こんにちは。Aクラスの数少ないバカに媚びまくって、Aクラスのリーダー……っていうか試験限定の『サマーリーダー』をあっさり吐かせることに成功した、頭脳派優等生の俺は浅井虎徹です。
なんか、弥彦くん、ここまでバカだと逆に好きになってきちゃうな。ずっとAクラス居て欲しいな……。本当に。
ついでに『バカにされるつもりで近付いて、本当にバカにされる』っていうのは意外と全然ムカつかなかった。良い経験を積めたよこれ。めっちゃ見下されても「だってそのつもりだし」みたいな。
これ負け惜しみとかじゃなくて、なんか上司がヤバイ会社とかでも使えそう。
機会があったらまたやってみたいかもしれない。別に悪巧みまでいかなくても、先輩と仲良くなるためとかでも使えるかもしれない。
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さて、後は弥彦を挑発して、殴られて、暴行された証拠写真をゲットだ。それでAクラスを失格させるのだ。
もし何もしないでCP320増加されてしまうと、CクラスとのCP差が1300と500でCP800くらい。流石に大きすぎるんだよな。グッバイ!
なんてことを考えていたら、弥彦の方から話しかけてきた。
「それにしても、葛城さん達は何を話してんだろうな?」
ただの時間潰しでしょ。恋バナでもしてんじゃない?
「さて……弥彦とやら。気付いてないみたいだから言うけど、お前、他クラスにリーダー明かしちゃったぞ」
敬語タイムは終わりだ。サービス終了!さようなら!
「は?なんだよいきなり……。お前がもう聞いてるって……」
「嘘だよ。バ~~~カ」
思いっきり見下すような笑顔を見せる。ついでに位置取りを調整して、弥彦の真後ろに山脇が来るようにする。
「なっ、なんだと!?」
まだ手を出してこないな。睨みつけるに目線を合わせる……ように見せかけて、後ろにいる山脇を確認する。恐る恐るデジカメ構えてるね、よしよし。
「バカなヤツにバカ言うたんだよ、このバカ。なーにがAクラスは優等生だよ、お前みたいな無能のアホが何かの間違いでAクラス配属されて、それで自分も優秀だと勘違いしてんじゃねーよボケ」
「う、うるせぇ!……Cクラスのザコに言われてたまるか!」
おっと、声が大きいな……。誰か来る前に終わらせなきゃ。
「声がデカいんだよ、無能。バカの癖に偉そうにして……ムカつくんだよ。ボケ」
そう言いながら、弥彦の頬をペチペチと叩いて挑発、ついでに体を軽く押した。突き飛ばすほどではないけど、気を抜いてたら尻もちつくかもしれないくらいの力で。
「テメッ、この野郎!!」
おっと、殴りかかってきた。防ぐフリして防がず……良い感じにすぐ顔面を突っ込ませて殴られて、その後も2,3発打たれた。痛いよ痛いよ~。
嘘だよ。この程度なんとかなるわ。けどカメラ写りを意識して、やられてる顔を作りまくる。どうだ、情けない顔だろう。
「……。」
最初に殴られた顔の右側を、痛くもない目も隠すように手で押さえながら、山脇を確認する。ちゃんと写真は撮ってくれてるみたいだな。よし!終了!
「なんだよお前、いきなり黙りやがって……」
「……どうしていきなり殴りかかってきたんだよぉ!」
大声でアピールする。
「なっ!お前が!」
「痛いよ痛いよー!せーんせいに、言っちゃ~お~!」
「ふざけんなっ!お前が先に殴ってきたんだろうが!」
「俺は何もしてないよ。くっせぇ顔が近付いて来たからビックリして、体を少し押しちゃっただけ」
「なんだと!?」
「うぇーん、殴られた~。まぁ終わりでしょ。先生に判断してもらおうね」
「なっ、そんな……。あっ、証拠!この辺に監視カメラは……」
そう言いながら周囲を確認した弥彦、当たり前だけど山脇がデジカメで撮影してるのが見つかってしまう。
「お前っ、……この野郎!」
「あ、おい!やめてくれよ!」
山脇が慌てた弥彦にデジカメを奪い取られてしまう。さらに……あっ、踏みつけて壊しやがった。結構念入りに踏み潰しやがって。もったいねぇなぁ。
「あーあー、このバカ。何してくれてんの?」
「へっ、へへっ……これで証拠は無くなった。調子に乗んな!Cクラスのザコの癖に!」
お前こそザコだろ、アホめ。
「ちくしょー、龍園さんに怒られるよぉ~。うぅ……」
うぅ、『龍園さん』って呼ぶなんて屈辱だよぉ……。なんて思いながら嘘泣きしようと頑張ってみたけど、まるで涙が出てこない。やっぱダメか。
「へっ!……二度と逆らうんじゃねぇよ、このザコ!」
そう言いながらAクラスのカスザコは行ってしまった。
うーん、顔面と体がちょっとだけ痛いけど、まぁ言うほどじゃないな。
という訳で、大成功です。ボイスレコーダーは無事に作動中でしたとさ。
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デジカメの残骸を拾っていると、龍園と葛城が戻ってきた。
「誰かの大声が聞こえた気がしたんだが……どうした?」
ハゲが心配して声をかけてきてくれたけど、そいつは後のお楽しみってな。
「ん、大丈夫だよ」
「……そうか」
なんか不安そうな顔かな?嫌な予感がしてそうですねぇ。もう手遅れだけどね。
「戻るぞ、山脇、浅井」
「はい……龍園さん」
「うぃうぃ。じゃあね葛城」
「あぁ……」
ハゲは何か言いたげな目だったが、別に話すこと無いでしょ。残念ながら現時点では何も分からないだろうし、弥彦が泣きついても手遅れでしょ。もう終わりだよ。
Aクラスさん、無人島生活、お疲れ様でした!
