ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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4日目終了

こんばんは、日が落ちた18時くらい。綺麗な貝殻を入れる容器を探し求め歩いていたら、携帯食料の空き箱がそこそこ良い感じのサイズと耐久性だと気付いた天才の俺は浅井虎徹です。

 

交換した食料は合計で3食分、つまり40箱が3セットで120個。潰れちゃってるやつもあったし、もしかしたら足りないかもしれないけど、まぁ最高の保存容器だ。

 

めっちゃ小さい貝はペットボトルに入れるか……。明日からの貝ハンターが楽しみだぜ。

 

俺と龍園のテントの他に2つテントはあるけど、なぜかどっちでも夕方なのに全員が寝てた。深夜偵察のため?聞いてないんだけど。

 

そういや機会が無かったから他テントの中を見たのは初めてだったけど、3人でもなんか狭そうだったな……。4人テントって本当なのか?女子4人じゃないと無理そうだったんだけど。

 

寝やすさに関しては、龍園と2人だけのテントってのは素直に感謝しよう……。

 

 

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暗くなったのでいつものテント、この無人島での我が家に帰ってきた。同居人は不良です。治安が悪いね。

 

そういや今日ずっと曇りだったけど、雨降ったらこのテント大丈夫なのかね。雨漏りは流石にしないか?しないといいな。

 

「……。」

 

龍園も寝てた。マジでみんな夜に備えてる感じかな。

 

「あー……りゅうえーん……」

 

かなり小声で呼びかけてみると、

 

「……なんだ」

 

あ、起きてた。

 

「みんな寝てるのって夜に備えて?」

 

「そうだ」

 

やっぱそうなのか。

 

「Aクラスもうちょい調べておきたいとか?」

 

「それもあるが……試験も半分を切った、伊吹金田に会っておくのも考えてる」

 

いいな、伊吹か。夜中だったらバレなさそうだしなぁ、俺も会いたい。

 

「なるほどね」

 

「……金田は既に無線機で連絡してある、今晩遅くに会う予定だ」

 

「ふーん」

 

「浅井、お前は伊吹を呼び出せるか?」

 

「えっ、そりゃ櫛田に聞けば……」

 

ダメだ、櫛田と会って普通に話せる自信あんまり無い……。

 

「……なんだ?」

 

こいつに言いたくないけど、変な感じになってるのを『浅井が裏切ってる!』とか思われるのも面倒なんだよなぁ。うーん……言うか……。

 

「昨日の夜さ……櫛田に告白して失敗したんだよね」

 

ヘコむわぁ……。

 

「……何してんだお前」

 

「だから、フラれたって言ってんじゃん。何度も言わすな」

 

この性格悪いロン毛め。

 

「まさか……体調不良も、それで落ち込んでただけってか?オイ」

 

はぁ?お前が勘違いしてただけじゃん。

 

「体調不良なんて言ってないでしょ。死にそうって言っただけで」

 

「ハァ……。」

 

なんだよ、暗いからどんな顔してるか全然分からんぞ。

 

「でもまぁ、櫛田に伊吹を内緒で呼んでもらうくらいなら、多分してもらえるんじゃないかな」

 

平田でもやってくれそうな気がするけど。

 

「……まぁいい、今晩の偵察はお前は行かなくていい。それより明日どうやって弥彦をハメるか考えとけ」

 

「いや別にそれくらいなら行くよ。暇だし」

 

櫛田また海見てたりするかもだし、普通に会話出来るならヤヒコとやらについても聞いておきたいし。Aを潰しておきたい、っていう意味では仲間だもんね。

 

「フン。だったらすぐ帰ってこい。今回の深夜偵察は全員で動く予定だからな」

 

「ん……」

 

多分これは懐中電灯の問題だな。配布の2つだけしかないからっていう。

 

「なんだ?」

 

「今更だけどさ、懐中電灯もうちょいあった方が良かったね」

 

「……まぁな」

 

けどまぁ、しゃーない。ただ生活するだけだったら2個でも困らないのは事実だし、暗視スコープあったら深夜偵察も平気そうな感じは確かにしたもんなぁ。実際にはバッテリーの無駄遣い出来ないからあんまり使えないっていう。

 

「ん、じゃあ寝ようかな……。あ、ヤヒコってどんな奴なの?」

 

それだけ聞いとかないと。

 

「……バカ、だな。Aクラスであることに調子に乗りまくり、思考力も乏しい、ハゲの腰巾着だ。権力者に媚びるだけが取り柄みたいなヤツだ」

 

ボロクソ言うね……。そいつホントにAクラスか?

