三池……女
一ノ瀬……男
三池
「次は借り物競争かぁ。毎年お題がある意味酷くて『青春クソ野郎晒しあげレース』とも呼ばれるからなぁ。犠牲者の皆様南無南無。我々勝ち組はスポドリ片手に低みの見物といきますよ」
「あ。ノセだ。あいつ貧乏くじ引いたんだ。あとで笑ってやろ」
「うわ、うるさっ。何の歓声だろ?……あぁ。クラスのマドンナがこちらに向かって来るのか……道理で。誰か呼んでるみたいだけれど、聞き取れないな。マドンナ様のご指名は誰かな……ん、あおい……? 葵って、あれ? 私?……ま?」
「はぁい桃ちゃーん、お探しの三池葵はここにいますよー。桃花ちゃん、私をご指名で? ……あぁなるほどね、確かに恋慕う好きな人とは一言も書いてないね。えへへ、私好きな人なのかぁ、そっかぁ。嬉しいな」
「あっは。ブーイングをどうもありがとう。悪いねぇ野郎ども、お姫様は私をご所望だってさ。百合の間に割って入る男は死罪って相場が決まってるのをご存知ない? 」
一ノ瀬
「おっ、ミケみーつけた」
三池
「あ、ノセぇ。もしや私をお求めでー?」
一ノ瀬
「そそ、お求めお求め。よっと、かーくほ」
三池
「はっ? いやちょっと待って、降ろして!! 悪いけど私君と走るとは言ってない!! 私には桃花ちゃんという先約がだな!!」
一ノ瀬
「えぇー? そうなの。じゃあ二条さん、悪いんだけどさ、ミケは俺に譲ってくれない?」
三池
「はぁ?何勝手に!! えぇっ桃花ちゃん、私がやだよ!私は桃花ちゃんと走りたいもん!!」
一ノ瀬
「あんがとな、二条さん。そんじゃあ、ミケ。行こっか」
三池
「あっこら!!離せ!! わかった、行くから!! せめて降ろして!!」
_間。
一ノ瀬
「一緒に走ってくれてどうも。おかげで1等だったよ」
三池
「どういたしまして、私は1メートルたりとも走っちゃいないけどね。お役に立てて何よりだよ」
一ノ瀬
「いやぁ、アンタが敵チームなのに借りられてくれるお人好しで良かった」
三池
「ノセくん。あれは攫ったのほうが表現が的確だったとおもうのだけど?」
(抓ねる)
一ノ瀬
「アッ イッッッタッ……おまっ、ちぃったァ手加減しろ!! はーーっっ、痛った……」
三池
「うるさい、それは私が受けた羞恥の痛みだよ。謹んで受けろ馬鹿ノ瀬」
一ノ瀬
「……いやぁ、ただでも敵チームの三池さんを走らせるのは悪ぃかなァってね。こう、ひょいとつまみ上げた方がね」
三池
「はぁ……何だこの格差は。筋肉か?筋肉なのか? 」
一ノ瀬
「いやいやミケさんや、そのちぃちゃい体躯とうっすい体じゃあね?」
三池
「殺すぞ。ったく、なんだって降ろしてくれなかったんだよ。ちゃんとついてくって言ったじゃんか。わざわざ辱めるような抱え方しなくても良かったと思うんだけどな。悪意しか感じない」
一ノ瀬
「おや、お姫様抱っこではご不満でしたか?お嬢さん」
三池
「馬鹿にしてんな? 不満しかないよ。そんなにマブに意地悪して楽しいかクソが」
一ノ瀬
「なんのことやら」
三池
「……こんにゃろう」
一ノ瀬
「(ケラケラと笑う)」
三池
「ノセってほんとに性格悪い。性悪だ」
一ノ瀬
「えー、知らなかったんで?」
三池
「悔しいことによぉく知ってた」
一ノ瀬
「そんな悪友はお嫌いで?」
三池
「うぐ、嫌いじゃないよ馬鹿」
一ノ瀬
「知ってた。ミケはほぉんと、俺の事大好きだもんねぇ」
三池
「やかましゃい。はぁ……そんで、結局お題はなんだったの」
一ノ瀬
「あー、お題? んぁー……なんだったと思う?」
三池
「えぇ……質問に質問で返さないでよ。わからないよ、ノセってば審判に紙見せたと思ったらすぐに破り捨てたじゃん。実況のマイク奪って「コイツが1番のダチ」って宣言してたけどさ……気になる」
一ノ瀬
「ふぅん、ミケちゃんそんなに知りたいのー?」
三池
「んぇ、何その顔……だって気になるじゃん」
一ノ瀬
「んー、じゃあ次会う時まで考えといてよ」
三池
「教えてくれんのかいな。いいけど」
一ノ瀬
「ねぇ、三池」
三池
「んー? わ、あぇ、なに。……黙んないでよ、気持ち悪いな。何急に、……あ、待って、ち、近いって……ノセ」
一ノ瀬
「考えといてね。そんで次会った時は」
三池
「……」
一ノ瀬
「(耳元で)ちゃあんと、自分が獲物だって自覚しといてくれよ」
三池
「っ!!?は、へ……?」
一ノ瀬
「そんじゃま、午後の競技も程々に頑張れよ」
三池
「ま、待ってノセ!! 一ノ瀬待ってってば!! 誤解しか生まない言葉を解いてからにして!!!! 脳みそ処理落ちしそうなんだけど!?」
_間。
一ノ瀬
「……ほぉんと、鈍感なお間抜けさん。冗談やからかいでんな事言うかよ。ばーか。まだ言うつもり無かったんだけどな。まァ、せいぜい俺のことで頭いっぱいにして眠れなくなりゃいい」
「さァて、どうやって溺れさせようかね」