クラス内投票
こんにちは、最近ひたすら勉強してる俺は浅井虎徹です。
学年末試験のために試験対策をやりまくってた上に、試験後も個人的に法律やら電子工作、化学の本を読みまくってた。図書室に居た受験生達と大差無いくらい勉強してると思う。
科学系の本を読んでると、なんだかんだ高校レベルの知識が必要で、教科書もかなり参考にした。ちょっとだけ学校の教育レベルを見直したよ、ちゃんとしてたんだなって。実学、実際に役に立つ学問に繋がるっていう経験はちょっと嬉しかった。
試験の方も学年末ということで、1年間がすべて対象で範囲が広かったり、微妙に難易度が上がってたりして大変だった。
けれど、石崎達との勉強会は手を抜かせてもらった。一緒に集まって勉強はするし、たまに質問されたら答えてたけど、わざわざテスト対策の自作問題を用意するのは今回やらなかった。
その分、金田がめちゃ大変そうではあったけど、まぁ良いでしょ。俺より適性あるだろうし。ついでに苦労してる姿が妙に似合うし。
龍園は、俺が勉強会にあまり関与しない事について何も言ってこなかった。意外と良いヤツ。そして例の件については『動くなら俺も協力してやる』『勝手にやるなよ』とか言ってもらってて、正直助かる。
なんか少し違和感あるけど、厄介でクソすぎる共通の敵ってことで協力してくれてるのかも。
1人で場を作るのは、正直……難しい。ほぼ無理な気がする。だから助かる。
色々考えてるけどね。何より、やっぱ直接、生で見せなきゃという思いもあるし。そのために、人が集まる場、そこを支配するための人員、そして南雲が乗るような誘いを考えなきゃね……。
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「おはようございます」
いつも通り真面目な坂上先生が来た……と思ったけど、あれ?少しだけ顔が険しい?
「何かあったんですか?坂上先生」
良い意味で空気をあまり読まない椎名が質問した。
「……まずは皆さん、学年末試験を無事に終えた事、おめでとうございます。赤点ゼロ、ゆえに退学者もゼロです。平均点も前回より上がってましたし、素晴らしい結果だったと言えるでしょう」
良い事を言いながら感情ゼロの表情だから全然おめでとう感が無い。……いや、無表情だけど、いつも通りか?
「しかしながら、皆さんに伝えなければいけない事があります」
なんとなく嫌な予感がする言葉だ。クラスにも緊張感が漂う。
「先日、1週間後の3月8日に1年次で最後の特別試験を行うと伝達しましたが、……今年は例年と状況が異なるということで、追加の、特例措置が取られることになりました」
うん?特例措置??なんじゃそら。
「はい、先生。状況が異なるというのはどう言う事でしょうか?」
金田が手を挙げて質問。偉い。
「本年度は、学年末試験が終了した段階でも、ただ1人として退学者が出ていません。この段階に進んでも1人も退学者が居ないというのは、本学校の歴史上、初となります」
「それは、……良い事なのでは?」
うん。みんなちゃんと勉強してたって事だよね。そう簡単に突破できるテストだけだった訳じゃないし。
「そうですね、素晴らしい快挙と言えるはずです。毎年退学者を必ず出していたDクラスだけでなく、初期Cクラスの我々としても珍しいと言える快挙です。喜ばしい事だと言えるでしょう」
「では、なぜ……?」
「我々学校サイドとしても、当然ですが1人でも多く卒業してくれることを願っています。しかしながら、……『予定が異なる』という問題が発生している、とも言えます」
なんだそれ?
