ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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用語復習

CP(Class Points)
→クラスポイント
→CP1000なら生徒1人が月々10万ppもらえる
→CP×100×40人がクラス全体のpp月収に相当する

pp(private points)
→プライベートポイント
→疑似通貨、施設内で使える金

SP
→Special test Points
→Summer Points
→SPは特別試験最終日の決算で確定した後、そのままCPに加算される
→つまりほぼCP


詐欺前夜

現在、フタマルマルマル、20時。光のほぼ無い真っ暗なテントの中で不良生徒と並んで寝転がってる俺は、優良生徒の浅井虎徹です。

 

この微妙な気まずさ……クラスメイトの誰が相手だったとしても4人テントで2人きりってのは居心地が悪いと思うけど、相手が龍園だぞ?なんだこの空間、軽い罰ゲームじゃん。

 

ちなみにサングラスはもう寝るので流石に外した。大事にタオルで包んで荷物袋に入れてある。

 

慣れない島生活な上に探索もしたからめちゃくちゃ疲れてはいるけど、流石に寝るにはちょっと早すぎるかな……。俺が普段寝るの23時くらいだし。

 

暑さはだいぶマシになってきたけど、それでも湿度が半端じゃなくムシムシだから快適には程遠い……。このマットレス無かったら本当に眠れないまである。みんなが残してくれたタオルでマクラ代わりに出来てるから、それだけはちょっとラク。

 

「みんな豪華客船かぁ、羨ましい……。龍園は戻りたくならんの?」

 

暗闇で何もやることがなくヒマ過ぎるので、隣のロン毛くんに声をかける。カッコつけて目を閉じてるっぽいけど起きてるだろ多分。

 

「フン。他クラスのザコ共をハメる方がおもしれぇだろうが」

 

「……まぁ、分からんでもないかな」

 

ただ豪華客船で生活するより、孤島での集団生活を通して探り合いとか食料争奪戦とかする方が楽しそうではある。人生経験的にも残った方が良さそう。参加せず何もしないで終わってしまうというのは意外と寂しいのかも。そう考えると先に船に戻ったクラスメイト達はちょっと可哀想?

 

いや、今すぐ船に戻って良いメシ食いまくって高級ベッドで眠りたいという気持ちもしっかりあるけど……。

 

 

---------------------------------------

 

 

「んで、明日は何すんの?」

 

「……リーダー情報を売りつけに行く」

 

「ふーん……。じゃあ今から色々考えておいた方が良いかもね」

 

「……あぁ」

 

考えておいた方が良いと思うのは本気だが、それ以上の理由として死ぬほどヒマだからな。どれだけヒマなんだよ電気の無い夜、この暗闇。昔の人は何をしてたんだ?気が狂わなかったんか?

 

「えーっと、『キーカードのリーダー名を見せる』っていうのを契約条件にしちゃえば、後からリーダー変えて完璧にハメれる……だよね」

 

「そうだ」

 

もし『リーダーが誰かを教えるから、CP50に相当する月々20万ppを振り込め』って契約できれば最高だけど、そう上手くいくかな。他にありえるとしたら……

 

「条件は『リーダー指名に成功した場合』じゃないと受け入れない、って拒否されたらどうすんの?」

 

それはそれでリーダーを見抜かずにpp獲得出来るけど、もしリーダー見抜けても指名ボーナスのSP獲得が無駄になっちゃうから……なんとも言えないな。いや、リーダーが分かった場合は、契約のppを諦めてリーダー替えすればSP獲得に切り替えられるのか。もちろん両取りしたいけどさ。

 

再確認だが、リーダー指名によるSP変動は次の通りだ。

 

XクラスがYクラスのリーダー指名に成功

→XはSP50プラス、YはSP50マイナス

 

XクラスがYクラスのリーダー指名に失敗

→XはSP50マイナス、Yは変動無し

 

SPと言ったけれど、最終日の発表だろうからほぼイコールCPだと見て良いはずだ。

 

「坂上に確認取るか……。恐らくだが、最終的なポイントだけを発表するだけの可能性が高い」

 

「なんで?」

 

「この学校は情報を適度に隠して、推測させようとする癖がある。CP減点の規則性みたいにな」

 

「……なんじゃそりゃ」

 

いやまぁ、『生徒に考えさせたい』っていう雰囲気はあると思うけど、癖て。

 

「詳細を公表せず、最終的なSPのみ発表だったら『指名成功したかは証明しようがない』で拒絶出来る」

 

「あー、なるほど。確かに」

 

指名成功した上で、他クラスから指名成功されてしまっていたら、SP50のプラスとマイナスで相殺されてしまう。となると、成功したのか失敗したのか分かる訳が無い。

 

「同じように『最終的なリーダーが誰だったか』ってのも公表されないと思うが……確証は持てねぇな。確実性を求めまくるチキンの葛城なんかは自分から『キーカードの刻字を確認』を条件にしてきそうなもんだ」

