ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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龍の策謀

ZODIAC EXAM

DAY 3

 

「なぁ虎徹、昨日何があったんだよ……。教えてくれよ」

 

おはようございます。朝食バイキングでウキウキだけど、脳筋不良に絡まれてる可哀想な俺は浅井虎徹です。……ってか石崎なんだよその皿、ウインナー山盛りとかやめろよ他の人が足りなくなったりして迷惑でしょうが。ついでにそんなコスト削減という目的丸出しの安物ばっか食うな、メシ少なめでフルーツばっかり食いまくってる俺を見習えアホ。

 

「いや俺も全然知らないよ、なんか龍園の想定通りっぽいけど。詳しくは後で聞いてみるしかないね。……教えてくれるかは知らんけど!」

 

他クラスも居るこのレストランで、もしかしたら誰かに聞かれてるかもしれないので少し大きめの声で言っておく。俺は龍園と仲良しじゃないもんね~と。

 

「虎徹……なんでそんなパイナップルばっかり山盛りにしてんだ?好きなのか?」

 

「……。」

 

うるさい!ノーコメントじゃ!

 

「あ、そうだ。これ……スマホ返してもらったけど、ケースはそのままでいいと思うか?ケースだけ返した方がいいのかな」

 

その件もあったな。昨日部屋に帰ったら龍園からスマホを返されたけど、なぜか真っ黒のケースが勝手に付けられてたんだよね。多分、龍園が自分の端末を触ってると思わせるための偽装だと思う。そして画面にも、少し角度を傾けるだけで画面内容が見えなくなる液晶フィルム?覗き見防止のやつが貼ってあった。人の物に勝手にやりたい放題すぎるだろアイツ……。

 

「ん~、それも聞いてみるしかないだろうね。龍園も金には困ってないだろうし、言えばタダでくれるとは思うけど」

 

「そっか……。意外と便利だよなこれ」

 

「まぁね」

 

あって困るものではないね。素直に喜びにくいけど。

 

 

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満腹の喜びを噛み締めながら帰ってきたら、部屋には龍園とアルベルトが戻ってきていた。起きた時はもう居なかったけど何してたんだか。

 

「よっす龍園、昨日の解説してよ」

 

「……何が聞きたい」

 

「え?うーん……」

 

スマホから目を離さず返答してくる不良。マナーが無いよね、人間性と言ってもいい。相変わらず微妙にクズだよねこういう所。

 

「龍園さん、その、スマホケースってこのままもらっても良いんすか?」

 

横から先に石崎が質問した。どんだけ気になってたんだよ、黙ったまま返さなくても大丈夫だったと思うけど。

 

「あぁ。好きにしろ」

 

「了解です!ありがとうございます」

 

さて、聞きたい事……何から聞こうかな。

 

「えーっと……なんていうか、そもそも裏切り指名するつもりだったらさ、わざわざ俺の『結果1狙い』の話し合いとか、ルール決めとかやってる途中に指名させちゃえば良かったじゃん。すげぇ疲れたんだけど」

 

うん、そもそも話し合い何時間もやらせて、それを無駄にされたのがムカつくんだよな。だったら最初からやっとけよ、ふざけんなアホって話だよ。

 

「そうだな……。まず、今回の特別試験における『最悪の結末』ってのはなんだ?言ってみろ」

 

なんだそれ?全然関係ない質問っぽいけど……まぁ答えておこう。龍園もこっちを向いて真剣な感じだし。ワーストパターンねぇ。

 

「うーん、とりあえず……Cクラスの優待生を全員見抜かれて指名されちゃう?」

 

「そうだ。加えて、Cクラスの生徒が全グループで指名失敗することだが……それは無視していい」

 

全グループで失敗したらマジで笑うしかないな。

 

「あ、だから指名禁止って命令出してたのか」

 

一応数字を出しておくと、平等な試験ってことで、12グループのうち優待生は1クラス3人ずつのはず。1グループごとのCP変動は50しかありえない。

 

