こんにちは、太陽が赤くなってきた現在、ノルマというか『やらなきゃいけない事』がだいたい終わってのんびりしている俺は浅井虎徹です。
条件はともかくA,B,Dの3クラスとの『リーダー情報提示』の取引がやっと終わったので、何もしなければ確定でCP50ずつ、合計150相当のppがもらえることになってる。
そして龍園アイデアでSP200相当の物資をAクラスに売り払ったのもあり、月々CP200相当にあたる80万ppもAクラスから振り込まれることになっている。なので合計で150+200の『CP350相当』の『140万pp』が毎月振り込まれるという訳だ。うーん、素晴らしい!大儲け!
もう、帰ろう。どうせスパイも成功しないだろうし帰ろうよ。海でちょっと遊んで帰ろう。クソ蒸し暑いテントの中じゃなくて、クーラーの効いてる豪華客船のフカフカベッドで寝ようよ……。
ちなみに龍園はDクラスとの契約が終わった後どこかに行ってしまった。何するのか聞いてないけど、多分キーカードを持ってリーダーが誰か提示しに行ったんだろうな。そうしないと取引成立にならないし。
龍園が消えて都合が良いので、Cクラスのキャンプ地に来ていた平田と櫛田に近くの森で待機してもらい、交換食料ちょうど10人分を渡しておいた。あの2人が目を光らせてくれるなら、まぁ伊吹も多分大丈夫……。多分。きっと。そう思いたい。
一応、今晩の探索ではDクラスの方に行って変な声とか聞こえないか確認してみよう。
そういえば俺が食料を勝手に持ち出す所をCクラスの数人に見られてしまってたけど、なぜか何も言われなかった。見て見ぬ振りをしてもらえた。……なんで?
食料収集は寝ててサボるし、勝手に食料持ち出すし……。『敵かも?』とか思われてても不思議じゃないくらいなんだけど、やってることだけ見たら言い訳できないんだよな……。後で弁明しておかなきゃ。
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平田と櫛田に食料を渡して、テント周辺に戻ってきたら石崎に話しかけられた。
「よぅ虎徹、なんかやってたの終わったのか?」
食料についての事か?……別に責めてきてる感じではない?
「だいたい全部終わったと思うよ」
「何してたんだ?……あっ、言えないなら言わなくていいぞ!」
変に気を遣われてるな。
「食料はDクラスにちょっと渡したんだよね。『伊吹を保護してくれてありがとう、Dクラスの男子に襲われないように見守っといて』って感じで」
「へぇ~……。あれ?でも、伊吹ってスパイとして行ってるんだろ?そんな事して大丈夫なのか?」
あっ……。そういえばそうだった、やべぇことしたかも。
「……まぁ、龍園も知ってて何も言わなかったから大丈夫だよ」
多分。うん。伊吹の安全確保の方が優先だし、仕方ないね。
「そっか。あと……これも聞いて良いのか分からないけど、リーダーが誰かって聞いてるか?」
「Cクラスの?」
「そうそう。龍園さんが他クラスに伝えに行ったみたいなんだけど、虎徹は知ってるのかなって」
「いや知らんよ」
てか龍園が帰ってきたら普通に教えてくれるでしょ。他クラスに公表したのに自クラスで隠す意味なんて無いし。
「え?そうなのか。……虎徹なのかなって思ってたんだけど」
俺がリーダー?
「いや俺は無いって、多分一番ありえない。龍園に許可取らず勝手に船に帰っちゃいそうな人間ナンバーワンじゃん」
「あっ……そうだな」
「……。」
あっさり同意すんな!……事実だけどね!
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龍園が帰ってこなくて暇だし、もうちょい雑談するか。
「リーダーといえば、石崎は他クラスのリーダー誰だと思う?」
「いや、俺はよく知らないぞ……。でも、Aクラスはやっぱあのハゲだと思う。けど俺らみたいに全然違うヤツにしてるかもしれないし。Dクラスも同じようにさっき来てた2人だと思うけど、同じように違うヤツにしてそうだよな」
「そうだね」
「……分かんねーな!」
うーん、気持ち良いね、この開き直りっぷり。
「その通りだよ。多分スパイの2人も分からないって」
「あれ?……そうか?同じクラスとして動いてたら意外と分かるんじゃねーか?」
「えっ、なんでよ。分かる訳無いでしょ」
「なんていうか『こんなヤツ居たっけ?』みたいな感じで思わず話しちゃったりするんじゃないのか?」
んん?どゆこと?