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5分ほど歩いた所で、周りを確認しながら龍園が話しかけてきた。
「で?」
録音されないようにだろうけど、もうちょい日本語ちゃんとしろや。俺も周囲を確認しながらボイスレコーダーを停止させた。
「大成功だよ。ほれ」
そう言いながら龍園に渡す。
「カメラはどうした」
龍園の問いかけに山脇が挙動不審になってる……。だから気にしすぎだっての。
「弥彦がパニクってぶっ壊しちゃったんだよね。ボイスレコーダーで録音出来てるはずだから、逆に証拠に出来たって感じ」
「ククク……上出来だ」
「ちょっともったいないけど、俺も自作自演で怪我大きくしたりする必要が無くなって良かったよ」
カメラを壊されなかったら、もうちょい分かりやすい『暴行事件』にするために自分の顔面をもうちょい痛めつけようと思ってたからね。サンキュー弥彦!大好き!
あと、考えてみると山脇がカメラ強奪されたから怪我を大きくする必要が無くなったとも言えるか。山脇もサンキュー!
「え、えぇ……。そんなこと考えてたのかよ……」
なぜかその山脇がちょっと引いてる。なんでだよ!誤魔化されないようハッキリさせるだけじゃねぇかよ。やっぱ今のサンキュー無しだ。
「クク……。よし、録音内容を確認してから坂上に報告するぞ。Aクラスはこれで終わりだ」
なんか楽しそう、ご機嫌で何より。俺も成功してそこそこ嬉しいかな。
あと、この時間だと日が落ちる前にまた海岸行けそうだ。
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「坂上!出てこい!」
何度目か分からん不良生徒の呼び出しコール。
「……なんだ、龍園」
当然、不機嫌そうだけど、今回は良い知らせだから許して欲しいもんだね。
「坂上先生、えーっと、Aクラスの弥彦くんに殴られた上にデジカメを破壊されました」
「……なんですって?」
あれ、表情ほぼ変わらないけど驚いてんのかなこれ。
「顔のこの辺と、あとココとココ、殴られました。んでもって壊されたカメラが……山脇」
「あっ、はい……これです」
「んで、何があったかの証拠は、ボイスレコーダーのこれです。よろしくお願いします」
「そうですか……。分かりました、確認しますので少々待っていて下さい」
そう言うと坂上先生は運営用テントの中に入っていってしまった。海岸行きたいのに……。
「……当たり前だが、余計な事は言うなよ。浅井、山脇」
俺だってせっかくやったの失敗させたくないんだから、そりゃ言わないよ。
「あいあい」
「分かりました、龍園さん」
「……絶対に言うなよ浅井」
「分かったって!」
こいつ俺を疑いすぎだろ。そんなに疑うならマジでいつか裏切ってやるぞこの野郎。
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5分くらいで済むかと思ったのに、もう既に30分も待たされている。坂上てめぇ……。はよ海岸に行かせてくれや。
テントの中からは電話する声っぽいのも聞こえるし、なんか色々やり取りしてるみたいだ。確かに考えてみたら、1つのクラスを失格にするかどうかをカップ麺を作るくらいの時間で決められる訳もないか……。
でもさっさと「Aクラス、アウトー!」って放送してくれないかな。島内アナウンスみたいなの多分あるでしょ?
あと、失格になったクラスって退場しなかったらどうなるのかね?
もし「俺達はもう失格だから、何も気にする必要がねぇんだよぉ!」とか言って全員で殴りかかってきたりしたら超困るなぁ。でもありえない話って訳じゃないよね……。
……しばらくは、大人しくして運営テントの近くに居よう!
「浅井くん、居ますね」
「はいっす」
坂上先生がやっとテントから出てきた。
「浅井くんと山脇くん、2人に事情聴取をすることになりました。Aクラスの担任、学年主任の真嶋先生と、戸塚くんがここに来られます。もう少し待っていて下さい」
「了解っす」
「はい……」
ちょっとだけ緊張するかな、ワクワク感という気もするけど。隣の山脇くんはまた微妙に落ち着きが無さそうだ。
「山脇は『いきなり殴りだしたから慌ててデジカメで撮った』っていうのと『デジカメ壊された』の2つだけ言えばいいよ」
「えっ、あ、そうだけど……」
なんかチラチラと坂上先生の方を見る山脇。いやいや、味方でしょ。警戒しすぎだろて。
「先生、ハゲも……葛城くんも来るんですかね?」
「……リーダー的な生徒も同行する可能性はありますね」
「なるほどです」
あれ?そういえばウチのリーダーは……あっ、テントの方でマニュアル眺めてる。いつの間に。
さーて、ハゲはAクラス失格になった時にどういう反応するかな。泣くかな?