おはよう、龍園による昨日の『金を巻き上げる宣言』、もとい『リーダー宣言その2』から一夜明けた日の朝、2000万ppのクラス替えについて考えている浅井虎徹だ。それにしても、暴力を見せつけてリーダー宣言した第1弾と、金を寄越せ要求が入った第2弾とロクな宣言じゃないな……。
ところで、2000万ppで『強引なクラス替え』が出来るということらしいが……、どういうことなんだろうか?十中八九『好きなクラスに移動出来る』という意味だろうけど、クラス替えというのが厳密ならトレードってことか?一方的なものなのか?
まぁトレードってことはないかな……?2000万ppによる『救済措置』または『ご褒美』として存在するなら、関係ない生徒にも影響するのはおかしいか。一応後で坂上先生に確認しておこう。というか職員室行くのめんどくせぇな、チャットの連絡先と電話番号も交換してもらおう。
この『強引なクラス替え』で「Aクラスに上がれるチャンスだ!」は誰もが思うんだろうけど、あいにくと俺はAクラスに興味が無い……。
けれど、悪用するとしたら色々出来そうで面白いよね。龍園をAクラスに送り込んで、授業中でも延々と教室を歩き回ったり、歌い出したり、いきなり教師を殴りつけたり。本人が停学にならないラインでずっと不適切行為を繰り返せば、1週間くらいで簡単にCPをゼロに出来るでしょ。つまり2000万ppでCP競争で1クラスを破壊できるようなものだな。もしDクラスだったとしても、3クラスに6000万ppで送り込めば必ずAクラスになれるでしょ。
まぁ、『全員Aクラスになりたい』という前提だったら、行って戻る必要があるからその倍のコストがかかっちゃうけど……。それでも4000万ppあれば1クラスを平和的に破壊出来るってのは悪くないね。
一応、龍園にこのアイデア伝えておこう。昨日の宣言、高校1年生であそこまで堂々と、力強い演説は中々出来ないと思ったし。……なんだかんだで、尊敬できるカッコ良さだったし。
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[浅井虎徹>>><<<龍園 翔]
【浅井虎徹】:2000万ppでのクラス替えの話だけどさ
【浅井虎徹】:誰かをAクラスに送り込んで、CPをゼロにするのも出来るね
お、すぐ既読付いた。
【龍園 翔】:おもしれぇ
なんだ?この前どんな情報でもちゃんと喜べって言ったから実践してんのか?
【龍園 翔】:歴代で2000万貯めたヤツはまだ居ないらしいがな
えぇ……。なんか、いきなり萎えたわ。都市伝説みたいな話なのかよ。
【浅井虎徹】:マジかよ
【浅井虎徹】:それはそれで、来月から俺にも金くれ
【浅井虎徹】:とりあえずは5月分の補填、5万でいいよ
【龍園 翔】:死ね
し、死ね!?このクソ野郎……。何度でも言うが最初にCP1000から490まで下がった原因は殆どお前のせいだろうし、お前がリーダーとして責任取るべきだろうが。しかもそのあと微妙にちょっと減ってるっぽいし。このクソボケ!
【浅井虎徹】:お前が死ね!
【浅井虎徹】:てかお前の舎弟共の世話1週間でそれだけの見返りはあっていいだろ。っていうか5万でも足りねぇわ。10万くらい出せ。出さなきゃ3人全員に赤点取らせてやるからな
……はい出ました既読スルー!このクズ!
