ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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なんでDクラスなの?

こんにちは、Dクラスの代表2人として来ている平田と櫛田、ついでにちょっと下がってDクラスの担任茶柱と一緒に歩いてる俺は浅井虎徹です。もうほぼ俺もDクラスじゃん。この2人は好きだけど、DよりはBに入りたいな……。

 

そういや伊吹の話題出したから、欲しい他クラス生徒の話は途中で終わっちゃってた。もうちょい話そうか。

 

「えーっと、さっきの話の続きだけど……Dクラスは櫛田と平田だけかなぁ」

 

いや、そもそもDクラスの生徒あんまり知らないんだけどね。

 

「自分のクラスに欲しい生徒のこと?」

 

「そうそう」

 

「虎徹くんは……堀北さんのこと嫌いなの?」

 

「そりゃあ嫌いだよ。……嫌いじゃない相手にあんな態度取らないよ!」

 

さっきの『ブチ切れ騒動』をなんとかこれで言い訳したいけど、やっぱ無理があるかな……。

 

「けれど、堀北さんは勉強も運動もしっかり優秀な人だよ?」

 

平田からの謎の擁護。なんでそんなことすんの?

 

「いや別に、どうでもいいし……」

 

「浅井くんは……あんまり学力とか身体能力について評価しないってこと?」

 

なんか面接みたいだ、いや良いんだけど。

 

「もちろん評価はするけど、だからってあの人間性はダメでしょ……。会話してるだけで相手をすぐ挑発して怒らせるような人間だよ?使い道が本当に無いでしょ。事務作業とか、研究員だって他人と会話はするんだろうし。あんなヤツ、どこで使えば良いの?」

 

1人で全部完結する仕事をした方が良いと思うんだよな……。あるのか知らんけど。てか無いだろ、人と一切関わらない仕事。画家?いや現代では無理だろ。

 

しゃべらない仕事ならいいのか?……人体実験される人とか?それ職業か?

 

「そっか……。じゃあ、他のクラスでは誰が気になる?」

 

平田こいつ聞き取り能力?すげーな。人当たりの良さが半端ないから自然と話したくなる。こうやって実感するとマジで感心してしまう。

 

「あとはやっぱハゲ……葛城かな。あの『注意深さ』とか『思慮深さ』は、別の意味でCクラスに一番足りないかも。性格的にも慎重で、Cクラスにはかなり珍しい、ってか居ないかもしれないタイプだし」

 

社交性も欲しいけど、『落ち着いた精神』みたいなのを持つ人員も欲しい。龍園も俺も割とテキトーなんだもんなぁ……。ルール守ろう精神も全然無いし。

 

「そうなの?なんか、葛城くんは龍園くんと相性悪そうだなって思ったんだけども……」

 

「あー、まぁ……それは確かに。相性は悪いかも。けど本当に、Cにめっちゃ足りない要素を持ってるのは葛城だとは思うよ」

 

けど確かに龍園にいじめられてるハゲも想像できちゃうな。やっぱダメか?

 

「Aクラスといえば、虎徹くんは坂柳さんの事はどう思うの?」

 

なんか、平田だけじゃなくて櫛田にもついつい話したくなっちゃうんだよな……。声のトーンとか、表情とかが良いのかも。あと純粋に可愛い美少女だし。この2人相手だったら銀行口座の暗証番号くらいなら言っちゃうかもしれんね。

 

「坂柳?かなり好きだよ。めちゃくちゃに頭良いし、可愛いし、今仲良くしておいたら将来なんとでもなりそう感もあるね。なんか金に困らないような人生を歩んでそうだし」

 

「あ、あはは……」

 

「でも『Cクラスに欲しいか?』って考えたら、ちょっと違うかなぁ……。龍園とめんどくさいリーダー争奪戦したがるかもしれないし、現状でCに入って来ても、見るに耐えない残酷な展開になっちゃうかもしれない……。ある意味で、一番Cクラスに来て欲しくない人かも」

 

足が悪い可愛い女の子が1人ぼっちで、物理的にイジメられたりするのなんか見たくないよ……。絶対に来ちゃダメなやつだ。

 

「……。」

 

あ、なんか櫛田も想像しちゃったのか気まずそうな顔してる。

 

「あとAクラスで知ってるのは神室くらいかな。もしかしたら坂柳より神室の方がずっとCクラス慣れしそうかも……。ちょっと性格荒い所もありそうだし似合う気がする。あと、今もうちょっと懐かしいけど、ポーカーのディーラーめっちゃしっかりやってくれたのとか、そういう部分は人として素直に好きだね」

 

「あはは。そういえばカード配るのとかすごい綺麗だったね」

 

「そうそう。分かってるねぇ~!流石は櫛田、良く見てる。タキシードとか着て欲しかったよね」

 

「ふふっ、言われてみればそうかも」

 

