ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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お久しぶりです。お待たせしました。

なんか『ここすき』めっちゃしてくれた方が数人居てくれたっぽいですね。ありがとうございます、めちゃすき。


所得倍増計画

こんばんは、干支試験2日目の21時過ぎ、4回目のグループディスカッションで、明日が合間の休憩日だからと、今日中に話をまとめておこうと頑張るつもりの俺は浅井虎徹です。

 

なぜかCクラスで話し合い参加してるのは俺だけという状況だ。まぁ、龍園達が偉そうにスマホいじくりまくってるだけなのでしゃーない。

 

「とりあえず……どうしたら『裏切り指名が出来ない状況』にしておけるかは考えておきましょう」

 

そう言い出したのは堀北、そして他クラスのメンバーもなんとなく協調するような態度を見せている。もちろん、Cクラスを除いて。

 

A、B、Dの3クラスとも俺の提案した『所得倍増計画』に前向きな姿勢を見せてくれているっぽい。

 

計画は『全員で結果1狙い』という、全員で試験最終日のミーティング後にある指名タイムまで我慢して、その時間で仲良く正しい優待生を指名しようというやつだ。

 

全員に50万ppずつ振り込まれ、優待生にはさらに50万ppずつ振り込まれる。みんな幸せ、学校側は大損害ってやつ。

 

みんなで仲良くしたら、お互いに裏切りまくった時と比べて、生徒側は学校から総額で約8000万ほど多くゲット出来るというやつ。素晴らしい試験だね。

 

けれど、『Aクラスで卒業しないと意味が無い』という価値観があるから仲良く出来ず、必然的に裏切り指名をしまくる状況になってしまうという話だ。

 

悲しいねぇ……。

 

それでもCP競争をちょっと置いといて、協力して『裏切り指名』という『メール送信』自体を出来なくする状況を作れば良いんじゃね!?というのが今やってる話し合いだ。

 

「Aクラスとしても異論は無い。話が具体的になっていけば、恐らく反対していた者も利を認め、反感も収まり、全面的に協力出来るようになるだろう」

 

Aクラスは「結果1狙いを飲まなきゃB,C,Dで組んで法則見つけてAを引きずり下ろすぞ」って龍園に脅されたから、ハゲも慌てて賛成側に立ちクラス内を説得することになったという話のはずだ。『発案者がCクラスだから反感がある』とか言ってらんないでしょ。

 

龍園の脅迫も良いときもあるんだよな。プライド高く偉そうにしてるだけのAクラスの奴らが慌てふためいたと思うと嬉しい。見たかった。

 

「うん、Bクラスもみんなが賛成出来るような方法があったら、全力で協力するつもりだよ!」

 

Bクラスも一之瀬は最初に「Aに上がるチャンスがあるなら逃したくない」みたいなことを言ってたものの、Aクラスに限りなく近い位置に居るし、その上でCP変動が無くクラス全員が50万ppもらえるっていうなら断る理由は無いでしょ。多分。

 

CPを増やすために裏切り指名をしたいといったって、1クラスだけで干支試験の優待生の選出法則に気付くというのは中々難しいだろうし、無理だった時に備えて『結果1狙い』を具体的に詰めていくのに異論は無いということなんだろう。Bクラスだけじゃなく、Dクラスも。

 

「一之瀬は個人的にはどうなの?賛成?反対?」

 

「私は……うーん、どちらかといえば賛成、かな。けれど、みんなと相談して決めようと思ってるよ!」

 

なんか『Bクラスで賛成してもらえたら』みたいな感じを出してるけど、しっかりリーダーとして信頼されてそうな一之瀬が決めたことなら異論なんて出なさそうだけどね……。

 

逆にそういう配慮を出来るからこそリーダーとして信頼されてるのかもしれないけど。

 

ウチのリーダーは真逆で何も配慮してないけど、異論がほぼ出ないってのは同じだよね。ちょっと面白い。

 

 

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「Dクラスも、断言は出来ないけれど恐らく協力出来るわ。……所持金に不安がある生徒が多いから」

 

なんとなく複雑そうに、少し小声になって言う堀北。まぁDクラスは4月の入学直後に10万もらってから、5,6,7,8月とCPほぼゼロの生活してたみたいだし、そりゃまぁ賛成でしょうとも。

 

どう考えたって「金が欲しくて仕方がない!」って思うはずの状況だよね。金ってかプライベートポイントだけど、まぁ一緒だし。

 

ってか……よく生活できてたね?

