ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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お別れ会

「生徒会長の南雲です。本日は全学年、全校生徒に集まって頂きました。」

 

こんにちは、体育館で行われてる謎の会に、1人だけリュックサックを背負って参加してる俺は浅井虎徹です。『なんだあいつ?』みたいな目でも見られてるけど、噂も広まってるのか誰にも何も言われないで済んでる。多分、退学の準備をもう済ませてるみたいに思われてんじゃないかな。

 

「今年度の1年生は、現時点まで退学者ゼロという、学校創立以来で初となる快挙でしたが……、学校側の意向で『クラス内投票』という特別試験を実施し、1クラスごとに、評価が最低となった生徒を……退学させる事となりました」

 

驚いて声を上げた2,3年も少しだけ居るっぽい。まぁ、他学年のことだから知らん人も居るのか。

 

「あまりにも突然で理不尽、生徒会長である私も抗議しましたが、1年間の試験を総合的に分析した結果、どうしても必要だと判断したとのことです。……力が及ばず申し訳ありません」

 

はぁ?嘘つけ。抗議なんてしてる訳ねぇ。人気稼ぎしやがって。

 

「これを『悲しい別れ』だったと捉えるか、『有意義な機会』だったと捉えるかは、今後の皆さんの頑張りによって変わるでしょう。優秀な人材に『変化に対応していく能力』というのは必須です。難しいかもしれませんが、前向きに捉えられるよう頑張って欲しい、とアドバイスさせて頂きます」

 

都合の良いこと言いやがって。

 

「この前例が無い、別れの機会を、少しでも有意義に出来るようにと、生徒会主導で今回の『お別れ会』という場を作らせて頂きました」

 

間違っちゃいないかもしれないけど、教師陣もそこそこ協力してたやんけ。

 

「1年生だけでなく、全校生徒が参加となった理由ですが、来年度は学年を超えて生徒同士が関わっていく機会が多くなる予定のため、私から無理を言ってお願いさせて頂きました。現2年にとっても、貴重な後輩を見る機会だと認識しておいて下さい」

 

聞いてても仕方ない話なので、しゃがんでリュックサックから軍手を出して着ける。もっとカッコイイ手袋もあれば良かったけど、やっぱりグリップが1番効いてて良さそうなのがこれだったんだよなぁ。

 

「……退学となる生徒も、最後に別れの言葉、もしくはクラスメイトや学校に対して素直な感情を吐き出して構いません。最後の機会ですから、何か伝えたい事もあるでしょう」

 

さて、そろそろか。ポケットに小物も入れた。

 

流石に緊張もしてるけど、うん、後はなるようになれだ。

 

 

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「ではこれより、特例追加された特別試験、本年度1年生のみを対象とした『クラス内投票』の結果発表を行わせて頂きます。」

 

周りを見渡しても、1年ほぼ全員が不安そうな顔してるの面白いな……。いや、笑い事じゃないんだろうけど。

 

「まずは評価が1位だった者から発表します。……1年Aクラス、最高評価は『坂柳有栖』壇上へ」

 

へぇ、坂柳なんだ。相変わらず杖を持って弱々しく歩く姿が、ちょっと痛々しい。

 

「では次、1年Bクラス、最高評価は……、『龍園翔』」

 

ほっ、良かった。龍園が『全員、俺が指定した名前を書け』『言うことを聞かなかったヤツは分かるからな』って脅迫してたのがちゃんと上手くいったみたいだ。1人ずつが持つ『賞賛票』3つ、『批判票』3つを、それぞれ指定して、最終結果から判断出来るようにしてたはず。多分マジでクラスメイトほとんどがプラマイゼロとか、マイナス1だけになってんじゃないかな?

 

龍園に隠れてクラス内で結託して、俺じゃなく龍園を退学させようとした可能性も3%くらいあったと思う。ひと安心、良かった良かった。

 

一応、先生は『他者への強制は認めません』って通達してたけど、まぁ……うん。強制した証明なんて相当難しいだろうし。クラスメイト同士での話し合いすら否定することなんて出来ないもんね。

 

「フン……」

 

いつも通り不機嫌そうだけど、今回ばかりは『嬉しそうにしろや!』とは思わない。この後の事があるから、そりゃそうだろうな感。

 

「そして1年Cクラス最高評価、『一之瀬帆波』」

 

「……はい」

 

まったく嬉しそうじゃない一之瀬、クラスメイトを振り返りながら、そして南雲と目を合わさないようにしながら壇上に行った。

 

「最後に、1年Dクラス最高評価、……『綾小路清隆』」

 

「は?」

 

なんで?思わず声が出ちゃった。意外過ぎない?意味が分からん。まったく目立たんヤツやんけ。忙しくて他クラスの事情まったく知らないけど、何があったの?

