そろそろ日が落ちる時間かな、早く寝ようと思ってたけど龍園と話しまくってて寝れる感じではない可哀想な俺は浅井虎徹です。いや別にそれほど寝たい訳でもないんだけど。
「んで結局どうすんのさ。まだ他クラス指名は諦めないの?」
BとDが組んでたとしたら、どうせリーダー変更して契約通りDクラスに通達したとしてもBに伝わっちゃうだろうし、もう諦めようよ。めんどくさいよ。
「チッ……。とりあえず、偵察は続ける」
はぁ……そうすか。律儀だね。
「俺としてはAクラスをどうにかして叩きたいんだよね。CP400くらいの差を付けてズバ抜けて1位だし、坂柳との勝負も一応あるし」
「……CP増減ってやつか」
「そうそう」
勝てば坂柳に『虎徹くん』と呼んでもらえて、負けたら俺の貞操が坂柳に奪われるかもしれないCP増減の勝負だ。もしそうだったら負けたいな。
「現状のCPは確か……Aが1000、Bが650、Cが500、Dが90くらいのはずだったな」
よく覚えてんなぁコイツ。
「えーっと……これ、さっき坂上先生に聞いたやつ」
そう言いながらメモを渡す。もう割と暗くなってきてるけど、見えない暗さじゃない。
「……これに、Aには320、BとDには200くらい加算されるかもしれないってか」
「どっからその数字出したのさ」
当然のように何を言ってんの?
「金田が言ってたように、残せるSPの理想値は150前後ってとこだ。俺らが素直にリーダー指名を受けて成功させたら、それぞれSP50の増加。AクラスはSP270に追加50って所だ」
「ふーん。なるほどね」
そうなると、現状から足して……せっかくだからメモ帳使おう。
Aクラス:CP1324(1004+320)
Bクラス:CP863(663+200)
Cクラス:CP512(512+0)
Dクラス:CP287(87+200)
こんなもんか。当然、Cクラス以外で指名し合ったりしたら増減は変わるけど……。俺達とAクラス、800差って!ヤバすぎでしょ。
「……面白い状況じゃねぇな」
「まぁ、うん。確かに」
珍しく意見が一致した。流石に数値的な差が大きすぎるかなぁ……。でもまぁ、こんなに大きく数値が変動する試験そんなに連発出来ないでしょ。多分。
「黙ってたらCP350相当のppが入るのはあるけどな」
そういえばそうだった。ppに注目して新しいページに書いてみると、
Aクラス:CP1074相当(1324-250)
Bクラス:CP813相当(863-50)
Cクラス:CP862相当(512+350)
Dクラス:CP237相当(287-50)
「……あ、こうやって見るとCクラスはもうBクラス抜くのか。つまりppだけ見たらもうCクラスはBクラスってことね」
超分かりにくいけど、CP順でA,B,C,Dが決まるからそういうことになる。
「だが……実際のCPで差があり過ぎるな」
俺から渡されたメモを眺めながら龍園がまだ文句を言う。けど、うん。分かる。
「やっぱAクラスを叩こうよ。どう考えても集中して叩くべきだよ」
「……テメェにしては珍しいな。Aクラスに上がりたくなったのか?」
はぁ?そんな訳無いじゃん。
「坂柳から『虎徹くん』って呼ばれたいからね」
「フン……。そんなことだろうと思ったぜ」
「いや、まぁ、『これじゃ勝負がつまらなすぎる』って気持ちもあるよ。うん」
7:3くらいで『虎徹くん』呼びされたい欲の方が大きいけどね。
「俺も『Aクラス潰し』に異論はねぇ。調子に乗ってるアイツらを潰すのも悪くない。俺らにCP200分を貢がせておいて、カケラも利益が無い状態にするってか……。ククク」
「うーん、ハゲ泣き叫ぶんじゃないの?」
「クク……おもしれぇ」
本当にハゲ泣いちゃうかもしれないな。……けど仕方ない!今回は痛い目を見てもらおう!
---------------------------------------
「『Aクラス潰し』の方法だけど……」
「失格でもさせるか?」
楽しそうな声を出すねぇ龍園くん。どんだけ他人の不幸が好きなんだ。
「んー、そうだね……。『SPをゼロにする』でも良いと思うけど」
どっちの方が現実的なのかは分からんな。
「失格じゃなくSPゼロにする場合は……Aにも指名失敗させる必要があるだろうな」
「んん?……あ、最後のリーダー指名だけでSP270を削り取ろうって?」
「現実的じゃねぇけどな」
A以外が協力して、3クラスでAクラスのリーダー指名に成功したら、AクラスにSP150ダメージ。
さらに、AクラスがB,C,Dの3クラスへのリーダー指名に失敗したら、これまたSP150のダメージ。
こうなるとSPが300あっても吹き飛ぶ、と。物資の消費分をスポット更新によるチマチマ稼いだ量と同額しか使わなかったとしても、ゼロになっちゃう……と。
ホントに現実的じゃねぇな!
