ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

33 / 139
島リーダー決め

こんばんは、浅井虎徹です。18時だけど既に辺りは暗くなっている、もう完璧な夜です。

 

あのウザい灼熱の太陽が無くなった今だが、アルベルトにはピンクの星型サングラスをかけてもらった。め、めちゃくちゃに似合う……。入学した時からコレだったっけ?と思う程に似合う。

 

サングラスは3個セットだったので、1つはスリザリンカラーの緑を勝手に選び龍園に渡した。けどなぜかまだ使ってない。そして俺は……ゴールドだ。フフフ、羨ましいか?

 

正直、この暗さでサングラスをかけても歩きにくいだけだし、他の奴らからの羨ましそうな視線をかなり感じるが、何も言われてない。嫉妬心から俺に「なんでサングラスしてんの?」と言いたいのかもしれないが、24時間サングラスしてるアルベルトがすぐ横に居るから言えないみたいだ。ざまぁみやがれ。

 

てかなんでアルベルトはサングラスしてんだ?目が弱いんだろか?……まぁいいか。

 

 

---------------------------------------

 

 

坂上先生と試験官数人がいつの間にやらベースキャンプ近くに集会テントを建てていた。運動会とかで見る白いテントの側面を覆ったような形状で、緑色、中で歩き回れる高さと広さを持ったテントだ。

 

流石に24時間ずっと教師1人で生徒対応する訳にもいかないだろうから交代制でやるのだろう。ポイント交換は基本的に『いつでも』『誰でも』のはずだし、試験官として介入しないとしても、近くで見守ったり有事に備える必要はあるだろうから、そりゃまぁ1人じゃ無理そうだ。

 

メシは携帯食があったとしても、トイレはどうしてるんだろうか……。まさかテントの中にあんのか?船に戻ってるのか?分からん。

 

てか見守るのが理由じゃなく、8時20時の点呼するためってのが近くに待機してるのかも。俺らは多分ずっと無視することになりそうだな……。点呼1人居なかったらSP5減点って、そんなん超どうでもいいし。運営側からしたら行方不明になってないかの確認でもあるんだろうけど、まぁ10人だけだし腕時計のGPSあるし許してもらおう。

 

『試験に関与しない』とは言いつつも、ポイント交換に対応するためのテントにはちょっとしたライトが設置してあり、周りが照らされていた。この明かりが地味に超ありがたい。これが無かったら延々とみんなで懐中電灯の充電レバー?をクルクル回しながら明かりを作らなきゃいけないからね……。

 

そんな訳で、居残り組8人は全員で運営テントの近くに集まっていた。意図せず早めの点呼っぽい状態だな。

 

 

---------------------------------------

 

 

「ククク……。で?リーダーやりたいヤツは居るか?」

 

龍園、いつものニヤケ顔だけど暗いから余計悪人顔だな。

 

「えっ?龍園さんがリーダーじゃないんですか?」

 

石崎が素直な反応をする。いやまぁ実質的なリーダーは他に誰も居ないけど、そういう話ちゃうやろ。

 

「ハァ……。バカ石崎、俺が一番指名されやすいだろうが」

 

その通り。ウチのクラスにリーダーっぽいやつ他に居ないから選択肢すら無い。もし「リーダー誰かの情報売るよ!」と言っても「どうせ龍園でしょ」で話が終わってしまいそう。

 

かといって他の誰か選ぶってなってもなぁ……。とりあえずリーダー交代リタイアで他クラスをハメるから選ぶとしたら『消えても良い生徒』か。俺か?

 

龍園以外ならぶっちゃけ誰でも良い気がするけど、あぁだから「やりたいヤツ居るか?」の質問したのかね。

 

「てか今回リーダーってなんかやることあんの?」

 

スポット更新なんてやらないし、SPだって全交換済み。なんか他にやることあったっけ?

 

「いや、無い」

 

無いんかーい!

 

それもそうか、やっぱ交代して消えるまで名前貸すだけか。

 

「じゃあ龍園以外だったら誰でも良さそうだし、誰かバレないように龍園だけが誰か知っておけばいいんじゃないの?」

 

need-to-know、知っておけばいいことだけ知ればいい原則みたいな。知らなくていいことは知らなくてええんじゃ。

 

「……そうするか」

 

そう言うとさっさと坂上先生の方に報告しに行ってしまった龍園。まぁこれでいいでしょ、「実はお前がリーダーだったんだ!」で後でリタイアさせるだけだし。

 

それはそれとして、なんとなく消化不良感のある集合メンバー。そりゃまぁそうか、リーダー交代してハメよう作戦についてまだ説明してないもんな……。

 

