ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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クラスポイント:CP(Class Points)
プライベートポイント:pp(private poitns)

原作中では『cl』と『pr』ですが、大文字と小文字で分かりやすく区別したい&ポイント感を残したいのでCPとppを使わせて下さい。

原作表記の理由は、縦書きで、横1文字幅に英文字入れるとしたら半角英字を2文字までしか使えなかったからっぽいです。


ようこそ実力至上主義の世界へ

5月最初の始業開始を告げるチャイムが鳴った。程なくして、なぜかポスターの筒を持った坂上先生がやって来た。なにそれ?

 

「みなさん、おはようございます。これより朝のホームルームを始めます。……ただ、今日は何か質問があると思いますので、まずはそちらを聞いておきましょう」

 

ん?なんかあったっけ?入学から1ヶ月だよ記念日?

 

「あの~、先生……、」

 

「では椎名さん、どうぞ」

 

手を上げたのはCクラスの数少ない良心、椎名ひよりだ。この1ヶ月でかなり勉強が出来るというのは分かったのだが、……なんでCクラスなんだろうか。1人で読書ばっかりしてる文学少女が不良だらけのCクラスにぶち込まれるには可哀想に思える。

 

「今朝確認したら、私に振り込まれたのは5万ポイントほどだったのですが……」

 

あ、1日だからポイント振り込まれる日か。忘れてた。

 

「えっ!?10万じゃなかったんですか!?」

 

他の男子生徒が思わずといった様子で発言する。誰だったっけあれ……、西脇?

 

「山脇くん、椎名さん。……今から説明しましょう」

 

そう言って先生が語り出した内容は、龍園が前に言っていた通りの内容だった。

 

「この学校では、クラスの成績がポイントに反映されます。この1ヶ月間あなた方の遅刻、欠席、授業中の私語、授業中の端末の使用などが合計してクラスポイントからマイナス510という評価になりました。そのため、Cクラスのクラスポイントは490となり、それぞれに配られたプライベートポイントもまた49000ポイントとなりました」

 

ふーん……。遅刻と欠席は不良生徒がやってたくらいだろうし、私語なんかは相当少なかったと思うから……、結構な割合で授業中のケータイいじりが減点になってそうだな。つまり授業サボりのアホ龍園のせいじゃないか!俺の足を引っ張るクズめ。51000ポイント要求してやろうか……。

 

(クラス)ポイントと(プライベート)ポイントで分かりにくいや。CP(Class Points)とpp(private points)として考えよう。

 

もし『遅刻1回でCP10減る』として計算してみると……、

 

1人の月収が1000pp減り、

40人分で毎月4万pp。

1年、12ヶ月で48万pp。

3年で144万pp。

 

うっわ、えっぐ……。なんて高価な遅刻なんだ。ヤバすぎる。1ヶ月でCP510減ったことからみて、そうズレた数値でも無いはずだ。……他に龍園の暴行とかで減点されてたら、もうちょっと遅刻や欠席の減点が少ないだろうけど。

 

……ところで授業中の居眠りはカウントされなかったんだろうか?言い忘れただけ?内訳の詳細を言わないことにしてるだけか?うーん、坂上先生なら言い忘れることは無さそうだし、生徒には内緒ってだけかな。

 

ただ、ほぼ間違いなく授業中のラクガキは減点されてないだろう。俺のあのパラパラ漫画はCP40くらい加点されてもいいくらいだ、3年換算したら432万pp相当……は言い過ぎか。でもそれくらい欲しい。

 

教室を見渡してみると……、ほとんどの生徒は衝撃を受けて呆然としているようだ。不良組は自分のやってきた事を心から後悔し、優等生組は他生徒のせいでここまで不利益を被らなくてはいけないのかと悲しんでいるのだろう。そしてきっと全員が龍園を憎んでいることだろう。

 

そして貼り出されたポスターを見てみると、こう書かれていた。

 

[1年生 クラスポイント]

 A:940

 B:650

 C:490

 D:0

 

Dクラス……、CP、『0』!?!?

