ウッハwww貴族に生まれたwwwマジ勝ち組www   作:頭に油をさしたいマン

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ズィマーの机、その奥深くにあるA4用紙その内の一枚。
皺だらけで所々掠れており読めなくなっている。


 オペレーター ボ■ラ■■

造■検査の結果、臓■の■郭は不明瞭で異常陰影も認められる。
循環器■源石顆粒■査の結果において■、同じく鉱石病の兆候が認められる。
以上■結果か■、鉱石病■染者と判定。
 
【源石融■率】18%
 感染レベル■比較的高く、頭部■び消■■系に鉱石■の侵食の痕跡あり


誰かにとっての事実

 今は丑三つ時、廊下には最低限の明かりしかついていない。夜からが本番のオペレーター達も多数いるが、それでもここはまるで昼の喧騒が幻の様だ。

 

 一つ、トイレから木霊する音を除けば。

 

 

 ・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 

 ……どれぐらいの時間がたったのか。時間感覚まで吐き出してしまったのか、見当もつかない。

 

 便座の縁を掴み、口から便器の中に胃酸を溢す。

 便座を掴む腕から、コートを自室に置いてきたせいで、嫌でも決して消えない手首の傷が目に入る。

 あれほどの殺戮を行ったくせに死を望む、浅ましい己の証が。

 

「…ぉえぇ……」

 

 それを見て、なにかがせりあがって来る。胃の中身はすでに空っぽだというのに、一体なにを吐き出そうとしているのか、胃の痙攣が収まらない。しかも、喉や口がはりつくような胃酸で、痛く不快だ。

 それに寝不足のせいだろう、頭も割れそうなほど痛い。

 

 それからどれくらいの時間がたったのかは分からないが、少しずつ吐き気が治まってきた。

 

 片手をハンドルに伸ばす。何度か空ぶったが、なんとか指先をひっかけ下に落とす。消化しきれなかったものが胃酸とともに水に流され消えていく。跳ねた水が顔について気持ち悪い。

 気持ち悪いのを差し引いても、今すぐここで寝てしまいたいが、ここにいるわけにはいかない。

 震える足に力を込めて個室から出る。

 

 手洗い場の大きな鏡に写る自分の姿は、なんとちっぽけで情けない。目元には真っ黒い隈が浮き出し、頬は少し痩せている。

 久しぶりに気分がいい、ざまぁみろ、人殺しにはふさわしい末路だ。

 

 足もとが覚束ないが、それでもここで倒れる訳にもいかない。

 

 トイレから出た、そこにはモノクロな衣装に身を包んだ女がいた。

 

「……っ大丈夫?」

 

 ふらつく私に駆け寄ってくる彼女、どこかで見たことのあるその顔を見て思い出した、たしか、コードネームはアブサントだったか。

 

 

 

 

 私が彼女について知っていることは、警察の親がいたこと、そして彼女もあの地獄の中をロドスの救助隊に救助されたこと。そして、ウルサス学生自治団や私についてなにかを調べていること。私が彼女に関して知っていることはそれぐらいだ。

 

 正直周りを嗅ぎ回られるのは、あまりいい気分はしない。それでも、害があるわけではないので見て見ぬ振りをしてきた。

 

  

 

 そんな彼女がなぜここにいたのか、それは夜の見回りを行っており、そこで誰かが嘔吐する声が聞こえていたから心配で待っていたらしい。そして、それが私であることにとても驚いていた。

 しかも、今の私を見て心配だから、部屋まで着いていくと。

 

 正直に言えば断りたかったが、今の私にはその元気もない。あぁ、と一言返すとそのまま部屋に向かって進んでいく。

 

 彼女の心配は正しかったことにすぐ気づかされた。ロドスは病人にも優しいバリアフリー設計だが、自分の足に引っ掛かるマヌケはどうしようもない。勢いよく地面に口づけをくわえようとしていた私を受け止めてくれた。

 

 医務室に行ったほうがいいと言われたが、明日の朝には行くと言い、壁に体を添わせて部屋に向かう。

 彼女はそんな私を見て、大きくため息をつくと肩を貸してくれた。

 

 閑散としている廊下をゆっくりと進んでいく。とても静かで、今も未だ鳴り止まない心臓の音まで聞こえてきそうだ。

 

 右側から声を掛けられる。

 

「あの話は本当なの?」

 

 彼女も当事者だったのだ、気にならないわけがない。

 

「何一つ、間違っていない。私が鉱山を管理していた貴族だ。」

 

 息を飲む音が聞こえる。

 

「それとも、なにか、チェルノボーグ事変の原因だとでもいえばいいか?」

 

 そう全て私が悪いんだ、私のせいなんだ。私はそもそも起こらないように、止めることが出来たのかもしれないのに。止められなかった私が悪いのだから。

 

 彼女は一つ息を吸い込み覚悟をきめたらしい。

 

「……ピーターハイム高校に行った警察官のことをしらない?」

 