「フン、退学者が居ないと困るってのか?」
そんなこと無いだろ。何言ってんだ龍園。
「……時に、一介の教師に過ぎない私には、関与できない事態になることもあります」
変なこと言ってるけど、それ以上に、いつものように龍園のタメ語を注意しないのが異常事態という感じを強くするね。
「それで、特例措置というのは……?」
「非常に急遽な話ですが、……本日、3月2日火曜より、追加の、特別試験を行います」
ホントに珍しく、言いたくない事を絞り出して言うような坂上先生だ。
「そんな……。まさか、退学者を出すための追加試験だとでも言うんですか?」
「えー!めんどくさいっすよー!」
本気で怖がってるっぽい金田と、まだイマイチ分かってなさそうな石崎。
「不満に思うのは当然でしょう。予定になかった特別試験でもあり、例年と比べて特別試験が1つでも多くなってしまう事が、生徒の負担になるのは明白です。そして何より、試験内容としても……。今回の件ですが、私だけでなく、他の先生方も、重く受け止めています」
『自分達も不満ですよ』というのを隠してないな。坂上先生がこういう感情を見せるの珍しい、初めて見たかも。そんなにヤバい試験なの?けど文句を言えない宮仕えのやるせなさ、みたいな。
いや、公立高校の教師ってだけだと宮仕えって言わないんだっけ?役所とかだけ?まぁなんにせよ、雇われ人として上には文句言えないんだろうな。
「それで、試験内容は何だってんだ」
「……今回追加される特別試験の名称は、『クラス内投票』と呼ばれます」
「クラス内、投票……?」
なんだそれ?人気投票でもすんのかね?
「ルールを説明します。本日より4日間が試験期間となります。クラスメイトに対して『賞賛』に値すると思った生徒を3名、『批判』に値すると思った生徒を3名、それぞれ選択して、3月6日、土曜日、試験当日に投票してもらいます」
「そ、それだけですか?どういう意味が……?」
結構せっかちだね金田。
「この試験のキモは、評価値による結果です。1つは、最も『賞賛票』による加点を集めた上、『批判票』による減点も少なかった、最優秀評価の生徒1人に対して、新制度『プロテクトポイント』というものが1つ付与されます。これは、ポイントの回数だけ『退学を無効にする』という効果を発揮します」
どよめくクラス。残機が1追加だもんね、生徒の大半が欲しがってそう。
「実質、退学回避のために必要な2000万ppに匹敵するものですね。……退学の恐れが無い生徒にとっては、それほど価値が無いかもしれませんが」
俺も要らないかな。退学の恐れはあるけど、退学なんてもう前提だし。……ってことは、もしかして、
「最低評価はどうなる、坂上」
敬語使えよロン毛。
「……評価が最下位となった生徒は、この学校を退学となります」
あぁ、やっぱり。
「えー!!!」
「うっそだろ!?」
「ありえない!なんなの!?」
「そんな、無茶苦茶な!」
「フン……」
いつも静かな龍園クラスですら騒がしくなるほどの意味不明さ。
「んふっ」
あっ……思わず笑っちゃった。確かに理不尽な試験だ。けれど、これのお陰で、俺が望んでる場を作るのが、一気に現実的になったと思う。
「教師である我々も、突如として告知された本試験についての不信感、理不尽だと思う気持ちはあります。しかしながら、既に決まってしまった以上、抗うことは出来ません。……この世は理不尽なものだと伝えるためなのかもしれませんが、あなた達に出来ることは、ルールに従って特別試験に挑む他ありません」
この、実力でもなんでもない、ただノリで生徒を削る試験ということで、先生側にも罪悪感が少しあるっぽいのも恐らく利用出来る。よしよし。
「ルール説明を続けます。生徒ごとの得票数は、試験終了時すべて開示されます。ただし、誰が誰に投票したかについては、永久に開示されません」
ふ~ん……。ってか、これ『クラス内投票』というより『退学投票』って表現の方が合ってるんじゃね?もっと言うと『処刑投票』くらいの話だ。誰か1人を犠牲にして他が生き延びようとするって構図、無人島かな?……太平洋戦争中の南洋のジャングルで飢餓地獄だった日本軍かな?
「そして『賞賛票』『批判票』のどちらも自分自身に投票することは出来ず、同一人物への投票も不可。そして投票の棄権も、体調不良による欠席も認められません。投票は必ず行ってもらいます」
ガチガチにルール決めてんな。そりゃそうか、みんなでサボって全員0票パターンを消したいのか。
「そして、今回の試験は、評価値の『首位』と『最下位』を1人ずつ選出させるのが目的です。もし票数が同値であった場合、決まるまで何度でも再投票が繰り返されます」
本来であれば、ここで学校側にブチギレてたかもしれない。『1人消すまで繰り返す』って、割りと意味不明すぎるからね。退学というムチで叩かれて頑張ってきたのに、特に理由も無く退学者を出したいって。頭おかしいよ。バカなん?