 

うむうむ、しっかり確認できて100%の確証を持てるのは、自分の目で物理的な証拠を見るくらいだもんなぁ。それにしてもチキンて、臆病ってほどなのか?あんまり知らんけど。

 

「そっか、『指名に成功したかは証明できねぇだろ』『正しいリーダーを教えたのに契約を破ったと決めつけられたらたまったもんじゃない』『お前らが間抜けでリーダーがバレる可能性もあるだろ』とか堂々と主張して条件変えられそうってことね」

 

「……詳細まで公表されるってなら話は別だが」

 

「まぁね。でも考えてもしゃーないな、明日先生に聞いてみるしかないね」

 

「あぁ」

 

参加側の生徒がそこまで把握してる訳もなし。

 

「先生、ってか運営側が明言出来ないって答えたら……それはそれで『やっぱ物理的な証拠を見せるしかないだろ』って話に出来るかも?」

 

「……そうかもな」

 

「問題は『リーダーがリタイアして交代する可能性』に気付かれちゃうかどうかってことか……。うーん……」

 

1人リタイアでSP30減点っていうのから意外と気付きにくいかもしれないけど……。

 

「そこがキモだ。気付かれてないようだったら、CP50相当の月々20万ppに届かなくても応じる」

 

「ぶっちゃけ値切られても痛くないもんね。月1万だろうがプラスはプラスだし」

 

「1万じゃ少な過ぎるだろが……」

 

「分かっとるわ!」

 

例えだよ!

 

「月々……15万くらいまでなら仕方無しに譲歩してやるか……」

 

「まぁ、良いんじゃね?」

 

名目上は『CP稼ぎを諦めて、リーダー指名を受ける』『少しでもppを稼ぎたい』という設定だし。多少譲っても何の問題も無いでしょ。

 

 

---------------------------------------

 

 

「ふと思ったけど、龍園はスパイの2人がリーダー見抜ける可能性どれくらいだと思ってんの?」

 

スパイ2人がリーダー見抜いてくれたらしっかりCP増やせるけど、そう簡単にいくかねぇ?もし2人ともスパイを見抜けなかったら『Cクラスのリーダー指名に成功したら』という条件でも別に困らないんだよな。AクラスにB,Dのリーダー情報を売り付けることは出来なくなっちゃうけど。

 

「……60%、だな」

 

「はい?高すぎるだろ……。アホなん?」

 

そんなに成功する訳無いじゃん。ビックリしたわ。

 

「ならテメェはどれくらいだと思ってんだ」

 

何をイライラしとんねん。アホの癖にアホって言われて腹立てんじゃねぇよ。

 

「そんなの、5%とか10%の世界でしょ。まず成功しないだろ」

 

「……なぜそう考える」

 

「いやだって、『龍園にボコされたから助けて欲しい』って言ってる生徒が来ても普通に追い出すでしょ。十中八九、嘘じゃん。殴られた傷跡がある?だから何?って話でしょ。他クラスなんだし、いくら殴られてたって関係無いじゃん」

 

「……。」

 

「仮に、仮にだよ?もし仮に『かわいそう……』なんてキャンプに受け入れられたとしても、リーダーがバレちゃう可能性のあるスポット更新の時には2人3人を監視に使って目隠しさせたりするでしょ。敵なんだから」

 

「……それでも、6日間もあったら見抜く可能性はあるだろ」

 

「いやいやいや……。2日くらい経ったら『もう学校側に保護してもらえよ。船に帰れ』みたいに追い出されたっておかしくないでしょ。なんでずっと世話する必要あんの?……てか、そもそも船に戻れば安全っぽいじゃん。学校が用意した豪華客船の中で暴行やら強姦できると思うか?」

 

「チッ……」

 

いやまぁ、伊吹は可愛いから居て欲しいと思われて追い出されない気もするけど、金田なんてちょっと変態っぽいじゃん。初日に追い出されててもおかしくないでしょ。

 

「逆になんで60%も可能性あると思ってんの?そんなにみんなが優しい人間だと期待しちゃってんの?アホなんか?」

 

もしそんなこと思ってんなら、想像以上にアホすぎて本気で幻滅するんですけど……。それなりに優秀なリーダーだと思ってたのになぁ。

 

「……Aクラスとの裏取引を明かして、俺らCクラスがもうSPに興味無いと思わせるつもりだ」

 

「あ、言うんだ。それで?」

 

「既にSPを物資にして売り払ってる以上、SPを残すのは実際に無理だ。まともに試験に参加せず、CPじゃなくてppを稼ぐつもりだと。実際にやってることを見れば事実でしかねぇ。だから、お前の言ったリーダー情報を売りたいという話も通じやすくなる」

 

「まぁ、そうかも」

 