 

「考えてみると、Dクラスよくまぁ無人島でほぼリタイアしないで済んだね?」

 

「それは、どういうことかしら?」

 

なぜか警戒するような感じで俺の疑問に返答する堀北。なんでだよ、やっぱちょっとムカつくな……。

 

「いや、だって、5月くらいからず~~っと貧乏生活してたんでしょ?」

 

「……そう言えるかもしれないわね」

 

「なのに、それで夏休み入って、豪華客船で好き放題に飲み食いしまくって、それで無人島って……気が変になるでしょ。よくまぁリタイアしないで我慢できたね」

 

貧民→富豪→大貧民って感じでしょ、落差がやばすぎる。期間限定の夏休みだけとはいえ無人島を脱出して少しでも富豪生活したいと思ったとしても何もおかしくないって。

 

「……一応、褒め言葉として受け取っておくわ」

 

はぁ?本心からの称賛なのに、一応ってなんやねん。

 

でもDクラスでリタイアしたのは1人か2人?で無人島にほぼ全員が頑張って残ってたのはマジですげぇよな……。

 

Cクラスなんて戦略的にとはいえ40人のうち30人くらいリタイアしたし、Aクラスなんて不思議なことにクラス全員が消えたからね。それと比べたらDクラスは優秀だよ。

 

なんていうか、昨日ハゲとかから聞いた『Aクラスじゃないと意味が無い』っていう価値観、切迫感、覚悟。俺以外のほぼ全員がしっかり強めに持ってるんだなぁ……というのをしみじみ実感するね。

 

そういう気持ちがあるからこそ、みんな全力でクラス対抗バトルに取り組んでるんだろうなーって。

 

ただ、頑張るのは良いけど、なんとかして『勝ちたい欲求』というか『CP欲求』みたいなのを暴走させないように、ガチガチにルール決めて方法もしっかり決めて、全員で結果1にしたいね。

 

 

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「裏切り指名をさせない方法、俺が言ったやつでいい?」

 

俺が言った方法は2つ。

 

1つ目は『裏切り指名をしたらクラスに罰金』というもの。ただ、これだけだとppを完全放棄してCPを取りに行くクラスが出てしまうから拘束力が弱いとかなんとか。

 

2つ目は『全員の学生証端末を誰かが管理して、物理的にメールを送れなくする』というもの。基本的にこっちを詰めていくはずだ。

 

「浅井、裏切りへの制裁罰金だが……今回の干支試験がどのような形で結果が発表されるか分からないため同意できない」

 

「えっ、……どゆこと?」

 

法の番人みたいなハゲがいきなり否定してきて驚いちゃった。拘束力が薄いとはいえ、絶対に無いよりあった方が良いと思うんだけど。

 

「結果1から4まであるものの、試験終了後の結果発表で『どのグループがどの結果だったか』が発表されるとは限らないだろう?」

 

言われてみるとそういえばそうか。

 

「あー、確かに。無人島試験でもサマーリーダーの指名に成功したのか失敗したのか、結局教えてくれなかったもんね」

 

「そうだ。クラスごとのCP変動の発表だけ、という可能性すらありうる」

 

「そういえばそっか……」

 

裏切り指名が成功したのか失敗したのかすら分からないかもしれないってことか。

 

「ちょっと待ってくれるかしら。……今回の干支試験、それぞれのグループが分かれてディスカッションしていて、結果がどうなったかを試験後も発表しないなんてことは、ちょっと考えにくいんじゃないかしら?それはもう、答えが載っていない問題集のようなものでしょう」

 

「ん?」

 

