯人として罰食らう準備するか。

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