台本置き場。   作:就鳥 ことり

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 アオイ

「高いところがずっと怖かった。幼い頃連れていかれた遊園地の観覧車も、修学旅行で友達と登ったスカイツリーも。家族も友達も皆景色に心を踊らせていたけれど、私は足がすくんでダメだった」

 

 アオイ

「身体が死ぬことに脅えていた。脳が、危険だと叫んでいた」

 

 アオイ

「……」息を吐く

 

 アオイ

「でも、今は。こんなにも足取りが軽い」

 

 アオイ

「もう明日が来ないと思うと、もうドアを叩かれないと思うと、もう誰の声も聞かなくて良いと思うと。あぁ、なんて。なんて、清々しいんだろう。足は震えて居なかった。心臓も穏やかだった。ぐちゃぐちゃだった脳はスッキリ晴れやかで。顔は自然と微笑んでいた。これはもう、生きとし生きる私の全細胞の総意。全会一致での辞表の提出。誰1人死を恐れて居なかった」

 

 アオイ

「……綺麗。」

 

 アオイ

「空を綺麗だと思ったのはいつぶりだろう。そんなこと感じる余裕はなかった。ずっと怖くて、苦しくて、辛くて。頭なんか上げれらなかった。でももう、ぜんぶ放り投げると決めたから。重く苦しい荷物を下ろしたから、久しぶりに空を見上げることができた」

 

 アオイ

「……」(空を見ている)

 

 アオイ

「今日、晴れて良かった」(飛び降りる)

 

 アオイ

「夜空へ踏み出すのは簡単だった。先生の都合で急遽授業が潰れた時と同じくらいの解放感。走馬灯なんか、見なくて良かった。推定6秒の夜間飛行。この星空だけ見て…………。(間を開けて)なんか長いな。全然衝撃が来ないけど。……ん? え、止まってる?」

 

 ミラ

「貴方、命を棄てたわね」

 

 アオイ

「え?  アッ。えっ??」

 

 ミラ

「答えなさい。自分の意思で飛び降りたわね」

 

 アオイ

「きゃーーーっ!  ひ、ひひとがっ! 浮いてぇっ」

 

 ミラ

「ピーピー鳴いてないで、素直にお言いよ。ハイかイイエで答えなさい、サトウ アオイ。自分の意思で死んだわね?」

 

 アオイ

「は、ハイ」

 

 ミラ

「よろしい、しかと聞いたわ。私はミラ・メイディアン。貴方の廃棄した命、私が貰い受けます」

 

 

 **

 タイトルコール

 

 アオイ

「自殺大国のリサイクルビジネス」

 

 **

 

 

 アオイ

「あ。あの。ここは地獄ですか」

 

 ミラ

「地獄? なぁにそれ。そんな端で縮こまってないでこっちへいらっしゃいな」

 

 アオイ

「えっと、自殺は親不孝だから、地獄行き。なのかなって」

 

 ミラ

「あぁ、そういう。変わった宗教ね。こんな極上の美女がいて罰を与える場所なわけがないでしょう」

 

 アオイ

「……衆合地獄には美女がいると漫画で読んだので」

 

 ミラ

「変わった宗教ね……。ここは貴方のいた世界の裏側。不安に思うことはなくてよ、誰も貴方を傷付ける者はいないのだから。そうね。これまで生きたちょっとしたご褒美タイムだと思って。心配しなくてもすぐ死ねるわよ。あと1年、貴方はお腹いっぱいご飯を食べて、好きなことをして過ごして、そして眠るように死ぬわ」

 

 アオイ

「ご褒美」

 

 ミラ

「そうよ。さぞ生きづらい国に生まれたのでしょうね」

 

 アオイ

「いえ……世界で上から数えたほうが早いほど発展した恵まれた国ですよ」

 

