ウッハwww貴族に生まれたwwwマジ勝ち組www   作:頭に油をさしたいマン

2 / 12
為すべきことを為すために

 %月&日

 

 結局、昨日は情報を纏めるだけの時間を確保できなかったので、今纏めておく。

 

 現在、学内にある大きなグループ二つ。

 一つは食料庫を確保している、貴族グループ。彼らの大将は生徒会長。

 私の知る限り、彼女は良くも悪くも貴族だった。ほかの貴族と同じように、自分は特別な存在だと傲っていたが、その傲りに相応しいだけの能力をもつ人だった。

 二つ目は、ウルサス学生自治団という平民のグループ。トップはあの冬将軍。

 冬将軍に直接会ったことはないが、その噂だけは聞いたことがある。弱者の守護神、凌辱者の天敵などと呼ばれていること。そして、非常に腕が立つらしいこと。彼女の噂は私の学校にも聞こえてくるほどだった。

 

 とにかく、私のやるべきことは口減らしと警告だろう。

 

 口減らしは言わずもがな、ここでやられるような奴は外に出ても、どうせすぐに死ぬ。食料が限られる環境下、追加で食料庫がまた一つ燃えたのだから、さらに数十人は殺すべきだな。

 

 優先して殺すべきは弱小グループか。彼らは心も体も決して強くない。自棄を起こして、人を自殺に巻き込みかねん。あと、組織どうしで手を繋ごうとしている奴らだな。一致団結されると人を殺しづらくなる。それに、敵と仲良くなって自身の所属する組織を裏切られても困る。

 

 裏切りは劇物だ、所属する者の心に不信の種を植え付ける。極限の環境下ではよく育つ、それが芽吹き根をはると、コンクリートに草花が咲くかのように、どれほど強固な組織でもヒビ割れてしまう。

 

 警告だが、生徒会長ならば分かっているだろうが、あの頃から、皆が固まって動いていた。その警備をついて食料庫を燃やす?決して出来ないとは言わないが、学生には難しいし、なによりもそれをする理由がない。レユニオンがやったという方がずっと納得できる。それに、もし、それが出来るものが学生にいるのなら、すでに私は殺されているだろう。そしてもし、レユニオンがやったのなら、念のために、同じようなことに備えて食料を分けて保存するべきだということを言いに行くべきだろう。

 正面から行くわけにはいくまい、夜に忍び込むか。

 

 最近は、学園内から誰かを殴るような音や悲鳴、喘ぎ声そういったものが聞こえない。まるでこの闇がどこまでも続いているように、とても静かだ。

 

  ・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 抜き足差し足でこそこそと隠れながら進む。

火災の件もあり、警備の大半は食料庫の方にいるらしい。彼らの寝床はいつもと比べて人気がなかった。正直に言えば今、ここで殺してしまったほうが早いのだが、まだ、彼らには生きていてもらわなければ。

 バレないように暗闇に身を潜ませる。

 生徒会長には一人部屋を割り当てられているらしい、侵入するのには都合がよかった。

 

 などと考えていると、もうここが彼女の部屋だ。もともとは、資料室だったのだろうか、部屋の前に出されている本棚をみて、ここの在りし日に思いを浮かべる。

 

 ドアノブを回し、ゆっくりと戸を開く。

 テロの起こる前に、ここの扉は新しく取り替えられていたのだろうか?軋む音もなく静かに開く。

 

「遅かったわね?」

 

 いったいどこから持ってきたのだろうか?安楽椅子に腰かける彼女がそこにいた。優雅に腰かける姿こそ、彼女の磨きあげた最強の武器なのだろう。

 彼女が右手に持つティーカップの縁は欠けており、左手にもつソーサーの塗装は一部剥げている。

 よく見れば身だしなみもかなり気合いをいれて整えているのもわかるが、それでも汚れや、枝毛が目に入る。

 彼女はこのような場所であっても貴族であり、そうあろうとしているのだろう。

 よかった。ゼロサムゲームは不得手で、不安だった。

 だけど、彼女が貴族で、人であろうとする限り、取れない手段があり、今の彼女はそれを必要としていた。

「互いに得のある取引にしよう。」

 

 自身の口角が吊り上がっていく。彼女に出されたカップの水面に写る、その顔はまさしく獣そのものだった。

 

・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 ÷月×日

 

 話し合いは恐らくは、上手くいったはず。やはり、彼女達のグループないでも派閥争いが、起こっているらしい。誇りを捨てても、争いはやめられないらしい。ほかにもやるべきことはあるだろうに。

 リスクの分散は行いたいが、自身の制御下を離れることを恐れている彼女と、リスクの分散と殺人を望む私。彼女の敵対派閥の人間を殺すことを条件にと約束した。

 にしても、私の要求を聞いたときの彼女の顔は思い出す度に笑ってしまいそうになる。彼女の面食らった顔は初めて見た。あの様子からすると物資の要求ぐらいはしてもよかったのだろうか。

 

 その帰り道、誰もよりつかないような所で密談している男女を見つけた。生存本能が昂っているのだろうと、通りすぎようとしたが、赤いひらひらが目を引いた。

 女の肩に巻き付く赤い布、ウルサス学生自治団だ。男の方はあの制服からして貴族だろう。聞き耳を立ててみると、ウルサス学生自治団の女が貴族と手を結ぼうとしていたらしいので、両方殺した。死体はそのまま置いてきた。

 

 にしても、食料がなくなり学生自治団と貴族が殺し合いになると踏んでいたが、どうもそこまで困窮しているわけではないようだ。殺しすぎたか?

