[完結]FIA-F2 WorldChampionship story of speed Final season   作:九嶋輝

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前回ラウンドは日本人同士の死闘を演じて観客たちを大いに沸かせて幕を閉じた。そしてこのF2世界3周旅行もこれでおしまいとなる。そして俺のF2キャリアで、本当の最後のレースが今宵開幕。


最終回 Round12 夜明けBrand New Days(サクヒールGP)

前回は、星奈との死闘を繰り広げて大いに沸かせたが、遂に、最終戦サクヒールGP(高速コースである、アウターコース)を迎えた。そして俺は、皆に本当の別れを告げる時が来た。ここに来るまでの間、数多の苦楽を共にして死闘を演じた仲間ともお別れ。そして、F2世界3周旅行もこれでおしまいとなる。気がつけば、あっという間に終わってしまう俺のF2でのレース。本当に時の流れは早いものである。この3年間、本当に「波乱万丈」のシーズンだったけどすごく楽しむことが出来た。俺が乗るマシンには、最終戦限定カラーを纏った仕様になっていた。俺はこのラウンド限定でヘルメットも変えている。ヘルメットは、亡き親友とここまで歩んできたという証と今まで一緒に戦ってくれた事への敬意と感謝を込めて、この日の為だけに、3年間封印してた彼の形見であるメット「Bell・HP7ブロッサム・カローラMS1」と呼ばれるメットをレッドブルとAraiの許可を得て着ける事にした。マシンのシャークフィンには、もうお約束と化している、自分の名前が漢字で描かれている。このレースを最後に、俺はF2から「卒業」する為、マシンには「see you&good luck」と描かれたり、桜の花が描かれたり、カーナンバーは「3+1」になったりと、最終戦限定仕様とは思えない仕様に仕上がった。俺は全ての準備を整え、イヤープラグを耳に着け、耐火マスクを被り、ヘルメットを被り、メガネをかけ、HANSデバイスをヘルメットに装置して、グローブをはめて、深呼吸してゆっくり、いつも通りにマシンに乗り込んだ。最後のフリー走行開始の合図と共にコースイン。セッティングは高速戦仕様だから、あとは走り込んで、昨日との違いを体に叩き込むだけだった。俺は、今までの事を思い返しながら走っていた。3年前に初めて乗ったプレマや、今の俺を作ってくれた、古巣ARTGP。今思い返せば、本当に思い出尽くしの日々を過ごして来たなとヘルメットの中で思い出しながら走っていた。そして気がつけばトップ。これには俺も超大満足の結果だ。迎えた最後の予選。予選では、超大混戦となり本当に最後の予選を楽しんでいるようにも見えた。俺もメカニックのギャリーの合図でコースイン。そしてアタック開始。もう俺は、このラウンドで年間王者を獲得すると決めているだけに、余計気合いが入っている。そして普段から使用しているセナ足もかなり力が入った「セナ足改」へと進化した。そのセナ足改を使いこなして他を寄せつけないタイムを叩き出してトップに。しかし他のチームは流石にこれを良しとせずに皆俺のタイムを更新しようと試みたが、あと1歩が限界でそれ以上は無理だったらしく結果は、俺のポールポジション獲得。そして迎えた、最後のフィーチャーレース。誠真の両親がガレージで見守る中、俺は、マシンを思いっきりウェービングさせて、タイヤを温めてグリッドに着き、深呼吸して呼吸を整えて、臨戦態勢に入った。シグナルがブラックアウト。スタートは、かなり完璧に決まり、そのまま1コーナーも制圧した。ピット作業は、クルーが1人緊張のあまり、手が震えたが、それ以外は完璧に決まり、そのままトップでコースに復帰。そこからはもう俺の一人旅。そのまま俺の優勝となった。チームメイトも3位とダブル表彰台を獲得。そして本当の最後のレースとなったスプリントレースは、F2の歴史に新たな1ページを書き記す歴史的なレースとなった。俺は、このレースで王者獲得が決まる為、自分の全てをかけて戦う覚悟を決めていた。もうここには、何も思い残す事は無い。