指名失敗::マイナスCP450

被指名成功:マイナスCP150

 

もしこうなったら、CP600のマイナス。俺らはCP500ちょいだし全部吹き飛んじゃうな。

 

「ただ、昨日の時点で俺の考える『最悪の展開』ってのは、他の奴らに先を越されることだった。先に見つけた優待生の選抜法則を、他クラスが後から見つけ、裏切り指名をしまくる展開だ」

 

「……手に入るはずだったCPが、他クラスに奪われちゃうって?」

 

「そういうことだ。そうならないよう、早めに決着を付けた」

 

「可能性としては、そりゃありえるけどさぁ……」

 

それでもやっぱり、なら他のタイミングあっただろとか思っちゃうよ。わざわざ話し合いをしまくった後にやること無いだろ、先に終わらせてくれたら無駄なことしなくて済んだのに……。

 

 

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「なら次は、『最高の結末』ってのは何になる?」

 

「そりゃもう、全グループで全クラス協力、1クラスあたり2000万ppでしょ。学校側からしたら8000万の出費だし、俺らは大金ゲット。……お前のせいで、出来なかったけどな!」

 

バーカ!という気持ちを入れまくって大声を出してみたけど、龍園は何の反応も見せず、淡々と話を続けた。無視かよ、なんかそれもムカつくな……。

 

「CPだけ見た場合はどうだ」

 

「え?うーん……。とりあえず、Cクラス以外の他9グループ?で優待生をみんな見抜いて、指名成功でしょ。あとは……そっか、Cクラスの生徒が優待生のグループで、他クラスに指名失敗させりゃいいってこと?」

 

現実的ではないとはいえ、一応は可能性のある、全グループで勝利というパターン。そうなったら全12グループでCP50ずつゲットだから、CP600増加の結果。これが最高値のはず。

 

「そうだ。だが、忌々しいがDクラスに先に指名された。最高でもCP500止まりになってたってことだ」

 

高円寺が指名したせいでCP50のマイナスを食らったから、他11グループでCP50ずつプラスになっても、CP500の増加止まりになると。

 

「いやまぁ……うん」

 

理論上はそうだけど、そんなん無理に決まっとるやんけ……。ってか、現状のCP512なんだからCP500も増えたらCクラスとしてはほぼ倍増だぞ。

 

「俺は今回それを狙っていた。……あと一歩だったがな」

 

「はぁ?」

 

あと一歩?なーにを言ってだ、と思ったけど……結果1狙いに乗り気っぽく見せてたのが完全に嘘だったなら、マジで狙えた?

 

「フン……。2時間の話し合い、疲弊したあいつらが相手なら可能性あっただろ。時間帯も悪くなかった」

 

いやまぁ、確かに疲れてたし、そろそろ帰って休みたいとか思ってたし、そういう状況だったら頭の回転が遅くなってるだろうけどさ……。

 

「え、じゃあ何、『Cクラスは裏切り指名しない』っていう契約をして、その見返りとしてCクラスが優待生の2グループで、他クラスに指名失敗してもらって、その上で契約を無視して、他全部を裏切り指名しちゃおうとしてたの?」

 

「そうだ。そうなりゃCP500だ」

 

まぁ、そうだけど……。

 

「じゃあ、どこまで考えてたの?端末取られても大丈夫にしてたってこと?」

 

「あぁ。……俺が誰にも指示出来ないように、物理的に隔離されて、電子機器を没収されるのまでは普通に想定通りだ。加えて、俺の他に金田とひよりも隔離されたとしても、その時点で既に優待生情報は伝えてあった。……この2段階までに契約が成立してたら、俺らの勝ちだった」

 

「つまり……既に指示するよう命令を出していたってこと?」

 

「そうなる。『試験終了まで誰にも情報を漏らさない』という契約を結べていたら、俺がただ黙って端末を差し出して、監禁でもされておくだけでいい。既に優待生の情報は各グループ1人ずつに伝えておき『羊と蛇グループが試験終了したら裏切り指名をしろ』と命令しておいた。何が何でも、俺から『裏切り指名をするな』という類の命令があったとしても無視しろ、とな」