 

「ゼロ!?んはははは!」

 

思わず声を出して笑ってしまった。暗い雰囲気になっていた生徒たちも、それに気付き思わず笑った。下が居るとやっぱ人間って余裕が生まれるんだね。

 

「みなさんご覧の通り、ABCDとこの通りです。……察した方もいるでしょうが、この学校では、入学した段階での優秀な生徒たちの順にクラス分けされるようになっています。最も優秀な生徒はAクラスへ、ダメな生徒はDクラスへ、と」

 

またまたクラスに衝撃が走る。最低ではないとはいえ、自分は劣等生としてクラス分けされていたのか、と……。

 

「ですが、諦めるのは早いでしょう。このクラスポイントの順位がそのままランクとなり、AからDまで決められています。……つまり、クラスポイントが一番多いクラスが、そのまま最も優秀なAクラスになるという訳です」

 

ちょっと嬉しそうになるCクラスの生徒たち。ちなみに……、横に座っているマイナスポイントの元凶ナンバーワンでる害悪生徒は、なぜかずっと楽しそうにニヤニヤしている。間違いなくクラス内でぶっちぎりで一番嫌われてる人間なのに何考えてるんだ?頭おかしいなコイツ。

 

「そしてこちらが……、先日の小テストの結果です」

 

小テスト、基本5科目である数英国理社それぞれで4問ずつ計20問、1問5点ずつで合計100点のテストだったはずだ。内容はかなり簡単だったが、3問だけ異常に難しい問題が入れてあった、絶対に高1の範囲じゃない大学受験レベルの難しいやつが。点数差を付けたかったんだろうけど、もうちょい程よい難問にしろよ。バランス考えろバランスを~、中学卒業したばっかりの生徒に出す問題じゃないだろうよ。なので一般人にとっては85点満点のテストだったって訳だ。

 

貼られた小テストの結果一覧を見てみると、40人分の点数が載ってあるため文字が小さく見にくいが……、よっしゃ80点。順位は、半分よりは上だった。

 

「この学校では、中間テスト、及び期末テストで1科目でも赤点を取ったら退学になることが決まっています。今回のテストの場合、38点未満の生徒は即退学ということになります」

 

赤点1つで即退学!?かなり厳しいな……。そりゃ学力を伸ばしてもらわないと学校として不満だろうけど、相当キツいムチだな。アメをよこせアメを~!

 

それにしても、生徒の感情を上げたり落としたり忙しいなぁオイ。

 

あ、そういえば龍園の成績は……、50点?微妙にバカなんだな。40人中30位だった。

 

「そして、最後に大事なことを1つ」

 

ひと呼吸置いて、険しい目で坂上先生がこう言った。

 

「あなた方は、この学校の進学率の高さや就職率の高さを目的にこの学校に入学されたでしょう。……しかし、世の中そんなに上手い話はありません。そんなに甘くありません。この学校に将来の望みを叶えてもらいたい場合、Aクラスに上がるしか方法はなく、それ以外の生徒には……、この学校は何一つ将来を保証しないでしょう」

 

ほー、なるほど。だからみんなAクラスを目指しましょうね、と。じゃないと何も手に入りませんよ、と……。それで実力至上主義ねぇ。

 

クラスは騒然となる。かなりの出願数を誇るらしいこの高度育成高等学校に選ばれて入れたと思っていたのに、「お前らは劣等生だから将来を何一つ保証しない」と言われショックなのだろう。

 

俺は進学も就職もまったく何も決めてないから思う所は特に無いが……、この学校に入れた事に喜び、期待してた人にとっては裏切られた気分だろうな。

 

「しかし、学校側から出された試験によってクラスポイントは変動します。Aクラスになれるチャンスは必ずあるでしょう」

 

変動、ね。増えるばっかりだったら楽しく過ごせそうだけど、減る可能性も大いにありそうっすねぇ……、ヤダヤダ。

 

「部活動での大会成績などでプライベートポイントにボーナスが付くだけではなく、その生徒が所属するクラスのクラスポイントが加算される場合もあります。評価されるのは勉学だけではない、ということです」

 

ちょっと優しそうな声でそう言う坂上。体育会系の生徒も役立つ日が来るから、勉強が出来ないだけで役立たないと落ち込まず頑張れよ……的な?それとも、そういう生徒にも協力した方が良いと全員に言ったのかな。

 