「もしそうなったら死ぬほど面白いけど……。流石に無理でしょ」
「BとDクラスのリーダーを確実に証拠に残し、葛城に信じ込ませ、そして2クラスにリーダーを代えさせる……」
「いや、まぁ、うーん……?」
出来るかなぁ?……2クラスとも全面協力してくれたら、まぁ無くもないだろうけどさ。
「BとDのアホ共にリーダーリタイアのSP30消費を納得させる必要がある、が……」
「俺が言わなくても分かってるだろうけど……龍園が言っても、9割くらい信じないでしょ」
どうせまたAクラスと組んで悪巧みしてると思われるのがオチだ。妨害活動したいだけだろ!的な。
「フン……」
「何にせよ、Aクラスのリーダー情報が1番欲しいね。それだったらBもDも協力して、指名してくれるでしょ。儲かるし」
「……それも疑われるかもしれねぇな」
「いや……まぁ、確かに」
本当のリーダー情報だったとしても、嘘の情報だと疑われるかもしれないね。完全にオオカミ少年の気分だ……。でもやってることがやってることだし、龍園だし、信じてもらえない可能性もめちゃあるな。
そう考えると、もし提案してきたのが一之瀬だったら信じちゃうかもしれんね。
『AクラスにBDクラスのリーダー情報を売ってきたよ!』
『Aクラスに指名失敗させるためにリーダー交代して欲しいんだ!』
『その分の損失はCP50相当のppを振り込む契約で補填するよ!』
『あと、Aクラスのリーダーはホニャララくんだよ!』
これ、龍園もしくは俺がやっても……絶対に信じてもらえないでしょ。ハードルというか、信じてもらう必要がある部分が多すぎる。現実的じゃない気がする。てか、一之瀬でも無理じゃね?
---------------------------------------
「AクラスのSPを全部削り取るにも、現状ではAクラスに言いなりに出来るヤツは居ねぇ……」
「普通にSPを使わせちゃおうって?」
「あぁ」
SPを使うのはリーダーとかじゃなく、そのクラスの生徒だったら誰でも良いはずだもんね。そうか、1人でも好きに動かせるコマが居たらSP全部使わせることも出来たのか。
「サングラス3個セットがSP1だったから、SP270削り取るには、Aクラスの生徒にサングラス810個注文させればいいのか。うーん、いらね」
帽子270個も可能だけど。何をどう考えてもそんなにいらないし、学校側もそんなに用意してなさそう。普通に考えて水とか食料を優先して交換するもんな。誰がサングラスなんか交換するんだ?……ぶっちゃけ帽子あるならサングラスいらんかったわ。
「……担任や運営担当を騙してSPを消費するってのも、GPSがある上に、不正があったと取り消しも考えられる以上、失敗する可能性がある」
「そりゃまぁ、そうだね」
運営にAクラス生徒だと誤認させるなんて、ルパンとかじゃなきゃ無理だろ。
「葛城からの連絡だと偽装して、Aクラスのヤツに注文させる。という手もあるにはあるが……」
龍園も流石に言いながら自分で自信無さそうだね。
「Aクラスは最初から『SPほぼ使わない!』って行動してるから、ちょっとキツそうだね」
「……あぁ」
「操り人形みたいに動いてくれる生徒がAクラスに居たら、そりゃあラクだし好き放題できるけど……まぁ難しいよね。自分達のクラスのCP270を消し飛ばす生徒が居たらクラスメイトからリンチされてもおかしくないし……。相当にヤバイ脅迫されてないとやってくれなさそうね」
CP300だとしたら、月々3万ppの40人分、月120万ppを吹き飛ばすようなものだ。それを実行させるには、それこそ人間の尊厳を損ないかねない……レイプされて心を潰されて、その動画を脅迫に使われてるとかいう犯罪レベルじゃないとやってくれなさそう。
「……何考えてんだ」
「えっ……。俺だったらどういう時にCクラスを裏切るかな~って……」
慌てて誤魔化そうとしたけど、なんか似たような意味になっちゃったな。
「で?お前だったら、何をされたらCP300削るまでやるんだ?」
聞くなよ!何も考えてねぇわ!
