二つの加具土命【第一部完】   作:ノイラーテム

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第七班の天覧試合

 大名天覧試合の一回戦は、Bツリーの『テンテンvsシカマル』『ガーラvsネジ』、少し時間を置いてAツリーの『カンクロウvsサクラ』『シノvsナルト』の四試合。リーと俺はBツリーで勝ち上がった相手との戦いになる。

 

 

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大蛇丸が仕掛けてくるとしたら注目の高い試合が終わった後だと思うので、『ガーラvsネジ』かその勝者と俺が戦う試合の後だろう。時間的にも原作的にも後者……俺の試合が終わった後であると思われた。

 

「影が巨大化したぁ!?」

「忍法、影法師ってな」

 背中で発生する閃光に従ってシカマルの影が伸び、巨人化した事でテンテンを拘束する。テンテンは気が付いていないようだが、土煙にも影が映ることで立体的に成っていた。一種のブロッケン現象を起こすことで巨人化した影が彼女を拘束したのだ。

 

「途中までは上手く躱してたと思ったのだが……」

「手裏剣の使い分けとか上手かったてばよ」

「多分、物の影で影真似の術が延長されるってことに気が付いて、そこで終わりにしちまったんだろうな。もったいねえ」

 序盤はサクラとナルトが言う様に、影真似の術を警戒して中~遠距離戦を行っていた。手裏剣を飛ばす速度や数を使い分け、シカマルの集中力を削っていたのだ。あれでは防御に手いっぱいで、影による拘束が不可能だと思えても仕方あるまい。

 

「シカマルは最初からあの術で捕まえる事を前提に追い詰めたって事かな? 使わなくても勝てるなら楽でいい……くらいには思ってそうだが」

「あー。それってばシカマルっぽいってばよ」

「なるほど。対策や切り札は思い付いてからが勝負……ということか」

 ナルト……人がせっかく解説したんだから、サクラみたいに見るべき所を見てくれ。そう思ったのだがこの無邪気さがナルトなのだろうかと自分を納得させることにした。コイツの場合はガンガン使いながらその場で閃くタイプだしな。気軽に使ってるようで深い考えがあったりと、意外性No.1の忍者の片鱗はこちらの世界でも見たことがある。

 

「次の戦いはどっちが勝つと思う?」

「どっちも絶対防御の使い手で判んねーってばよ」

「なら押し切るか、その前に包み込むかって勝負になるかな? ネジが特定方向に放出するようなパワータイプの技を覚えてりゃあ別だが」

 全方位からの攻撃を即座に防ぐネジの回天。あれは強力だが放出し続けるという行為は難しい。逆にガーラの砂を操作する能力は天敵とも言えるのだが……ここで判断を難しくさせるのは触れてはならぬ柔拳のチャクラを防ぎながら、包み込む事ができるかどうかだ。

 

「てーことはヒナタが使ったパンパンって弾けるみたいなのか? やっぱりヒナタは強かったんだってばよ」

「もしかしてガーラに限ってはネジよりヒナタの方が相性が良い?」

「一応はな」

 人柱力の事は確定ではないし、話すには情報が足りない。だからか少しモヤモヤした物を抱えながらガーラとネジの戦いを見守っていた。おそらく人柱力だろうから、原作におけるナルト戦の様に経絡を焼く意味がないと思える。もしかしたらネジが押し切った上で、守鶴の力を借りて逆転するのではないかと思っていた。

 

「それまで! 勝者、ガーラ!」

「いつの間にか足元に!? スゲーってばよ!」

「あの瓢箪を作ってる砂だけチャクラの練り込みが半端ないな。普段から『九つ目の八門』とでも呼べるくらいに練ってるんだろう」

 その戦いはどことなくネジと音の蜘蛛野郎(名前は忘れた)との戦いを思わせた。四方から砂時雨を撃ちながら、足元へ砂を這わせていく。やがてその砂はネジの動きを止め回天の全力が出せなくなっていったのだ。それでもネジは一時的な全力放出で砂を跳ねのけ戦い続けたが、途中で捕まってしまったという訳である。

 