「えーっと、『顔に見覚えないけど、ココに居るからクラスメイトなのか~。だったら話しても良いか~』みたいな?」
「そうそう。そんな感じ」
……んなことある訳ねーだろ!
「いやそれは無理だろ……」
「えっ、そうかぁ?俺だったら騙されるかも。まだクラス全員の名前覚えてねぇもん」
「……。」
もう4ヶ月だぞ!覚えてるだろ!……と言いたい所だったけど、言われてみれば俺も全員は覚えてねぇな。え?マジでいけるのか?
「でも、虎徹、その……他のクラスリーダーが分かっても、俺らは別にCP増やせないんだろ?」
「ん?あぁ、他クラスからリーダー指名されるからって?」
「そうそう。どうせ俺らが当てても減点されちゃうなら、スパイもやる意味無いんじゃないのか……?」
まぁ確かに、本来であれば、
『取引契約』
↓
『Cクラスのリーダー交代』
↓
『他クラスのリーダー指名成功』
こういう予定だったからスパイが超大事ではあったけど、AとDに『リーダー交代したらダメだよ』的な契約条件を追加されちゃったから、まぁあんまり意味無いんだよね……。
「でも、スパイの意味が完全に無いとまでは言えないんだよね、俺らがSPゼロで終わるとしても、他クラスのSPを50ずつ削れるチャンスではある訳だし」
「あ……そうなのか」
「いやまぁ俺はそんな無駄なことして他3クラスに嫌われるくらいなら何もしない方が良いと思うけどね。でも……龍園なら喜んでやりそうな気はするかな」
「……確かに」
俺としては友好度を下げまくっちゃうと、次回こういう契約を持ちかけた時に拒否られそうだから損の方が大きいと思うんだけどね……。これ龍園にちゃんと言っておこうか。アイツ、相手を殴れるならどれだけ殴られても良いみたいに思ってそうなアホな変態だし。
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「おい坂上!出てこい!」
またかよ、既視感ありまくりの光景が繰り返されていた。帰ってきて早々に何してんの不良め。
「……なんだ、龍園」
「全員がリタイアしたクラスへのリーダー指名、もしくは失格したクラスへのリーダー指名ってのはどうなる?」
「その場合は……最後リーダーだった生徒がクラスリーダーとして記録され、その生徒への指名は有効のはずだ」
「チッ……クソが……」
「一応、確認する。待っていろ」
運営テント内に引っ込む坂上先生、あまりにイレギュラーな質問だからちょっと自信無かったのかな。それにしても龍園は何の質問しとんねん。
「龍園、どゆこと?」
「浅井か……。テメェなら言わなくても分かるだろ」
「いや言えよ。知らんよ」
分かる訳ねーじゃん。
「フン……。俺らがリタイアして、他クラスからのリーダー指名が無効になるなら、契約違反にならずアイツらのSPを増やさせないことが可能だったんだよ」
「あー、なるほど」
存在しないクラスへの指名が無効化されるってなら、みんなで消えちゃえば契約を守ったままCクラスへのリーダー指名が出来なくなったはずだった、ってことか。相変わらず嫌がらせが好きなやっちゃな。
あ、坂上先生がまた出てきた。
「龍園、先程言った通りで間違いない。『全員リタイア、もしくは失格となったクラスへのリーダー指名は、最後にリーダーだった生徒に対して有効』ということだ」
「チッ……」
相変わらず、まともな返事もしないで龍園が考え込みながら去って行った。ホントに不良だよな。
「そうだ坂上先生、現時点での全クラスのCPって教えてもらえますか?」
せっかくだし聞いておこう。普通に忘れたし、端末無いしで微妙に気になってるからね。
「クラスポイントですか?……今回の試験には関係無いので伝えても問題無いでしょう。現時点との微差はあるかもしれませんが、8月1日時点では、えー、」
そう言って学生証端末と似たようなスマホを見ながら教えてくれたCPは次の通り。今まで使い道の無かったメモ帳とボールペンを慌てて取ってきて、なんとなく書いておく。
Aクラス:CP1004
Bクラス:CP663
Cクラス:CP512
Dクラス:CP87
「了解です、ありがとうございます」
「……健闘を祈っています」
やっぱ坂上先生、良い人だよな。しっかりCクラスの応援してくれてる。どっかのDクラス担任とは違うぜ。
これ見ると、多分だけど7月中だけで結構減ってるっぽいな……。どうせ龍園だろ、何しとんねんアイツ。20くらい減ってると思う。
それにしてもDクラス酷いな。こんな状況なのに堀北は俺に喧嘩売ってきたのかよ。こんな状況だからこそ、か?
