こんにちは、もう一生外に出たくない俺は浅井虎徹です。なんなの、この雨。台風?試験ちょっと早く終わろうよ……。
雨が降りすぎてぬかるんだ地面、所々がもう『沼』という感じの道を帰ってきたが、もうマジのマジで船に帰りたかった。俺、マジで、居る意味が無い。
けれど、ギリギリ、本当にギリギリで『今帰ったら俺は負けた気がする!』という謎の精神で我慢出来た。こんなクソ試験に6日目まで居て、あと24時間を切って……今は16時過ぎなので、あと20時間で完走なのに、ここで意味なく逃げたら、ちょっともったいない。何かに負けた気もする。
あと、もし来年も試験が同じで、リタイアの罰則がもっと強くなってたとしたら、ちゃんと最終日まで居る経験があった方がいいかもなぁと。
けど帰りたい。今もやっぱ、めっちゃ帰りたい。
でも、やっぱり……決めたからには、頑張って明日の昼まで居るぞい!
時間潰しで死ぬほど寝まくって、明日は昼から徹夜で豪華客船で遊びまくろう。
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そういえばトイレのために外の森に行くのも、この雨が止まないなら……もう本当に全裸で行くしかない。だってマジで着替えもう無いもん。タオルだけがリタイアして戻っていたクラスメイト達が残していってくれたからなんとかなる。
ただもう、服が無いから本気で全裸しかない。Cクラスで残ってるのが男だけで本当に良かったよ……。
「龍園、全裸で歩き回ってたら試験失格になったりすると思う?」
「……。」
は?無視しやがって。このクソ野郎。
「じゃあパンツまで脱いだパーフェクト全裸姿で、ワカメを頭に乗せてロン毛ってことにして、サングラスかけて顔を隠して、勃起させながら、大声で『鈴音ぇー!愛してるぞー!』って叫びながらDクラスのキャンプ地を走り回ってきてやろうか。明日からお前のあだ名は『全裸LOVEマシーン』だな」
なかなか良いアイデアだ。櫛田にも『あれは99%Cクラスの龍園くんだと思う』って言いまくってもらえば完璧だ。
「……本当にやったら、マジで殺す」
「じゃあ会話しろやコミュ障。分からないなら分からないって言え、粋がるなよアホ」
「くだらねぇから無視したんだよボケ」
めちゃくちゃ面白いだろうに。やっぱセンスが合わないわぁ……。
今回のテント生活、マジでめちゃくちゃに龍園と会話してたんだけどね。大半が、ハゲが言うには『悪巧み』かもしれないけど。俺としては、良くて『作戦会議』くらいで、普通に『雑談』くらいの気分だけどね。
それまではチャットである程度の情報教えてもらって、たまに電話でやり取りしたくらいだったのに比べると、引くほど2人きりで話しまくってた事にはなるけど……うーん。お互いやっぱ『半分信頼できない』みたいなこと思ってそうな感じがあるんだよね。
まぁ仕方ないね。龍園を信頼するやつはアホだ。
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時刻は20時過ぎ、最後の乾いた服を着てウトウトしてたらこんな時間になってた。もう真っ暗だ。隣に寝転んでる龍園は寝てんのか目を閉じてるだけなのか分からん。寝息は聞こえないけど、コイツの寝息が聞こえた覚え無い。人間じゃないのかもしれない。
それにしても暇すぎるから、今回の特別試験がどんな流れだったか振り返ってみよう。
まずは、初日。龍園が『SPゼロ戦略』を思いついた。今考えても、良い意味で頭おかしい。言い出したの試験開始後30分とかだったっけ?脳みそどうなってんの?
