ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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新・須藤事件

おはようございます。昨晩は色々と状況説明とか、録画データを坂上先生に見せて送信したりとかがあって、晩メシ食うのが21時近くなっちゃってた可哀想な俺は浅井虎徹です。

 

昨日はあの後、龍園は『意識はあるけどちょっとフラつく』という演技を続けながら保健室に運ばれ、なんか色々と検査されてた。この学校の敷地内には病院が無い分、結構本格的な医療機器も揃ってるみたいだった。……マジでヤバい時は、外の病院に搬送されるんだろうけど。

 

ふと思ったけど、この学校、今まで外から救急車とかパトカーが入って来たことあんのかな?ゼロってこと無さそうだけど、そう多くはないはずだよね……。ちょっと気になるから後で調べておこう。

 

龍園が運び込まれてからしばらくして、保健室の先生から連絡を受けた、それぞれのクラスの担任、坂上先生と茶柱が来た。んで、その場で何があったかの事情を話した。

 

俺はただ『龍園が堀北を脅迫して性犯罪でもやっちゃってそうだと思った』と主張して、録画したデータをその場で見せただけ。

 

一緒に居た須藤はめっちゃ混乱してたし、「堀北が襲われてると思ったから!」とか大声で言ったりもしてたけど、勘違いして一方的に殴りまくった事には罪悪感があるのか、無罪の主張まではしてこなかった。

 

事情聴取を受けた後は、『処罰は明日の昼頃に』って言われた。つまり、今日の昼頃。ちなみに明日はもう体育祭。

 

そういえば、影のMVPとも言える、名女優だった長尾は「紛らわしくて変な事してたのは認めるし、謝るわよ。けど、それにしたってアンタやり過ぎでしょ」とか須藤に言ってた。いやまぁ、確かに、言ってもおかしくない内容ではあるんだけど……あまりにも堂々と教師陣の前で主張してたから、事情を知ってるはずの俺ですら『あれ?マジの話だったっけ?』とか思ってしまった。

 

女は怖いね。嘘でもあんなに真に迫った逆ギレできんのかい……って軽く引いちゃったよ。

 

 

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午前の授業が終わって昼休みに入ると、謎の電話が突然かかってきた。呼び出し人、坂上先生?要件はなんとなく分かるけど電話してくるのは珍しいな。

 

「はい、もしもし。こんちゃっす」

 

『浅井くん。至急、生徒指導室まで来て下さい』

 

え?今?

 

「あ、はい。了解です」

 

『それではお待ちしてます』

 

ふむ。俺の呼び出しは良いんだけど、校内放送にしなかったのは……プライバシーうんぬんって事かな?全校生徒に伝えることでもないし、スマートかもね。あ、長尾も電話もらってるな。

 

そろそろ行くけど、その前に……

 

「石崎!後で金払うから、適当にパンとか2つくらい買っといてくんない?」

 

「ん?おぅ!分かった!」

 

よし、これで昼メシなんとかなりそうかな。話し合いが長引いても午後のスキマ時間に食おう。

 

けど、あれ?なんか、クラスに居るみんなの目が冷たいような……。そうか、まだ俺ハブられてる状態だったっけか。『お前が何を偉そうに命令してんの』的な目っぽい。

 

これ、いつまで続くんだろか。龍園と敵対関係だと内外で思われてる状況、めちゃくちゃ便利ではあるけど……やっぱちょっと寂しいかな。

 

いやでも、石崎、アルベルト、伊吹、あと小宮近藤あたりはちょいちょい普通に接してくれるし、友達っぽいのそれしか居ないから変わらないっちゃ変わんないんだけどね。

 

状況次第でまた考えようかな。龍園は「体育祭が終わるまで」とか言ってた気もするけど、その時に終わるのか、それとも続けるのかも検討しなきゃな。

 

なんにせよ、今回の事件の片付けが先か。

 

 

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「失礼しまーす」

 

生徒指導室に入ると、坂上先生だけじゃなく、茶柱、真嶋まで居た。真嶋は学年主任だからって事かね。そして当然、俺の他にも呼び出された龍園、長尾、そして須藤も居る。少し部屋が狭く感じる。

 

ちなみに、今日初めて見るサボり龍園は頭に白い包帯をわざとらしく巻いてる。ぜってぇ嘘だろそれ、怪しすぎる。

 