 

「ちょっ、……えっ?」

 

Dクラスの奴らも驚いてるヤツ少なからず居るっぽいよ。何したんだ?マジで。普通に考えて櫛田とか平田じゃないんかね?

 

「……。」

 

「いや、おかしいおかしいおかしい、そんなハズ無い……」

 

1人やべぇ顔して騒いでる生徒も居る。アイツ……山内って言ったっけ?坂柳と絡んでたヤツっぽい。

 

「さて、最高評価となったお前ら4人、何か言いたいことはあるか?全校生徒へのアピールチャンスだぞ」

 

「いえ、特にありません」

 

「ねーよ」

 

「……無い、です」

 

「俺も、ありません」

 

坂柳、龍園、一之瀬、綾小路。あっさりと全員がスピーチを拒否した。いやまぁ、この後クラスメイトが退学になる事を考えると、ここでアホみたいに喜んでアピールなんかしてたら反感を買っちゃいそうだもんね。

 

「ふん、そうか」

 

なんで不機嫌そうなんだよ。そりゃそうだろアホ。

 

 

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「……では続いて、各クラスの『最低評価』だった生徒。この後すぐ『退学』が確定する生徒を、発表していきます」

 

場の緊張感が一気に高まる。運命の瞬間だね。

 

「1年Aクラス、最低評価。……『戸塚弥彦』」

 

「バカな!どういうことだ!!」

 

「は?……えっ!?ど、どういうことだよ!?」

 

おぉ、ハゲともう1人がめちゃ驚いてる。最近まったく見なかったけど、無人島試験でハメたヤツか。

 

「壇上に来てくれ。戸塚」

 

「そ、そんな。生徒会長、なんかの間違いでしょう!?」

 

「……坂柳、お前が説明出来るんじゃないのか?」

 

そう言いながらマイクを渡す南雲。

 

「仕方ありませんね……。単純な話です。私達のクラスに必要なのは、戸塚くんよりも葛城くんだというだけの事です」

 

なんとなく嫌そうに話す坂柳。まぁ全校生徒の前で言うようなことじゃないもんね、目立ちすぎる。

 

「お前は確かに言っていたはずだ、俺を落とすと!なぜ嘘をついた!」

 

なるほどハゲが怒ってるのそういう理由か。ん~、ただ面白そうだったからじゃない?

 

「……点数調整をされたくなかったので、偽情報を流しただけです」

 

ホントか~?

 

「お前の影響力を考えたら、そんな無駄なことをする必要は無いだろう!わざわざ人を嘲笑するためにやったんじゃないのか!?」

 

ハゲめちゃくちゃにキレてるな……。配下思いの良い奴。いやその部下が消えちゃうんだけどさ。

 

「はぁ……。戸塚くんはAクラスにとって何のメリットも生み出しません。一方で葛城くん、あなたは頭の回転も早く、運動神経も悪くない。冷静さも兼ね備えているあなたは、それなりに役に立ちます。不要な人間を処理できる貴重な機会で、優秀な人間を切るバカはいません」

 

「ぐっ!」

 

まぁ……、ちょっとムカつくけど、そうかもしれんのもまた事実ではあるんだよね。俺達のクラスメイトは、龍園が統率してるおかげで居ないと思うけど、『消えた方がいい人間』ってのは居るのが普通なのかも。

 

ただ、少なくとも俺はそういう相手を思いつかないし、そういうのを教育で良くするのが学校の役目だと思うけどね。

 

「私を恨むのは筋違いですよ葛城くん。この試験では必ず誰かが退学にならなければいけなかった試験。あなたであろうと、戸塚くんであろうと、結果は真摯に受け止めていただかないと。投票をしたのは他でもない、私達Aクラスの生徒達なのですから」

 

そうだぞ、恨むならクソ試験を実施した学校を恨むべきだ。

 

「……分かっている」

 

「既に決まったことだ。戸塚弥彦、こっちに来い」

 

「うっ、うぅ……」

 

