ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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リーダー、売るよ!

A,B,Dの3クラスから成る連合軍に詰め寄られてるロン毛を眺めているだけの、ごく普通の一般生徒の俺は浅井虎徹だ。龍園の仲間だと思われたくないからちょっと離れておこう。

 

「櫛田、おいっす~」

 

「久しぶりだね、虎徹くん。……そのサングラスどうしたの?」

 

「フフフ……カッコイイでしょ」

 

「そ、そうだねっ」

 

言葉詰まった?なんだその反応。おい、どういうことだ。

 

「浅井くん、久しぶり。Dクラスの平田だよ」

 

「おっす!久しぶりだねイケメン!」

 

「あ、あはは……。ありがとう」

 

流石の高スペック男子だ、1回か2回くらいしか会話してないのにしっかり俺の名前を覚えてるとは。……やっぱクラス間のバランス調整でDクラスにぶち込まれた可哀想な優等生って感じするな。

 

「お前は、えーっと……綾小路だっけ?」

 

「……あぁ」

 

合ってた合ってた。俺にしては珍しく名前覚えてた。なんかちょっと縁起が良さそうな名前だからかな。

 

「アンタ、Cクラスでしょ?なにその格好」

 

誰これ?ポニーテールのギャルじゃん。無人島で化粧してないのになんとなくギャルだと分かるのはすごいな、日焼けしても似合いそう。けど、微妙に敵対的な態度を取られてる。俺なんもしてないよね?ちょーうぜぇし!

 

「は?誰お前?」

 

「……軽井沢」

 

「あっそう。知らねぇな」

 

良い顔してるとは思うけど、相手すんのめんどくさそう……なんて思いながら見てたら平田の後ろに隠れやがった。付き合ってんのかな。

 

「……。」

 

ついでにもう1人のDクラス、堀北は偉そうに腕を組み、相変わらず俺の方には一切視線を向けず龍園の方に居る。それにしてもなんでこの暑さで長袖ジャージなんだよ、頭いかれてんな。

 

「それで、虎徹くん、Cクラスの子が島にある食べ物を燃やしちゃってるみたいなんだけど……」

 

「どうにか出来ないかな?」

 

なんともシリアスな顔で相談してくるDクラスの代表2人、櫛田と平田。そんなに苦悩するようなことか?

 

「龍園がやらせてるやつね。そろそろ話があると思うけど……早ければ今日中にもう辞めてくれると思うよ」

 

「そう、なの?」

 

「話っていうのは?」

 

「あ~、Aクラスも来たら話すって言ってたし、俺が勝手に言ったらなんか殴られそうだから言えないや。ごめん」

 

せっかくだし龍園の奴隷ですアピールしておこう。

 

「うん……」

 

「分かったよ」

 

「でもまぁ、悪い話じゃないと思うよ」

 

リーダー指名なんて普通は成功しないものだし、SPゼロ戦略やってるクラスのリーダー指名に成功したら学年全体のCPが増えるんだよな。視点を大きく持つと、SPゼロのクラスへのリーダー指名をなるべく成功させるってのは、ある意味で全員が学校運営側に勝利する、とも言える。

 

……リーダーを交代しないなら、の場合だけど。

 

 

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「龍園、説明しろ」

 

「よぉ来たなハゲ。クク、頭まで日焼けして大丈夫か?タコになるぞ」

 

アカン、龍園と同じことを思ってしまった。屈辱だ……。

 

「……俺の頭のことはどうでもいい。お前の配下にやらせてる事、あれは何だ。どういうつもりだ」

 

Aクラスの葛城だけじゃなく、Bクラスの一之瀬や神崎達、Dクラスの櫛田や平田とその他も龍園を睨みつけている。オールスターに嫌われてる感あるなぁ。……俺も腕を組んで睨みつける側に回ろう。

 

「集まったな、説明してやるよ。聞け!ザコ共!」

 

高らかに宣言するように、楽しそうに声を張る龍園。

 

「俺らは既に、SP200相当の物資をAクラスに売り渡した!ppとの交換契約を結んだって事だ!」

 

「なっ!」

 

おぉ、葛城が割と驚いてる。秘密にしてくれると思ってたのかな。

 

「だから俺らは既にSPを使い切った!最低限の人員を残して島に残ってるだけだ」

 

今の所、100%ホントだね。

 

「それで……アナタが破壊活動を行っていると聞いたけど、何をしてるの?」

 

堀北、詳しく知らないで来てたのか。いやまぁ場所はちょっと遠いかもしれないもんな、相談されて来たとか?……いや誰がコイツに相談すんねん!