「サスケの予測通りになったね」

「まあな。回天以外にもチャクラ放出を技として持ってたら、話は違ってたと思うが。後は最初の接近時に使ったクナイと起爆札も惜しいっちゃ惜しかった」

 ネジは最初、起爆札を使って砂の守りを散らした。散った砂で攻撃されるのは判っていたろうが、白眼で見れるのだから問題ないと踏んだのだろう。実際に砂時雨そのものは避けたり回天でなんとかしていた。もし速攻を掛けるのではなく、起爆札以外にも何か一手打っていたら話は変わっていたように思える。もちろん人柱力による柔拳破りがなければの話だが。

 

「サスケサスケ。サスケなら勝てるんだよな?」

「お互いに切り札を使い合って、足を止めての撃ち合い前提ならな。……。お前らの試合の方が先だろ、頑張れよ」

 心配そうに見上げるナルトだが、その額をツンと突こうとして思い留まった。自分なんかがその仕草をしても良いのだろうかと、くだらない悩みで中断。代わり二人の試合の方が心配だと切り返してその場から逃れておくことにした。

 

勝負の方は相手の出方次第だ。守鶴は恐ろしい相手だが万華鏡を使えば火力で上回れる。二つのカグツチが持つ最大の強みとは形状や性質を操れることじゃない。『上限を突破』できる事だ。チャクラ同士が相殺すれば物理存在である砂を溶かすことなど普通は出来ない。だが二つのカグツチで上限を突破すれば、相殺しきれずに砂をガラスに変える事だってできるだろう。

 

(いわば炎遁を越えた炎遁。プラズマ遁か? だがそいつを使うには幾つもの壁がありやがる)

 万華鏡は使えば使う程に失明が近づくし、大蛇丸やダンゾウに開眼を知られてしまう。使うとしても守鶴だけを警戒すれば良い状態まで持ち込むか、開眼を知らせる事が大きな役割になる時だろう。後は……自分で名前を付けたがプラズマ遁はダサイ。適当な名前を考えないとな。

 


 カンクロウとサクラの戦いだが、意外と言ったら失礼かもしれないが……中々に良い激戦だった。てっきりカンクロウは絡繰りを晒したくないから戦わずに棄権するかと思ったが、『試作品』を持ち込んでその許容範囲で戦ったのだ。

 

「このクナイ、中々のパワーじゃんよ」

「糸が止めた?」

 カンクロウは手元から鋼糸を取り出して刃の様に使った。そして防御においてはどうやったのか知らないが、縦横に編み込んでクナイや手裏剣の攻撃を巧みに防いでいる。

 

「でもパワーなら、こいつも負けてねえじゃん」

「籠手の付いた腕……いや傀儡か」

 カンクロウは背後に一体の傀儡を置いたまま、手元にもう一体……いや、左右一組の籠手型傀儡を口寄せした。そして本体の放つ鋼線と籠手型傀儡による時間差攻撃を見せる。

 

「っ!? 刺さらない。っていうか、てめえ鋼線効いてねえじゃんよ!?」

「毒が怖ければ刺さらなければ良い。最初からチャクラは防御に回してる」

 サクラは鋼線に絡めとられた段階で作戦を変え、強引にパワーでカンクロウを振り回した。土遁による防御の他は機動に回していたチャクラを、剛力に振り替えて強引に捕まえに行ったようだ。

 

「っち。だけど、こういうのはどうじゃんよ!」

「離した? なのに鋼線がまだ動いてる……これが傀儡糸か」

 鋼線などなくともチャクラ糸で傀儡を動かせるのだ。ならば同じ要領で鋼線を動かせば良い。よくよく考えればさっき見た鋼糸を編み込む防御も、手元で操作したら危険な上に絡み易いじゃないか。だとすればチャクラ糸で程よくコントロールしていたのだろう。

 

「ダメダメ。傀儡人形はバラバラにしたって、組み直せば済むじゃん。次は……」

「次はこうする」

 殴りつけても籠手型傀儡で受けしかも関節部を一時的に外し、衝撃を吸収してから再度組み直す。そして本体と傀儡を巧みに入れ替える技に、サクラは翻弄されているように見えた。

 

だが、忘れていたのだがサクラはあれで気が短いのだ。普段は口下手なので喋らないので、内なるサクラのように寡黙なのだが……。サクラは表も裏も怒ると面倒なのが偶に瑕だ。口寄せで巻物から首切り包丁を取り出すと……。