あとは皆に、最高の恩返しをするのみとなった。俺は、ゆっくりとマシンに乗り込み、もう、このマシンのコックピットでは聞き納めになるであろう、メカクロームV634Tに火が灯った。そしてギャリーの「GO!!」という合図でコースイン。マシンをグリッドへと運びセーフティカーラン。俺はマシンを思いっきりウェービングさせてタイヤにかなり熱を入れてもう臨戦態勢に入ったままグリッドに着いた。シグナルがブラックアウト。スタートは、もう神がかったスタートを決めて、8番手から、一気に2番手にポジションアップ。5周目にして、早くもトップになり、2位の晴南との差をぐんぐん広げていたが、晴南もその差を、かなりのペースで縮めて来た。だけど次の瞬間、焦りからか「ズルッ!!」とダウンフォースが抜けて、タイヤが滑べり、スピンしかけたが、もうミスは一切許されなかった為、意地と気合いと根性で制御して晴南をパスしてトップになった。そして遂に、俺の悲願達成の瞬間が刻一刻と近付いてきた。もう無線でも監督が涙を堪えながら「あと2周でお前が王者だ。頑張れぇ!!」と言い、俺も、もうラスト3周位から涙が溢れだして前が見えなくなっていた。それ程苦労してきたというが自分でもよく分かる。だけどラスト2周で、俺が恐れていたトラブルが遂に発生してしまった。なんとギアが6速以外全部使えなくなりかけていたのだ。だけどあと2周だから、走る以外、手段はなかった。迎えたファイナルラップ。俺はもう、色んな感情がぐちゃぐちゃに混ざりながらマシンを操っていた。実況も、最終コーナーを曲がった時辺りから、「亡き親友、三鷹誠真と二人三脚で世界王者までの道のりを歩んできた今シーズンのF2!さぁ!来たァ!来たァ!ホームストレートに戻って来たァ!ずっとこの瞬間を皆待ち望んでいたァ!!九嶋 輝!日本人ドライバーとして、アジア人ドライバーとして、FIA-F2世界選手権、初制覇ァァァ!!! 亡き親友、三鷹誠真に捧げる!念願のFIA-F2世界選手権、年間王者獲得!!!おめでとう!!!」と、かなり盛り上がっていた。そして己の限界を超えて走ってくれたマシンと共に遂に、チェッカーフラッグ。俺は、誠真が一昨年の開幕戦、バーレーンのスプリントレースで優勝した時と同じポーズをしてゴール。そして、俺が王者獲得というのを知ったのは監督の無線だった。「おめでとうヒカル!!お前が今シーズンのFIA-F2世界選手権の世界王者だ!!お前は、遂に夢を叶えたんだ!!世界の頂点に立つというデカい夢を!!」という無線だった。この時、極限状態になっていた俺は、思わず「本当か?嘘とかじゃないよね?」と聞き返してしまったが、監督が「本当だ!!お前が今シーズンのFIA-F2世界選手権の世界王者だ!!!おめでとう!!!」と言って、ようやく理解した俺は、何かがプツンと切れて涙を流しながら「うぉおおおおぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!!!よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!やったぁぁぁぁぁぁ!!!皆!ありがとう!!おいみてるか?!誠真?!お前の分まで皆走ったぞ!!今日は皆が世界王者だぜ!!お前のおかげだよ!!ありがとう!!!」とただ泣きながら、マシンから空に手の平をかざしながら握って作った拳を突き上げて、喜びを爆発させて叫ぶ事しか出来なかった。そして俺は、最終ラップの最終コーナー、最後の1秒まで一緒に戦ってくれて力尽きたマシンをピットレーンに止めて、マーシャルに引っ張ってもらい、天高く、自分の名前と、親友の名前と、お互いのカーナンバーが刻まれた、日の丸をなびかせながら、パルクフェルメに、最終コーナーまで一緒に戦いボロボロになったマシンと共に帰還して、メカさん達が居る所へダイブして、思いっきり喜びを大爆発させた。2位には最後の最後まで、俺を追いかけ回した晴南。3位には、トライデントの非力なマシンで初めて表彰台を獲得した、「苦労人」タルソ・モレノが入っており、初めての表彰台なのか、国歌が流れてる際に、帽子を取る事を知らなかった為、俺が教えてやると、彼は照れ隠しにとった拳を舐めるというのが、たちまち大爆笑の渦となった。