長尾は何食わぬ顔で居るけど、それと正反対に須藤はめちゃくちゃ焦った顔でソワソワしてる。一晩経って、自分の状況がヤバいと実感してるのかな。

 

「全員揃ったか。……では、早速だが、今回の暴行事件に関する学校側からの処罰を言い渡す」

 

え?もう?手際が良いね。

 

「それでは、まず、現Bクラスは……『公共の場にて不適切行為』と『特別棟の無断使用』などの罰を合わせ、2人分を合わせてCP30の減点とする」

 

うーん、そこそこ大きいペナルティだけど、まぁ、そんなもんか。勝手に好き放題、色んな所でヤりまくられるのも問題だろうし、抑止するためのペナルティとしても妥当なんじゃないだろか。自室でヤれよ、って話だもんね。

 

「フン……」

 

龍園の反応は、何を言ってもどうせ不満だろうから、気にする必要無し。

 

「そして、Dクラスは、CP20の減点。そして須藤健は……本日より、1週間の停学に処す」

 

うん、まぁそんなもんでしょ。そう思いながら須藤を見てみると、

 

「ふざけんじゃねぇ!!……テメェ、龍園!浅井!お前らが、お前達が俺をハメたんだろ!?なぁ!?オイ!!」

 

チッ、うっせーな。そうです~。

 

「須藤、うるさいよ。あと俺の服が伸びちゃうよ。離せ」

 

制服そこそこ高いんだぞ。

 

「テメェ……テメェ!言えよ!本当の事!!ここで!!!」

 

あーもう、涙目でキレてくるゴリラみたいな男とか暑苦しくて嫌だよもう。黙れアホめ。制服弁償しろやサル。

 

「須藤、それくらいにしておけ」

 

茶柱も腕組んで偉そうに言ってないで、力づくで剥がせや。クソアマめ。

 

「先生!だって、だって、こんな体育祭の直前に、俺に声かけてきて!変だろうが!!」

 

大声うっさいなマジで……。しかし教師達の前だってのに、良くまぁ暴行寸前みたいな事できるね。退学したいんか?

 

「黙れ、須藤。これ以上は退学もありうるぞ。手を離せ」

 

ん?意外にも茶柱が止めてきた。……いや、もうちょい早く動けよ。

 

「だって、俺が参加しねぇと、クラスが……。ふざけんなよ!……嫌だ、嫌だ!せめて体育祭の後に停学にしてくれ!それだったら1ヶ月だろうが2ヶ月だろうが構わねぇ!」

 

いや構えよ。なんだその長期休暇。

 

「黙れ。いい加減にしろ須藤。今回はお前の短絡さを狙われ、我慢出来なかったお前の負けだ」

 

茶柱、コイツ誰の味方だ?……ありがたいけど、ちょっと須藤が可哀想になるね。

 

「うぅ、うぅ~~ッ!……ぜってぇ浅井もグルだろが!裏で、……そうだ、チャットの文面、学校側から見れるんすよね!?」

 

もう完全に号泣してんなぁ、とか思ってたら微妙に嫌な所を突いてきたな。でもまぁ、俺も言いたいことあるし、なんとなく主張しとくか。

 

「なぁ須藤、もしさ、仮にだけど、俺と龍園が繋がってたら、須藤は無罪になると思ってんの?」

 

「は?……当たり前だろが、俺がお前らにハメられたんだからな!!」

 

ホントうっさいな。狭い部屋で大声出すなよ。

 

「いや、そうはならないよ。何を聞いたとしても、何と勘違いしてたとしても、誰かに騙されてたとしても、『お前が人を殴りまくった』っていう事実、罪は消えないぞ」

 

「は?ざけんな、俺は悪くねぇよ!」

 

……この野郎。クソガキめ。

 

「いや……悪いよ。バーカ。死ねよカス」

 

「て、テメェ!!」

 

「ほら殴ってみろよ、カス、バ~~~カ!」

 

「っ、上等だ!!!」

 

「やめろ浅井」

 

「浅井くん、それくらいにしておきなさい」

 

なぜか龍園と坂上先生にも止められちゃった。ここで殴らせておけば停学マシマシ、もっといけば退学なのに。

 

茶柱だけじゃ抑えきれそうになかったのを真嶋が加勢して、それでも俺を殴ろうとしまくってきてる須藤に向けて、今まで言いたかったことを言い放つ。

 

「そもそも、5月頃にあった須藤事件、あれでお前が『俺は悪くなかった』って勘違いしてるのが一番悪いんだよ」

 