しかし、それにしてもAクラス飛び抜けて多いな……。俺らより500以上多いってマジかよ。あんまり妨害活動とかしたくないんだけど、AをこのままSP消費しないままSP270とリーダー指名成功でのSP50、合わせて320も増やさせるのは、ちょっと嫌だな。いやまぁCP320のうち250分のppはウチに送られることになるんだけどさ。
正直どうでもよくなってたけど、坂柳との『AとCでCP増減勝負』もあったんだよね……。もし何か出来そうだったらAクラスを叩こうかな。
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昼に戻ってきてから暇そうなCクラスのメンバーと、微妙に不機嫌そうな龍園が集まっていた。時刻は、15時前。まだ太陽が沈むまで時間はあるけど、だからって今から暗くなるまでにやれることもそれほどないもんなぁ……。洗濯でもするか?
「全員揃ったな。とりあえず、俺らのリーダーを伝えておく」
「おっ!」
知った所でどうという訳じゃないけど、ちょっとワクワクする。
「……アルベルトだ」
そう言いながらキーカードの刻印を見せてくる龍園。へぇ~、知らんかった。みんなも微妙に驚いてる顔かな。
「龍園さん、……これからどうするんすか?」
代表してか石崎が龍園に聞いたけど、どんだけ抽象的な質問やねん。いやまぁ気になることではあるんだけどね、『今からなんかやることあんの?』っていう。
「……まだ考えてる。お前ら、何か思うことがあるなら言ってみろ」
割と珍しいな、龍園からの質問。しかも変に曖昧だな。
「あの、はい」
お、山脇が手を挙げた。
「なんだ、言ってみろ」
「はい。その、俺たち釣り竿とか魚捕りの網とか無いので、食料を取るってなったら島にあるものだと思うんですけど、今日もう3日目で、この調子だと明日か明後日には島から採れるものが無くなるかも……と思います。船のある反対側まで全部見たという訳では無いんですが、最終日まで余裕があるってことは絶対無いと思います」
「……なるほどな。集めるなら急いだ方が良いってか?」
「そう、思います。はい……」
なんか、まだ微妙にビビってんのね。
「でも食料って余裕あるんじゃないの?この人数だったら最後までいけそうでしょ?」
8人だけだし不足するってことはなかった気がするんだけど。
「あぁ、うん。多分大丈夫なんだけど、他クラスにちょっと渡すんだろ?その分を考えると足りないかも?って」
今、めちゃくちゃ墓穴を掘ったね俺。バカですねぇ……。
「……浅井にやらせたのは取引の一環だ、心配するな。今ある量で最終日まで足りるか?」
おっと横から龍園が助け舟を出してくれた。今回は素直にありがたい。
「あ、はい。大丈夫だと思います」
「そうか。なら、とりあえず……今日はもう自由だ。好きにしろ。ただし船に戻るのはまだ待て。……以上だ、解散」
なんとなく元気が無い気がする龍園の号令で自由時間となった。最初の予定通りにいってなくて萎えてるのかね?それとも普通に島生活で疲れてきたのかな?後で聞いてみるか。
とりあえず、この暑さの中、汗まみれの状態をスッキリするため水遊びしに川へ行こう。