答えが載ってない問題集って、ゴミじゃん。やっても答え合わせ出来なきゃ意味が無い……って、あ、そういう意味で言ったのか。なんかムカつくけど良い表現をしよる。

 

「そうだな堀北。俺個人としても試験を後から振り返って、それぞれのグループでどのような選択がされ、どのような結果になったかの確認はしておきたい。当然、結果1から4でどうなったかを知りたいと思っている。……だが、一筋縄ではいかないのがこの学校だろう」

 

チラッと龍園を見ながら堀北をたしなめるハゲ。まぁ話し合いするはずの場でゲームでもやってんじゃないのってくらいスマホいじくってるクラスリーダーが居たらアホらしくもなるんだろう。

 

いや、もしかしたら無人島試験で初日にポイント使い果たしてたCクラスのことを思い出してるのかもしれない。あれは確かに試験の裏をかく龍園の、素晴らしい作戦だった。

 

てか葛城……ついついリーダーシップ取っちゃう感じの性格だよなコイツ。ほぼ笑顔が無いから冷たい印象も持たせるだろうけど、やっぱ普通に良いやつだ。堀北なんぞのフォローしてるんだし。

 

「それでも、学校側は成長する場として試験を用意してるはずだから、誰がやったのかの個人名は隠しつつ結果がどうなったかは発表するとは思うけれど……」

 

「俺個人としてもグループごとの結果まで発表する方が可能性が高いとは思う。だが、すまないが堀北、」

 

「えぇ、そうね。少なくても可能性がある以上は想定するべきだわ。……変に時間を使わせたわね、話を進めましょう」

 

「お、おま……」

 

お前が話を止めたんやろがい!!……とツッコみたかったけど、みんな真剣な顔だし真面目な空気だからやめとこ。

 

 

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「それで、『物理的に裏切り指名をさせなくする』という方法だけど、浅井くんが言ってたように『スマホを1箇所に集めて保管する』という方向で良いと思うわ。同意の下で行えば、退学処分にされる『禁止事項』にも引っかからないはずよ」

 

あー、なんかルールにしっかり『ダメだよ』『退学だよ』ってやつあったね。……忘れちゃったよ。

 

「禁止事項ってなんだったっけ?」

 

「……アナタ、大丈夫?」

 

は?堀北なんだよその目は……。完璧には覚えてねーだろ普通。

 

「スマホ盗んだり、他人のスマホでメール送っちゃダメってのは覚えてるけど、全部は覚えてないから確認したんだよ。……記憶力自慢すんな!」

 

「……そういうつもりは無いけれど」

 

無表情ながら、なんとなく困った様子の堀北。ホントかぁ?なんか見下された気がするんだけど。

 

「じゃあ、みんなで確認しておこっか!話し合いにもかなり影響するし、抜けがあったら大変だもんね。紙に書いて確認しておこう!」

 

仲裁するように一之瀬が提案してくれた。ありがとう天使。

 

そして、なんだかんだ堀北がパーフェクトに記憶していて、辰グループの全員が異論無かった『禁止事項』というのは以下の通りだ。

 

~~~~~

 

【禁止事項】

 

以下の行動は『退学処分』とする。

 

・他人の端末を盗むこと

 

・他人を脅迫して学生証端末を奪い取り情報を確認すること

 

・勝手に他人の端末から回答メールを送信すること

 

・学校から送られてくるメールの複製、削除、転送、改変

 

・試験終了後の指定時間内で他クラスの生徒と会話すること

 

(※怪しい行為は徹底して調査が行われる)

 

~~~~~

 

俺も一応は覚えてたけど、また確認出来たのは良かった。

 

ただ、これ忘れちゃうかもだし、スマホに打ち込んでおきたかったけど……俺まだ龍園に預けてるんだよな。うーむ。

 

今さら龍園に返してもらったって、そうしたら今まで預けてた意味も無くなっちゃうから、まぁ、別にいいか。後でCクラスの誰かに聞いて、紙にメモっておこう。っていうか一之瀬に頼んだらその紙くれないかな。

 