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龍園とチャットをしてアイツのクズさを再確認し、Cクラスやっぱどうでもいいやと実感してから登校してみると、意外と早く来ていた石崎が話しかけてきた。
「よぉ浅井、今日どうすんだ?」
「……正直、もう自分達でやって欲しいんだけど」
本気で。マジで。めんどくさい……。過去問あるならなんとかなるんじゃないの。
「いや……、自慢じゃないが俺達だけじゃ多分無理だ」
ホントに自慢じゃねぇな。
「今まで中学ではテストの点数なんてどうでも良かったが……、この学校は辞めたくない。教えてくれ。頼む……」
「あ~…………、分かったよ……」
うん……。すっごいめんどくさいけど、ここまで真剣に頼まれちゃったら、まぁ、しゃーない……。ちょうど来週、あと1週間だ。それくらいは付き合おう……。
「助かる!」
「ん……。じゃあ現状の確認なんだけどさ、石崎は授業ほぼ分からないみたいな感じなの?」
「あぁ。だいたいの授業で全然分からない……。寝たら龍園さんに殺されかねないから、なんとか必死に起きてるだけって感じだ」
うーん前途多難だ……。そんなに難しいことやってないはずなんだけどな。
「小宮と近藤も同じような感じ?」
「いや、俺が一番バカだ」
カッコ良くカッコ悪いこと言いよるなコイツ。
「あー、まぁ了解……。どうしようかな……」
「頼む……」
授業が分からないっていうのは……、もうどうしようもないかな。
「えっと、分かりそうな授業の時はしっかり聞いて、授業の後に質問しに来て。一応、予習もやろう」
「分かった」
「んで、まるで分からない授業の時は……、一応同じように予習して、それで頑張ってみても分からなかったら……、もう諦めよう」
「は?オイ!どうすんだよ!?」
「いや、その科目を諦めるんじゃなくて『授業を理解する』のを仕方ないから諦めようって話。その科目の授業中は昨日もらった過去問をやる時間にしよう」
「……大丈夫なのか?」
「授業と関係ない内職しても大丈夫かって話?その授業と同じ科目に関することやってたら多分大丈夫だと思うけど……。一応今日やってCP変動するかの確認はしようか。確かもう学内ホームページで確認できたし」
実際に授業を理解できず、それでも頑張って勉強してる……っていう事なんだから大丈夫だと思うけどね。
「分かった……。その授業の科目の過去問をやる、ってことだよな?」
「そうそう。んで昨日みたいに過去問の丸付けを自分でやって、赤ペンで答えを書いて覚える……の繰り返しって感じ。まずは今日2回ずつ全科目やろう。……最初が一番大変だと思って、今日だけは気合入れて頑張って」
「あぁ。分かった、ありがとう」
うん、まぁ、ここまで素直にやってくれるなら可能性あるか?
それにしても、これと同じこと小宮近藤にも伝えるのか。しゃーない……。
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昼休み。小宮近藤も石崎ほどではないが程々にヤバそうだったので、3人全員と図書館に来た。昼メシ?そんなんスキマ時間に菓子パン1個じゃ!!!バカに人権は無い!死ぬまで勉強しろ!!
「じゃあ俺はパン買っとくから、3人は過去問1回ずつやって。んで赤マル、赤ペンも同じようにね。……と、来てくれたか。アルベルトー!こっち!」
チャットで「If you are free this lunch time, please come to library and watch アホ共」とアルベルトに送っていたが、来てくれたようだ。助かる~。……アホ共ってidiotsだっけ。
「サンキュー、アルベルト、If they are talking, you...しゃべってるやつにデコピン、……こうして」
「……OK」
デコピンを指で表しつつ頼んだらオーケーしてもらった。助かる。
「じゃあ監視役も来たことだし、頑張って」
「……あぁ」
「……。」
「……。」
嫌そうな顔してるが、3人とも流石にやらなきゃいけないことは理解してるみたいだ。黙って始めてくれた。
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昼休みが始まってから少し経ってたせいで売れ残りのパンばかりだったが、それを手に入れつつ……、なんとなく無料品のパンの耳も貰って、ついでに赤ペンを10本ほど買っておいた。1本100pp、合計1,000pp。まぁこれくらいなら出してやろうじゃないの。