 

(あれはまさか一本足打法の構えだと……野球でもする気かよ)

 秘かにブチ切れていたサクラは、バラバラになる間に籠手型傀儡の片方を強引に試合会場の外へ打ち返していった。全部会場の外に出せば組み直せないし、本体とか傀儡とか関係ないだろうという算段に見える。普段は冷静なのにどうしてこういう時は力業に頼るのだろうか? しかしこの状況を覆返すには中々悪い判断ではないように思われた。

 

「降伏するじゃん? こんな試合で試作品どころかカラスまで壊されたら割りに合わないじゃん」

「……勝った」

 フルスイングで鋼糸まで吹っ飛ばしていたが、指で直接持っていたら千切れていただろう。それだけのパワーがあると察したカンクロウは馬鹿馬鹿しくなって勝負から降りた。カラスとかいうもう一体の傀儡を使えば別かもしれないが……やはりこの後に備えたのだろうか? あるいはその中に本体が入っていたのかもしれない。

 

「凄かったってばよー! あ、ヒナタにもらったこの薬、サクラも使う?」

「ありがとう……」

 出迎えるナルトに喜んで見せるサクラだが、内心では思う所があったのだろう。カンクロウは余裕を残しているように見えた。籠手型傀儡だって完成して居たり、もっと多くの種類を用意して居たら勝負は負けていた可能性の方が高い。試合に勝って勝負は負けた……とでも思っている様だった。

 


 ナルトの試合だが……。俺は迂闊にも、ナルトが意外性No.1の忍者だという事を失念していた。

何のことだか判らないと思うので簡単に説明すると、天覧試合で見せた大技は口寄せでは無かったのだ。違うとしても螺旋丸だろうと思っていたのでアレには意表を突かれた。よく考えたら『九尾のチャクラ』の使い方を覚えさせる為の修行で、別に術は何でも良かったのだ。原作知識が頼りにならないのに、口寄せであると思っていた俺の方が悪かったのだろう。

 

それはそれとして原作とは違うシノの恐ろしさが感じられる試合でもあった。

 

「これでその不気味な虫も近づけねーってばよ!」

「不気味か。だが、オレにはオレを感じさせてくれる愛しい虫たちだ。何故ならば……」

 ナルトが風遁でシノの虫を一蹴。しかしあえて風に逆らわない事でシノは虫を殺させていない。それどころか風に含まれたチャクラを喰って少しずつ接近するペースを速めているような気がする。

 

「何故ならばオレには感覚が無い。自分を実感できないオレに虫はオレ自身の在りかを教えてくれる! そして、それはお前もだ! ナルトオオ!!」

「っ!」

 どうやら原作と違って無痛症らしいシノは、平然と傷だらけになりながらナルトに接近していく。それに対しナルトは不気味さゆえか、同期を傷つけたくないからか引き気味に回避。風遁を途切れないように使う集中力だけは向上しているが、そういう所は要修行なのだろう。

 

そしてシノは自分を犠牲にし、そして本来の使い道として虫を隠れ蓑とする方法で急接近する。

 

「くそっ! こいつでどうだ!」

「風速を上げたか……。だが、まだ動ける。そしてこの風はむしろ、好ましい程だ!」

 ナルトは風を吹かせ続けながら手裏剣を投げていた。だがここに来て風速を一気に拡大。手裏剣では軌道が定まらない為か、無数のクナイをダメもとで投げる方法に切り替えた。だがその攻撃は高速ではあっても急所に刺さるわけでない。シノは虫で分身を作り上げると今度はソレを立てに加速する。

 

(スリップトリームか! 駄目だ大きく下がれナルト!)