「それでは、まずは中間テストまでの残り3週間、しっかりと実力を磨いて下さい。全員が赤点を取らず、退学を回避してくれると期待していますし、確信しています」

 

おっと、もうあと3週間なのか。意外と早いな……。流石に2ヶ月にも満たず退学なんて恥ずかしいからしっかり勉強しよう。

 

……ただ、教室内ではクラスポイントによる制度とAクラスにならないと意味がないという事への衝撃が抜けきらないようだ。そんなショックを受けている生徒たちを無視するかのように、授業開始5分前のチャイムは鳴るのだった。

 

 

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クラスみんなが気が散って集中出来てないような、赤点で即退学のため必死になって集中してるような、良く分からない雰囲気で進んだ午前の授業が終わった。

 

流石の龍園も授業中のケータイいじりは辞めて、普通に授業を受けたりノートに色々書いたりしていた。……授業に関係無いこと書いてそうやなコイツ。

 

昼休みに入ると、流石のCクラスでもそこら中で雑談が始まる。話題は当然、この学校のクラスポイントについてだろう。

 

俺もちょっとチャットで話そうか。

 

 

[浅井虎徹>>><<<龍園翔]

 

【浅井虎徹】:おい不良生徒、俺がもらえるはずだった51000pp補填しろや。1年で60万、3年で180万ちょいだ。ふざけんなよボケ

 

【龍園 翔】:アホか

 

ダメ元だし、ネタで言ったが、アホはお前の方じゃ30位野郎!だいたいお前が原因なのはマジだろうが!

 

【浅井虎徹】:30位のアホが人に言えたことか。お前との付き合いもあと3週間かもね。さよなら、ヤンキー。あんまり刑務所入るなよ

 

【龍園 翔】:テスト程度で俺がどうにかなるかよ。学力なんざくだらねぇ

 

【浅井虎徹】:アホが偉そうに

 

【龍園 翔】:お前は勉強でもしとけ

 

【浅井虎徹】:言われなくてもするわい。30位の不良とは違うんでね

 

あー、やだやだ。こんな不良じゃなくてもっと良い子とチャットしよう。

 

 

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[浅井虎徹>>><<<一之瀬帆波]

 

【浅井虎徹】:ども、一之瀬さん。クラスポイントの件ビックリしたね

 

俺はビックリしてないけど。

 

【浅井虎徹】:Bクラスはどんな感じ?

 

露骨に返信目当ての疑問形になってしまったが……、まぁ許容範囲だろう。……ドキドキと既読が付くのを待っていたが、

 

……既読の付く気配がまったく無い。……あ、彼女なら今Bクラス中からもみくちゃにされて作戦会議とかしてそうだな。ケータイを見てる暇は無いか。俺が嫌われてる訳ではないやい!

 

 

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坂柳とチャットしよう。

 

[浅井虎徹>>><<<坂柳有栖]

 

ん?表記を見て気付いたが坂柳ってアリスなんていう名前だったのか。日本人にしては攻めた名前だと思うけど違和感が無く似合う名前ですねぇ……。っていうか日本人なのか?まぁいいや。

 

【浅井虎徹】:おっす坂柳、Aクラス940って見事だね。羨ましい

 

……少し経ってから返信が来る。

 

【坂柳有栖】:ありがとうございます。これからは敵同士ですね。浅井くん

 

えー!?ヤダヤダー!!少し怖い微笑を浮かべる坂柳が目に浮かぶようだ。なんか競争するのが好きっぽい?

 

【浅井虎徹】:えー、そうかもしんないけど、まだ中間テストがあるだけじゃん。クラス対抗でなんかあるかもしれないけど、まだ仲良くしようよ。ていうか勉強教えて

 

別に今までもちまちま自室で勉強していたが、せっかくなら坂柳とやった方が楽しいに決まってる。頭の良い人がどういう感じで勉強してるのかも気になるし。

 

【坂柳有栖】:そうですね。Aクラスで集まって勉強会をしようかと思っていますが浅井くんも参加しますか?

 

【浅井虎徹】:する

 

即答、即返信だ。所要時間2秒くらいだった。

 

【坂柳有栖】:では時間と場所が決まったら連絡します

 

【浅井虎徹】:了解!

 

やった~。勉強デートだ。違うか?