誰かがリタイアする前に、初期ポイントのSP300のうちSP200を物資にして、Aクラスと『CP200相当のppを毎月振り込め』という交換取引をしたということだ。そして、残りのSP100は好きに使っちゃおうと。
これのおかげで俺達Cクラスはサバイバルをほぼ放棄して、ひたすら情報のやりとりをメインにして戦うことが可能になった。サングラスもGET出来た。2日くらいしか使ってないけど。
それで次は、俺が『SPゼロ戦略』を前提に、『Cクラスのリーダー情報を売っちゃおう』という作戦を思いついた。別名『みんなで幸せになろうよ』プラン、俺の優しさがあふれるような、素敵すぎる魅力的なプラン。原価ゼロ、収入毎月60万アップ。神か?
詳しく言うと、試験最終日に他クラスが設定していたサマーリーダー指名に成功するとSP50プラス、指名された側はSP50のマイナスという仕組みを利用したもの。
どうせSPがゼロなら、それ以上のマイナスを食らっても痛くない。だったらA,B,DがそれぞれCP50を積み重ねて、Cクラスが増やせなくても、他クラスから合計でCP150相当のppをもらえばいいだけと。
見た目の上でのCPには差をつけられてしまうけど、ppだけ見たら大儲けだから全然オーケー!むしろ良い!という感じのプラン。
そして、その俺の幸せプランを踏まえた上で龍園が思いついたのは『騙し討ち作戦』だ。
1. Cクラスのリーダー情報をA,B,Dの3クラスに、『月々20万pp(CP50)』という値段で売りつける
2. Cクラスのリーダーをリタイアさせて、リーダーを交代する
3. 普通にA,B,Dのリーダーをスパイ活動などで見抜き、最終日にリーダー指名する
つまり、当初の予定ではCクラスはCP150を普通に増やすはずだった。他クラスはそれぞれCクラスのリーダー指名に失敗&Cクラスからのリーダー指名を成功されてしまい、CP100ずつのマイナスになっただろうということだ。
真面目にサバイバルをしても良くてSP150が残るくらいだってのに、本当にSP100ずつ削られて、CクラスだけSP150とかになってたら……悔しすぎて泣くヤツとか居そう。
そして、Cクラスに限れば、
・Aクラスとの取引で『毎月80万pp(CP200相当)』
・A,B,Dの3クラスとの取引で『毎月60万pp(CP150相当)』
・A,B,Dの3クラスへのリーダー指名成功で『CP150』
合計でCP500相当を増やせるはずだったという。
結果としては、A,B,Dそれぞれ実質的なリーダー達がバカじゃなかったので無理だったけどね……。
でも、一応は3クラスのリーダーを全員見抜けたっぽいし、そう不可能な作戦でもなかったのかもしれない。もし本当に見抜けたなら、金田と伊吹はマジで大健闘だと思う。すげーよマジで。俺まだちょっと信じてないからね、明日の結果待ちだ。
なんにせよ夢があってワクワクしたし、結果として無理でも大きく稼げたから、まぁいいかな。割と満足ではある。
Aクラスからは『CクラスのSPがゼロではなかった場合、ppの振り込み契約は無効』という条件を付け足されてしまい、Dクラスからは『リーダーを交代していたのに通達していなかったと試験後に判明した場合、毎月30万pp(CP75相当)の罰金』というペナルティの設定を追加されてしまった。敵ながら良く思いついたもんだな。信じられるのはBクラスだけだ。
ただ、これのせいで『騙し討ち作戦』は半分くらい殺されてしまい、まぁppは稼げたからいいか……気分で前半戦が終わった。
経験としては、売りつける過程で相手を焦らせるために島の食料を燃やしたり、最高にイケてるゴールドサングラスを見せびらかしたり、なぜか堀北が泣いたり、めっちゃ条件を付け足されたり、色々なことがあったから楽しかったと言えなくもない。
そして後半戦は、暇だったからAクラスを失格にした。終わり。
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「なぁ龍園、……起きてる?」
「……なんだ?」
「今回の試験でさ、結構色々とやったじゃん?その中で何が一番気に入ってる?」
「そう、だな……。鈴音の泣き顔だな」
「えぇ……」
どれか作戦を選べよ。何を選んでんだ……。普通にSPゼロ戦略とかを誇らんかい!
