台本置き場。   作:就鳥 ことり

7 / 10
二条……女
七瀬……男

赤い実はじけたのサイドストーリーになります。

3000文字程度なので10分くらいかと。
テスト読みを次第所要時間を確定します。

あらすじ。
学校1の美少女と名高い二条には嫌われてはいないが、高嶺の花だと近付かれることもなく友達が居ない。借り物競争で『好きな人』のお題を引くが、唯一の知り合いであった三池は一ノ瀬に取られてしまう。
マドンナに借りられたいと、押し寄せる男子生徒にたじろいでいると、助けてくれたのは従兄弟の七瀬であった。


箱入り嬢と幼馴染『お友達』

二条

「助かったわ、ありがとう澄直(すなお)

 

七瀬

「別に。お前の親父さんから小遣い貰ってる分働いただけだよ」

 

二条

「もぅ。相変わらず無愛想ね。名前に反して全然素直じゃないんだから。お礼くらい素直に受け取れないものかしら」

 

七瀬

「余計な世話だよ、お嬢様。じゃ、俺次の競技あるから行くわ」

 

二条

「あっ……わかったわ。またね」

 

七瀬

「……素直じゃねぇのはお前もだろうが。何?まだ時間あるからいいよ。いま2レース目だから、あと15分くらいか?」

 

二条

「あのね、澄直。さっきね一ノ瀬くんに、葵ちゃん取られたの。私が先に声掛けたのに、葵ちゃんもいいよって言ってくれてたのに」

 

七瀬

「あぁ、見てたよ。横から綺麗にカッ攫われてたな。一ノ瀬も大人気ねぇよな、お前が折角なけなしの勇気を出して三池に声掛けたのに」

 

二条

「葵ちゃんともっと仲良くなれるきっかけになると思ってたのに……他に連れて行きたい『好きな人』なんていなかったのに」

 

七瀬

「お前友達少ねぇもんな」

 

二条

「言わないでよ、気にしてるんだから。一ノ瀬くん怖い顔してた、そんなに睨まなくても良かったじゃない。意地悪だわ」

 

七瀬

「あー、あれはたぶん無意識というか、条件反射だろうなぁ。あの後わざわざ横抱きにしてたのだって牽制だぜ。だれも狙わねぇっての、おっかねぇ。あいつ本当に三池に対して過敏なセコムな上独占欲クソ強いから……。三池が可哀想。あんなん一生恋人できねぇよ」

 

二条

「本当に。あの子とっっっても鈍感だから平気なんだと思うわ。もう。もっと仲良くはなりたいけれど、別に一ノ瀬くんから取ってやりたいなんて思ってないのに」

 

七瀬

「そうだなぁ。箱入りお嬢様のお前にしては、よくやったよ」

 

二条

「葵ちゃんに振られたら、今度はなんか自己推薦の嵐だし、怖いし。可愛いって罪だわ。ほんとに澄直が同じチームで良かったわ」

 

七瀬

「別に敵チームだろうが、助けに入るよ。でも、ちょっとずつ自分で捌けるようになれよ。桃花は綺麗な顔してるから、この先もこういうことあるだろうし。俺が助けてやれるのも高校卒業するまでだし」

 

二条

「わかってるわよ。いつまでも澄直に甘えていられないのだって。でも怖いんだもの。なんでたいして親しくもないのに、あんなに迫って来るのかしら……。勢いも怖いし、捌くなんて到底無理よ……できるようになれるかしら」

 

七瀬

「大丈夫だろ、お前は昔から器用で物覚え良かったし。そのうち慣れるよ。慣れるまでは助けてやるし」

 

二条

「うん。澄直、高校生のうちは私のこと守って頂戴ね。卒業するまでにはちゃんと独り立ちするから」

 

七瀬

「……あぁは言ったけど従兄弟(いとこ)だし、卒業したって別に縁が切れる訳じゃないし何かあったら呼んでいいんだから。俺らはそれくらいの仲だろ。そんな暗い顔すんなって」

 

二条

「いいの?」(勢いよく)

 

七瀬

「いいに決まってるだろうが」

 

二条

「……嬉しい。まるでお友達みたいだわ」

 

七瀬

「……おい。今聞き捨てならねぇ言葉が聞こえた気がするんだが」

 

二条

「えぇ?」

 

七瀬

「お前にとって俺は何だ」

 

二条

「え、何よ急に。従兄弟でしょう」

 

七瀬

「いやそりゃそうだけど。なに? つまり桃花にとって俺はただの従兄弟だったと」

 

二条

「ち、違うの?」

 

七瀬

「じゃあなんで、ただの従兄弟でしかない俺がお前のために、多数の敵を作るような真似をしてると思うんだよ」

 

二条

「それは、お父様に報酬をもらっているから……」

 

七瀬

「……。あーそうかよ。ほんっとにこの、箱入りお嬢様は!!お前の父さんが女学院じゃなくて、俺に世話を頼んでまでなんで一般高校入れたかったのかよぉく分かったわ。いいか桃花、いっぺんしか言わないから1回で頭に叩き込めよ」