周囲から同情の目や、『早く行け』と言わんばかりの冷たい目を向けられ、諦めたように、泣きながら壇上に向かう弥彦。

 

うーん、関係ない人間からしたら、良い見世物なのかもしれないね。ギロチンで首切り処刑を楽しんでた大昔の人達の気持ちがちょっとだけ分かっちゃう。

 

 

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「それでは、次。……1年Bクラス、最低評価。『浅井虎徹』」

 

あ、もう俺か。えーっと、今ここで演技しなきゃいけないんだけど、退学したくないフリとかしなきゃいけないのか?いや、別に不信感を持たれても南雲は分かってるからいいんだっけ?この後の事を考えすぎてて忘れちゃったよ。

 

「虎徹……」

 

「すみません、浅井さん」

 

「浅井、悪い」

 

石崎、金田、他の面々から感謝なのか謝罪なのか分からんこと言われるけど、今からやること考えると、別になんとも思わん。

 

「ほら、早く来い。浅井」

 

「……。」

 

とりあえず不機嫌そうな顔をしたまま、そして軍手を着けてリュックを背負ったままという意味不明な格好で壇上まで来た。『なんでアイツ……』みたいな戸惑いの声もちょっと聞こえたけど、無視無視。おぉ~、壇上に来て全校生徒の視線を浴びると、これ結構迫力あるね。400人くらい居るし。

 

「次は、1年Cクラス、最低評価。……『神崎隆二』」

 

お、良かった良かった。予定通りに出来たみたいだね。

 

「そうか」

 

選ばれて驚きもせず、スタスタとこっちに来た。

 

「えっ?……まさか!?」

 

なぜか壇上の一之瀬が驚きまくってる。

 

「神崎、お前、……ホントなのか?」

 

「票の操作してない、よな?」

 

「な、なんで……」

 

「……。」

 

クラスメイトからの声をガン無視してスタスタと歩いてくる神崎。な、なんか俺が申し訳なくなってくるな……。本来なら、『退学回避の方法が見つけられなかったら平等票数にしてクジ引きで決めよう』って一之瀬が提案して、クラスで約束してたらしいけど。それを数人を説得して、最下位を自分にしたって事だろうね。

 

「では最後、1年Dクラスの最低評価。……『山内春樹』」

 

「は、……はぁ!?……なんでだよ!?約束が違う!!坂柳ちゃんに聞いてくれよ!!俺が最下位になる訳ねーんだよ!20票もらうって約束してたんだ!!」

 

もう割りと時間が無いから準備を始めちゃおう。背負ってたリュックを下ろして、中からゴムハンマーを取り出して、手で持っておく。

 

「またお前か坂柳、大活躍だな。ほら、説明してみな」

 

あと、アレはポッケに入れたよな。手で触って確認しておく。

 

「私には分かりません。そんな約束してませんが、証拠でもあるんでしょうか?」

 

「ふ、ふざけんな!騙したなお前!!なんで、なんでなんでなんで!!約束を破りやがったアイツ!ふざけんな!こんなふざけた試験で、嫌だ!なんで俺が退学しなきゃいけないんだよッ!!」

 

うるせぇな!

 

「どう思うのも勝手だが、この決定は取り消せないぞ。こちらに来い山内」

 

「うるせぇ~~~~~!!!!」

 

お前や。

 

「最後の最後まで君は醜く、救いようがない不良品というわけか」

 

うぉっ、誰の声か分からなかったけど痛烈な批判だね。消える生徒にそんなこと言ってやるなよ……。

 

「ああああああああああ!!!!!!!!」

 

あ、キレた。殴りかかろうとしてるのを慌てて抑える周囲のクラスメイト。おぉ~、乱闘みたいになってんな。壇上からなので良く見える。

 

最後のあがきも、他全員が敵みたいな状況ではどうしようもなく、羽交い締めにされ、こちらに連れてこられた。すっげぇ号泣しながら連行されてる姿、なんか犯罪者みたいだな。

 

さて、茶番、じゃない、前座はこんなもんでいいでしょ。

 

始めるか。

 

 

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「やっぱ……認められるかこんなもん!!!」

 

よし、声は出てる。さっきの山内にも負けてないぜ。

 

「なんだ?言いたい事があるなら全部言ってみろ、浅井」

 

嬉しそうな南雲。相変わらずムカつくニタニタ顔だ。

 

「こんなの、絶対に改竄された結果だ!意味分からん理由をつけて、1年にも関与しようとしてきてる、クソキモ金髪ゴミ野郎の南雲のせいだろ!なーにが生徒会長だよ、ただのキモいチンコ野郎のくせに!死ね!俺は、……俺はハメられただけだ!!」

 

お、表情が変わった。結構怒ったかな?