「もし龍園以外でリーダー選ぶとしたら誰がいい?……せーので指差してみようよ」

 

気晴らしがてらなんとなく質問する。俺は誰にしようかな……。って、そうだ

 

「アール、If you chose the leader, without Ryuen, せーのでフィンガー……こんな感じ。OK?」

 

「……OK」

 

「よし。じゃあみんな決めた?」

 

そう言いながらなんとなく視線を交わすと、うん、大丈夫そうだ。なんとなく向き合う形で輪を作り、

 

「じゃあ……せーのっ、はい!」

 

そうして差された指は……

 

俺→→アルベルト

石崎→俺

アル→石崎

小宮→俺

近藤→俺

鈴木→石崎

山脇→俺

 

……最多票、俺かよ!

 

「なんで!?」

 

石崎、小宮、近藤の舎弟三兄弟はまぁ、分からんでもない。勉強会で面倒見まくったし、俺に投票しなかったら殺すぞボケみたいな気もする。いや、小宮近藤は普通に石崎を選んでもええやろと思うけどさ。

 

アルベルトが俺じゃなくて石崎を選んだのはちょっと寂しいけど、石崎はアホだけど行動的で割とリーダーシップあるやつだからだろう。俺と関係が薄い鈴木が石崎を選んでた事からも、そう間違った視点じゃないはずだ。俺も石崎を選ぼうかはちょっと迷った。

 

そんなアルベルトを選んだのは俺だけ?嘘やん……。かなり優しくて、アホを暴力で従わせられる腕力もある。石崎と少し迷ったけど、石崎はアホすぎるし、筋肉量でアルベルトの圧倒的勝利だった。1票だけってのはマジで解せぬ。

 

山脇はSP交換の相談でちょっと仲良くなったからかな。

 

「いやだって、龍園さんが信頼してるみたいだし……」

 

オイ!石崎ボケ!堂々と言うなアホ!

 

「てかなんだよそのサングラス……。夜だぞ……」

 

は?小宮この野郎、文句あんのか?あ?

 

「俺も石崎と浅井でちょっと迷ったよ。夏休み前に龍園さんといつも一緒に居たのが石崎だと思ったから、石崎を選んだけど」

 

そう声をかけてきたのは鈴木だ。

 

「なんで悩むのさ?」

 

「いや、今日いつも龍園さんと話してたようにも見えたし、度胸あるなぁ……って」

 

「うんうん」

 

山脇もうんうんじゃあないんだよ。

 

ってか、え、マジで?龍園と仲良し認定されちゃってるの?ほぼ敵対関係だと思われておきたかったのに……。いやまぁ確かに島来てから何かと話してたかもだけど、それは仕方ないやろ。いや、けど、うーん……。

 

「……何してやがる」

 

うるせぇロン毛!お前が嫌われ者すぎるから普通に話してるだけで仲良し認定されてしまったんじゃアホ!

 

「えっと、もし龍園さん以外でリーダー選ぶなら誰がいいかってみんなで指差して、それで虎徹が一番選ばれ……あっ!」

 

石崎、やっと気付いたっぽい。龍園と俺が裏でちょっと連絡取り合ってたけど内緒だよというやつ。なるべく仲良いのは隠そうとかいう話のはずだったでしょうが!

 

「フン、まぁいい。リーダー決めたがキーカードは俺が持っておく、いいな?」

 

なんで聞くんだ?一応、本人から了承もらった事にしておきたいのか?

 

「……なら、これからは自由だ。20時の点呼も別に出なくていい、明日の朝8時の点呼もな」

 

全員が頷くのを確認すると、堂々と少し離れて見ている教師の前でバックレ宣言をした。まぁいいけどね。

 

「テントの組分けはどうすんの?」

 

龍園に敬語使うのは絶対に嫌だし、もうバレてんなら仕方ないか……とヤケクソになりながら聞いてみる。

 

「そうだな……。石崎、小宮、近藤で1つのテント。アルベルト、鈴木、山脇で1つ。そして俺と浅井が荷物を置いてるテントを使う」

 

ほらー!そういう組分けするから仲良し認定されんじゃねーか!アホー!!