 

二条

「う、うん」

 

七瀬

「俺とお前は従兄弟だけど、昔からのダチみてぇなもんだろうが。俺はお前のこと可愛がってるし、大事に思ってんの。お前が相手じゃなきゃ小遣い貰おうが、あんなに甲斐甲斐しく世話なんてやかねぇし、わざわざ男共の殺意を集める真似なんざ死んでも御免だね!」

 

二条

「ぐすっ」(泣き出して)

 

七瀬

「桃花?」

 

二条

「そっか、そっかぁ」

 

七瀬

「あ、悪ぃ……大きい声出したりして、怖かったか」

 

二条

「ううん、嬉しいの。良かったぁ……澄直いっつも不機嫌そうな顔してるし」

 

七瀬

「俺は元々この顔だよ、悪かったな」

 

二条

「いっつもつまらなそうだし、面倒臭そうにするし」

 

七瀬

「面倒臭いことには変わんねえよ、あぁもう泣くなって」

 

二条

「最低限しかお話してくれないし、すぐどっか行っちゃうし」

 

七瀬

「俺とばかり居たら友達できねぇだろ」

 

二条

「……居ないけどできてないもん」

 

七瀬

「それは……今後に期待だな」

 

二条

「ねぇ、澄直」

 

七瀬

「なに」

 

二条

「廊下で会ったらお喋りしてくれる?」

 

七瀬

「いいよ」

 

二条

「お昼ご飯一緒に食べに行ってもいい?」

 

七瀬

「好きにしてくれ」

 

二条

「放課後一緒に寄り道するのは?」

 

七瀬

「たまにな。あー、まぁ、なんだ。今まで素っ気なくしてて悪かったよ」

 

二条

「ううん。今嬉しいからもう気にしてない。ねぇ、今日帰りにどこか寄り道したいわ」

 

七瀬

「優勝したら打ち上げあんだろ」

 

二条

「それだって放課後の寄り道よ」

 

七瀬

「寄り道の判定ガバガバすぎんだろ……お前がいいならいいよ」

 

二条

「負けたらどこに行く? 澄直は男の子だからお肉がいいかしら。ステーキ?」

 

七瀬

「すげぇ偏見。まぁ、肉ってのは悪くねぇわな」

 

二条

「本当? ふふ。……約束よ、澄直」

 

七瀬

「へーへー。ったく、いつもそんくらい阿呆っぽく笑ってりゃいいのに。そしたら友達とかもできんじゃねぇの」

 

二条

「そ、そうかしら。えっと、こ、こう?」

 

七瀬

「ふはっ。下手くそ」

 

二条

「もう。あっ騎馬戦のアナウンス」

 

七瀬

「じゃ、行ってくる」

 

二条

「行ってらっしゃい!! 声援いっぱい送るからね!! 任せて!!」

 

七瀬

「いや、それはやめてくれ……」

 

二条

「なんでよ!! お友達が頑張るのだから、応援したいに決まってるじゃない」

 

七瀬

「無駄に野郎の恨み買いたかねぇよ」

 

二条

「むぅ。……本当に可愛いって罪だわ。わかった、大人しく控えめに応援してる」

 

七瀬

「……声援、1回だけな」

 

二条

「!! わ、わかったわ!! 任せて澄直 」

 

 

___間。

 

 

二条

「すなおーーーっ! がんばれぇぇぇ」

 

七瀬

「あんの馬鹿……何が『わかったわ』だよ。ぜんっぜんっわかってねぇじゃねぇか。……すっかり忘れてんな、ったく」

 

二条

「あぁっ、危ない澄直!! 後ろから来てる!! あっやだ負けないで!!!」

 

七瀬

「へーへー。負けませんよっと。ほんと。あいつ黙ってくんねぇかなぁ……」

 

「よっと。あっぶね、あ? 別に二条に好かれてるからって調子に乗ってるつもりはねぇよ。ただ可愛いお友達が期待してんのに負けんのはちょっとカッコ悪ぃだろうが。てことで負けてくれや」

 

二条

「すごいっ!! 澄直勝ったぁ!!……あれ、なんか澄直の眉間の皺がすごいことに……怒ってる?はっ、やだ。いっぱい声援送っちゃったからだ……。あっっ、ちょっと来いやって顔が言ってる。で、デコピンの刑かしら……うぅ、される前から額が痛い」

 

 

_間。

 

 

二条

「ぅぁ……えっと、騎馬戦。見事な勝利だったわ。おめでと」

 

七瀬

「そりゃどーも。桃花、俺はお前になんつった?」

 

二条

「声援は、1度までと言われました」

 

七瀬

「だよな?」

 

二条

「はい……言い訳しないから、ひっ、一思いにやってちょうだい」

 

七瀬

「いいだろう。潔くて結構」

 

二条

「あ、あまり痛くしないで頂戴ね……」

 

七瀬

「っ、たく」

 

二条

「ッたぁぃ……ごめんなさい」

 

七瀬

「はぁ……応援、ありがとな」

 

二条

「うん!! 」


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