「決戦投票でも同数であった場合、学校側の用意した特殊な方法を用いますが、現時点での説明は出来ません」
今回の件、もし理由がコスト削減のためだったとしても、例年ちゃんと退学者が居るなら3学年全体で見たら大差無いはずだもんね。そもそも全員残ってたら困るコスト管理してるとしたら、それ自体がクソ過ぎる経営状況だし。試験開催の動機がイマイチ納得できない気持ち悪さはしっかりある。
「最後に、他クラス生徒への『賞賛票』も1票だけ投票してもらいます。クラスメイトに対して『賞賛票』を3票、『批判票』を3票、そして他クラス生徒に対して『賞賛票』を1票。合計7票、7名記入してもらいます。……説明は以上です」
みんな退学の恐怖に怯えてるみたい。だけど……今の俺にとっては100%完璧にラッキーイベントだ。クラスで1人だけ不安ゼロ、期待100の幸せモードだと思う。みんな、後で俺に大いに感謝したまえ。
心配すべきなのは……、他クラスからの干渉かな。わざと邪魔してこないと影響なんて誤差だから大丈夫だろうけど、万全を期さなきゃいけない。他3クラスも俺に『賞賛票』を絶対に入れさせないようにしないと。
他クラスからも「消えて欲しい」と思われるだけでいいんだし、……もしかしたら、既に達成してんじゃね?いやまぁ、過信せず交渉しておこう。
既に嫌われてるとしたら安心なんだけど、逆に南雲が邪魔してくる可能性があるんだよな。『退学して逃げるなんて許さない』『俺が叩き潰して退学させてやるから許さん』みたいな干渉。あぁキモい。
アイツからの干渉を超える魅力的な提案をしなきゃダメだな。本来ありえない退学前提の捨て身の交渉なんだし……色々と出来るか。
そしてあのクソでも納得するような理由を用意して、その上で最後に俺が逆襲するシナリオを見せる。正面から勝敗が付くような場を用意するといえば乗るかな?俺が『個人』で手段を選ばないと思わせ、俺に集中させて……。分からん。けどやるしかない。
何一つ手段を選ばず、思いつく限りの準備をしよう。今日入れてあと4日だけかよ。めちゃくちゃ忙しいな。少しはやれる範囲で作業してたけど、デコイの量産は誰かに手伝ってもらったりしなきゃ間に合わんな。
まずは、龍園に相談してから……、あと、坂上先生にもメール送るか。
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「よーっす、お邪魔しま~」
昼休みや授業中に、龍園とアホほどメモ用紙でのやり取りをしてからの放課後。Aクラスの教室に来たけど……おぉ、めちゃくちゃ鋭い視線だらけだ。
「何の用だお前、よく顔を出せたもんだな。デマを撒き散らしやがって、それを悪びれる訳でもなく」
「なんで怒ってんの?坂柳だってやってたじゃん。一之瀬イジメ」
元々は坂柳が初めた事じゃねーか。
「そ、それは……っ!」
「邪魔だよ、消えろ」
めんどくせぇんじゃ。
「お前……」
変な目で見られてるけど知るかそんなもん。
「坂柳~、来たよ~!」
俺が来てすぐ、モジャモジャ長髪頭の浮浪者みたいな鬼頭と、バイセクシャルの橋本が護衛のように俺を近付けさせないようにしてきた。
「呼んでませんが。……何の用だと言うのです」
あーあ、坂柳からの視線も痛いね。ツンケンされちゃってるけど、そこまで恨まれるような事したかね?
「例の投票に関して交渉したくて来たよ」
「……プロテクトポイントを付与されたとして、何をするつもりですか?”浅井”くん」
「え?……ん?」
虎徹呼びしてもらえないのは残念だけど、なんて?
「退学を無効化するポイント、そんなものをアナタに持たせようとするほど、私は愚かではありませんよ」
んん~?プロテクトポイントを持たせない、お前の退学を無効にさせないぞ?それほどバカじゃないよ、ってこと?
