こんにちは、夏休みも残り1週間ほどで、外では灼熱の日差しが全力で人間を焼き殺そうとしてる今日この頃、寮の自室でクーラー24度で心地よい涼しさを満喫してる俺は浅井虎徹です。
夏の宿題はもう終わったし、清々しい気分だ。プラスアルファの勉強？アホ達のためにテスト対策の資料作成？そんなもん知らん。
外の気温は……35度？嘘でしょ？マジで人が死ぬやつじゃん。なるべく外出しない方がいいな……。
ただ、こんな灼熱の真夏だけど、自室からは出て、人に会いたいという気持ちが生まれてしまっている。
その理由は、『色んな相手にタロット占いをやってみたい』というものだ。
この前の占いの館で、伊吹がやけに熱中してたから、せっかくだしと図書館でタロットについての解説本を借りてきて読んだ。
んで、ちょっとハマっちゃった。
タロットカードそれぞれに意味は1つだけじゃなく、色々とありまくり、向きが正位置と逆位置で意味も反転するとのこと。つまり、1つのカードで5つ意味があったとしても、意味が反転して10個も意味を表せるってことになる。ズルくないか？
解釈の幅をめちゃくちゃ広げまくって、『何が何でも絶対に当てに行く！』みたいな、この卑怯さがちょっと気に入った。そりゃ、『そこまでやったら何か当たるだろ！』っていう。
例えば、伊吹に関して、他にありそうなのを考えてみると、
『愚者』
→単純な性格だから
『剛毅』
→勇気があるみたいな部分は合ってる
『正義』
→自分の価値観がしっかりあるから、ちょっと合ってそう
こんな感じで、他のアルカナだったとしてもそれなりに納得は出来たと思う。
でも、1つだけ選ぶなら、やっぱり『戦車』が1番という気がする。行動力あるし、スパイやるほどの忍耐強さもあるし、何より真っ直ぐな性格だから。
いやまぁ、魔女ババアがやって出たカードだから、そう思っちゃってるのかもだけど。
逆に伊吹のカードとして合ってなさそうだと思うのは、ちょっと悪い意味がある『刑死者』『死神』『塔』とかかな、別に苦しんでたりはしてなさそうだし。龍園に色々やらされてるけど、苦しんでるってほど苦労はしてないでしょ。
ただ、残念ながら『悪魔』は暴力性も示すから合ってそう。素晴らしい足蹴りで、俺の首から上を消し飛ばそうとしてきたくらいだもんね。懐かしい話だ。
他には、思慮深さを示す『隠者』は違う気がするし、物質的な幸福を表す『太陽』とか、完成を意味する『世界』とかも伊吹には合ってない気がする。……まぁ、『世界』が合う人なんて居ない気がするけど。完成してる人間ってなんだ？訳分からん。
こういう、何を引いても解釈で納得出来そうで、絶対ありえないと思えるカードもある。ここがめっちゃ面白い。
だから、もっと色んな人でやってみたい。
タロットカードが本当にその人の性質を表してるっぽいなら、普通にこれからの参考にして良いかもしれない。逆に『どう解釈したって合ってないだろ！』みたいなのが出てきたとしても、それはそれで面白い。アホみたいに意味を沢山持たせたカードでも、やっぱ外れる事はあるよねって感じで、納得というか、安心出来そう。100%必ず当たる占いなんてぶっちゃけ気持ち悪いから、1回くらい全く違うだろ！って結果も見たい。
外れるのを期待して占うってのも変な話ではあるけど。
まだ占ったのは伊吹と俺、綾小路の3人だけ。まだそんなに外れてない気はする。高品質のタロットカードなのかも？とか思えるからこそ、もっと色んな人を相手にやりたい。
別に、やって、外れたって良いんだし、気楽にやってみよう。
ついでに、他クラス生徒との交流にもなって良さそうかも。
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という訳で、伊吹と一緒に、寮のロビーにあるちょっとした休憩スペースで待機して、獲物を探している。通行人を眺めているだけとも言う。意外とこんな暑さでも外に出る生徒多いんだな。
俺としては、各クラスのリーダー格のアルカナは見てみたい。ってか、考えてみると割と知ってる人が相手じゃないと、合ってそうか合ってなさそうかの判別が出来ないんだよな。
でもチャットで呼び出すとかだと味気無いから、なんとなく見かけた人から、気になった人だけに声をかけよう。運試し？みたいな気分で。オカルトってか、スピリチュアルなものだし、そういうテキトーさも大事でしょ。多分。