「お前はなんだ?」
「ん~……弥彦にやった演技力には、自分でも惚れ惚れしてるけど……」
「あれはそこまでじゃねぇよ」
は?ボケ!めっちゃ良かっただろうが!
「あー、俺はやっぱ普通に『Cクラスのリーダー情報を売る』っていう作戦かな。交代の危険性に気付かれなかったらCP500相当ゲットだぜ!っていう、夢みたいなマックス値が見える話だったし」
ただCP500相当のうち、良く言っても半分も無いけどね。俺の貢献だけでいうと。
「フン……。まぁ、悪くないアイデアだった」
「ん?あ~、どうも」
褒め下手っぽすぎるだろ。嬉しくないことないけどさ。
「……あと、お前が言った食料を燃やすアイデアも悪くなかった」
「えっ?……あれ龍園のアイデアじゃなかったっけ?」
「ちげぇよ」
んんん?……そういえばそうだっけ。なんか弁明で龍園のせいにしてたから勘違いしてた。
「俺があとやったのは、あー……深夜偵察か」
何の収穫も無かったけど。
「フッ、あとは鈴音を泣かしたやつだろ。ククク……動画で撮っておきたいような哀れな姿だったぜ……」
どんだけ気に入っとんねん。俺がもし女だったとしたら、何が何でも、死んでもコイツにだけは目をつけられたくないな。とんでもなくやべぇSMプレイを要求してきそう。人権消えそう。ひぇ~。
「あれ、でもなんで全裸土下座を止めたのさ。めちゃくちゃ見たかったのに」
めっちゃエロいでしょ。
「……お前、まだリーダー情報を売りつける前段階だったんだぞ。しかも他生徒の目もある所でどんな要求をしてんだ、イジメ認定されて失格になったらクソだぞ。やっぱ、テメェ頭おかしいのか?」
「おっ、お前に言われたくはねぇよ!!!」
頭おかしいランキング作ったら絶対に1位は龍園お前じゃアホ!ふざけんな!
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なんとなく沈黙が漂う空間になったけど、かといって眠くもない。本当に会話することしかやることない。
「ひっ、ヒママママママ」
「……うるせぇ」
無視はしないでくれるのか。さっきのLOVEマシーン警戒してんのか?でもいいや、試験振り返りの続きをしよう。
「そういえばさ、食料燃やしたやつ、あれもうちょっと長く1日だけじゃなくて3日くらい燃やしまくれば良かったんちゃうの?」
考えてみると良心があるっぽく見える。龍園らしくない。
「……別に相手を煽るのが目的じゃねぇ、あくまで俺達が試験で勝つことが目的だ。長時間、大規模にやってアイツらの食料を消し去っても、その過程で事故なんかが起きて失格になったらつまらなすぎる。何より、さっさと売買契約を結ぶのが先だろ、リタイア交代を気付かせる時間を与えてやる必要もねぇ」
「ん~、なるほど」
他クラスへのダメージより自クラスの利益、そりゃ当然だ。
けど龍園に限れば自クラスの利益にならない時も他クラスへのダメージを与えようとするよね。本当にそういう所はアホ過ぎるよ。
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「浅井、今回の試験でルールを破るのをいとわず動いたとしたら、何をしてたか言ってみろ」
はい?いきなり何?
「なんのおねだりやねん」
「言ってみろ。暇なんだろ」
「えぇ……そうだけどさ……。1万ppくれるならいいよ」
「……払ってやる」
「は!?」
マジで?言っておいてなんだけどビックリしちゃった。
「フン。さっさと言え」
「いやまぁ、そりゃ1万くれるならしっかり言うよ。そうだなぁ……とりあえず食料燃やす延長線上で、『山ごと燃やす』だよね。言ったっけ?」
「それは聞いた。ABCD全クラスのSPをゼロに出来るが、下手したら人死が出るってやつだろ」
「そうだね。利益だけ見たら裏取引してた俺らの1人勝ちだけど」
「あぁ。……そういうのもっとあるだろ」
あるけどさぁ。何の信頼なんだこれ?