 ミラ

「馬鹿ね。生物は本能的に死を避けるように出来ているのよ。自殺衝動は脳が起こしている生物としてのエラー反応。どれだけのストレスに晒されたらそうなるのか想像付かないわ。……私、貴方の国を調べたのだけど10代から60代、生きている大半の期間、死因のトップ3に自殺が君臨してるイカれた国だと知っていて?」

 

 アオイ

「い。いえ。……自殺者数が世界一だってのはネットで見たことはありましたけど」

 

 ミラ

「それを知っていて、よく、恵まれた国だなんて言えたわね……。社会的病理のある国よ、貴方の妹が死ぬ前に名医が現れてメスを入れてくれるといいわね」

 

 アオイ

「アカネ……」(妹の名前)

 

 ミラ

「そんな中で生きて、逃げ出すことを決めた貴方を私が少しだけ労わるわ」

 

 アオイ

「……そんなことして、お姉さんになんの得があるんですか」

 

 ミラ

「ふふ。ナイショ。まずは休息ね。貴方の部屋は用意してあるわ。子供は難しいこと考えないで眠りなさい」

 

 アオイ

「えっ、でも、そんな急に言われても」

 

 ミラ

「……まだ添い寝が必要なのかしら」

 

 アオイ

「い、イエ、眠れます」

 

 ミラ

「いい子ね。あとでホットチョコレート持っていくわ」

 

 

 **

 

 

 ミラ

「おはよう。よく眠れたかしら」

 

 アオイ

「お、おはようございます。あの、びっくりするくらい、とてもよく眠れました。私いつも寝付けなくて朝方になってやっと眠れていたのに」

 

 ミラ

「そう。安心できるベッドだったみたいで良かったわ」

 

 アオイ

「安心……。(色々思い出してる)そうかもしれません。何にも怯えずに眠ったのは、そういえば久しぶりの事でした」

 

 ミラ

「そう。もう大丈夫よ。怖いことは何もないわ。私が守ってあげるから。もう貴方は死を選んでしまったけれど、ほんの少しの間ここで寛いで休んでらっしゃい。苦しいで終わっては不憫だもの」

 

 アオイ

「……。あの、お姉さん」

 

 ミラ

「なにかしら?」

 

 アオイ

「お名前はなんていうんですか。お姉さんのことはなんて呼べばいいですか」

 

 ミラ

「あら。昨日も教えてあげたのに。私はの名はミラ・メイディアンよ。お姉様でも、メイディアン様でも、ご主人様でも好きに敬いなさい」

 

 アオイ

「おぉ……じゃあ、えっと、メーディアさま。それで、その」

 

 ミラ

「少し間違ってるけれど、可愛いからそれで構わないわ。なにかしら」

 

 アオイ

「肩の辺りが少し痒くて、何かなさいましたか」

 

 ミラ

「血液検査よ。栄養状態を調べたの。思った通り鉄分もアルブミン値も低かったわ。ご飯を用意したからお食べなさい。ダイニングで待ってるわ。お着替えしていらっしゃい」

 

 アオイ

「……」

 

 ミラ

「どうしたの。……。もしかして、着替えられない?」

 

 アオイ

「……ごめんなさい」

 

 ミラ

「嫌だったら答えなくていいわ。これまで、入浴や食事もできない日が多かった?」

 

 アオイ

「……ハイ」

 

 ミラ

「そう。いいのよ。人間の病理について少しだけ勉強したわ。そうよね、自殺しようとしていたのだもの。健康なわけないのに、無理をさせたわね」

 

 アオイ

「……!」

 

 ミラ

「何を驚いてるのよ」

 

 アオイ

「いえ、私が根性無しで怠惰なだけなのに」

 

 ミラ

「怠惰というのは貴方のことでは無いわよ。怠惰な生き物はそんな風に自己嫌悪しないものよ。数年前の貴方は勤勉そのものだったじゃないの。そもそも根性ってどこにあるか知っていて?」

 

 アオイ

「えっと、心?」

 