「あー、うーん……。一之瀬、櫛田、神室、坂柳あたりが好きなだけ抱かせてくれるとかなったら、もうCPとか全部消し飛ばしてもいいかもね」
「……。」
龍園がすっげぇ呆れた目を向けてきた。いやいやいやいやいや、そりゃそうなるでしょ。男だぞ俺。健全な男子高校生だぞ。あの美少女達の1人を好き放題出来るならCPなんてどうでもよくなるでしょ。
「ま、まぁ、もしそう言われても、本当にヤらせてもらえるかは別問題だからね……。多分大丈夫だよ!心配すんな!」
「……。」
1ミリも信じてないって顔しやがって……こ、この野郎。てかお前こそ4月にCP500吹き飛ばした主要人物じゃねーかよ!
もし本当に誘われたり、報酬が前払いだったりしたら、マジで絶対にCクラス裏切ってやるからな!!
---------------------------------------
えーっと、何の話だったっけ……。あっ、Aクラスをどう潰すかの話か。
「SPをゼロにするってのは難しいから、失格させる方向でいく?」
「……あぁ。そっちの方が遥かに現実的だ」
「失格条件ってなんだったっけ?……パンフレット今どこにあんの?」
初日にカタログショッピングをしてから、その後マジで1回も見てないな……。絶対にこの試験参加者としては珍しいよな、2日目以降はパンフレット見る必要無いって。
「俺が持ってる。……他クラスへの『暴力行為』『略奪行為』『器物破損』など」
「『など』?……『など』って何?」
その3つ以外もあったの?
「その他に何が該当するのかは明記されてない。規律維持のために後から付け加えられるよう、逃げ道を作っといたんだろ」
そうかもしれないけど、言い方が……。
「うーん、何にせよ、この3つからどれかをAクラスにさせればいいのか。1回でいいんだから、色々試して警戒されたりする前に、一撃で決めたいね」
「……物を盗ませても『略奪行為』に該当せず、『ただ拾っただけ』なんて逃げられる可能性がある。GPSがあるとしてもな」
位置情報があるからといっても奪ったのか拾ったかの判定は無理そうだもんね。
「あとは『取引したからだ!』とかなるかもしれないね」
Dクラスに物資渡したやつみたいに。流石にアレを『奪われた!』と言った所で通らないだろうな……。
「となると、『暴力行為』と『器物破損』の2つだな。どちらにしろ、頭の悪いヤツがターゲットになるが……Aにはあまり候補が居ねぇな」
逆に言えば、少しは居るのか?規律重視で選抜されてるっぽい疑似レイブンクローのAクラスにもそんなヤツ居るとは思わなかったな。……あ、なんか調子乗ってるヤツが船に居たっけ?顔も忘れちゃったけど。
「40人も居たら少しはそういうヤツも居るのか。候補は何人くらい?」
「……2人ってとこか」
「ふーん。……じゃあ、これからはAクラスのキレやすそうなヤツ、Aクラスのアホ探しと、リーダー偵察って感じ?」
「そうだな」
「オッケー。……あとは証拠をしっかり残せるようにか」
交換したのはデジカメとボイスレコーダーだったはず。両方使えば擬似的にビデオって感じで証拠になりそうだ。
「あぁ。相手に暴力もしくは器物破損をさせるシチュエーション、そして証拠を残す方法、場所。そのあたりをこれから3日間で見つけ出す」
女子の着替えを盗撮して、そのカメラを破壊させるとか成功しそうかな。
「了解。……3日?」
あれ?今日が3日目で、あと4,5,6,7……4日あるじゃん。
「最終日は午前中で終了だ。相手もラストで気を張るだろ。……予備日ってとこだな」
「なるほどね」
「そして当然だが、Aクラスのリーダー偵察は続ける。……もし見抜け、証拠に残せたら、BとDクラスに流す」
「んはは。良いと思う、俺ら何の代償も払わず恩を売れるし」
「……普通に売るんだよ。情報を」
「えっ、いや、買ってくれるかね……?」
なんか無理な気もするけど。まぁ、取らぬ狸の皮算用ってやつだから後で考えりゃいいか。
「場合によっては……その証拠でAクラスを挑発し、その証拠を破壊させ、その光景を証拠に収めて、Aクラスを失格させて潰す」
「はい?……あ、なるほど。良く頭が回るねぇ」
一瞬、コイツ何を言ってんだ?とか思ったけど、いやまぁ確かに。一石二鳥だ。感心を通り越してアホかと思うほど頭の回転はえーな。
「今晩も深夜偵察だ。……寝とくぞ」
「オッケー」
ちょうど暗くなってきたし丁度いいか。おやすみ~
なんか龍園と話してばっかりですねこの作品