さて、結果1狙いの話だけど、

 

「うん。『盗んだんじゃなくて自分から渡しました』ってちゃんと証明できれば、スマホを集めて管理出来るはずだよね」

 

奪って回収したんじゃなくて、それぞれが自主的に出したってなればいいだけだ。

 

「あぁ、そのはずだ。証明するために、教師立ち会いの場で預けたり、その様子をビデオ録画しておけば間違いないだろう。一応、それで禁止事項に抵触しないかどうかは教員に確認を取っておくべきだがな」

 

「……そだね」

 

ちょっと思ったけど、ハゲはリーダーとして引っ張る役じゃなくて、なんか細々した確認作業をしてくれる部下として動いてくれたらめっちゃ優秀なんじゃなかろうか……。

 

逆に上司だったら細かすぎてめんどくさそうだな。

 

「じゃあ、明後日の試験最終日、午後のグループディスカッション……6回目かな?の時に、それぞれのクラスの端末を全部集めて、それでこの辰グループで管理する……ってことでいいかな?」

 

「良いんじゃね?」

 

そうしたら裏切り指名どうやっても出来そうにないもんね。

 

「試験終了後にそれぞれのクラスで分かれるようだが、その時間が指名タイムと見て良いだろう。……言葉としては、試験終了後に試験で一番大事な指名タイムがあるというのはややこしいがな」

 

確かに。『試験終了後』っていうより『最後のディスカッション終了後』って表現して欲しいよな。

 

……なんか理由あるんかね?

 

「もしかしたら……指名タイムの前に試験は終わるものだよ!的な刷り込みしようと狙ってたりすんのかもね」

 

「どういうことだ?浅井」

 

なんかハゲが興味津々だ。ちょっと仲良くなったから気兼ねしないで聞いてくれてんのかな?

 

「今言った通り、指名タイムこそ試験で一番大事だと思うけど、その前で『試験は終了です』って言ってるから、自然とみんな『試験が終わる前に優待生を見抜いて当てなきゃ!』みたいになるんじゃないの?……どう考えても、指名タイムも試験時間だと思うけどね。んはは!」

 

「ふむ……。一理あるな。学校側が競争を煽ってるかもしれないということか」

 

「そうそう。そりゃまぁ結果1にされちゃったら出費がべらぼうに増えるだろうからね。学校もケチってるってことでしょ」

 

一応はルール上で可能にしてやった、けどやっぱ金を出したくないから結果1目指すんじゃねーぞ!というケチケチ精神を感じる。

 

まぁ出費が8000万も変わるなら、それくらいやるだろうけどね。文句っぽく言ったけど、俺でも管理側だったら迷いなくやる。

 

っていうか、俺が管理側だったら結果1でも全員に50万ppずつじゃなくて5万ppずつくらいにするかな。

 

「……指名タイムでは、試験のグループじゃなくてクラスごとに分けるっていうのも、そういう意図があるということかしら?」

 

堀北がなんか睨みつけるような顔で聞いてきた。いやまぁ睨んではないんだろうけど、表情変化がほぼ無いから真面目な顔してるとなんか睨まれてるように感じるんだよなぁ、一之瀬の1%でもいいから笑えよな。

 

「まぁ、全然ある話だと思うよ。他クラス同士でちょっとは仲良くなって、その流れで指名タイムになってたら少しは結果1の確率とか高まりそうだし」

 

「……。」

 

聞いといて何も言わんのかーい!

 

性格良くなったような気がしてたけど、なんとなくちょっとイラッとする部分やっぱあるなコイツ。龍園に適度にいじめられてしまえ。

 

さて、話の方はかなりまとまってきたけど、考えなきゃいけないこと後は何があったっけな……。




そういえば本作品の書籍化が決まりました。
これも応援して下さった皆さんのお陰です、本当にありがとうございます。














ってエイプリルフールに言いたかったです。
そのためだけに、4月1日に更新するため頑張るべきでした。

もちろん嘘です。

次回更新は未定です。
ちょっとずつ更新頻度上げていきたいですね

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