 ミラ

「心は脳の働きよ。神経伝達物質の放出と電気信号の繰り返しで心は移ろうの。人間は確か意図的にホルモンやら、神経伝達物質を調節できないはずでしょう。貴方ストレスで、本来無意識で行われる調節ができなくなっているだけよ。貴方意図的に鼓動を止めることができて?」

 

 アオイ

「できません……」

 

 ミラ

「出来なくて当前のことを責めて何になるというの。1度丸めた紙を開いても、元には戻らないのと同じように。健やかだった頃の状態へ戻るのは難しいでしょうけど、まずは脳が正常に機能するよう休みなさい。できないことはできないと私に甘えなさい。私が許すわ」

 

 アオイ

「……はい。ありがとうございます、メーディアさま」

 

 ミラ

「いい子ね。私の猫になったとでも思いなさい。それで、朝ごはんは食べれる?」

 

 アオイ

「えっと……」

 

 ミラ

「寝巻きで構わないわよ。外出はさせられないけれど、今日は来客もないし、庭にくらいならそのまま出ても構わないわ」

 

 アオイ

「あまり多くは食べれませんが、食べたいです」

 

 ミラ

「そう、言えて偉いわね。着いていらっしゃい。……。ねぇ。手ずから食べさせたほうが良い?」

 

 アオイ

「エッ、イエ。それくらいは、で、できます。ダイジョブです」

 

 ミラ

「あらそう?」

 

 

 **

 

 

 アオイ

「あ。あのメーディアさま、お風呂は流石に」

 

 ミラ

「あら、貴方は何もしなくていいのよ。私が世話を焼きたいのだから、大人しくなさい」

 

 アオイ

「すみませんっあの、ちゃんと入りますから」

 

 ミラ

「無理はしてはいけないと言ったでしょう。でも、衛生管理はきちんとしないと。もうここ数日入ってないのだから、ね?」

 

 アオイ (ギャグノリで)

「話し合いましょうメーディア様ァ! わかりました! 入りますからぁ! 後生ですからぁ、パンツ取らないでっ」

 

 ミラ

「もう。いい子になさい。綺麗にしましょうね」

 

 アオイ

「アッ。み、見られた……まだ恋人も出来たことないのに。無理ぃ、お嫁(婿)に行けなくなっちゃうぅ」

 

 ミラ

「もう間もなく死ぬのに何の心配をしてるのよ……」

 

 アオイ

「人の心ないんかァっ! メーディア様の人でなしぃ」

 

 ミラ

「あいにく私は人でないわよ。そも、今更何も隠すものなんて無いでしょう」

 

 アオイ

「ありますけどぉ!? 命は捨てても、恥は捨ててないですよ。私だって、? ……は? な、無い。エッ、め、メーディアさま、あの、その、生物として女(男)にあるべきものが綺麗さっぱりツルンと無くなってるんですが……」

 

 ミラ

「? 生殖器なら、こちらに連れてくるに当たって全て取ったわよ」

 

 アオイ

「取っ!? いとも容易く行われるえげつない行為ッ……!!」

 

 ミラ

「だって言ってしまえば貴方、こちらの世界にとっては外来生物だもの。万が一にも繁殖しないよう、規制が厳しいのよ」

 

 アオイ

「人権ンッ!」

 

 ミラ

「あら、命を捨てるってそういうことよ。まぁどうせ使う予定など無かったのだから構わないでしょう?」

 

 アオイ

「う"っ! それはそうですけど……うぅ。何とも言えぬ果てしない喪失感が……どうか、しばらく放っておいてください。おぉん、まな板がほんとに板になっちゃったよぉ……(男性版:俺の息子ぉ……)」

 

 ミラ

「あら……人間は難しいわね」

 

 

 **

 

 

 ミラ

「アオイ、入るわよ」

 

 アオイ

「メーディアさま。どうぞ、お入りください」

 

 ミラ

「良い子で待っていたかしら」

 

 アオイ

「はい。おかえりなさい」

 

 ミラ

「ふふ、ただいま。今日は貴方に贈り物があるのよ」

 