俺はガレージに戻ると、改めて皆にお礼を言った。「ここまで来るのに、俺1人では到底無理だったけど、皆と一緒だったからこそ、ここまで来れた。本当に皆ありがとう。ダブルタイトルも取れたし、思い残す事はなんも無い。俺がF1に行っても、ちゃんと頑張れよ。アルファタウリのホスピタリティから観ててやるからさ。心配すんなよ。そして今まで本当にありがとうございました!!」こう言って皆は、大きい拍手で俺の巣立ちを送ってくれる中、ガレージを後にした。そして住処だったイギリスにも別れを告げ、またイタリアだけど、今度はファエンツァにお引越しして、今シーズンのFIA-F2世界王者を手土産に、2021年FIAフォーミュラ1世界選手権へと臨むのだった。そして、俺が最後の最後まで戦い力尽きたマシンは、ゴールした直後に「ガラガラガラガラ!!」と完全にギアボックスから力尽きた音がして、マシンがその役目を全うしたかのような感じだったけど、俺はもうそんな事どうでもよかった。マーシャルから、俺と親友の名前とカーナンバーがプリントされた日の丸が手渡しされて、「王者獲得おめでとう!!俺も見ててすごい瞬間に立ち会えたのを誇りに思うよ!!」と声をかけられて、俺も思わず、「ありがとう!!俺も君達が喜ぶ顔が見れて、すごい幸せだよ!!いつも、安全なレース進行をしてくれてありがとう!」と答えて、マーシャルカーに引っ張って貰って、クラッチを切り、日の丸を天高くなびかせながら、ウィニングランをしてパルクフェルメまで帰ってきたなんて言うくらい戦ったのだろう。本当に3年間、数多の苦楽を共にした「バディ」でもあるこのマシンには、もう本当に、感謝の気持ちでいっぱいである。俺のマシンは、ギアボックスだけ交換して、あとはそのままの状態でファクトリーで展示される事になったわけだけど、俺自身ギアボックスを壊したのは、今回のレース込みでたった2回と、あれだけ荒くて激しい走りしてるにもかかわらず、なかなか壊れないという耐久性もここで実証された。だけど、俺がゴールしてパルクフェルメへと戻り、マシンから降りた時に流した、大粒の涙は、色々な感情が混ざった涙だった。そして天国から最終ラップの最終コーナーまで一緒に戦った、親友の誠真が叶えれなかった夢を叶えた証の涙でもあった。そして、本来動員出来る数より50%を収容できるという条件のもと、観戦しに来た観客からは、惜しみないスタンディングオベーションが贈られた。表彰台に登ると俺は誠真のスナップショットと俺が被った彼の形見でもある「ブロッサム・カローラ」を思いっきり天に掲げ、彼が叶えれなかった夢を俺が叶えた事を天国に居る彼に報告した。そしてシャンパンファイトでは二位に入った、いや、最後の最後まで俺を追いかけまわした晴南が勝てなかった悔しさのあまり、俺に集中砲火をした挙句、背中にシャンパンを流し込むという後輩とは思えぬ行動をとって、周囲を笑いの渦に包んだ。そこからのインタビューでは、実は俺、ちょっとした悪戯を計画していた。それは宮藤選手のインタビュー中に合いの手を入れたり、ジャンプしてピースかましたりして、カメラに写ろうといういたずらだ。そして、そのいたずらを決行する時が来た。宮藤選手が「私がここまで来るのに、すごくすごく時間がかかったなと感じてます!今までは、本当に、自分は良くても、マシンとかに恵まれてなくて…すいません…優勝は愚か…ポディウムなんて夢の…夢のまた夢でした。ですが今シーズンここまで来れたのはハヤテの皆のおかげです。」と泣きながら答えた時に、俺が「Yeah!! I know this feeling!!hahaha!!」と合いの手を入れたり、ジャンプしてピースを入れると、思わずインタビュアーも大爆笑。だけど俺にも仕返しが...俺も彼女同様に、インタビューを受けてると彼女が涙を流して、目が真っ赤に腫れた状態で、よく小学生がやる指で角を生やすといういたずらと「さっきのお返しよ!!喰らえ~!!」という声と同時に、俺に思いっきり抱き着いてきてインタビュアーも「wow!!こりゃたまげた!!」