 虫による分身は実体を持ちつつ、風とクナイを受け止めてくれる。本体との間に出来た隙間を利用して加速したシノは、一気にナルトに飛び付いていった。それこそクナイで切り裂かれることなど構いもせずに。

 

「うえ!? キスなんかすんなよ! 気色悪るっ!」

「ふふふ……。別にオレは同性愛者ではない。オレというモノを自覚させてくれるお前を好ましく思っているがな。では、先ほどの口付けは何の為だったと思う?」

「っ! 吐き出せナルト! 毒虫……いや、そいつは!」

 さっきは何とか我慢できたが、人様の試合中だというのに思わず声を出してしまった。別に女同士でキスしたから興奮しているわけではない。というか原作のイメージが強過ぎて、男同士のキスをしてしまって『オエーオエー』と掃いている姿にしか見えないからだ。

 

そして……ナルトが持っていたはずの大量のチャクラが急速に失われていくのが見えたからだ!!

 

「ぐっ……うあああ!? 喉が焼けるってばよ。っていうか虫ぃぃぃ!?」

「オレの虫はチャクラを喰う。その中でもそいつらは、他人の体の中で急成長するタイプの虫だ。いわばオレのチャクラとお前のチャクラで育ったわけだが……。これがどういうことか判るか?」

 ナルトが吐き出した場所から無数の虫が飛び立っていく。そいつらは現在進行形でナルトの周囲のチャクラを喰っているのだが……おかしなことがある。不思議なことに、再開された風遁を受けてもそれほど飛ばされていないのだ。

 

「この虫たちはナルト自身のチャクラで成長した。つまり、その風遁にも慣れているという事。もはや飛ばされたりはしない。全てを喰い尽くされない内に降参するのだな」

(え、エグイ。これが虫使いの術か)

 なんか唐突に世界観が変わったような印象を受けてしまう。それほどの強烈な術であり、もはやナルトの風遁ではどうしようもない。それどころか急速にチャクラを喰われて身動きが取れないところまで行っている。

 

「ナルト! ここで修業の成果を見せやがれ!」

「無駄だ。もはやそんなチャクラなど残っては……何っ!?」

「へへ……。何とか成功したってばよ」

 尽き掛けたナルトのチャクラだったが、急激に色の違うチャクラが発生し始めた。それは膨大なチャクラの渦でありナルト自身を覆い絡みついていく。虫たちなどそれだけで跳ね飛ばされたくらいだ。まあナルト自身のチャクラじゃないから、相性が変わったってのもあるんだろうがな。

 

「いくぜ! これがオレの覚えた新術だってばよ! 忍法! ……あ、仙法だっけ?」

「なに!?」

「仙……法だと?」

 驚くシノに釣られて俺も驚愕を覚えた。本来はここで九尾のチャクラで戦うか、せいぜい口寄せする物だと思っていたのだ。綱手に習ってカツユになるか、それとも自来也に習ってガマ系になるかの差だと思っていたのだ。

 

ここで仙法だと? 原作なんて当てにならねえ。そう思った瞬間である。

 

「まあいいや。これでも食らえ! 乱獅子髪の術!!」

(あれは自来也の!?)

 猛烈な勢いでナルトノ髪が伸び、その周辺を埋め尽くしていく。風遁も同時使用されているので高速であり、かつあまりの密度なので虫もシノも避けれない。絡みつかれて思いっきり叩きつけられ、髪の濁流でグロッキー状態だった。

 

(そうか。本来は自然エネルギーを集める仙法なんだろうが、ナルトが持つ九尾のチャクラなら問題なく実行できるって事か。しかし……こいつはヤベエ)

 ナルトは伸び放題の髪を適当なところでブツっと切断。すると異常なチャクラで生み出された髪はその殆どが消えて行く。残ったのも焼き払えるだろうが、とんでもない事実に気が付いてしまった。

 

(あいつ……もしかして、髪を伸ばすと少しだけクシナに似てないか?)

 髪を色々弄った挙句ポニーテールにしたり、ツインテールにしたり。そんな仕草は今までのナルトに見られない物だったが、ホンの少し。ホンの少しだけ可愛く見えてしまった。というかナルトのイメージが強過ぎて盲点だったが、今成長期なんだよな。男と女で顔の造作が変わって当然。もっと言えば化粧とかで差も出るだろう。

 

「どうだ? 惚れ直したかよ!」

「お、おう」

「正直、見違えた。ヒナタが無事だったら何か言ったかも?」

 何というかすっかりイメチェンの方が主題になってしまった。おかしい……こいつはナルトの筈なのに……クシナ似であるとしって、ちょっとだけ驚く俺が居た。

 