 アオイ

「今日も、の間違いでは……? 一昨日新しい本をいただいたばかりですけど」

 

 ミラ

「一昨日は3日連続朝起きてくることが出来たご褒美。今日は、はじめて3食残さず食べてくれたお祝いよ。画材を買ってきたの、絵を描くのが好きなのでしょう?」

 

 アオイ

「好きですけど。……そんなことでいちいちお祝いしてたら、メーディアさまが破産しちゃいますよ」

 

 ミラ

「私に向かってそんな心配は不敬よ。おやめになって。それに、私から与えられることに慣れて貰いたいもの。……アオイは今、一方的に受け取るばかりで怖いと思っているわね」

 

 アオイ

「はい……私何も返せないので、理由の分からない善意は怖いです」

 

 ミラ

「貴方は今私の猫のようなものなのだから、存分に伸びて、私に世話を焼かれていればいいのよ。あなたの世界じゃ猫を買っている人間は猫の従僕になるのでしょう? 同じようなものだと思って」

 

 アオイ

「猫みたいに可愛かないですよ。人間の中でも美人の部類ではないですし……無理があります」

 

 ミラ

「私は人間ではないのだから、人間の顔の善し悪しなんか分かるわけないでしょう。貴方他の動物の顔の善し悪しを気にしたことがあって?」

 

 アオイ

「……確かに。猫は猫であるだけで可愛いですもんね……。でも、メーディア様は人間では無いと言いますけど、人と似ている姿をしているじゃないですか。納得しかねます」

 

 ミラ

「間抜けね。私と人間の姿が似ているなら、猿と人間だって似ているわよ」

 

 アオイ

「えぇ……」

 

 **

 

 ミラ

「ねぇ、アオイ。いいお天気だから庭でお茶がしたいの。着いてきてくれるでしょう?」

 

 アオイ

「わ、分かりました。えっと……(ジッと服装を見てる)」

 

 ミラ

「なぁに?」

 

 アオイ

「あ。すみません……いつものドレスと雰囲気が違うので。……。もしかして、何方かの命日ですか?」

 

 ミラ

「え……? あ、ふふ。喪服に見えたのね。いつもと比べて大人しいデザインだし、帽子もベールも手袋も黒いもの。ふふ」

 

 アオイ

「勘違い、でしたか。すみません。失礼な事言ってしまいました」

 

 ミラ

「いいのよ、もう少し明るい色のドレスに着替えて来るわ」

 

 アオイ

「や、悪いですよ。ほんとすみません。そのままで大丈夫です」

 

 ミラ

「場の雰囲気と服装ってとっても大切なのよ。すぐ戻るわ」

 

 アオイ

「っでも……すみません余計な事を言ってしまって」

 

 ミラ

「ねぇ、胸元が空いてるデザインの方が好き? それとも脚?」

 

 アオイ

「!? ブッ……な、なな何言ってっ、くっ、そうやって餓鬼を揶揄って楽しいですか」

 

 ミラ

「ふふ。難しい顔してたから。気が紛れるかと思って。気にしなくていいのに。気になる事があったら、なんでも聞いていいのよ。私は貴方が関心を向けてくれて嬉しいわ」

 

 アオイ

「あ……。すみません。気を使わせてしまいましたね。私、どうしても失敗したなと思ったら中々拭えなくて……。その、態度に出てしまってすみません」

 

 ミラ

「そういうことは口に出さなくていいのよ、まだまだ子供ね。きっと貴方は他人(ひと)の心が気になる性分なのね。貴方の優しさで、怯えの表れ方。人の中で傷付いてきたのがわかるわ」

 

 アオイ

「……そうですね。沢山失敗して、笑われて、後ろ指を刺されて来ました。昔はもっと馬鹿で居られたんですけどね。大人になったといいますか。気が付いてしまったら、思ったより痛くて、上手く笑って流せなくなってしまいました」

 

 ミラ

「そんなことできなくていいのよ。……いつかでいいの。知って欲しいわ。貴方の言葉や態度で私は見限ったり、嫌ったりなんかしない。私にとっては猫が引っかくような可愛いものよ」