「で、……誰にすんの？」
相変わらず不機嫌っぽいけど、別に不機嫌じゃないはずの伊吹。呼び出してすぐ来てくれてるんだから、きっと乗り気ではあるんだろう。分かりにくいけど。
「なるべく知ってる人にしようよ。誰でもいいんだけど、あまりに知らない相手だと結果が合ってるのかも分かんないもんね。それだと、なんていうか、無駄だし」
「……分かった」
「誰かやってみたい相手居る？」
「別に……。まぁ、私達のクラスの誰か見た方がいいんじゃない」
そりゃまぁそうだ。最初に思いつくの、普通はクラスメイトか。
「オッケーオッケー。ただ、クラスメイトだと別に夏休みじゃなくても機会が多そうだし、他のクラスのリーダー的なキャラの濃い奴らが居たら、そっち優先してもいい？」
夏休み終わったら、やっぱ微妙に他クラスに入っていくの気まずいもんな。櫛田とか一之瀬みたいなコミュニケーション能力ヤバヤバヒューマンなら平気だろうけど。
「なんでもいい」
「了解」
あと、占うのも『合ってるか俺が知りたいだけ』であって、『私もやってもらいたい！』とか思った人間が大勢来て、やらされまくるのは面倒だ。微妙に人が少ない場で、隠れるようにやっておこう。
さーて、誰が居るかな。
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「よう虎徹！あと伊吹も。何してんだ？」
石崎、お前かーい！……全生徒の中でも、下手したら『いつでも捕まえられそうなヤツ』でナンバーワンだぞコイツ。1番後回しにして良さそうなヤツなのに、最初がコイツかよ……。
「あ～、……石崎、今ヒマ？」
「おぅ。この後ちょっと龍園さんに呼び出されてるから、みんなで集まるけど、それまで暇だぜ」
あのロン毛、夏休み中なのに暗躍してんの？まぁいいや、関わるとめんどくさそうだからスルーしておこう。
「ちょっと占ってあげるよ。ここ座って」
「占い？……変なのハマってんのな」
「は？」
伊吹が睨みつけてる。おもろい。
「いや、意外と楽しめると思うよ」
「そうか？……じゃあ頼むぜ！」
「オッケー」
なんていうか、石崎に関してはやらなくても分かるような気がする……。
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「よっしゃ……これだ！」
石崎が引いたカードは『THE FOOL』だった。うん、納得過ぎる。
「『愚者』だね。自由とか、無邪気、冒険家、楽天的とかいう意味」
要するに、『アホ』だね。これでタロットへの信頼度が60%くらいから80%くらいまで上がったよ。引きそうだなと思ってたけど、マジで出るとは。
「グシャってなんだ？あと、ラクテンテキも分からねーや」
「……アンタみたいなヤツのことだよ」
「どういうことだ？」
「『愚者』はまぁ、アホな人みたいな意味。楽天的は、前向きみたいな感じ」
「なんか、アホはそうだろうけど、ちょっとムカつくな……」
ちょっと解説してあげるか。『お前はバカです！』って出たのとはちょっと違うし。
「悪そうなカードだけど、タロットカードの意味としては、さっき言ったみたいに『自由』みたいな意味だから別に悪くないよ。番号としても0番で、1番最初のカード。『始まり』みたいなものを意味するし、良いカードだと思うよ。『これからいっぱい成長出来ますよ』みたいな」
ある意味で『無知』かな、ゼロの状態。だからこそ成長の余地があって、これからに期待出来るカードではある。まぁアホっちゃアホだけど。
「へー、そうなのか……。ありがとな！」
「いや、ありがとうとかいう話じゃねーけど……」
占いの結果に何を言ってんだ。
「おっ！アルベルト！お前もちょっとやってもらえよ！」
ちょうど姿を見せた、黒い巨体。相変わらず目立つガタイしてるねぇ……。龍園に石崎と一緒に呼び出されてるのかな？
まぁいいや、アルベルトに何が出るかは俺も知りたい。
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「……。」
伊吹が慣れた様子でシャッフルしたカードから、無言で1枚引くアール。相変わらずクールな男だね。クールアール。