そして図書館に戻ってみると、昼休みだってのに相当混んでるな……。ってか、あれ?例のすげぇうるさかったDクラスのメンバーが居るじゃん。櫛田と綾小路?に、クズの堀北、赤髪まで居る。……仲直りしたのか!?マジかよ。
てか、またちょっと騒がしくしてる……。でもなんか結構仲良さそうだ。良くまぁ、あれだけクズ発言されて……。雨降って地固まる、的な?何があったのかあとで櫛田に聞いてみようか。
なんとなく顔合わせたくないから迂回して戻ろうと思ったら……、近くで勉強してたCクラスの、山脇?が声の大きさを注意して……、なんかCクラスとDクラスの言い争いになってる。俺が図書館に来た時のトラブル遭遇率ヤバくない?静かにしろよもう……。
無視するのもなんか違うかな?と近付いて盗み聞いてみると、
「なんだお前ら。俺たちがDクラスだから何だってんだよ。文句あんのか?」
赤髪がキレかけてる。見た目通りのやつだな。
「いやいや、別に文句はねえよ。俺はCクラスの山脇だ。よろしくな。……ただなんつーか、この学校が実力でクラス分けしててくれてよかったぜ。お前らみたいな底辺と一緒に勉強させられたらたまんねーからなぁ」
「なんだと!」
怒って立ち上がる赤髪、昼休みのせいかそれなりに騒がしかった図書館だが、周りも何事かと静まりかえる。
「本当のことを言っただけで怒んなよ。もし校内で暴力行為なんて起こしたら、どれだけポイント査定に響くか。おっと、お前らは失くすポイントもないんだっけか。てことは、退学になるかもなぁ?」
そういやそうだ、DクラスはCPゼロだった。やりたい放題じゃん、良いな~。校内の窓ガラスをバットで割りまくってもいい訳か。……退学になるかそれは。
「上等だ、かかって来いよ!」
だからここ図書館だっつうの!体育館じゃないよ?赤モンキー。
「彼の言う通りよ。ここで騒ぎを起こせば、どうなるか分からない。最悪退学させられることだって、あると思った方がいいわ。それから私たちのことを悪く言うのは構わないけれど、あなたもCクラスでしょう?正直自慢できるようなクラスではないわね」
「C~Aクラスなんて誤差みたいなもんだ。お前らDだけは別次元だけどなぁ」
まぁ確かに。CPゼロってなんだよゼロって……。ただ、AとBの差は大きいだろ、誤差ではない。AはCP900超え、BはCP600ちょい、Cは……今400後半だったかな。
「随分と不便な物差しを使っているのね。私から見ればAクラス以外は団子状態よ」
いやいや、それも違うだろ……。
「クラスポイントがゼロの不良の分際で、生意気言うじゃねぇか。顔が可愛いからって何でも許されると思うなよ?」
そうだそうだ!もっと言うたれ!
「脈絡のない話をありがとう。私は今まで自分の容姿を気に掛けたことはことはなかったけれど、あなたに褒められたことで不愉快に感じたわ」
「っ!」
山脇が机を叩いて立ち上がった。は?そんなんでキレるなよ、もっと口で言い返せアホめ。「いやいやめっちゃ綺麗な見た目だよ、最高の容姿だ。でもなんで気にしたことないの?他の人から褒められたりするでしょ?……え?褒められたことがない!?なんで!?性格が悪すぎるとそれだけ見た目が良くてもナンパされないの!?!?嘘、マジで!?」とか言え。
「お、おい。よせって。俺たちから仕掛けたなんて広まったらやばいぞ」
Cクラスの……、鈴木だったかな。頭良い側のやつが必死に止めようとしている。それでも止まらない山脇、こいつも結構な不良だったのか。
「今度のテスト、赤点を取ったら退学って話は知ってるだろ?お前らから何人退学者が出るか楽しみだぜ」
「残念だけど、Dクラスからは退学者は出ないわ。それに、私たちの心配をする前に自分達のクラスを心配したらどうかしら。驕っていると足元をすくわれるわよ」
おごってる……、調子に乗ってるだっけか。実際に使うやつ初めて見た。
「く、くくっ。足元をすくわれる?冗談はよせよ」
なんだ山脇、龍園好きすぎて笑い声も真似してんのか?
「俺達は赤点を取らないために勉強してるんじゃねえ。より良い点数を取るために勉強してんだよ。お前らと一緒にするな。大体、お前ら、フランシス・ベーコンだとか言って喜んでるが、正気か?テスト範囲外のところを勉強して何になる?」
「え?」
即座に毒のある返答をしまくってた堀北が意外にも普通に驚いた。……ってかそこじゃねぇ!テスト範囲外をやってた?は?言われたの先週だぞ?もう1週間経つぞ。テストまであと今日を入れて7日の段階でテスト範囲ちゃんと伝えられてないの?え、ヤバくね?