 

 アオイ

「メーディア様」

 

 ミラ

「急かしてないわ。いつか。死ぬ時には安心して私の傍で寛げるようになってくれたらいいと思って、私は気長に待っているわ」

 

 アオイ

「……ありがとうございます」

 

 ミラ

「少し顔が明るくなったわね。良かった。着替えてくるからいい子で待っていてね」

 

 アオイ

「はい。あの。やましい意味じゃなくて、メーディア様の姿として見慣れていたから、気になっただけですから。勘違い、しないでください。私そんなはしたなくない(・・・・・・・)ですから」

 

 ミラ

「そう。お日様の明るさは好きなのだけれど、私ね、肌が弱いの。だから肌を日に晒せなくて、いつもの趣味とは違うデザインじゃないといけないのよ。見慣れないだろうけれど、堪忍して頂戴ね」

 

 アオイ

「そうなんですね。えっと私日傘持ってきます。玄関のクローゼットの中ですよね」

 

 ミラ

「ありがとう、優しいわね」

 

 

 **

 

 

 アオイ(よろこんでる)

「メーディア様、なんですかこのおびただしい量の肉は……!」

 

 ミラ

「あら、お肉好き?」

 

 アオイ

「すきです」

 

 ミラ

「そう。良かった。毎日3食少しづつ食べれるようになってきたじゃない。だから、そろそろ量を上げてもいい頃合いかしらと思って」

 

 アオイ

「いただきます……! ……?  うっ、レバーだ……」

 

 ミラ

「あら、うそ。嫌い?」

 

 アオイ

「苦くて好きじゃないです。多少は頑張りますが、この量は辛いです……」

 

 ミラ

「……おかしいわね、前の子はよく食べたのに。わかったわ。無理して食べなくていいのよ。他のもので考えるわ」

 

 アオイ

「他の物?」

 

 ミラ

「そろそろ健康体になってもいい頃だけど、ずっと鉄分だけ低いのよ。1番大切なのに」

 

 アオイ

「鉄分ですか? うーん、私の生まれた国だと少ない人多いみたいですよ。外人さんと比べて半分しかないんだとか」

 

 ミラ

「うそ!? 皆そうなの? (品質が悪いことにショックを受けてる)」

 

 アオイ

「たぶん。でも、鉄分不足で病気になるとかあんまり聞かないし、大丈夫だと思います。女の人は特に低くなりやすいので、サプリメントで補ってる人もいますよ」

 

 ミラ

「サプリメント……?」

 

 アオイ

「えーと。鉄分を補う薬?」

 

 ミラ

「薬? ……高くつきそうね」

 

 アオイ

「妹と母も飲んでたと思うのでそこまで高価なものじゃないと思います。あ、思い出した。サプリメントだ」

 

 ミラ

「そう。……そのサプリメントなら貴方も飲めそう?」

 

 アオイ

「飲めますけど。そこまで心配しなくても1年くらいは病気しないと思いますよ」

 

 ミラ

「私人間に詳しい訳じゃないから、基準より低いと心配なのよ。私の可愛い猫ちゃん」

 

 アオイ

「……そうですか。あの、猫ちゃん扱いはちょっと」

 

 ミラ

「あら、どうして」

 

 アオイ

「そんな柄じゃないし、気恥しいんで(す)……メーディア様、ワザとですね」

 

 ミラ

「そんなに可愛く睨まれても、困るわ。いいじゃない、私には可愛いのだから」

 

 アオイ

「可愛かないですよ、私なんか」

 

 ミラ

「それは貴方が決めることじゃなくてよ。私が可愛いと言ってるのだから、私にとっては貴方は可愛いの。良いこと?」

 

 アオイ

「うっ……分かりました」

 

 ミラ

「よろしい。食事は別のものを用意するわね。」

 

 アオイ

「え、もったいないですよ。食べます」

 