「は……?」

 

訳分かんないって顔しやがって。バカのアホ面は見るに耐えないな。

 

「おい、余計なこと言うんじゃねぇ浅井」

 

龍園に文句言われたけど、無視しちゃおう。

 

「あの時、確かに喧嘩ふっかけたのが石崎達だったとしても、その後『いきなり殴られました』とかアイツらが嘘をついてたとしても、お前が売られた喧嘩を買って石崎達をボコボコにしたのは事実じゃん?」

 

「だからなんだよ。喧嘩売ってきたアイツらが悪いだろうが!」

 

「いや、お前も悪い。それを理解させてない時点で、お前らの担任、ここに居る茶柱はクソほど無能だよ。言うべき事を言ってない、指導すべきことを指導してない、分からせるべき事を分からせてない。カス教師だよ。存在する意味が無いね」

 

「……。」

 

フン、偉そうな目しやがって。

 

「あの件で、石崎達は『嘘ついてたことがバレたら退学になるかもしれない』って勝手に思い込みすぎて、まぁそれも上手く脅されたのかもしれないけど、……なんにせよ、訴え自体を取り下げちゃった訳だね。まぁそれはすげぇバカだけど、それは問題じゃない。証拠があったって、須藤、お前が人を殴りまくった事に変わりはないし、喧嘩した双方が罰せられるのが当然なんだよ。双方が、喧嘩して、暴力振るいまくった、その事をちゃんと罰せられるべきだったんよな」

 

「……はぁ??」

 

まだ分からないか。分かってもらえんのかなこれ。

 

「あの事件は、『喧嘩を吹っかけたのが石崎達だったから須藤は許された』んじゃなくて、ただ単に『喧嘩が無かった事になった』ってだけなんだよ。それを理解せず、ただ『相手が悪い』とだけ言い張る、自分は全部正しくて、相手が全部悪いと思ってる、死ぬほどバカなクソガキ。それがお前だよ、須藤。反省すべきことを反省せず、全く同じ短絡さで暴力を振るう、社会不適合者。ルールを破ったら罰を受けるのが当然なんだぞ。知らないの?お前は3歳児でちゅか~?」

 

「ふ、ふざけんな!お前らが、テメェが俺を騙したんじゃねぇか!」

 

うん、そうだよ?……って言うのは流石に我慢しよう。

 

「だからさぁ、俺に何を言われたとか、言い訳にならんっちゅーの。『人を殴ってはいけません』っていう、当然で、常識で、普通の人間なら守るルールをお前は守れなかった。だから罰せられます。それだけの話だよ。ギャーギャー泣きわめくなよ、醜いな」

 

「ざけんな!……だったら、誰が何されてようが、黙って何もせず、ただ眺めてろってのか!?アァ!?」

 

「基本的にそうだよ。……嫌な世界だよね~」

 

「お前が言うな!!」

 

俺と須藤のやり取り、真嶋坂上茶柱っていう3クラスの担任が見てるんだけど、まぁこれくらいのことちゃんと教育しろよって意味だからね……。仕方ない。

 

「ボロクソ言っちゃったけど、もちろん他人を助けるために暴力が認められる時もあったはずだよ。本当に堀北がレイプされてたなら、今回の件で、お前も別に罪にならなかったでしょ。殴ってたけど、後遺症が残るほどやってはないし。……ビビらず行動出来てたのは偉いよ。これはマジで」

 

「あ?……お前、俺のこと舐めてんのか?」

 

そりゃ舐めてるか舐めてないかで言ったら、めちゃくちゃ舐めてるよ。身体能力だけの暴力系バカを舐めない訳が無いじゃん。変なこと聞くなよ。

 

「ただ、『人を守るため』って言ったって、『正当防衛』は証明がめっちゃ難しいし、少しでも過剰防衛になったら、即座に普通に罪になるんだよ。殺人までいっちゃ、無罪になることほぼ無い。だから『まともな方法』で、人を守りたかったら、どうにかして一緒に逃げようとしなきゃダメ。それでもダメそうだった時に、初めて暴力が認められる。それも、なるべく相手も傷付けないようにしなきゃダメってね」

 

「は……?」

 

「もしくは、真逆で『まともじゃない方法』で暴力を振るいたいって言うなら、誰にもバレず、記録もさせず、証拠も残さないのが条件だよ」

 

見た人間ごと殺しちゃえってのが分かりやすい例だね。言わないけど。

 