「えーっと、『TEMPERANCE』？……なんだっけこれ？」
天使っぽい絵だ。
「確か『節制』だったはず」
あっ、それか。ナイス伊吹。アルカナの中でも、なんか影が薄い気がするやつだった。アルベルトは筋肉ムキムキだから『力』を表すやつが出るかと思ってたんだけど。
「サンキュー伊吹。えーっと、意味は『調整、中庸、倹約、管理』とか。あ～、英語だと、『バランサー』かな？」
いやまぁ、テンペランス？も英語だけどさ。
「……。」
合ってるか分からんけど、力があるけど別に喧嘩したりしないのは、穏やかさがあるからなのかも。自分から無条件に殴りつけたりはしてないはずだ。
思い返せば、1番最初の龍園暴行事件でも、石崎をいじめてたのを見て龍園に反抗して動いたのかもしれない。そういう『平和を好む』みたいなのあるのかもしれない。いや分かんないけど。
「他には、逆位置の意味だと、浪費、消耗、生活の乱れ、とかもある。英語ではなんだろう、えーっと、Sometimes, maybe, your money go far away!」
「……？」
「多分、絶対違うでしょ」
「どういう意味だ？」
なんでだよ。お金が無くなる、遠くにいっちゃう的な意味じゃんかよ。
「まぁいいや。アール！Be careful about your money!」
「……OK. Thanks Tetsu.」
でもアールが金を使いまくってるなんて話は聞いたことないから、言う必要も無い気がするけど……。もしかしたら、筋肉のために出費が激しいとかはあるかもしれない？
それだけの筋肉だと、維持するだけでもメシ代かかりそうだもんなぁ。
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2人がクソ暑い外に出ていったのを見届けて、また他の相手を探してると、
「タイガーボーイじゃないか。何をしてるのかね？」
おおっと、高円寺だ。訳分からん変人ランキング1位であり、将来のために繋がり持っておきたい人物1位でもあるガチの御曹司。話しかけてくれるとは……意外だ。
「よっす高円寺、……さん、付けた方が良い？」
「好きにしたまえ、庶民」
相変わらずだなぁ……。伊吹は、なんかキモがってる？
「今ちょっとタロットカードの占いやってて、ホントに当たるかな？って色んな人にやってみてるんだよね。高円寺にもやっていい？」
「良いだろう。……これだ」
並べてたものをいきなり勝手に引いて、出たカードには『THE SUN』と書かれていた。
「えーっと、『太陽』は、」
「『物質的な幸福』だろう。リッチでエレガントな私にとって悪くはないが、なぜパーフェクトを示す『世界』が出なかったのかね？……精進したまえ、タイガーボーイ。そしてカンフーガール。それでは、アデュー」
俺が何か言う間もなく消えてしまった。ってか意味知ってたのかい。んで出たカードの責任こっちに無いでしょ……。
占い結果としては、大金持ちだろうし、『太陽』で合ってはいそう。
「すっごい変なヤツ……」
まぁ、気持ちは分かるけどさ。ツッコミ所が多い。
「てか、伊吹ってカンフーガールなの？」
「知るか」
えぇ……お前のことやんけ。
もしかして、足とかの筋肉の付き具合で、武道的なことをやってるって見抜いたとか？もしそうだったら、やべーな。
「ふーむ……」
ジロジロ見ても全然分からん。ちょっと運動してそうとは思うけど。
「は？……何見てんの」
「いい足だね」
「……キモ」
この遠慮のなさを仲良くなったと見るか、普通に嫌われてると見るか、難しいとこだな。
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ランダムで見かけた人を捕まえるのもいいけど、クラスのリーダー格は呼び出したり、部屋まで行ってやっても良いかも……とか思ってたら、ちょうど呼びやすそうに思ってた人物が見えた。
「おっす平田！……とギャル？」
「こんにちは浅井くん。あと伊吹さん」
「は？何なの？」
お前の方こそ何なんだよ。名前……誰だっけ、忘れた。無人島で1回聞いたかもしれないけど。
「タロット占いやってるから1枚引いてみてくれない？すぐ終わるから」
「うん。えーっと、軽井沢さん……少しだけごめんね？」
「……しょうがないなぁ、平田くん」