「……あぁ~!なるほどね、退学を無効化する、つまり『退学になるほどのこと』を何をするつもりかって?いやいや、そんなこと考えてないよ!」
やっぱ坂柳と会話すると予想外の思考を知れるからいいね。確かに、投票についての話で他クラスに来たとしたら、そう考えるか。
プロテクトポイントありきで『退学になるほどの破壊活動をする』って……なるほどなぁ。俺も南雲を殺すつもりが無かったら、そういうの考えても良かったかもしれない。
「では、なんだと言うのです。昼休みに校内アナウンスで呼び出されてたのは把握してますが、それと関係があるのですか?」
おぉ、話が早い。相談あるという名目で呼び出してもらって、軽く相談しただけのやつ。けれど、教師が私的利用されてるとは考えられにくいから、ここでの説得力が増す。
「そうそう。ちょっとね、育ての親でもある祖父が……ちょっと病気で倒れたらしくて。俺どうしても見舞いに行きたい。場合によっては絶対に最期を看取りたいから、俺が退学する事にしたんよ」
今頃同じような事を龍園がクラスで説明してる気がする。明日ちゃんと俺の口からも言うけど。
「……それは、本当ですか?」
「本当ですよ?」
いやまぁ、嘘なんだけど、それにしても疑うの早すぎない?
「疑わしいですね」
目を細めてる。流石の洞察力だけど、今はちょっと勘弁して欲しい。
「そもそも俺はAクラスでの卒業特権とか興味無いし、この学校に居る意味も暇潰しみたいなもんだからね。消えるとしたら1番最適でしょ?」
こっち100%本当の話だからね。退学枠になりたいのも本当だし。
「まぁ、そう、かもしれませんが……。あまりに判断が早すぎる気はしますが、私に引き止める権利もありません」
流石に信じてくれたっぽいかな。
「寂しい?」
「……いえ、別に」
「んはは!……それは、光栄なのかもね。消えてくれるの嬉しいって事でしょ?」
「……。」
否定せんのかい!
「まぁいいや。そういう訳で、Aクラスから他クラスへの賞賛票で、絶対に俺には投票しないで欲しいんだよね」
「それは、……確約できませんが、了解しました」
「おっと、もしかして『どうせ浅井が消えるなら他生徒を退学にさせちゃおう』『2人消せるぜ』みたいなやつ思いついた?それはやめてよ?」
「……。」
やっぱり。相変わらず頭の回転が速すぎるよ。俺も龍園に言われなかったら気付かなかったパターン。
「そこで提案なんだけど、連絡手段が完全に絶たれてるこの環境で、外部へのメッセンジャーになるよ。俺が。それをクラスメイトに伝えて欲しいんだよね」
「急な話ですね」
「今日を入れて4日しかないけど、逆に言えば4日もある。家族や友達、なんでもいいけど、メッセージを作る時間にはなるでしょ?意外とみんな何か伝えたいことあるんじゃない?流石に試験当日にやるの無理だろうから、期限は3月5日の18時までって事で。よろしく」
「ふむ……。何か条件、値段などは?」
「1人5000ppでよろしく。俺からクラスへの置き土産」
「手段は?」
「ん~、デジタル媒体で外になんとかして持ち出すつもりだけど、テキストデータにして欲しいね。ちゃんと宛先のメアドもしくは住所も明記して欲しい、みたいな。後でチャットで綺麗にまとめてから送るから、それ告知してもらっていい?」
「……えぇ、構いません」
「んで、言いたくないけど、これでもなお俺に『賞賛票』が集まって退学回避とかなったら、俺は退学するために何でもやるからね。覚えといてね」
「もしそうなったとしても、私達だけの責任ではないでしょう」
「そうだけど、他クラスにも同じ提案するし、それでもなお俺に『賞賛票』が集まったとしたら、それもう坂柳による組織票くらいしか考えられなくない?」
いや、正直に言うと南雲の影響で一之瀬クラスから、の方が可能性は高いけど。それはこれから直接なんとかするから、恐らく大丈夫。
「……仕方ありません。少なくとも、私の影響下にある生徒に関しては、アナタに投票する事は無いと断言しておきます」
「オッケー。ありがとう」
「ただし、アナタがクラス内の投票にて『批判票』を集められず、退学にならなかった場合は、返金してもらいますよ」
まぁ一応そのパターンもあるのか。
「それで大丈夫。オッケー、じゃあね」
「……。」
まぁ平気そうかな。これ以上は信じるしかないし、もし仮に俺の退学が『回避』させられたとしても、まぁやることは同じだ。クラスメイトには悪いことしちゃうかもだけど。
……いや、その退学も消せるかもしれない?ん~、どこまでやれるかは未定だ。やってみなきゃ分からん。前例があるはず無いことをするし、どこまで認めるか、まるで予想がつかない。
けどまぁ、やるだけだ。
あとは一之瀬クラス、堀北クラス、そして南雲と対面。その後は当日までの準備をひたすら間に合う範囲でやる。いやはや、忙しい忙しい。
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「どーも」
他2クラス、なんか変な様子になりつつある平田じゃなくて櫛田に伝えて、無理してそうな一之瀬にも同じことを伝えてから、生徒会室に来た。人払いしてくれたので、俺と南雲の2人だけ。
「オイ、どういうつもりだ」
キレまくってる様子の南雲。反射的にムカついて殴りかかりそうになるけど、我慢我慢。
「連絡が遅れたのは申し訳ないですけど、俺ちょっと退学させてもらいます」
「それがどういうつもりだ?って言ってんだよ。お前を挑発した後、俺に怒り狂ってたのは演技か?俺が恐くて逃げるってのか?」
お前の何を恐がるんだよ?キモさか?