うむうむ、やっぱそう思うわな。ただ流石に女の子を相手に『アイツはバニーガール姿にしてぇよなぁ!』と言うのは我慢した、偉いぞ俺。いや櫛田がレズだったら同意してくれたかもだけど、多分違う……と思うし。

 

ってか、他クラスの生徒とかポーカーに居たメンバーくらいしか知らないよなぁ。もうちょい他クラスと交流できる機会があればいいのに。

 

今回の無人島試験は俺らみたいな変な戦略でも立てないと基本的に交流が出来ないもんな。お互いリーダー指名のために覗き見るだけくらいだし。不健全だねぇ。

 

「そういや神崎も居たね」

 

ポーカーで思い出した。

 

「あ、Bクラスの?」

 

「アイツもかなり好きだけど……もしCクラスに来たとしても、一之瀬のために動くスパイみたいになりそうだ。呼べねぇな!」

 

「そう、かも?」

 

こう考えるとBクラスってどうしようもないな。情報提供してくれるスパイみたいなのどうやったら作れるんだ?今から意識しておかないと、クラスの団結力で全然介入出来なくなっちゃうかも分からんな。気をつけておこう。

 

 

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割とタップリ平田櫛田と会話しながら森を抜け、Cクラスのキャンプ地に戻ってきた。歩いてた感じ2人とも体力ちゃんとあるのな、てかほぼ間違いなく俺より体力あるっぽいぞマジで。うーん優秀、非の打ち所が無いじゃん。

 

「龍園くん!ちょっと待って、契約内容をしっかり確認しておきたいんだ」

 

テントの方へ向かっていた龍園を引き止める平田。クラスの代表ゆえの責任感ってやつかな?

 

「フン、仕方ねぇ……。取引内容は『Cクラスは無人島試験でのリーダーをDクラスに提示する』そして『Dクラスは月々20万ppをCクラスに支払う』だ」

 

「あとは『A,B,Dの3クラスとリーダー情報の開示取引が成立したら、Cクラスは無人島試験での環境破壊活動をすべて辞める』だよね?」

 

「そうだな」

 

Bクラスとやった契約と同じか。さっさと結ぼうぜ!

 

「ただ……龍園くん。その、僕は、Cクラスのリーダーが交代された時のことを危惧してるんだ」

 

えっ?マジかよ、Dクラスも気付いたのか……。それともAかBに話を聞いたのか?

 

「ならどうする」

 

特に表情を変えない龍園、偉い。俺はもうちょっとヘコんじゃったよ。何で気付くんだよ……。

 

「そうだね……。もしリーダーを交代されちゃって、それを知らずに指名したDクラスはSPを50減らしてしまうことになるね」

 

「……まぁな」

 

「だから、『もしリーダーがリタイアした場合は、必ずDクラスに伝達する』が条件。もし言ってくれなかったら、僕たちは指名失敗でSP50を損することになるから……『契約違反時には契約を無効にし、CクラスはDクラスに月々30万ppを支払う』というのも条件にさせてもらうよ」

 

ぐぇ……。完璧やん。違反時のペナルティもしっかり条件に入れてきたのかよ。

 

契約の提案してから24時間くらい?しっかり考え込んできたのか知らんけど、文句無い交渉なんじゃないのこれ。考えたの平田か?めちゃくちゃに賢いじゃんコイツ。舐めてた訳じゃないけど普通に驚いたよ。

 

てか、なんか、全然思い通りに契約出来ないね……。

 

「そういえば、誰がリタイアしたかってのは他クラスにも開示されるの?」

 

気になったので横から聞いてみた。そもそも情報としてそれが分からないなら試験中のポイントと一緒で、詳細が分からなかったら誤魔化せちゃうんだよね。

 

「試験中では同クラスの生徒にだけ伝えるらしいんだ。けれど、試験終了後は他クラスのも教えてくれるって言ってたよ。……ですよね?茶柱先生」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「だから提示してくれたリーダーがリタイアしてたら後から分かるって事なんだ。……分かってくれたかな?」

 

試験中のSPに関しては『最終結果しか提示しない』って明言さてたからこそ、指名に成功したか失敗したかを最終結果から予測するしかないし、それだけでは確実性が薄い。だから葛城はCクラスのリーダー交代&他クラス指名でのSP獲得をさせないために『Cクラスの最終ポイントが0じゃなかったら契約無効』という条件にした訳で。

 

けれど、『リタイアした生徒は誰か』というのは後で教えてもらえたのか……。こういう状況にでもない限り誰が知りたいんだよ!?って話だもんなぁ、そりゃ普通のルール説明には入ってないか。良く気付いたな平田。

 

「誰がリタイアしたかは教えてもらえるかも?なんてよく思いついたね平田」

 

「それは、その……僕たちのクラスから1人リタイアしちゃったからね……」

 

「ふーん」

 