なんだこの2人、付き合ってるんだよな？お互い下の名前で呼べばいいのに。
「えーっと、この中から引けば良いのかな？」
「そう。なんとなく集中しながら引いてみて」
もう瞑想みたいなことさせるのめんどくさくなっちゃったからね。場所も場所だし。
「えーっと……じゃあ、これで」
平田が引いたカードには、『THE EMPEROR』と書かれていた。エンペラー。
「『皇帝』だ、分かりやすく王様って感じの。意味としては、えーっと、『統治、堅固、防御、同盟』だとさ。……団結しようとする人、みたいな感じっぽい」
「へぇ……すごいね、なんだか合ってそうだ。確かに僕は、みんなで仲良くしたい、団結して欲しいと思ってるから」
「ふーん……」
軽井沢？も割と気になってるみたいだ。
「えーっと、悪い意味だと……『消極的で失敗する、視野が狭い、自己中心的、感情的、孤立』とかかな。なんか分かりやすく王様の失敗パターンみたいだけど、平田には特に心配なさそうだね」
「……いや、ありがとう。覚えておくね」
うわ真面目だ。忘れていいだろこんなの。
「……。」
ギャル子も気になってるみたいだし、まぁ1人くらいどうでもいいヤツにやらせてもいいか。知らん人間が並ぶような状況になるなら嫌だけど、数人なら許せる。
「あ～、軽井沢？も1枚引いていいよ」
「……えっと、どうしよう」
なぜか平田の顔色を伺う彼女。ちょっと意外だ、気が強そうなのに。
「見てもらったら？軽井沢さん」
「じゃあ、うん。……これで」
見た目の割にあんまり自分に自信無いのかね？それともただ平田に依存してるのか。よく分からん。
「『THE LOVERS』は、日本語表記で『恋人』とか『恋愛』だね。……そのまんまだな」
「……意味は？」
「恋愛、情熱、結婚、ときめく心、調和。悪いのは誘惑、関係の破綻、不道徳な……とか」
流石に女子の前で「不道徳な性！」とは俺でも言いたくない。あぶねぇ。「You are bitch!」って言ってるようなもんだ。セクハラ過ぎるだろ。
「つまり、どういう意味なの？」
いや知らんよ。それテキトーに受け手が考えるのが占いだろって。とか思いつつも、優しいから、つい本を確認しちゃう俺。優しい。
「あー……『曖昧な状況を続けられず、正しい選択を迫られる』だって。他には、『自分の逃げ場を失ってしまうことも覚悟しなければいけません』だって。どういうことだ？」
なんか、良く分からんな。人物評価というより、状況についての記述ばっかりだ。結局どういう人間なんだ？そこが分からん。単純に『恋多き女』って判定していいんだろか？やっぱ、ビッチ？
「……良く分かんない。もう行こうよ、平田くん」
は？ギャルてめー少しは感謝しろやボケが。
「えっと、ありがとね浅井くんと伊吹さん。またね」
「おいっす。じゃあね」
「ん……」
軽井沢に引きずられるように消えていった平田。うーん、なんか平田からギャルへの愛情あんまり無い気がするな。優しいヤツだし断りきれずに付き合ってるだけとかなんじゃないの？……そうでもなきゃ、なんで俺達の方に向ける笑顔の方が明るい感じなんだよ。まさかホモか？ヤダも～。
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それにしても、このタロットカード……半分以上は間違いなく当たってるような気がしちゃってる。妙に合ってる感。
魔女ババアに1万pp出したけど、その価値あったのかも。100％とは言わないけど、マジで当たるやつなんじゃねぇの？
もうちょい色んな相手にやりたいな。それも特徴ある人がいい、龍園にちょっと心当たりあるか聞いてみるか。変人の。
……というか、龍園にはまだやってないのか。
どうせ『死神』とか『悪魔』とかだろアイツ。やるまでもねーや。
『恋愛』とか出たら死ぬほど笑ってやろう。
アルカナの意味とか解説ですが、本や色んなサイトから参考にして文面変えてはいますけど、作者が創作してるというのは一切無いです。
愚者 ：石崎大地
魔術師：
女教皇：
女帝 ：
皇帝 ：平田洋介
法王 ：
恋愛 ：軽井沢恵
戦車 ：伊吹澪
剛毅 ：
隠者 ：
運命 ：
正義 ：
刑死者：
死神 ：
節制 ：山田アルベルト
悪魔 ：
塔 ：
星 ：浅井虎徹
月 ：綾小路清隆
太陽 ：高円寺六助
審判 ：
世界 ：