 

「クク……俺の指示で島の食料をすべて処分させてんだよ。焼いたり潰したりってな、ククク、急がねぇと食うもん無くなるぞ?」

 

楽しそうに笑いながら言う緑グラサン、分かりやすいほど『みんなの敵』って感じやな。

 

「なんで食料を無駄にするようなことをするの?」

 

悲しそうに問いかける一之瀬。

 

「言っただろうが。俺達はもうポイントがゼロだ、環境汚染で減点されたって痛くもなんともねぇんだよ」

 

「だ、だからって!なんでそんなことするんだよ!」

 

Bクラスの名前の知らん男子が思わず食いつく。

 

「あぁ?お前らにポイント使わせるためだよ。そんなことも分かんねぇのか?このザコ。頭が悪いならギャーギャー言わず黙ってろよ、邪魔なんだよカス」

 

相変わらず本気なのか演技なのか分からん挑発の上手さだな。相手を冷静にさせないために演技してるとは思うんだけど、楽しみまくってる感がありすぎて本気にしか見えねぇ。っていうか本気で煽るの大好きっぽいな?性格悪いやっちゃで。

 

「……どうしたら辞めさせてくれるの」

 

また発言したのは一之瀬だ。この中で一番龍園慣れしてるからかな、何かと関わってるもんね。

 

「ククク……それが本題だ。お前ら3クラス、俺と契約を結べ。条件は『月々20万ppをCクラスに振り込む』だ!」

 

「なんだと!?」

 

「ふざけるな!」

 

「無理に決まってるでしょう!」

 

「そうだよ!無理だ!」

 

「調子乗んなロン毛!ボケ!死ね!」

 

「ありえない!」

 

全員から非難轟々だな。俺もついでに最後尾で人影に隠れて声を上げた。

 

「うるせぇんだよザコ共……。その代わり俺らCクラスは『この特別試験でのリーダーを開示する』それが交換条件だ。お前ら3クラスがこの取引を飲むなら、食料処分も辞めてやるよ」

 

「そ、そんなの……」

 

思わず声を出しそうな生徒も居たけれど、リーダー勢は総じて考え込んでいた。この取引を飲んでも良いのか?と。そりゃまぁ悩むかもね。

 

「クク、破壊活動なんてオマケみたいなもんだ、お前らへの嫌がらせでしかねぇ。この取引を3クラスが飲むってんならすぐ辞めてやる。契約も教師の前で堂々とやってやるよ。だからさっさとクラスから同意を取ってこい」

 

「……。」

 

思わず黙り込むA,B,Dクラスの全員、龍園が完全に場を支配してしまった。悪口もっと言いたかったのに場を静めるのが早すぎるぞ。

 

「俺はいくら遅れて島が焼けまくってもいいんだが、早くした方が良いと思うぜ?クク……話は終わりだ、さっさと行けよ」

 

龍園の偉そうな終了宣言を聞き、集まったメンバーは各クラスのベースキャンプに散っていった。

 

 

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さーて、どのクラスが最初に戻って来るかな。やっぱBクラスがパパっとクラスをまとめて説明して、結論出して来そうかな。

 

「ロン毛!どのクラスが一番最初に来ると思う?」

 

「……さっき俺に死ねとかほざいてたヤツ、やっぱテメェだろ」

 

当たり前じゃん。俺以外にそんなこと言うやつ居たら親友なっとるわ。

 

「いんや、平田だよ」

 

「ふざけんなボケ」

 

「うるさいなぁ。気にすんなよアホの癖に」

 

「この……」

 

「それより、どのクラスが最初に戻ると思う?」

 

「チッ……。知るか」

 

「なんだよもう。雑談じゃんか」

 

「……。」

 

へそ曲げてやんの。

 

「そんな態度取るからコミュ障ヤンキーって言われるんだよ」

 

「……言われてねぇよ」

 

あれ?言われてない?俺が思ってただけか?どうでもいいや、無視して話を進めよう。

 

「Dクラスは全然話がまとまらなさそうだと思うけど……先に来そうなのAかBかで悩ましいんだよね。Bは一之瀬がすぐ決めて来そうだけど、Aクラスも合理的に考えて『なるべく早くした方が良い』とか考えるかもだし」

 

「フン。契約さえすりゃ順番なんざどうでもいい」

 

「いや、そうなんだけどね。……ちゃんと契約してくれるかな」

 

「……試験2日目から食料を一気に処分されようとしてんだ、普通に条件飲むだろ」

 

そうだと良いけど……。

 

「でも……もし坂柳が居たら、多分だけど絶対に気付くよ。他にも同じくらい頭良いのが居たら契約してもらえないかもよ」

 

いや坂柳が気付くっていう根拠は無いけどさ。ついでにあんな頭良いのが他にも居てたまるか!という気持ちもあるけど。

 

「フン……」

 

Bクラスは一之瀬が契約する言うたらその通りになりそうだけど、反論する生徒の意見を聞いたりはするだろうな。誰かがリーダー交代の可能性を気付いたら困るなぁ……。

 

なんとなくAクラスの方が気付きそうな生徒が居る気はするけど、もしその生徒が坂柳派だったり、コミュ障だったり、ハゲ嫌いだったら黙っててくれるかもしれない。

 