まだ3日目だけどリタイア出たのか。体悪い子でも居たのかね。

 

「平田、月30万ってのは無理だ。損失分のCP50に相当する20万ppなら条件を飲んでやっても良い」

 

お、龍園が交渉に入った。

 

「けれど、僕たちはppよりCPの方が欲しいんだ。……等しい額、っていうのは難しいよ。減らされちゃう損害の方が大きいからね」

 

まぁ、そうか、指名失敗でSP50減点だもんなぁ。その分のppをもらえたとしてもクラスの差をつけられちゃうのはまぁ事実だ。元々、額面だけのCPと実質的なppのどちらを優先するか?って話でもあったね。

 

「チッ……」

 

不満そうに考える龍園。まぁ契約通りに動けば良いだけなんだけど、他クラスのリーダーを見抜けた場合の動きが猛烈に複雑になるもんなぁ……。

 

誰だよ、こんなクソめんどくさい取引を考えたヤツ……。

 

「えーっと、もしCクラスが『リーダー代わっちゃった。新しいのはコイツ!』ってDクラスに伝えに行くとして、それを伝えても『聞いてねぇな!契約違反だ!』って嘘を言われるのは怖いんだけど」

 

条件を飲む飲まないは置いといて、今思い付く限りの詳細を詰めておこう。

 

「そう、だね……。新しいリーダーの伝達は、担任の先生や、運営側の人の前で確認してもらうようにしようか。キーカードの提示という方法で」

 

「うん、良いと思う」

 

まぁ今は学生証端末が無いから動画も録音も出来ないし、そうやって証明するしかないもんなぁ。妥当だね。

 

「あっ、あと、リーダー交代の報告も試験6日目の24時までという期限を決めさせて欲しい。それ以降にリーダーがリタイアしていたとしても、契約違反ってことで」

 

「チッ!」

 

ハッキリ舌打ちする龍園。なんで?時刻の話って……もしかして、最終日にやる他クラスのリーダー指名をした後で報告すりゃ良いとか思ってたのか?相変わらずそういう方向での頭の回転早すぎるだろ。どういう脳みそしてんだ。

 

「ってか、リーダー指名って最終日のいつだっけ?……いつでしたっけ?茶柱先生」

 

「……朝8時の点呼時だ」

 

なんとなく不機嫌そうに答える茶柱。なんでだよ、他クラスとはいえ可愛い生徒が質問してるってのに失礼な態度だぜ。そんなんだからDクラスの担任なんだろうなぁ!

 

「仕方ねぇ……。条件飲んでやるよ、平田」

 

「うん。ありがとう龍園くん」

 

こうして、しっかり考えてきたDクラスとガチガチに固めた契約を結ぶことになってしまったのだった。

 

なんていうか、平田、ヤバくない?成績が良くて、体力しっかりあって、人当たりの良さがスーパーエース級で、ここまで思考も巡るとか。欠点が無いじゃんマジで。なんでDクラスなの?意味不明だよ。下手したら葛城すら越えて優秀じゃん。

 

これを上回ってDクラス判定されるほどの『欠点』があるとしたら何なんだ?想像出来ないよ……。なんかとんでもなくヤバい秘密とかが無いと釣り合わないでしょ。中学生の時点で数人の女の子を妊娠させた、とか?平田なら5,6人ヤッてたかもしれんね。

 

 

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うーん……。AクラスにもDクラスにもリーダー交代の対策されちゃったから、これもうスパイやる意味ほぼ無さそうだね、どうせ見抜ける訳無いし。

 

今帰ってもCP350相当のppは入ってくるんだし、大勝って事で良いでしょ。

 

「坂上!出てこい!立ち会え!」

 

お前は戦国武将か?いきなりテントに向かって大声を出したロン毛に軽く引く。イライラしてるのか知らんけど、何をテンション上がっとんねん。

 

「……敬語を使え、龍園」

 

ほんまやで。15,16のガキだから敬語使えなくても『頭悪いなぁ』で済むけど、大人になっても、オッサンになっても敬語使えないやつとかマジで『うっわ……』でしかないぞ。

 

「Dとの契約だ。立ち会え」

 

「……。」

 

無言のままこちらに来る坂上先生。そらそうなるわ。

 

そうして、失礼な態度で呼び出された坂上先生と、失礼な態度を俺に取ってくる茶柱先生が立ち会った上で、CクラスとDクラスの間でも契約は結ばれた。

 

やっっっと3クラスとの契約終わったよ。思ってた5倍くらい疲れた。どれだけ考えることあったんだよと。

 

あとは、もう、のんびり過ごそう……。食料に余裕あるし、普通に海遊びしても良いかもね。せっかく8月の真夏、南国の透き通る綺麗な海があるんだから。遊ぼう!切り詰めたサバイバルなんてやってらんねぇよ!




次回更新は2021年予定です。

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