 

「残念ながら、お前は退学だ。黙って出て行け」

 

「お前マジ許さねぇからな!タイマンしろ!!」

 

軍手を着けたままの白い手で、堂々と南雲を指差す。

 

「ふん、仕方ない……。哀れなアホを制圧するのも生徒会の仕事って事か。関係ないやつは下がってな」

 

投票結果で呼ばれた8人のうち、俺以外の7人が壇上から降りたり、端に寄ったりして、俺と南雲の2人だけになった。

 

「クソ南雲、ハンデとして武器使わせてもうらかな」

 

堂々とハンマーを見せびらかす。

 

「……卑怯なヤツだな。恥ずかしくないのか?」

 

「知らんわ」

 

おぉ、ファイティングポーズが堂に入ってる。半身になって腕を上げたボクシングのポーズっぽい構え、本格的だね。

 

「まぁいい、危険人物として排除させてもら」

 

「あっ!」

 

「ッ!?」

 

チッ、クソが。見てる2年の方から声が上がったせいで、背後から龍園が襲いかかったのがバレて、結構良い蹴りだったのに避けられちゃった。

 

「死ね!」

 

「ぐっ」

 

前後同時の襲撃に対応してきたのは流石だけど、ガードしてきた腕をあえて狙って、手首の辺りをハンマーでぶん殴った。

 

「お前ら、ふざけ」

 

「フッ!」

 

龍園の蹴り、殴りも上手く防がれちゃってるけど、誰かに介入されるから早く終わらせないと。ポケットから果物ナイフを取り出す。買いたて新品のやつ。

 

「なっ、お前!いっ、あああ!!」

 

背後から無言で背中にナイフを刺したけど、制服のせいで浅くなった。即座に力が入りやすい振り下ろしで肩のあたりを突き刺し、さらに目を狙って顔面付近も刺そうとしたけど最後は逃げられて避けられちゃった。

 

「オラッ!」

 

南雲が反射的に刺された所を手で触ろうとして、俺の方に注意を向けた瞬間、龍園が背後から足払いで倒して床に組み伏せた。腕をひねって関節技っぽく動けなくしてる。よし!よしよしよし。

 

「全員動くな!!来たらコイツを殺す!……下がれ!」

 

慌ててナイフを首元にあてて大声を出したけど、あっぶねぇ、結構近くまで南雲に加勢しようとした生徒数人が来て舞台に上がりかけてた。なんで掘北兄貴まで近付いて来てたんだよ、見殺しにしろこんなヤツ。

 

「テメェ、ふざけんじゃねぇ!!何がタイマンだよ!?」

 

「おい暴れんな。首も刺すぞ」

 

そう言いながら軽く切る。薄皮1枚、2cm幅くらい。

 

「なっ、お前……」

 

刺された上に、龍園に拘束されてるのにめっちゃ元気だな。ポケットに入れておいた大量の結束バンドで、後ろ側に回した手首を拘束して、腕のあたりでも締めて動けなくする。両足も繋げて、同じようにフトモモのあたりでも締めた。……なんかエビフライみたいな状態だな。

 

「お前何してんだよ!」

 

「犯罪者!!」

 

「だから退学になるんだろうがよ!」

 

「南雲さんを離せクズ!」

 

おーおー、ヤジうるせぇな。まだ現実が分かってないね。

 

「なぁ南雲、右目と左目どっちがいい?」

 

「は?何を……」

 

「どっちでもいい?あっそう」

 

頭を床に押さえつけ固定して、リュックから取り出したプラスドライバーで左目を思い切り突き刺し、潰した。

 

「ぐぁっ!がああああああ!!!!!!」

 

4センチくらい入ったかな?かなり深かったせいで、引き抜こうとしても1回手が滑った。めちゃ力を入れなきゃ抜けなかったせいでグリグリやっちゃったよ。

 

「オイ……」

 

なぜか龍園に軽く引かれたけど……、あっ、まさか脳までは届いてないよね?いや届いてても別に良いんだけど、まだ少しやることあるから死ぬのは待って欲しい。

 

「まだ死ぬなよ」

 