 そう聞く声は震えていた。

 ……あぁ、そういうことか。改めてその横顔を見る。なるほど、見覚えがあるわけだ。あの警察の子供なのだろう。忘れるわけがない、真っ赤な瞳。

 

「お前が死ねばよかったのに。」

「そうだな。」

 

 最後まで学生を守ろうとした、立派な人だった。私なんかよりずっとずっと素晴らしい人だった。

 

 彼女は不思議そうに首をこくんと傾げている。

 

「?…知らないならいい。」

 

 いつもの私ならば決してそんなことは考えない。

 

 私自身が思うより相当疲れているらしい。

 

 素晴らしい人の娘である彼女になら、私は殺されてもいいのではと。そんな賢しい考えが頭をよぎる。常ならば容易く振り払えるはずなのに、なぜか、それはまるでヘドロのように心にこびりつく。

 

 彼女は親を殺されたんだ、私を殺したって許されるだろう。

 だからこそ、口から思ってもいない言葉がすらすらと出てきた。

 

「学生になぶり殺しにされた情けない警官のことだろう」

 

 嘲笑うように答える。もうなにもかもがどうでもいい…。

 

 廊下中に重い音が響く。視界がぐるりと回る。殴り飛ばされたらしい。私に抵抗するつもりもなかった。

 

「…ィッ……イヒッ!……イヒヒッヒ!!」

 

 私の引き笑いが彼女をさらに苛立たせる。腰につけている得物を抜き、構える。

 そうだ、貴女にはその資格があるんだ。

 さぁ、この醜い化け物を滅ぼしてくれ。

 

 彼女の指に力が掛かっていく。

 

 これで、やっと私はもう誰も殺さずにすむ。

 

 

 

 

「そこまでだ。」

 

 それが私に放たれることはなかった。長身のリーベリ族の男がその得物を握っている。

 私は彼のことをよく知っている。昔、誰かが私に語っていた。彼より素晴らしい武人はこの世にはいないと。ヘラグ、アザゼルの管理人。

 

「……ここではなにも起きなかった、そうだな。パトロールに戻るといい。」

 

 彼を相手にして勝てるものがどれほどいるだろうか。彼女の憎悪では絶対的な力の差を覆すことはできない。なにより、彼女にもまだ理性が残っていたのだろう。こちらを睨み付けながら廊下の闇の中に消えていく。

 

 壁によりかかるようにして上体を起こす。首を起こせばそこには向き合う形で威風堂々と彼が立っていた。そう感じているのは、見上げているから、きっとそれだけではないのだろう。

 

「…どうして助けた。」

 

 八つ当たりだとは分かっている、それでも吐き捨てるようにセリフを投げつける。

 

「…………」

 

 ゆっくりと目線を上げていく、その顔には私に対する憎しみが浮かんでいると思った。なにせ、感染者を使い潰してきた悪魔なのだから。彼がもっとも大切にするアザゼル、それを傷つけた私を。

 

 あぁ、なのに、なんで私を映すその目に写っているのは憐れみなのだろう。

 

「本当に似ているな。」

 

 彼の目は私を見ていなかった。彼の目の前には今も過去が広がっているのだろう。

 

「君の父親は理性しかない男だった。人の命は平等だ、と常に口ずさんでいた。だからこそ、世界に絶望し、殺戮の咎を背負う道を選んだ。」

 

 彼の目が私を捉える。地に座り込む私を。

 

「彼と同じ道を選ぶのは辞めておけ、君には無理だ。まとも過ぎる。」

 

 なにを今さら。そんなことは

 

「そんなことは、とうの昔に知っています。だが、引くことなど赦さない。」

 

 目線を下に下げれば血の池から私を睨む人達がいる。私のせいで死んだ人達が。

 

「築き上げてきた屍の山を無駄にしない為に。」

 

 過去に囚われる生き方を愚かと言われようとも、

そう生きると決めたのだから。そう生きないといけない。

 

「……そうか。」

 

 ただそう一言、言い残すと彼も去っていった。

 

「…っ!!」

 

 痛む体を無理矢理立たせる。

 

 そして、私も去らなければならない。壁に寄りかかりながらずりずりと前へ進む。私はまだ生きているのだから。彼らを殺したのだ、私に安息など訪れてはいけない。私は生き続けないといけない。

 先が見えない闇の中へ、恐ろしくとも辛くとも歩みを止めてはならないのだから。




アブサント

物資の確保に向かった警察の人達が帰ってこず、一人であの地獄を生き抜いた。
彼やウルサス学生自治団に対して、あのとき何があったのかを知るために情報収集を行っていた。
彼のことを嫌っているものの、仕事なので助けた。

彼はいつか語るだろう、学内で会った殺されそうになっても学生を守ろうとした、素晴らしい警察官のことを。
彼は決して語らないだろう、学外で会った警察官に対して抱いた希望を、向けられた銃口に宿した絶望を。

「彼を害した奴等は皆、私が殺した。彼は奴等に傷一つつけていなかった。それだけは確かだよ。」
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