「まぁ金くれるならしっかり考えてたやつ出すよ。えーっと……、『略奪行為』の禁止ってあったけど、あれ『他クラスへの略奪行為』を禁止でしょ?それならさ、『運営から略奪』したらどうなったのかなってのは少し疑問だよね。SP交換前だし」
「クク……おもしれぇ」
「あともう1つ、これも試験ルールに入ってなかったやつとしては、『リタイア者が海を泳いで島に戻ってくる』っていう参加してくれたら、GPSによる監視を逃れた人員が1人増えるよね。これめちゃくちゃに悪用出来るとは思ったよ」
ただ思いついたのが2日目くらいだったから、船に連絡取れないし間に合わず……だったけど。
「ククク……船に戻ったやつに監視状況がどうだったか聞いてみるか」
「ええんちゃうの。どう考えても島の監視で人員めっちゃ必要だろうから、本来ほぼ出ないはずのリタイア者の監視なんかまともにされてないとは思うよね」
「良い案だ」
おっ、素直に褒めるじゃん。いつもそれくらい普通に言えよな。
「ルールにギリギリ系だと、あとは『津波情報を誤報として知らせてリタイア者を出す』かな。島の放送システムがちゃんとあって乗っ取れたり、運営側の服を盗み出せたりしたら無理ではなかったと思うし。クラスごとは無理でも、担任の近くに居ない複数人を狙ったり」
「……今すぐ船に避難しろ、ってか」
そんな感じだね。
「他には、他クラスのリタイア者を出すっていう思考でいくと、『夜中めっちゃカラオケしてたら睡眠妨害になっちゃってた』とか」
でもスピーカーがカタログに無かったから無理か。テントのすぐ横で歌ってもいいけどさ。
「いや、大音量とかは暴行の判定になってもおかしくはねぇな」
「ふーん……」
そうなのか。
「いや、実現可能かどうかは置いておく。他にもあるか?」
「あとは……完璧にルール違反系かな」
「……言ってみろ」
それも言わせんのかい。このおねだりさんめ、仕方ねぇなぁ!
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「まず前提として、『失格になった上で船に帰るのを拒否して島に残る』っていうのが可能だとするよ」
ルール上は死んでるのに勝手に動いてる、みたいな。いわゆるゾンビ状態。失格ペナルティもクラス失格を前提としたら、たった1人のpp全没収だけだ。嘘でしょ!?というほど軽い。
「ククク……なるほどな。おもしれぇ、失格前提でやるなら、深夜に洞窟に入り込んだり、いや他のクラスのテントでも潜り込める。私物を盗んだり、衣服を燃やしたり、顔面に蹴りを入れてすぐ逃げ出して、クラス内での疑心暗鬼を誘ったりも出来るな」
「んはは!確かに。あの夜の暗さだったら分かりようないね」
「そうだな」
まぁ先生とか運営の人が追いかけてきて止めようとするだろうから、『無人島おいかけっこ』って感じになるだろうけど。なんか殺し合いしてるみたい。
「あとは……山なんか燃やさず、普通にそれぞれのクラスの『物資や設備を燃やす』とか出来るね」
「まぁな」
「Aクラスの洞窟、あそこ住むにはめっちゃポイント削減出来るけど、入り口すぐ前で草木を燃やしたら、虫を煙で殺すやつみたいな感じで攻められるよね。……なんか下手したら窒息死するヤツ出そうだけど」
もしウンコとか燃やしたら結構ヤバかったはずだし。
「クク……ザコが泣きながら穴から出てくるってか」
「うぉい!ゴキブリ連想させるようなこと言うな!」
こうして、ルール的にギリギリセーフなアイデア、完全アウトなアイデアなんかを出し合って、笑い合いながら特別試験最終日の夜は過ぎていった。