そう考えると、AもBも同じくらい気付いちゃいそうだ。Dクラスは知らん。

 

でも色々考えても分からないか、待ってみるしかないな。

 

 

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時刻は15時前、最初に姿を見せたのはBクラスだった、先程と同じ5人メンバーでやって来た。正午を挟んで3時間ほどで結論出したなら、かなり優秀だと思う。いや分からんけど。

 

「龍園くん、条件を飲みます。ただし、星乃宮先生も同席した場での契約じゃないとダメ」

 

かなり真剣な表情の一之瀬。張り詰めてるな。

 

「フン……まぁいい。だったら呼んでこいよ」

 

ん?……不機嫌そうなのは演技か?教師の同席とか別に不機嫌になる理由無いもんな。演技上手いな。

 

「……分かりました。ごめん、誰か呼んできてくれる?」

 

「あ、じゃあ僕が行ってくるね」

 

Bクラスの1人が小走りで来た道を戻っていった。ちょっと可哀想。

 

「そういえば、坂上先生に言ったら無線で呼び出せたりしないかな?」

 

なんとなく思い付いたけど、良いアイデアに思える。先生の姿がどっかに無いか見てみるけど……居ないな。運営のテントの中に居るのか、船に戻ってるのか分からん。見当たらないな。

 

「あ、もう行っちゃった……」

 

「えぇ……」

 

使い走りの姿はもう森に消えてしまっていた。足早くね?

 

 

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「それで龍園くん、食料燃やすのを辞める条件は、3クラスがリーダー情報とppの交換取引を飲んだ場合だけ?」

 

「あぁ、そうだ」

 

「どうして1クラスだけじゃダメなの?」

 

「分かってることを聞くな。少し考えりゃ分かるだろうが」

 

「あれ……?でも、1クラスだけでも一応儲かるじゃん」

 

思わず口出しちゃった。3クラスが理想だけど、1クラスでも別に良い気がする。

 

「チッ……。1クラスだけだったら、その情報を他2クラスに流されるかもしれねぇだろうが。曲がりなりにもCPを諦めてる戦略で、そこまで他クラスの利益になるのはムカつくだろが。バカは黙ってろ」

 

「なるほどね」

 

龍園の態度は俺と龍園がそこまで仲良くないアピールのはずだけど……なんか本音が出てるようでムカつくな。

 

「ppが手に入るなら、CPは増やせなくても良いってことなのね?」

 

一之瀬がまた質問する。龍園が何か企んでそうだけど、事実として利益があるから色々聞いて不安を消したい、とかいう心境なのかもしれない。

 

「フン、同価値に見てるだけだ。実際にこの取引が成立したら、Aに売り渡した分と合わせてCP350相当のppが俺らに転がり込んでくる。まともにやってるお前らには、絶対に無理な額って訳だ」

 

「けれど、本当に価値があるのはCPの方でしょう?……どうして龍園くんはそこまでppに固執するの?」

 

割と本心の入ってそうな一之瀬の疑問顔。

 

「お前らはその『本当に価値があるもの』を得られるんだ、黙ってバカみたいに喜んでろよ」

 

「ppがいくらあったってAクラスにはなれないでしょう……。いや、もしかして龍園くんは1人だけAクラスに逃げるつもりなの?」

 

「え?マジ?」

 

言われてみれば可能性としてはあるな。……まぁ近くで龍園を見てる限りでは、そんなつまらんことしなさそうだけども、何でもアリの不良として見たら大いにありえるもんなぁ。

 

「浅井も黙れ。聞けば何でも答えてもらえると思ってんじゃねぇよカス。一之瀬、お前らは事実としてCPが稼げるんだから口出しするな。ピーピー騒ぐんじゃねぇよ」

 

「……。」

 

ボケーッとやりとり眺めてたけど、いやぁ良いカバーストーリーがまた増えちゃったね。『龍園はppを貯めて1人抜けを狙ってるのかもしれない』っていう。龍園も聞かれるのをなんとなく嫌そうにする演技マジで上手いな。……演技だよね?

 

龍園の将来は『女をクスリと暴力で従わせて脅迫しながら売春させまくる悪徳スカウト』しかありえないと思ってたけど、普通に俳優とかでも上手くいくのかもしれない。顔は整ってるし、背丈もあるし、謎のカリスマ性もある。演技力もあったっぽい。

 

なんか、独裁政治とか脅迫センスとか度胸とか行動力とか、色々な才能を無駄にする道という気もするけど、悪徳スカウトになって調子に乗って、ヤクザのシマ荒らして、抗争になってブチ殺されるよりは良い将来だろう。そのうち俳優業、タレント業をオススメしよう。

 

そんな龍園の将来設計に光が見えた所で、頭を光らせてる男子生徒に率いられたAクラス達もやって来た。

 

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