 あれはナルト、あれはナルト。落ち着けあれはナルトだから恋愛対象外。

そう思う事で精神集中を掛け、脳内に残る原作イメージを思い出して煩悩を消し去っていく。というか女の子がいるからってどうってことはねえよな。ナルトだからギャップが大きかっただけで、いの(・・)だってテンテンだって原作同様の女の子だったろう。そうだ落ち着けば問題ねえ。

 

よく考えたら原作のお色気の術も、三代目や自来也が引っかかるくらいには可愛かったしな。俺がナルトに動揺させられるのも別におかしくはない。それに考えてみればまだ小学生だし、別に裸になってないじゃないか。そんな風に俺は何とか落ち着くことに成功した。

 

「サスケー! 負けんじゃねーぞ!」

「お、おう」

「あ、さっきと同じ反応……」

 サクラさん、余計なツッコミは無しでお願いします。ようやく落ち付いたんだからよ。……とまあ、此処にいると流されそうになるので試合会場の方に向かう。シカマルとリーの試合が見れないのは残念だが、順番とか考えたら仕方ねえよな。

 

 

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「お母さんの力が減っちゃったから、血をたっぷり吸わせてあげないとねっ♪」

「てめえの母ちゃんは血を吸う鬼なのか? 寝言は寝て言えよ、この寝不足小娘」

 俺との試合に向けてハイになってるのは原作通り。ネジとの戦いが中途半端で終わった事からか、どうやらフラストレーションがたまっているらしい。

 

「頑張りなよガーラ! 御姉やんが付いてるからね!」

「ウザイんだけど……どっちも」

「良いお姉さんじゃないか。戦場で眠るにゃ、ああいう人に守ってもらわないと駄目だぜ? 素直になれねえからそんなに目に隈が付くんだ」

 普通の会話のフリしてナチュラルに煽ると早くもガーラはブチ切れ寸前だった。まともに射撃戦・忍術戦をするとこっちが不利なので、煽りながら冷静さを削っていく。やり過ぎると速攻で狸寝入りされて困る羽目になりそうだったが、もう原作は気にしないことにした。

 

「まずは小手調べだが、俺はこの千本でお前に傷を負わせる。ちゃんと砂の鎧をまとっておけよ」

「ガーラ! その嘘吐きに騙されんじゃないよ!」

「……遊んでくれるの? じゃあ遊ぼうか」

 俺は片手に鋼鉄製の千本、もう片方に数枚の手裏剣を構える。手裏剣の方は予選でテマリに使ったのと同じ、死角を突く為の使い方をするつもりなのだが……。別に嘘は吐いてるつもりはねえんだよな。

 

「行くぜ? この千本を見失うんじゃねえぞ!」

『……』

「馬鹿め! そんなチンケな技でガーラが騙されるか! 見ろ、砂分身は自動でガードする!」

 まずはゆっくりと手裏剣を死角から投げ入れる。まるで答え合わせをしているかのように、後ろの死角から跳ね返って来た手裏剣を砂から作られた分身が止めに行った。

 

「グ……ウア? 痛っ!」

「見えたかよ?」

「馬鹿な! 砂分身が追い付かないだけじゃなくて砂の鎧を貫通した!?」

 タイミングを合わせてチャクラをたっぷりまとわせて放った千本は、砂の鎧を貫通することに成功した。俺の忠告を聞いて厚めに鎧を張っておけば無傷だったかもしれないが、咄嗟に張るレベルだと防ぎきるのは難しいのだろう。まあ、だからこそ煽ったし千本が囮であるかのようにしゃべってたんだが。

 

「千本で怪我させるって言ったろ? つーか自動防御ってのは、勝手に動くから自動なんだよ。その砂は最初に知覚した脅威にまず反応するんだ。分身になるのは驚いたがな」

 つまり反射して後ろの死角を突くと、その手裏剣を脅威と判断して砂分身は止めに行く。確かに手裏剣程度では貫通できるないだろう。だが、同時にそれは正面への砂の密度が下がるという事になる。だからこそ千本は防御を通り抜け、ガードを過信していたガーラは防御が遅れたのだ。

 