 

「バカで、Aクラスで調子乗ってて、偉ぶってる、みたいな?」

 

「そういう感じだ」

 

ホントかなぁ。龍園って他人を見下しまくる癖あるし、過小評価してそう。櫛田にも聞けたら聞いてみるか。

 

「了解、まぁ適当に褒めたりして口を割らせてみようじゃないの」

 

「褒める……?」

 

なんだよその怪訝そうな声。

 

「そりゃ、最初から挑発したって面白くないじゃん。自分が優秀だと思ってるアホは『褒めて良い気にさせればベラベラしゃべる』って聞いてるからね、やってみたいんだよね」

 

試してみようにも、まぁそんな機会無かったからなぁ……。教師とかにはそういうの通じ無さそうだったし。

 

「フン。まぁ、目的が達成出来るなら何だろうが構わねぇ。ボイスレコーダー使って、あと写真を取らせるヤツを誰にするか、どこに配置するかも考えとけよ」

 

「はいはい」

 

めんどくさいけど、なんか俺に全部任せるのは意外だな。ちょっとは信頼してくれてんのかね?

 

「……失敗したら2度目以降は警戒されまくる。お前が言い出した『Aクラス潰し』なんだからマジメにやれ」

 

全然信頼されてねぇなこれ。

 

「分かってるっての!……おやすみ!」

 

「……あぁ」

 

うーん、ムカつく。

 

でもまぁ失敗するのはヤダし、普通に成功したいし、『しゃべる事』とか『状況設定』とか考えておこうか……。

 

 

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おやす……おはようございます……。

 

時刻は、23時。まぁ、最近いつもこういうガタガタの生活リズムだもんな。これでも慣れてきちゃってるね。4時間くらいの仮眠、まぁ十分だ。

 

空気のニオイからして……なんか、ちょっとだけ雨降ったっぽいなこれ。今は止んでるけど。うーん、めんどくさ。本格的な土砂降りとかになったら俺もう船に帰るぞ。

 

「……。」

 

隣の不良くんは寝てるっぽいかな。静かに出よう。

 

深夜偵察、ってか櫛田に伊吹呼び出しを頼んで、ついでにヤヒコとやらに聞こう。ちゃんと会話出来ると良いな……。

 

おっと、やっぱ地面濡れてんな。

 

……そういえば雨降ったら着替えが乾かないままになっちゃうのか。あー、ヤダヤダ。

 

 

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ちょっと曇り空なので、星も見えない。櫛田は居るんだろか……。

 

昨日は「星を見てただけ」って言ってたけど、なんか違うような気もしたんだよな。

 

なんてことを思いながら海岸に来たら、昨日と同じように櫛田が居た。しゃがむようにして、海を眺めてる。

 

声をかけなきゃだけど、なんか……告白した時より緊張するぞ。

 

「あ~……櫛田さーん……?」

 

「こんばんは、虎徹くん。どうしたの?」

 

振り返って見せてくれた顔は、めっちゃ良い笑顔だった。

 

本来だったら「うぉー!可愛い美少女の最高の笑顔だ~!」になるはずだけど、昨日のちょっと疲れた顔を見ちゃってると、なんか色んな意味で「大丈夫?」みたいな気がしてくるな。無理してんちゃう……?

 

それにしても、なんか意外と普通に話してくれるのか……。うーん、女は謎だ。気まずいの俺だけ?

 

「えっと、Aクラスの……Aクラスでキレやすそうな生徒、バカっぽい生徒とか知ってたら教えて欲しいなって」

 

「うーん……。言いにくい事を聞くんだね……」

 

ん?言いにくいのか。

 

「じゃあ、えっと……感情的なタイプ?」

 

「ふふ。そうだね、そういう人なら……Aクラスにはあんまり居ないけど、戸塚くん、高橋くん、あとは山井くんも、かな……。Aクラスはやっぱり大人しい、静かな人が多いから、感情を出すタイプの人は珍しいね」

 

3人名前出てきた。ってか、あれ?