「おいッ!やめろ!何をしてるんだ!!」

 

反射的に動く教師も居た、真嶋か。偉い偉い。

 

「おっと、動くなよ!教師陣を含め、俺の指示なく動いた場合、コイツのもう片方の目も潰す!死ぬまで光の無い生活って訳だ!……っていうか、普通に殺してもいいんだぞ!そうさせたくなきゃ、黙って、動くんじゃねぇ!!下がれ!」

 

目をえぐった時、整列してる生徒側の方に南雲の顔を向けてやったから、中々にインパクトあったと思う。せっかくだしトラウマになって欲しいね。

 

「てめ、ふざけんな!目が、う、いてぇ、いてぇよ……」

 

マイク無いとダメかな?と事前シミュレーションでは思ったけど、体育館中が静まり返って南雲の騒ぎ声以外は無かったから、俺の声もハッキリ響き渡った。

 

 

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「じゃあ……、女子2人だけ残って、それ以外はここから降りて、クラスメイトの列に戻ってね」

 

そういや神崎の出番は無かったな。『1対2でも負けそうだったら加勢して』とは言っておいたんだけど、余裕そうに見えたかな?

 

『俺&龍園&神崎』の3人が、このシチュエーションで俺が用意できる最大戦力だった。なんにせよ、2人でも傲慢ゴミ野郎を倒せて良かったよ。

 

……もし南雲も仲間を控えさせてて、多対多の状況にされてたら、1人ずつ刺しまくって無力化するしかなかったから、マジで良かった。関係ないやつ殺傷しまくって、それでも南雲に届かない可能性もあったからね。大成功かな。

 

「浅井、なぜ一之瀬まで残すんだ」

 

あら?神崎が少し不安そうに聞いてきた。いやけど、仕方ないんだよ。

 

「逆に聞くけど、人質が南雲だけだったら、逆に殺して欲しいとか思わない?」

 

人質としての価値が無さすぎる。俺だったらわざと殺させる。

 

「それは……」

 

「まぁ、そういうこと。悪いけど、頼むよ。許して」

 

「……分かった」

 

「ごめんね。ありがと」

 

「そして、何も出来なくて悪かったが……、それでも例の件、頼む」

 

めちゃ小さい声だな。

 

「大丈夫、覚えてるよ。約束は守る」

 

これで残ったのは俺達以外に女子2人だけ、龍園がまた動けないようにしてくれてるけど、……あれ?

 

「綾小路、どしたん?」

 

ボケーっとこっち見て1人だけ残ってた。なんだ?何してんだ?

 

「お前は……、なぜ、こんな事を?」

 

俺が言う事じゃないかもしれないけど、この状況でよく俺に聞けるなぁ……。凶器持って、南雲の上に座ってるんだけど、普通ならこの姿にビビってもおかしくない、よね?意外とめっちゃ度胸あんのかね?それとも、ちょっと頭おかしい?

 

「こんな事って、いや本番はこれからだから……。早く降りてくれよ。関係ないでしょ」

 

「……あぁ」

 

やっぱちょっと変な奴だなコイツ……。なんかちょっと心配しちゃうね。ダウナー系のドラッグやってる訳じゃないよな?

 

そんな謎の会話をしてるうちに、龍園の方は手際よく女子2人を縛り上げて拘束してくれたっぽい。うーむ、優秀だ。二度と無さそうな、超優秀な部下やってる龍園……とか思ってたら、血まみれの南雲がまた騒ぎ出した。

 

「ふ、ふざけんなよテメェら……。タイマンって言っておいて、武器も使って、このクソが!犯罪者共!」

 

はぁ?

 

「何言ってんの?なんでゴミを相手に正々堂々と喧嘩しなきゃいけないんだよ。素手でやり合いたいなら空手でもやってろよ」

 

「こ、この、卑怯者が!」

 

「うっせーな」

 

「ぐあっ!がっ!」

 

拘束したカスの上に座って、好きなだけ何度でも顔面を殴れる。気持ち良いね。

 

「これは格闘技でもなく、スポーツでも、喧嘩でもない。ターン制バトルでも、RPGゲームでもないんだよ。何を勘違いしてんだ?お互いの実力を見せ合うのが喧嘩とでも思ってたんか?プロレスじゃねんだから。勘違いしてんなよアホ」

 

「くっ、クソ……」

 

そして今からやるのは、拷問と処刑だよ。

 


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