いや、それでも砂の鎧は間に合った。だからこその絶対防御と言っても良い。だから俺はタップリのチャクラで貫通力を増し、言葉巧みに厚い防御を張らせないように誘導していたのだ。

 

「この嘘つき野郎! 可愛いガーラに傷をつけやがって!」

「予告通りだ。嘘なんか吐いてねえだろ? だいたい……」

「キャハハハ! 凄い凄ーい! こんなに痛たかったの初めてだよ! 次はあいつの血を吸わせてあげるからね!」

 原作の様にダメージを負ったくらいでテンションは下がらないらしい。むしろ興奮気味に周囲から砂を集め始めた。瓢箪の砂をガードに使いつつ、集めた砂を投げつけてくる気だろう。

 

「まあそう来るよな。何しろ砂の硬度は掛けた圧力で発生する密度で決まるんだ」

「そんなの知らないってば! 今度はこっちから行くね!」

 集めた砂を放って砂時雨に寄る攻撃を掛けて来る。俺は足にチャクラを集めて回避しながら、距離を取って一部を喉元に集めた。

 

「火遁、龍火の術!」

「そんなのじゃ無理無理~」

 原作と違って糸を使わずに放つのでホーミングじゃないが、この術はかなりの初速を誇る。だが瓢箪の砂を直接操れば、それでも防御は奴の方が速い。砂時雨と龍火の術が飛び交い、時折に手裏剣を交えて嵐のような撃ち合いが始まった。

 

さっきも言ったが、ハッキリ言うと避けながら戦う俺と防御しながら戦うガーラ。気を抜くとヤバイのは俺の方で、撃ち合って有利なのはガーラの方だ。しかしあえて俺は撃ち合いに応じた。それは砂と火の物理的な差を利用する為だ。

 

「さてと。場も温まってきた事だし、そろそろ良いかな?」

「炎の鏡? キレーだね」

 オリジナルの術による炎の鏡を出して追加印を利用する。白とのコミュニケーションが上昇したことで、体にまとわなくとも多少は利用できるようになった。とはいえ二つのカグツチを利用しないので、あくまで火力と規模が多少増やせるレベルでしかない。だが、それでも術の規模を上げる事に意味がある。

 

「もう一回忠告しとくぞ! ちゃんと考えて防御しろよ? 女の子に火傷させて責任取れとか言われたくねーからな!」

「誰がお前なんかにガーラを嫁にやるか!」

「もーウルサイ! 黙ってて!」

 炎の鏡を火遁チャクラモードとして身にまとわないので、勝手に付いてくることはない。仕方なく最小限の移動で砂時雨を回避し、写輪眼で操る為の残留チャクラにだけは気を付けておいた。

 

 

「火遁、龍火の術。そして手裏剣……擲弾影分身の術!」

「アハハ、炎の龍みたい」

「この規模の火遁、あり得るのか!?」

 手裏剣影分身の要領で造った擲弾影分身で火線を増やす。だが火線が増えてもなお奴の動きは変わらない。奴を覆い隠す砂の幕が全てを防ぐ。そう『俺の思い通り』とは知らずに砂の幕がガーラを覆っていくのだ。

 

この結果は最初から分かっていたことだ。奴は瓢箪の砂でガードするし、チャクラとチャクラが均衡するなら攻撃力は相殺され、砂の持つ防御力が奴を守るのだと。

 

つまり……この結果は俺の誘導通りだ。

 

「アハハ。凄かったねー。ま……だまだ……面白い事できるの?」

「……お前大丈夫かよ? てっきり砂漠の人間は熱さに強いんだと思ってたがな。『凄い汗』じゃねえか」

 ガーラは余裕の表情に見えたが凄い汗だった。服は段々と汗でグッショリ濡れ始め、小学生の体形でなければ倫理的に危険な状態だったかもしれない。俺はロリじゃないからなこの程度は問題ねえ。むしろナルトの笑顔の方が不思議とダメージがでかいくらいだ。

 