 

「ヤヒコ、とか言うやつは知ってる?」

 

「うん。戸塚弥彦くんだよ」

 

「あっ、なるほど……」

 

ヤヒコって下の名前だったのか。まぁどうでもいいけど。

 

「弥彦くんについて知りたいの?」

 

「そうなんだけど、……もしかして櫛田って全員のフルネーム覚えてんの?」

 

「あ、あはは……。その、うん。多分1年生は全員知ってるかな……」

 

「すげー!!」

 

人と仲良くするために、そりゃ当然覚えた方が良いけど、全員って本当にすごいな……。俺なんて石崎の下の名前も知らねぇぞ……。

 

「えっと……ありがとね」

 

「考えてみたら俺、龍園の名前すら知らんわ」

 

「ええっ!?……龍園くんの下の名前は、カケルくんだよ?」

 

「はぇ~」

 

知らなかった。けど、なんか明日もう忘れちゃいそうだな。

 

「それで、弥彦くんについて知りたいの?私も他クラスの子は、流石にそこまで詳しく知らないけど……」

 

そりゃそうだろう。

 

「知ってる話だけで良いから教えてくれると助かる」

 

「えっとね、弥彦くんは葛城くんと1番仲が良い生徒だったと思うよ。それでいて、Aクラスだからって他クラスの生徒、特にDクラスの子に偉そうにしてる様子だったりするね……」

 

やっぱ調子乗りのバカっぽいのか。

 

「なんで葛城はそんなヤツと仲良くしてんのかね?」

 

純粋に不思議だ。ハゲは割とエリートというか、優秀なヤツなのに。

 

「弥彦くんは、多分だけど、好きな人には近付いていって仲良く出来るタイプ、なんじゃないかな?あまり好きじゃない人には、なぜか偉そうにしちゃうっていう欠点があるみたいだけど……」

 

無能だけど上司には好かれちゃうタイプ?なんかそういう人間って色んな所に居そうだね……。上には媚びて、下には偉そうにする無能タイプ。

 

「なるほどなぁ……参考になったよ。ありがとね櫛田」

 

龍園が言ってた事も多いけど、アイツの発言の裏付け出来ただけで大きな収穫だ。

 

「ううん、どういたしまして!」

 

なんか普通に会話出来たな。まだ脈アリってやつなの?

 

 

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あと話す事なんだっけ……。あぁ、伊吹呼び出しの件か。

 

「櫛田、この後ちょっと伊吹呼んできてもらえる?」

 

「伊吹さん?うん……分かったけど、なんで?」

 

「龍園が話したいことあるんだとさ」

 

「ふーん……。龍園くんは、まだDクラスのリーダー指名を諦めてないのかな?」

 

まぁ気になるか。さて、どこまで言っていいものやら……。

 

「龍園は分からんのよね。俺は100%諦めてるというか、もう指名する必要も無いと思ってるけど」

 

「……他クラスの指名成功して、減点させようって?」

 

「龍園ならやりそうだねぇ……。Cクラスに何のメリットも無いんだからやんなくてもいいのにね」

 

「うん……。指名されるかもしれないってなると、困っちゃうよ」

 

やっぱ櫛田の困り笑顔も可愛い。

 

Cクラスは『指名に失敗しても成功してもいい』っていう、ある意味で無敵の状態だからポイント的な損はしないんだけどね。ただ、余計に他クラスから嫌われるというから反対というだけで。

 

「伊吹がもしDクラスのサマーリーダー分かってても言わせないようにする、って手もあるといえばあるけどね」

 

「……龍園くんに刃向かうってこと?」

 

まぁそうなるか。

 

「俺としては、もう取引してゲット出来るppだけで良いと思うんだよね。それを犠牲にして、せっかくの信頼も犠牲にしてまでCP増やそうとする意味が無いと思うんだよ。もし、この後も同じ状況になったら、取引してもらえなくなっちゃうだろうし」

 

「……いつも同じ意見って訳じゃないんだね、虎徹くんと龍園くん」

 

「そりゃそうだよ!」

 

ってか同じことそんなに多くないと思うぞ。

 

「えっと、龍園くんはこのままA,B,Dの3クラスのリーダーが分かっちゃったら、指名してきそうってこと?」

 

「そうそう。確率としては……半々ってとこかな」

 

いや全く分からんけどね。

 

「そっか……。とりあえず、伊吹さんを呼んでくるね。今すぐで良いの?」

 

「ありがと櫛田。じゃあ30分後くらいに、ここで。俺も龍園呼んでくるわ」

 

「うん。それじゃあね」

 

「またね~」

 

それにしても、俺らのリーダー交代しない上で他クラス減点のためだけのリーダー指名はやりたそうだなぁ龍園……。

 

それだったらAとの契約も、Dとの契約も違反にならないんだよな。

 

確かに、リーダー指名に失敗してもいい、成功したら相対的に得する、ってのはズルしてるっぽくて嫌いじゃないんだけどね。

 

でもやっぱ、信頼ボロボロになりすぎるだろうから、俺は反対だな。無駄かもしれないけどまた言っておくか。

 

んでもって伊吹との会話には俺も参加しちゃおう。アイツと話すのめっちゃ久しぶりな気がするな……。


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