 

「は~……なるほど」

 

龍園としては保険というか、見抜かれても問題ない『ダミー』みたいなものをいくつか用意しておいて、それを見抜かれたタイミングでしっかり『見抜かれた!』って演技をしてたのか。……やっぱ俳優向いてるのかも。

 

 

まとめてみよう。

 

 

★龍園の端末を没収して、龍園を監禁

→俺と石崎のスマホで伝達可能

 

★すべての端末や機械類を没収して、龍園を監禁

→実は金田&椎名が既に知っているので、そこから伝達可能

 

★すべての端末を没収して、龍園と金田と椎名を監禁

→実は既に各グループの人間に優待生情報を伝達済み

 

 

何かを見抜かれても大丈夫なように、わざと複数の負け筋を用意しておき、どこかのタイミングで『これで大丈夫だ!』と思ってもらえてたら、しっかり全勝ちを狙えた、と。

 

けれど、確かハゲが『3人全員の接触を確認しなければ情報を渡してないことの証明が出来ない』という所まで気付いちゃったから……。

 

その前に一之瀬が『情報を知ってるのが龍園くん以外にも居るはず』って言ったから、そのせいかな?いや他のヤツも気付いてたかもしれないけどさ。

 

他には平田が複数端末持ちについて指摘しちゃったのもあるけど、それは俺が櫛田に言っちゃったのが原因かも。でもそれは櫛田から連絡もらってたらしいけど返信が出来なかった理由の説明だし、それは仕方ないでしょ……。

 

うーむ、他クラスが合同で龍園封じ込めに成功してたんだなぁ……と思わせてくれる。やるじゃん他クラス。

 

「な~るほどねぇ……。お前も色々と考えてたのな。惜しかったのかもね」

 

「……。」

 

褒めたつもりなんだけど、反応の無い龍園。俺がメモに書いてまとめていたのを横目にスマホいじりに戻ってたらしい。

 

 

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結果1狙いが潰されたのはムカつくけど、それはそれとしてCPをもうちょい獲得できた可能性があるっていうなら気になる。色々考えてみると、

 

「あれ?……もしかして、ちょっと粘れば3人の監禁と端末没収だけで済んだかもしれないんじゃないの?お前のことだし証拠を残さず指示出したりも出来た?」

 

まぁ、それでもハゲが『3人以外に情報が伝わってない事を確認するのは困難』みたいなこと言ってたし、それはどうせ証明出来ないし、無駄かもしれないんだけどさ。

 

「……いや、最終的な指示、合図を出したのはリーダー格だけを残し、俺が優待生を知ってることを宣言した後だ」

 

あれ?マジか、意外だ。龍園と俺と石崎のスマホ以外の全く関係ない生徒の端末から連絡したり、なんだったら金田と椎名から口頭で伝えさせたり、証拠が残らないよう紙に書いて手渡しするとか、色々ありそうな気がするけど。

 

「なんで?みんなで話し合いする前に指示出しておけたんじゃないの?」

 

「……まだ、確認しておきたかったからな。法則を見つけた時点で70%は正しいと考えてた。その時点でも、メリットを考えたら賭ける価値は大いにあったが、確率を上げることを考えた」

 

「カケルだけに?」

 

「うるせぇ。……確率を上げるためにあいつらの反応を見た。『俺は既に優待生を知っている』『指名されたくなかったら、先に裏切り指名を失敗しろ』と交渉するのはおかしくない、その見返りとして俺らが一切の裏切り指名をしないという話に持っていくのも不自然じゃない。そのカバーストーリーを元に、俺が各クラスの代表者に見つけ出した優待生のリストを見せた」

 

「その反応を見て、合ってるかの確認しようって?」

 

「あぁ、そういう事だ」

 

は~~~、なるほどね。リスト見せて、その反応を見るのが1番の目的だったのか。別に契約出来なくても前段階で1つ大きな目的は果たしていたって訳か。

 