 

 

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さて、放課後だ。坂柳からは「今日の勉強会は無さそうです」の連絡があったので、1人行動をする。行き先は当然……Dクラス。

 

1-D、クラスポイント、0。ゼロ!?ゼロってなに?ホント?マジなら何をしたんだ?どんなやつらが居るんだ?学級崩壊してんのか?これからどうすんだ??気になることばかりだ。見に行くしかない。

 

これ、もしかして1年だけではなく2年3年でも話題になるレベルの話なんじゃないのか。ヤバすぎるでしょ。あまりにも興味が尽きない。

 

野次馬根性1000%で放課後の1-D教室前に来て廊下から覗いてみると……、殆どの生徒が教室に残り、爽やかイケメンが教壇前に立ち色々としゃべっていた。

 

しかし、生徒それぞれが好き放題に話し合い、金を貸してくれ的に泣きついていたり……おぉ、カオスだ。クラス自体が呆れてしまうほどぐちゃぐちゃで、まとまりがない。この光景を見てしまうと、龍園が居たCクラスは恵まれてたんだな……とすら思ってしまう。まともなリーダーが居ないとこうなってしまうのか。……いや、クラスの生徒の質が悪いっぽいかな。

 

「1年Dクラスの綾小路くん、担任の茶柱先生がお呼びです。職員室まで来て下さい」

 

突如、あまり聞き馴染みのない校内放送が鳴った。なんだ?そもそも1年を呼び出す放送自体が初めて聞いたような……。

 

その後すぐDクラスから出てきた生徒だが、一瞬だけこちらを見たがすぐ目を外し、さっさと職員室の方に行ってしまった。……なんかやけに無表情なヤツだったな。

 

「じゃあみんな、大変だけどまずは遅刻や欠席をしないように頑張ろう!テストもあるから、私語をしないでケータイいじらず、頑張って授業を受けて、みんなで乗り越えよう!」

 

なんとかまとめまったようだ。延々と何も決まらず終わりそうな雰囲気だったが、爽やかイケメンがなんとか無理やり対策会議っぽく終わらせた。

 

そのイケメンはまだ教室に残り、ひたすら愚痴ってる頭の悪そうな女子数人を相手にしても優しい笑顔を浮かべ続け、根気強く励ましている。……俺はあれが下心全開で女体のためだったとしても、心から尊敬するよ……。よくまぁ出来るな。

 

嘆いたり、怒ったり、とにかく騒いでいたDクラスの生徒が大半が出ていったのを見て、俺は教室に入っていった。

 

「ども」

 

「こんにちは。キミは……1年生だよね?」

 

「そう、1-Cの浅井、よろしく」

 

「僕は平田洋介、よろしくね。……それで、何か用かな?」

 

「いや、ただウワサのDクラスがどんな感じか見てみたくて。……いやはや、大変だね」

 

別に企んでる事も無いので、素直に気になって見に来ただけだと事情を話す。ポイントについてだけでなく、あの生徒たちをまとめなくちゃいけないという事に心からの同情を示すと、

 

「うん、大変だ。でも、みんながまとまって頑張っていかないとね」

 

おぉ、健気にも前向きだ。はー、立派、俺には無理だな。

 

「感心したよ、俺だったら諦めてると思うよ」

 

「あはは、僕も結構大変だけどね。クラスのためには頑張らなくちゃ」

 

偉い!……けど、なんで頑張れるんだ?金でももらってんのかな。まぁ、ただ善人なんだろうな……。Bクラスの方が向いてそうなヤツだな。

 

「良かったら連絡先交換してよ。Dクラスにはまだ知り合いが全然居ないんだ」

 

全然っていうか、櫛田しか知らない。

 

「うん、良いよ。よろしくね」

 

おぉ、爽やかな良いイケメンスマイルだ。……しっかし、なんでこんな良い奴がDクラスなんだ?よっぽど頭が悪くて運動能力無いとかなんだろか?もしくは、クラスとして成り立たせるために、他クラスとのバランス要員として能力関係なく入れられてしまったのか?

 

そんな訳で、今日はCPが0のクラスの存在に驚き、アホほどまとまってない育ちの悪い小学生グループみたいなDクラスを見て、学校に来てから初めて「Cクラスで良かったかも」と思えた日になったのだった。

 

 


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