「もしかしてテスト範囲もろくに分かってないのか?これだから不良品はよぉ」
んでもって、それを教えちゃってる山脇はもっとヤバくね……?なんで言っちゃうんだよ。せっかくDクラスから退学者出せたかもしれないのに……。あーあ。龍園にボコされてしまえ。
「いい加減にしろよ、コラ」
「お、おいおい、暴力振るう気か?マイナス食らうぞ?いいのか?」
「減るポイントなんて持ってねーんだよ!」
あ、山脇が赤髪に胸倉掴まれて殴られる寸前だ。龍園に殴られるリハーサルだと思って殴られとけアホめ。
「はい、ストップストップ!」
慌てて止めに入ったのは……、大天使一之瀬だ。可愛い~。ちょっと久しぶりだ。
「んだ、テメェは、部外者が口出すなよ」
「部外者?この図書館を利用させてもらってる生徒の1人として、騒ぎを見過ごすわけにはいかないの。もし、どうしても暴力沙汰を起こしたいなら、外でやってもらえる?」
いや……割と見過ごしてたんじゃないのか?CとDが何言うかな?って感じで。そうなるとBクラスのリーダーとして賢さあると思うけど、でも暴力沙汰を思わず止めに入っちゃうのは……やっぱ性格が良すぎるのかね。
絶対に殴ってるのを撮影したりして、それでDクラス1人減らした方が良いと思うんだけど……。いやまぁ退学までいくのは難しそうではあるけどね。それともDクラスに恩を売っておきたかったとか?
いや、でも一之瀬だったら単に善意からっていう可能性も結構あるなぁ……。
そんなことを考えていたら、Cクラスの2人は席を移動し、Dクラスの奴らも一之瀬から軽く怒られ、慌てた様子で図書館から去っていった。
……俺も戻るか。
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「帰ってくるの遅すぎねぇか?……いった!今のは良いだろアルベルト!いてっ!分かった、分かったから!」
額にデコピンを喰らいまくってる石崎だ。アルベルトのあの太い指でやられると相当痛そうだな……。「ペチン!」じゃなくて「バツン!」みたいな音が出てる。良く見ると他2人も額の一部がピンク色だ。
「ここでも騒ぎ聞こえた? Dクラスがワイワイ騒いでて、それをウチのクラスの山脇が注意して喧嘩っぽくなってた……って感じ。なんか質問ある?」
「喧嘩ってなんだよ?……痛ぇよアルベルト!もういいだろ!」
律儀にデコピンしまくってくれてるアルベルト。ウケる。
「ありがとうアルベルト、昼休みも残り少ないからもういいや。……喧嘩は喧嘩だよ、ただの口喧嘩。っていうか勉強に関して何か質問は?って聞いたんだよ」
「勉強に関しては、特に無ぇよ……。答え写して覚えるだけだろ?」
「そう、その通り!答えを写して覚えるだけ!まずはそれだけをしっかりやるのが大事だし、それで……お、割と覚えられてんじゃん。良いね」
「……おぅ」
見るからに半分くらいは赤マルが付いて、赤ペンで書いてる部分も半分くらいになってる。偉いじゃんか、結構早くなんとかなるかな。
「そうだ、不良3人にお土産。じゃじゃーん、赤ペン2本ずつ~。これ使って頑張ってね」
嬉しいような、嬉しくなさそうな微妙な表情をしやがる不良共。プレゼント贈り甲斐の無い奴らだ……。
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教室に戻り、早速龍園に先程の騒ぎを伝える。
「あー、龍園、さっき図書館で騒ぎあったよ」
「……またテメェか?」
は!?
「ちゃうわい!山脇と、……鈴木だったかな?図書館でDクラスが騒いでたのを発端にちょっと喧嘩っぽくなってたよ」
堂々とチクる。
「……で?」
「それだけだったら制裁しろなんて言わないけど、なんかDクラスはテスト範囲の変更聞いてなかったらしいんだよね。……もしかしたら担任がわざと意地悪したのかもしれないけど。なんにせよ、山脇のせいでテスト範囲の変更あったことを今日知っちゃったって感じ。山脇から喧嘩吹っかけてたようなもんだから、そりゃボコした方が良いと思うよ」
坂柳が「Dクラスには通常より手が加えられるかも」と言ってたけれど、だからってわざとテスト範囲の変更を遅れて知らせるかね……?担任がバカで不真面目なだけなんじゃねぇの?