「……。」

 

教師陣が苦い顔だ。そりゃまぁそうか、教師の前でする話じゃない。

 

「もちろん、どれだけ処罰されて、ムショぶち込まれてもいいよ!って元気いっぱい好き放題やるのもアリっちゃアリだけどね。この3通りでしょ」

 

「………長ったらしく意味分かんねぇこと言いやがって。結局、テメェ何が言いてぇんだよ?あ?言い訳あるなら言ってみろや!!」

 

「はぁ?言い訳なんか無いよ。今回の件、須藤、お前がただ『相手が悪かったら好きなだけ殴っても良い』って勘違いしてるから起きただけの事件だよ。人のせいにすんな、クソバカ」

 

「てっめぇ……!」

 

「今回の件は、石崎達へお前がやったことのお返し程度でしかないよ。これで俺的にはトントン、貸し借り無しくらいのもん。……ただ、この後も同じように、かるーく煽るだけで殴ってくるような大馬鹿が相手だと、なんていうか……ザコすぎて悲しくなっちゃうからね。だから色々教えてあげたんだよ、猿くん」

 

「俺のこと言ってんのか!?殺すぞ!!」

 

「殺すぞ!だって。んははは!……ほら、やってみろよ。その時点で今度こそ退学でしょ。ほらほら、殴ってみろよ!バ~~カ!」

 

「テメェ、マジで殺す!!!」

 

「いい加減にしろ、浅井虎徹。これ以上の挑発行為は認めないぞ」

 

暴れまくる須藤を抑えながら茶柱が話しかけてきた。

 

「別に、茶柱先生に認められる、られない、どうでもいいですけど。『人は殴っちゃいけません』って事を、事件起こしたヤツに教えることも出来ない、そんな教師に何か言われたって、どうでも良すぎますよ。俺にどう思って欲しいんすか?」

 

「……生徒はそれぞれ、自分の起こした行動の責任を持つ。それだけの話だ」

 

何を偉そうに言っとんねんボケ。教育放棄のバカめ。

 

「だとさ、須藤。茶柱先生は、お前が人を殴って停学になろうが退学になろうが、自業自得だから興味もないし、助ける気も無いってさ。バカなお前に何かを言って、行動を変えさせるなんて無理だし、無駄な労力使いたくないってさ。良かったじゃん、またすぐ誰かを殴って停学なり退学なりになれよ。んで、どうせ高校も中退して、同じように暴行事件を起こして、すぐムショでしょ?残り少ない表社会の生活楽しんでくれよ」

 

「この、クソがぁ!!!」

 

うっせぇな……。俺もただ殴られるの嫌だから帰っちゃお。話はもう終わってるでしょ。

 

「んじゃ、お邪魔しました~」

 

大人2人に押さえつけられてるのに俺を殴ろうとしてくる須藤、あそこまでいくと感動するほどにバカだな。

 

あと、流石に須藤のこと煽りすぎちゃったから、一応、夜はあんまり出歩かず、カメラの有る所を歩こうかな。ついでに護身道具も用意しとくか。

 

 

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時刻は放課後、16時くらい。やっと授業が終わった。

 

昼食を楽しめなかったので、夕食はちゃんとした良いものにしようかな、石崎が買ってきた昼食、メロンパン2つは無いだろ、どんな狂ったラインナップだよそれ、一生そんな買い方しねーよ、残り1個は明日の朝に食べよう……なんて考えてたらチャットが届いた。

 

『今すぐ屋上に来い』

 

龍園、隣に居るのになんでチャットなんだよ?バカなの?とか思ってたら、さっさとクラスから出て行っちゃった。

 

……あ、そうか。一緒に行動してるのまだ変ってことか。

 

それにしても、何の用事だろ?須藤の話はもう終わったけど……色々と言ってたの怒られるのかな?それは面倒だな。サボって学食行きたいよもう。

 

いや、文句言うくらいだったらチャットなり電話してくるか。直接ちゃんと話さなきゃいけない話題なら……まぁ、ちゃんと行かなきゃダメか。

 

そんなことを思いながら屋上への扉を開けると、やっと涼しくなってきた秋の風が感じられた。

 

「来たか」

 

「はいはい、来たよ。あ、……龍園、その包帯マジなの?意味無いでしょそれ」

 

「……フン」

 

図星っぽいな。変なコスプレしやがって、ハロウィンまであと1ヶ月以上あるぞ。

 

「それで、何の用?」

 