「あ……れ? おかしいなあ」

「馬鹿な。ガーラがあの程度の熱で……」

「輻射熱って知ってるか? お前は自分の砂からジワジワ攻撃されていたんだよ。その砂は勝手に周囲に漂うし、砂の鎧は直接肌に触れてるんだろ?」

 砂を防御した時、チャクラに寄るダメージ自体はチャクラで相殺されている。だが熱量までが消えたわけじゃない。その熱はジワリジワリと砂に移り、少しずつガーラの集中力とスタミナを削っているって寸法だ。もちろんこの程度で普通ならば害が及ぶはずはない。特にガーラは砂漠の人間なのだ。耐性だけならそれなりにあるだろう。

 

しかし熱耐性というものは意思や代謝を多少保てるというだけで、人間を止められるわけではない。延々と輻射熱で焙られ続ければ、『まだ大丈夫だ』と勘違いしている間にいつしか限界を超えてしまうのだ。ガーラに豊富な経験があれば砂を内と外で使い分けて温度を遮断したんだろうが、楽勝で戦い続けた奴にそこまでの経験が無い。

 

「さて、ここで質問だ。普通に戦ってもその砂の鎧はスタミナを使ってたよな? 体中を自分の砂で焙られて……どれだけ体力は残ってる? 俺の方はまだまだ撃てるぜ!」

「ガーラ! 時間を掛けるとヤバイ!」

「くっ……うう……」

 俺が地道に忍術戦をやった意味は二つある。一つ目は輻射熱でガーラの体力を削る為。奴は攻防一体の筈の砂を、自前の砂が防御のみと集中的に使っていたのでつい身近に残すように意識しているのだ。そしてもう一つの意味は、今更ガードを解くわけにはいかないと思わせる為だ。

 

この忍術合戦中に防御を解いたら大火傷を負うだろう。そう思わせて砂を一度に使わせない為にこそ撃ち合いを演じていた。もし砂漠送葬とか喰らったらそっちの方が危険だからな。

 

「もういっっちょ手裏剣影分身行くぞ。今度は鳳仙花だ!」

「何、それ。花火……みたい……キレイ……」

 俺は火遁・鳳仙花を準備し、そこから手裏剣影分身を使った。無数の炎と手裏剣が追加され、その威力から守ろうと砂がガーラに密着していく。こちらの威力が増せば増すほどに、ガーラを守るために高熱の砂が密着する。

 

「なんで? まだ眠たくないのに。やだ……眠りたくな……い」

「サウナってのは度を超えると眠くなるよな。お休みお嬢ちゃん。悪夢があるなら俺が払ってやるから安心して眠りな」

 このレベルの攻撃は砂の幕と砂の鎧でガードし続けしないと防ぎきれない。それでも守り切れるとは限らないが、ガーラのチャクラに加えて守鶴の力も使えばまあ何とかなるだろう。

 

そのまま行けば守鶴が出て来るかもしれない。だが……協力し合う人柱力と違って尾獣だけなら、写輪眼の幻術が効くかもしれない。俺はそう思って砂の幕の中に微笑むことにした。

 

(尾獣相手なら……そして、木の葉崩しが起きるとしたら、その時こそコツの使い道だ!)

 万華鏡写輪眼。その真価は中忍試験の為だけに使うべきじゃない。だが、暴れる尾獣を止める為、そして何より……三代目の救援に向かうとしたらその時こそ、万華鏡写輪眼の出番だろう。写輪眼で無理だとしても

万華鏡写輪眼なら、そして下忍如きが関わるべきでない戦いにも、うちは(・・・)一族の真価を持ってすれば状況を打開できるはずなのだから。

 

三代目救援作戦。それが万華鏡写輪眼を持って俺が挑むべき忍務だった。




第七班の戦いを原作と戦法を変えてちょこちょこっと載せてみました。
最終的にガーラはレンジでチンというか、焼き肉の遠赤外線する感じでノックアウト。
守鶴が出て来たら万華鏡写輪眼状態でピンポイントの幻術予定です。
デイダラの起爆粘土で気絶した時みたいに、気絶だと暴走しない可能性もありますが。

来週は一番やりたかった三代目救援作戦の予定です。

このシリーズに限らず、複雑な状況・行動を説明する図解はあった方がよいですか?

  • 一枚絵くらいなら見る
  • 戦闘前など、タイミング毎に見たい
  • むしろタイミング毎に一話使って説明が必要
  • 図解は要らない・読まない
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