「…………分かった」
龍園はそう言うと端末を操作し……、おっとメッセージだ。
【龍園 翔】:今日残れるやつは放課後少し残れ。昼休み図書館に居たやつは必ず残れ
Cクラスの全体グループチャットにメッセージが来た。うん、放課後が楽しみだ。
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「それでは、7日後のテストまで勉強を頑張って下さい」
そう言ってさっさと消えていく坂上先生、……教室に仕掛けられてる監視カメラをすぐ確認しに行くと見た!いえーい先生見てる~?ピース!
「伊吹、アルベルト……、誰も入ってこないよう見とけ」
クラスの教壇に近付きながら、いきなり命令する龍園。そして嫌そうな顔をしつつも従う伊吹と、何も言わず淡々と従うアルベルト。……伊吹のそういう顔、俺ちょっと好き。
そしてCクラスは当然のように誰も出ていかない。
「で?山脇、何があった?……前に出てこい」
さっきから挙動不審にしてた山脇が名前を呼ばれて分かりやすく体をビクつかせる。ビビリすぎィ!
「えっ、あの……、Dクラスの底辺共が図書館でうるさくて、その……注意したら……」
「注意したら?」
笑顔でちょっと優しそうな声を出す龍園、楽しそうだね。お前が優しそうにしてても100%嘘だと分かるから逆に見てて気持ちいいわ。
「はい、その……口喧嘩みたいになって……、そうだ、殴られそうになったんですよ!須藤とか言われてたヤツに!」
「……それで?」
「そしたら、Bの一之瀬が来て……、終わったって感じっす……」
「テスト範囲がどうこうって話は?」
「あっ、……その、えっと……。アイツら、テスト範囲が変更されたことも知らないようなバカだったみたいで!えぇ!」
「それで、わざわざ教えてやったってのか?……ん?」
龍園、笑顔で脅すの上手いな。ただキレてるより怖いかも。
「あの、すみません!自分そんなつもりなくて……、ヒッ!」
「腕を後ろに回せ」
「すみません、すみません……」
「早くしろ」
涙目になっている山脇を……あっ、
「おぼっ……」
綺麗な腹パン入ったねぇ~。
「……いいかお前ら!今回は俺らに直接は影響しないから、この程度にしといてやる。……だが!俺の言った通りに動かなかったり、俺の不利益になるようなことをしたらこんなもんじゃ済まさねぇ!!」
さっきまでのヘラヘラ顔から、一瞬で怒った顔が恐怖心を煽る。ギャップだな。
「そして一応言っておくが、このクラスに居る限り暴力から守られるなんて考えは捨てろ。お前らに分かりやすく言っておくが、もしこのクラス内で暴力事件になったら……、どうなると思ってるんだ?」
何が言いたいのか全く分からん。
「分かるか?このCクラスから減点されるだけだ……。俺に恐怖して、俺に暴力を振るわれたと学校に訴え、運良く俺が停学になったとしても、まずされるのはクラスポイント減点だぞ。良いのか?」
なるほど!自クラスのCPが人質ってか、面白い考えだな。確かにその考えでいくとクラス内でいくら殴り合っても大丈夫ってことになるな……。うーん地獄みたいなクラスだ。道理でウチのリーダー様はホイホイと人を殴る訳っすね。流石に教師に直接見られたり、他クラス生徒に見られたらまずいだろうけど。
「そして、この俺が、俺に逆らったやつを許すと思うか……?」
知るかよ。
「俺が邪魔だと判断したやつは、容赦なく切り捨て、退学に追い込んでやるよ。……分かったか?」
またもや楽しそうな笑顔で脅す龍園。静まり返ったクラスで、生徒の数人が思わず無言で頷く。
「まぁ、俺に忠実に従う限りは保護してやる」
脅してから甘い言葉を投げる、なんかアレな光景だね……。
「……以上だ。解散して、勉強しろ」
そう言われ、慌てたように動き始める生徒達。なんか軍隊みたいだ。
こうして今日も、龍園という男の謎の才能、恐怖政治の才能?統率力?に感心するのだった。