「それで、実際に反応見てどうだったの?」

 

「……葛城に関しては、坂柳派の妨害があって3人の名前を把握してない可能性もまだあった。だからまぁ、大して参考にしてない」

 

「確かに。いつも似たような顔してるもんね」

 

「本命は一之瀬、そしてDクラスの2人だ。あの3人はほぼ確実に自分のクラスに居る優待生を把握しているはずだからな。そして一之瀬の僅かな反応、櫛田平田の意図して表情を隠してる様子。これらから、リストが合ってるかはともかく、この3人はクラスの優待生を間違いなく把握しているというのは確信した」

 

「ふーん。……あれ?合ってるかは分からなかったの?」

 

いや俺も見てて全然分からなかったけどさ。

 

「俺が確信したのは、その後だ。もしリストが間違っていたら、あいつらとしては俺に『裏切り指名をさせたい』はずだろ。……だが、一之瀬も、平田も、俺が裏切り指名をさせない方向で話を進め、ルール上の抜け穴を塞ごうとした」

 

「あ~、確かに。リストの名前が間違ってたら、なんだかんだ言って裏切り指名してもらって、失敗してもらった方が良いはずだもんね」

 

「わずかに『結果1狙いのため指名させたくない』という可能性もあるにはあるが……。話し合いの時の発言、表情、そして挙動。自分のクラスのやつに相談しようとする気配も無かったから、俺の見せたリストが合ってるんだと確信した。……その時点で90%ってとこだな」

 

「なるほどねぇ……」

 

いや~、そこまで裏があったとは思わなかった。

 

「そういう訳で、俺が指名させた9グループはほぼ間違いないはずだが……。フン、鈴音のせいで取りこぼしが大きくなった。ムカつくぜ……」

 

堀北?なんかしてたっけ?

 

「どゆこと?」

 

「まだ試験が続いてるのは、優待生がCクラスの羊と蛇グループの2つだ」

 

あ、そっか。

 

「そういや全グループ終わった訳じゃないのか。結局『裏切り指名させません!』の契約を結んでないし、Dクラスとの相殺取引も、ABDのどこか見返りよこせってのも出来なかった。だから、その2グループが終わってないってことでしょ?」

 

「あぁ。そして、この2グループが他クラスに指名され、正解されたらCP100のマイナスだ」

 

そりゃ、そうなるけど、

 

「……それがどしたの?」

 

「真嶋が来る前に、俺が鈴音に言ってただろ。『話し合いを進める前に対等な状況にしろ』と。あれが通ってたらどうなるか考えてみろ」

 

「えーっと、Dクラスの高円寺が指名した詫びとして、1グループで指名失敗しろってことだから……。俺らにCP50プラス、DクラスにはCP50マイナス。あーはいはいはい」

 

そうなると現状よりCP50多いはずだし、指名される恐れのあるグループが1つ減る訳だ。なるほどなぁ……。

 

「鈴音、俺を警戒しまくって今回はこうなった訳だが、あそこまで頑固な女とはな」

 

「それはそうだけど、龍園もあれ演技だったって事?」

 

「フン。……まぁ、本音も入りまくってたがな」

 

「はぇ~」

 

それにしてもマジでキレてるように見えたよ。やっぱ演技の才能あるなコイツ。

 

「次は要望を飲んだ方がメリットがあるような状況にして、後から『早く折れた方が良かった』と後悔させてやるぜ……。ククク」

 

「うわっ」

 

やべぇヤツだ。ちょっと見直してたけどやっぱ無しかな。

 

「……あ?」

 

いや~、それにしても堀北のワガママにCP100の価値があったとはね……。不思議と『ムカつく』より『やるじゃん』の方が大きいかもしれない。いや、まだ裏切り指名を食らった訳じゃないけどさ。

 

仮に龍園の想定通りに話が進んでた場合、もっとリターン大きかったって事なのか……。流石に感心しちゃうな。

 

あんまり言いたくないけど、なんか……龍園と同じクラスで良かったよ。正直ね。

 

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