「とりあえず、須藤の件は上々だ。余計なこと言いまくってたのも許してやる」

 

「あ、そうすか」

 

お前の許しなんて別にいらんけど。

 

「だが……これを見ろ」

 

ん?……見せられたのは、龍園のスマホ画面。えーっと、めちゃランダムな英数字のメアド、捨てアカウントっぽいやつからのメールが来てて、内容が……

 

『お前らのクラスの生徒によって、現Dクラスから生徒が退学させられた場合、お前らのクラスからも2人退学者が出ることになる。これ以上、手を出すな。証拠は既に保持している』

 

「……なにこれ?」

 

「送信者は捨てメアドだったから特定も出来ないし、既に返信も出来なかった。受信時刻は、昨日の20時頃だな。俺が保健室に居て、お前らが教師と話してる頃だ」

 

「はぁ……。誰かがマークしてたってことか」

 

「お前、心当たりはあるか?」

 

「いやどうかな……。須藤を待ってた時、あんまり警戒して周囲の確認とかはしてないけど、誰も居なかったと思うけど……いや、ごめん、分かんない」

 

不審なヤツを見た覚えは全く無いな。

 

「妙なのは、この『存在X』が俺らの動きをある程度把握してたとしても、須藤を行かせないように介入してこなかったって事だ」

 

「確かに。……昨日止めたとしても、どうせ他で同じようなこと起こすだろうから放置した、とか?須藤のことだし。いやまぁ関わるのが面倒だったのかもしれないけど。もしくは……昨日いっしょに待ち続けるのに疲れたとか?」

 

「アホか」

 

「は~?いや本当に起きるのか、本当に何か企んでるか、そういうの分からなかったんだから、途中でどうでもよくなるとかあり得るでしょ……」

 

「……まぁいい。それで、証拠とやらに心当たりはあんのか?」

 

「いや~、無いと思うけどね……。退学になるような事やってないもん」

 

「……。」

 

は?なんで黙るんだよ。

 

「ってか、そもそも証拠があるとも限らないし、2人分あるってのも嘘かもしれないけど……龍園こそ何かやってんじゃないの?俺の知らない所で」

 

「…………言う義理はねーな」

 

コイツ、やってんな!

 

「おいおい頼むよ、それなりに信頼してるリーダーなんだから変な事で消えないでよ?」

 

「フン。……問題は、コイツをどうするかだろう」

 

「いや、俺はもっと先に気をつけるべき問題あると思うよ」

 

「何の事だ」

 

「須藤がまたすぐキレて襲ってこないか、だよ。アイツ、ああいうタイプ、暴力系バカのタイプはそれなりに知ってるけど、誰に何を言われても、どんな状況だったとしても、無視して手を出してくるかもしんないよ?バカだから。停学中にまた暴行事件ってなったら退学なっちゃうんじゃないの?」

 

「……テメェが煽りまくったからだろうが」

 

まぁそうなんだけどさ。今から何もしなくても、須藤が勝手にキレて襲いかかってくる可能性、そう低くも無い気がする。めんどくっせぇな。

 

「このメールの送信者も、先に須藤に言えよって話だよね……。俺らが何もしてないのに須藤が勝手にキレて、それで勝手に退学して、それでなぜか俺らのクラスからも退学者……ってなったら勘弁してくれ状態だよ」

 

しかも、退学の最有力候補は、ぶっちぎりで龍園だし。須藤と龍園じゃ釣り合い取れないもんなぁ。

 

「フン。まぁいい、明日の体育祭を終わらせてから対処するぞ。……お前は今日、ずっと自室に居ろ。余計な事すんなよ」

 

「えっ、……水工作やんないの?」

 

「無しだ。デメリットがデカすぎる、学校側への警告ってのも意味分かんねぇよ」

 

「え~?なんだよ、つまんないな」

 

「……退学リスクもそれなりに高いって言っただろうが。黙って帰れ」

 

なんだよもう。かなり効果的だと思ったのに。

 

「はいはい、分かりましたよ~。……あ、体育祭の参加表そろそろ送っといてよ。まだ龍園しか知らないんでしょ?」

 

「あぁ、そうだな」

 

こいつ、なんか色々とやりまくってて仕事量すげーことなってそう。やらなくていいことも大量にやってそうだし。もっと金田とか使えばいいのに。まぁいいか。

 

「んじゃね」

 

色々あって疲れたから、学食で大盛り食べちゃお~。


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