「いえ。祖父が倒れたというのはマジですし、退学してでも見舞いに行きたいというのもマジです。仕方ないでしょ、育ての親なんだから。あと、そもそも俺は学校に居る必要も無いんで」
「チッ……。クソが」
クソなのはテメーだろ。
「まぁ、何もせず去ろうとは思ってませんよ。……かなり面白い提案を持ってきたつもりです」
さぁ食いついてくれるんだろか。
「あ?……なんだよ、言ってみろ」
「実は俺、ヤクザの家系でして」
「……それ、お前が流してた嘘情報だろ」
「いいえ。100%本当です。マジです」
「は?」
「そんな俺が、本気でアンタを潰そうとして、法に触れない方法が思いつかなかったってのもあるんすよ。かといって、アンタを放置しておくのも気持ち悪い。だから、みんなの目がある場所で……タイマンしませんか?殴り合いの喧嘩しましょうよ。手加減なしで」
「フッ、……フハハハ!!おもしれぇじゃねぇか!」
「『お別れ会』って事で、緊急の特別試験だからってことで、投票試験をやる1年だけじゃなく、2年3年も体育館に集めて結果発表しましょうよ。そこで各クラス1位に選ばれた生徒を、全学年の前で発表して、最下位の退学になる負け犬も発表する。そこで俺が『これは南雲の陰謀だ!最後にぶん殴らせろ!』とか騒げばどうですかね?」
「ふむ。最期に白黒つけさせろってか?」
「そんな感じです。アホ過ぎるから退学になるんだろうな、みたいな雰囲気でいけると思いますし。生徒会長が『俺が受けてやる』って言えば、まぁタイマンになるんじゃないっすかね?体育館の壇上、良い舞台でしょ?生徒会長が司会とかやってても違和感は無いし」
「ふん、まぁ可能だろうな。……それで、何が目的だ?」
観衆の前で、お前を殺すことだよ。とは言えないけど、
「みんなの前で、お前を叩き潰したくてね」
「フハッ!言うじゃねぇか!動機は、一之瀬だけか?」
基本的にそれだけど、ある程度は殺意を隠した方が良いのかな。
「アレから何日も冷静に考えてみると、一之瀬の件は、……まぁ、一之瀬も悪いと思いますよ。ホントだろうが嘘だろうが、そんなことで自分の身を犠牲にするやつ、……アホすぎます。リーダーとして失格だし、間抜けですよ」
半分以上、嘘だ。99%悪いのは目の前に居るこの金髪ゴミ野郎であって、一之瀬は、ただひたすら……優しすぎたよ。
「ほぉ……。それで?」
「けど、俺のクラスの女子には手を出さないでもらって良いっすかね?いやまぁ『部下を操作して勝つ』っていうのが目的だったら、敵チームにまで手を伸ばさないような気もするんですけど、それを約束して欲しいかなって。俺1人の犠牲じゃ安いかもしれませんけど、本来体験出来ないほどの喧嘩を出来る報酬みたいな感じで」
まぁここで約束されたって、俺はそれを信じないけどな。けど、ホントに喧嘩するだけだとしたら、俺が望むのはそれかな。
「お前にそこまでの価値があると?」
知らんわ。
「ヤクザとタイマンで喧嘩、殴り合える機会なんて、そう無いでしょ?一生に一度も無いであろう激レアなチャンスです。ワクワクしません?」
「フッ……、分かった、良いだろう」
「ども」
「最後に何が出来るか見せてみな」
お望みのままに。