 

いや、まぁ、体格的に組み合わせておかしくないかもだけどさ……。

 

みんなから「やっぱり」みたいに見られてる気がするが、あえて確認しない。したくない。ちくしょうめ。

 

けどもし『Cクラスの龍園と浅井は無人島試験中に2人だけのテントでホモセックスしてたらしい』なんていう噂が流れたら、俺は龍園を殺すね。

 

 

---------------------------------------

 

 

なんかとてつもなく気疲れしたけど、実際に龍園と同じテントだと色々話せて助かるというのも事実だ。それがまた困る。

 

しっかし19時前でもう闇だ闇、離れた所にある運営テントの明かりと、月明かりだけだと本当にほぼ何も見えない。星空は綺麗だけど。懐中電灯が無いテントあったら超大変そうだな、森に設置したビニールシート部屋トイレ行けないじゃん。後で分かりやすい所に置いて情報共有しておこう。

 

「はぁ~……。そんでリーダー誰にしたの?」

 

「……てめぇがリーダーは俺だけが知っとけばいいつったんだろうが」

 

「そういやそうだっけ。じゃあ言わなくていいよ」

 

「チッ、この……」

 

知りたいっちゃ知りたいけど、別に知る必要もまったく無いな。

 

「……まぁいい。浅井、お前だったらどうした?意見聞かせてみろ」

 

このクソ偉そうなアホめ。もうちょい言いたくなる聞き方しろアホ。

 

「はぁ……。Cクラスのリーダーだったら誰を指名しようかな~って迷ったから、みんなに聞いてみたんだよ。龍園以外でリーダー選ぶとしたら誰にするのかな?って。そしたら俺と龍園がめっちゃ仲良しに見えちゃってたらしい、っていう悲劇だよ」

 

これからどうすんだよもう……。他クラスから龍園の悪行に俺も関わってると思われちゃうじゃん。ヤダヤダ~!ちょっと泣きそうなんだけど……。

 

「まぁ……仕方ねぇ」

 

確かに島に来てどうしても直接話さないといけなかったし、俺も演技する気が無かったから仕方ないかもだけど……お前が言うんじゃねぇよ害悪生徒め。

 

「はぁ~~~~。いやもう、しゃーない。切り替えるしかないな……。何か疑われたら全部龍園に指示されたことにするわ」

 

これしかないな。全部龍園が悪い!俺は従わされてただけ!という事にしよう。

 

「フン、勝手にしろ」

 

「あぁ勝手にするわい」

 

お前が嫌われまくってるのが全部悪いんじゃろが。ボケ!

 

 

---------------------------------------

 

 

「んで何の話だっけ?キーカード持つリーダーを、誰にするかって?」

 

「そうだ」

 

「いやマジで誰でも良いと思うけど……。目立ちまくる龍園以外ならね、他は誰が途中離脱してもいいと思うし」

 

「それでも誰か選ぶとしたら、誰を選ぶ」

 

誰でも良い言うとるやん……。まぁ暇だから考えるけどさ。

 

「うーん……他クラスからしたら龍園含めて8分の1みたいなもんだよなぁ。12.5%、そこそこ高いなぁ……」

 

龍園が選ばれやすいだろうし、指名失敗したらSP50減点だから無理して指名されることも無さそうだけど、特別安心出来る確率でもないな。こう考えると少人数って怖いな。本来の40人だったら2.5%でほぼありえないもんな。12.5%って他3クラスもあるから、もし『必ず選ばなきゃいけない』ってなってたなら1回くらい当てられちゃう気がするぞ。

 

「山脇はちょっと居て欲しいかもなぁ。この中で……もうクジを引いて決めちゃえば?」

 

「……だから、誰かを選ぶならっつってんだろが」

 

「はー、分かったよ……」

 

別にクジ引きでも良いじゃん……。

 

「うーん……。アルベルトかな。デカくて目立つし、ピンクのサングラス似合うし、交代前提だったとしてもそう簡単に居なくなりそうにもない存在感だから騙しやすそうかな……」

 

「……。」

 

いや、でも居ないのもバレやすいかな。それだったら意外性を求めると……

 

「あ、金田とかでもいいじゃん。Bクラスに世話になってるやつがまさか!みたいに予想外に思われそうだし。スポット更新するはずっていう認識がある以上、ベースキャンプからずっと離れてる人間を疑うのは難しいし。ついでに本人も全く知らない訳だし」

 

そう考えてみると8人じゃなく10人居たか。それでも10%なら当てられちゃうかもだけど、龍園よりは指名されにくいでしょ。

 

「クク……分かった」

 

「なんやねん」

 

何笑ってんの。もうリーダー決めたんだから意味無いやろ。

 

「ククク……なんでもねぇよ」

 

なんでもないのにそんな笑い方してる人間が居たら頭の病気だぞアホめ。

 

こうして、意味不明なヤンキーと2人だけで暗くて長い夜を過ごすことになってしまったのだった。

 

……下ネタじゃねぇよ!?

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。