「そこまで言えば伊吹と金田が『CPを増やすべきだ』と反論して、俺がそれに制裁を加えたという話にも信憑性が増す。状況だけ見たらすべてに筋が通る。逆に、伊吹と金田の現状から『CPを増やす気が無いらしい』という話の信憑性も増す。……だからSPに興味無いというカバーストーリーを大半が信用する、と判断した」

 

「ふーん……」

 

まぁ、信じる人もそこそこ居るかもしれないかな。それならもうちょい確率高いかも。

 

「……確かに、少しばかり希望的観測が入ってたかもしれねぇ」

 

「ん?」

 

なんだ?反省してるってこと?思わず横を見たけど変わらず寝転がってる姿しか分からん。

 

「どうしてもCクラスの大半がリタイアしてることはバレる。それを見て、試験最終日を待たずスパイを追い出される可能性は確かに、大いにありえる」

 

「そりゃそうでしょうとも」

 

何を今更言ってんだ。てかそもそも、今まだ潜入出来ずにベースキャンプ近くの森に潜んでる可能性すらあるだろ。もしかしたらほぼ暗闇の森を抜けて近くまで帰ってきてるかもしれない。

 

……もし伊吹が帰ってきてたら、龍園を追い出して2人でテント生活しよう。

 

 

---------------------------------------

 

 

「んで、結局のとこ明日はどうすんの?何してりゃいいの?」

 

どうせ明日なんか言われるだろうけど、せっかくだから聞いておく。

 

「俺とアルベルト、あと……お前も来い。3人でリーダー情報の売り付け交渉に行く」

 

「分かった」

 

まぁ、どういう話になるのか見てみたい気持ちはあるもんね。

 

「他の奴らは……目立たないように妨害工作とかはやらせず、ただ探索してなんとなく食料を集めるくらいのことをさせておく。後で食料を処分しやすい効率的なルートを見つけさせたりな」

 

「良いと思うよ」

 

自然な行動だし、何か企んでるのがバレることもなさそう。

 

「交渉は……『さっさと契約を決めて船に戻りたいから今日明日で決めろ』とでも言って急かすつもりだ。『3クラスと契約が決まったら、リーダー以外は船に戻る』とも言う」

 

「良いじゃん……。めっちゃ説得力あるな、この暑さので1日も生活すりゃ誰でも帰りたい気持ち出てくるだろうし」

 

めちゃくちゃ共感されるから納得されるんじゃないかな、『早く船に戻りたい』ってのは。

 

「契約が決まってから妨害活動をやりまくるつもりだが……食料の処分に関しては、数日遅れて始めることになって効果が薄いかもしれねぇな」

 

先に他クラスにGETされちゃう的な意味か。

 

「まぁ、それは仕方ないかも。そもそも人数が違いすぎて労働力が違うし」

 

「……そうだな」

 

めっちゃマッチ交換して5箱もあるのに使わないのはもったいないけどね……。やっぱ使いたいって気もするけど……、

 

「あれ?でも『無駄に燃やしまくろう作戦』って明日からやっても良いんじゃね?」

 

「なぜだ。バカみたいに目立つだろうが」

 

そりゃ食料争奪戦で無意味に燃やしまくってる頭おかしいクラスがあったら目立つだろうけど、

 

「今気付いたけど『SPを残す気が無い』っていうのと『他クラスのSP消費を増やしたい』っていうのは両立しうるじゃん」

 

燃やしたいだけという動機だったけど、意外と良いアイデアに思える。

 

「………確かにそうだな」

 

「だから、明日からの交渉で『ついでに食料燃やすのも辞めさせてやるよ』とか言えば?」

 

ぶっちゃけ頑張って食料を燃やして回っても、他クラスが残せるSPがちょっと減って……だから何?という気もするわな。他クラスのSP、てかCPなんてホントどうでもいいし。

 

「ククク……良いぞ浅井、使える。現地食料を人質ってか、クククク……」

 

「人質とは言わんやろ」

 

だからといって正しい呼び方はちょっと分からないけど。ものじち?物質?ぶっしつじゃんこれ。

 

「よし、明日から動けるやつ全員で徹底して食料を燃やしに行かせる。それと並行して売買契約を進める」

 

「了解だよ」

 

「……アルベルトも実働部隊に回すか」

 

「えぇ……」

 

いやまぁ、あの筋肉は肉体労働にめちゃくちゃ役立つだろうけどさ……。そしたら俺と龍園の2人きり?もう言い訳出来ないレベルで他クラスからも龍園と仲良しだと思われちゃうじゃん……。なんてことだ。

 

「そろそろ寝るぞ」

 

「はぁ……。おやすみ」

 

「……あぁ」

 

それにしても、こんだけ喋っても1時間くらいかよ。まだ21時過ぎだ。夜、引くほど長すぎる。

 

まぁいいや、もう寝よう……。流石に暑さもちょっとはマシになってきたし、疲れてるからきっと眠れるはず……。

 

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