 頭が二つあり、立場も違うものが、協力しあうことは出来ない。嵐が来たとしても、その先に破滅しかなくても、私たちは争うことをやめられないのだから。

 

 *月-日

 

 食料庫がまた燃えた。

 

 溜まり場を燃やされた貴族達は散り散りに逃げ去った。とても意外なことに、生徒会長が学生自治団に入ったそうだ。どうも、弱者の味方である冬将軍が彼女を受け入れることを決めたらしい。貴族は彼女にとって天敵とも言える存在のはずでは。

 

 まぁ、いい。これで多勢は決した。学生自治団が勝ち、この学園の覇者となるだろう。

 

 この距離からだと話している詳しい内容は分からないが、彼らの喜びようから、食料を隠した場所の話をしているのだろう。

 

 だけど、あぁ、やはり私に謀略は、影から人々を支配しようとするのは向いていないな。二つの組織をぶつかり合わせて消耗させることができるかと思っていた。そうなれば、冬将軍か生徒会長どちらかが死んでしまうが、それでも数を減らし組織を生存者を一つに固められるそう思っていたんだがな。

 

 正直にいって生徒会長が自治団に入ったことはとてもありがたい。冬将軍の側にいる、あのメガネの女が参謀をやっているのだろうが、一人が欠けたら回らない組織など問題でしかない。それが増えるのだから、さらに生き残れる可能性は上がるはずだからな。

 

 

 どうも会話の様子がおかしい。ほかにも捕まえている貴族がいて、そいつの処遇を巡って対立しているのか?馬鹿か、あいつら、殺すべきだろうが。そいつを助けてどうする?交換材料にでもするのか?いいや、食料との交換でわざわざ敵を増やす?馬鹿らしい、そこまで逼迫している状況でもないだろうに。今は敵を増やす方が問題だろう。身内に加える?論外だ。あの顔を見てみろよ、俺はおまえ達ゴミどもとは違うとわめき散らしてるじゃないか。誇りだけは高い貴族が平民の冬将軍のもとにつくことを受け入れられるわけがない、生徒会長を祀りあげようとして組織を割るだけだ。

 

 やはり、あの眼鏡の女は反対に回っているらしい。そんな無用のリスクを背負い込むようなことをしたくないのだろう。生徒会長はそもそも意見を求められないようにしている。彼女も聞かれたところで困るだけだろう。冬将軍もそんなことはわかっているはずだ。さっさと殺しちまえばいい。 

 なのに何故?あいつらもお前が強く反対に回ればすぐに諦めるだろうよ。

 

  ・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 手にもったペンを日記の上におく。

 パラパラとペンにこびりついた赤黒い欠片が本のうえにこぼれる。いつのまにか、手の汚れがペンについてしまったらしい。

 見上げる空は相も変わらずなにかを堪えるかのような曇り空だ。

 

 いいや、わかっている。殺したくないんだろう?

君は私とはちがう。君も一人の方が気楽に思うたちだろう。それでも、自分を頼る相手を無下にしないだけの優しさ、責任感を持ち合わせた立派な人なんだろう。君は守るために人を殺せる人。それでも、人殺しに抵抗を覚える人。

 

 胡座をかいて座る。脚の上に日記を置いて、懐から取り出した肉を頬張る。とくに味付けはしていない、味のしない、筋張った、食べなれた肉だ。

 

 日記にぽつりぽつりと滴が落ちる。欠片を溶かして、赤黒いシミが日記に拡がる。雨が降ってきたのだろう。本格的になる前に屋内に避難しよう。

 

 食料庫を燃やす炎は変わらず、天まで燃やしそうな勢いだった。

 

・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 μ月β日

 

 貴族達もどうも切羽つまってきたらしい。捌いた肉が調理場からいくつも無くなっていた。やはり、貴族のグループのうちいくつかが自治団に下ろうとしているらしい。じわりじわりと迫ってくる飢えには耐えられないのだろう。

 

 しょうがないとはいえ、何故、私が彼らをまだ殺していなかったのか、それをわかっているのか。自治団は大きくなりすぎた、残党に過ぎない彼らではもう敵にはなり得ない。

 

 金槌を取り出す。やはりこれが一番手に馴染む。

自治団を入れても生きてるやつは多くて50、少なければ30ぐらいだろう。

 

 3日もあれば十分殺しきれる。

 

 

 α月,日

 

 肉を無駄にしないように捌く、この作業も随分と手慣れてきた。

 もうこの学校にはウルサス学生自治団以外の生徒はいない。

 

 今もなおレユニオンは外にいるのだろう。隠れて抜けるには今の彼らの人数ではまだ難しい。出来れば、冬将軍、生徒会長、参謀役の眼鏡。あの三人だけであれば抜け出して生き残ることもできるだろう。彼らの食料や水の量を正確に把握している訳ではないが、私がとっておいた分がある。それを足せば幾分かはマシだろう。

 

 ・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 作業的に肉を口に押し込む。最低でも捕虜どもは殺さなければな。もうすぐだ、もうすぐ俺の仕事が終わる。

 




 彼は優しかった。人の命は平等で尊いものだと。
 彼は強かった。己の意思を貫き通せる力をもっていた。
 彼は決して賢くはなかったが、それでも何をするべきかを自分で考え、選ぶことが出来た。
目を閉じ、耳を塞ぐことを選ばなかった。
すべてを諦観するには、あまりに力がありすぎた。
足りない頭でも何が起こるかを理解することが出来た。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。