 ミラ

「捨てるわけじゃないもの。気にしないで」

 

 

 **

 

 

 ミラ

「アオイ、お茶の時間よ」

 

 アオイ

「メーディア様……あ。その。すみません。気が付きませんでした」

 

 ミラ

「遅れるなんて珍しいわね。こんな屋敷の裏で何をしていたの」

 

 アオイ

「その、雑草だと仰っていましたが、可愛いお花だったので」

 

 ミラ

「あら、フラワーリングね」

 

 アオイ

「えっと……」

 

 ミラ

「人の門出を祝う首飾りよ。贈った本に出てくるから、そうだと思ったのだけど、違ったかしら」

 

 アオイ

「……はい。えっと、花冠っていって。本を読んで昔、妹に作ってやったのを思い出して」

 

 ミラ

「そう。よく出来ているわ。器用なのね。お部屋に飾る? 水盆を出してあげるわよ」

 

 アオイ

「そこまで考えてませんでした……」

 

 ミラ

「それなら、私が貰ってもいいかしら」

 

 アオイ

「そんな。ヨレヨレで上手く出来なかったんです。花もくたびれてしまって。それに、メーディア様にはその、もっと別のお花が似合うと思います。薔薇とか牡丹とか」

 

 ミラ

「薔薇も牡丹も好きよ。良い目をしているわね。でも、今日はこれが欲しいわ。私を飾る栄誉をあげる。(ここからちょっと色っぽく)ね? わかるでしょう。あまり焦らさないで」

 

 アオイ(当てられらて、赤面してる)

「……ッ。わかった、分かりましたからっ。こんなんで良ければあげますよ。失礼します」

 

 ミラ

「ありがとう。ふふ、なんだか童心に帰るわね。少女の頃は庭の花を髪に指して飾って喜んでいたのよ。昔の私に見せてあげられたらいいのに」

 

 アオイ

「……やっぱりもっと華やかな花の方がお似合いですよ」

 

 ミラ

「そう? 私は気に入ったわ。それに私は何を纏って居ても美しいのよ」

 

 アオイ

「それはそうですけれど」

 

 ミラ

「分かっているのなら、花の素朴さばかりに眼をやってないで私の美を称えなさい」

 

 アオイ

「本当にこの人は……。お綺麗ですよ。メーディア様なら、灰を被ったままでも王子様に見初められちゃいますよ」

 

 ミラ

「貴方みたいに?」

 

 アオイ

「……あまり虐めると拗ねますよ」

 

 ミラ

「許して。貴方が花いじりに夢中で中々来てくれないから、私が拗ねていたのよ」

 

 アオイ

「……。(ずるい人だと思ってる。以下照れ隠し)お茶、私がいれ直します」

 

 ミラ

「あら嬉しい。練習してくれていたものね。楽しみだわ」

 

 

 **

 

 

 ミラ

「……入るわよ。眠れないのでしょう。暖かいお茶を持ってきたの」

 

 アオイ

「……ん。メーディア様、ありがとうございます。でもどうして、こんな時間に」

 

 ミラ

「いつも貴方がちゃんと眠っているのを確かめてから眠るからよ。睡眠は健康の基盤だから。あまり干渉しても良くないと思っているけれど」

 

 アオイ

「いつも……すみません。自分が中々眠らないから、メーディア様にも夜更かしさせてしまっていたのですね。」

 

 ミラ

「気に病むことはなくてよ、私はそもそも夜行性の生物なの。貴方が来てからはいつも3時に寝て9時に起きてるけれど、3時はかなり早寝よ」

 

 アオイ

「そうでしたか」

 

 ミラ

「何か寝物語を聞かせましょう。何がいいかしら」

 

 アオイ

「あんまり子供扱いしないでくださいよ、ほっときゃそのうち眠れますから……」

 

 ミラ

「私がしたいのよ。こっちのカウチへいらっしゃい。お茶を飲みながら聞くのよ。灯りは落とすから、眠くなったら寄りかかっていいわ」

 

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