と面白い反応をしてくれた。そして彼女は「王者獲得おめでとう!!ホントは私も表彰台登りたかったけど、最後まで輝の後ろ走れてよかったよ。」というと俺だって「星奈だって皆イエローフラッグの時にピット入ってるのに唯一ステイアウトするというデカいギャンブルをして一時的にトップ走ってたじゃん。俺それ見てて、うわ、しくった〜ステイアウトしとけば良かったって思った位だよ。」というと彼女は少し顔を赤くして「そ、そうだけど…私はアレが上手く行くなんて思って無かったし…べ、別に今日の主役はアタシではなく輝なんだから、少しでも、場をも…盛り上げようとしただけよ!!と…とにかく世界王者獲得お…おめでとう!!」と完全に顔から湯気出てる状態で話していた。こういったことが出きるのも最終戦ならではだろう。そして俺は彼女に「またヤングドライバーテストで会おう。」と声をかけ彼女も「またアブダビで会いましょ!今度こそアンタを打ち負かてやるんだから!!」と、完全に俺に対する対抗心を燃やしてる状態だった。俺も「またあの時みたいに楽しくやろうぜ!」と返事を返した。そしてガレージに戻ると記念写真を撮り、その後に、アイロットもやってきて、俺を祝ってくれた。そして俺は、アイロットに「そういやぁお前、来季はフェラーリのリザーブになるみたいだな。」というとチームメイトは「うん。」と返事をすると俺に「リザーブっていったいどんな仕事なんだ?」聞いてきた。俺は「簡単に言うと野球で言うベンチ。だけどお前あれだろ新生DTMにフェラーリのハコ車でのワークスチームAFコルセからエントリーするみたいじゃん。アルボンとローソンと一緒に。」と返すとチームメイトは「そうなんだよ。でも、人生初のGT3カーに乗れるから、凄くワクワクしてる。」と返してくれた。そしてチームメイトから俺に「F1に行っても頑張れよ!」と励ましの言葉をかけてくれるワンシーンも。そして、まさに異例ずくめでもあり、激動のシーズンだった、今シーズンのFIAF2世界選手権は、無事に幕を閉じた。そして俺のマシンはギアボックスなどを修復されてポストシーズンテストへと持ち込まれる予定だったが、ファクトリーでそのまま展示するとの事になった。この為ヴィルトゥオーシは、新たにマシンを調達してカラーリングとセッティングは最終戦仕様のままポストシーズンテストへと持ち込まれ、ドライバーには俺と一緒のホンダ育成ドライバーでもあり、俺の後輩でもあり、2020年のFIAF3ランキング2位でもあり、俺の教え子でもある、西木野絵梨子選手がテストドライブをする事になった。そして2号車は、晴南の教え子でもあり、一昨年のFIAF3ランキング3位の絢瀬愛乃(よしの)選手のホンダ育成兼レッドブルジュニアドライバーでもある2名がテストドライブする事となった。ちなみに、俺のチームの場合、情報漏洩防止の為、壁を作ってあるが、もう1つ理由があって、それは、自分でセッティングを探る力を身につけたりする為という理由である。でも実際に壁があった方が、周りを気にすることないからすごく落ち着くんだよね。それと岩佐君に限っては、なんと俺に次ぐレッドブルジュニアドライバーの為、メットやスーツがレッドブルのやつになってる。そしてその2人も、このF2という世界を戦い王者を目ざして駆け抜けるのであった。俺は、ベルギーにあるスパ・フランコルシャンへと行き、あいつが眠りしラディオンへと向かい花を手向け「お前と交した約束果たして来たぜ。ありがとよ。今度はF1で大暴れしてくるからさ、また力をくれよ。」と言いラディオンを後にした。そしてこの物語は新たな世代へと受け継がれ、新たな歴史を紡いでいくのである。2020年12月7日午後21時32分25秒、2年1ヶ月2日と8時間35分25秒ぶりに「2018年11月5日午後13時37分00秒」で止まっていた時計の針が再び動き始めたのだった。




遂に念願の王者獲得をして晴れてF2を卒業出来た訳ですが、物語はこの先も続いて行きます。そしてこれの続編も執筆します。

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