二つの加具土命【第一部完】   作:ノイラーテム

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三代目の救援作戦

 気絶によってガーラ戦は終了したが、不穏当な気配を感じて万華鏡をONにする。

膨れ上がる殺意に対して明確な意思の元、フルパワーで幻術を叩き込んで守鶴を黙らせた。永遠の万華鏡ではないから微妙かもしれないが、ガーラの気絶によって無軌道に暴れようとする程度の守鶴ならば何とでもなる。

 

もしこれが彷徨ってる尾獣なら最初からフルパワーなので無理かなとか思いつつ、今は十分な成果であると思っておこう。

 

「まさかガーラが! くそっ! この熱量じゃあ……。カンクロウ!」

「任せるじゃんよ!」

(やはりこいつは傀儡だったか)

 真っ先にテマリが飛び込んできて砂の中のガーラを助けようとするが、強烈な輻射熱の為に手を出せないでいた。そこで代わりに救出したのがカンクロウだったのだが……焙られて行く間に表皮に当たる部分が剥げて行った。

 

やはり推測した通り傀儡だったのだろう。俺は試合が終わった事もあり炎の鏡を追随状態にしつつ、一時的に引いて兵糧丸を口にしておいた。原作での追撃戦を忘れたわけではないが、関与するとしたら三代目の方が重要だろう。

 

「なんだ!? あれは風影様と火影様か?」

「ちっ。言わんこっちゃない。何か騒乱が始まるぞ」

 原作通りに木の葉崩しが始まった。審判を務める千本を咥えた上忍……だったよな? が自体を把握している間にその場を離れて三代目救出に向かった。そうしないとガーラを追えと任務が与えられかねないので仕方ない。

 

「ちょっと待て! お前程度が何の役に立つ! 例えお前が中忍並みの実力があったとしても……」

うちは(・・・)一族としてやるべき事を為す! それともあんたにあの結界が解けるのか? 任務があるなら、解いた後で聞いてやるよ!」

 離れていた事が幸し、十分な助走距離を得る事ができた。振り向きざまに万華鏡写輪眼を見せつけて、うちは(・・・)一族の中でも既に強者なのだと判らせておく。

 

まあこの後が気にならなくも無いが、ナルト達が追撃戦に参加するのはサスケが追ったからだ。もしあの炎で出来た結界を何とかした後で向かうならば、先に合流して移動できるだろう。

 

「何をしに来た! お前などが……まさか……」

「知ってるなら話は早い。この結界は俺が解除する。居るなら封印使いでも呼んでおけ。邪気の気配がする」

 暗部らしく仮面をつけた一人が制止しようとしてくるが、万華鏡写輪眼を知っているのが押し黙った。結界の解除自体は自身があるのだが、穢土転生までは間接的にしか邪らえないので、居るならば呼んでくれと告げておく。

 

「馬鹿め! この四紫炎陣が下忍に解けるか!」

「てめえの常識ではそうなんだろうな。だが……うちは(・・・)を貴様なんぞと同列に測るな!」

 結界の手前で音忍から罵倒されるが、反論しつつ追随している炎の鏡に万華鏡を向ける。形状変化で(ハク)の姿を取りつつ、気分転換というか知って居る者を誤魔化すために服装は忍者装束ではなく、中華系の服装にしておいた。

 

「……炎が人に化けやがった!?」

「そうさ。こいつは戴教の教主が一人、白天君。俺が契約した炎の化身だ。見ての通り俺の眼には炎に干渉する力がある」

 二つのカグツチ。本来の加具土命には形状変化と呪われた邪炎の力が。軻遇突智と名前を付けたもう一方には炎の性質を弄り、邪を払う白炎にも到達できる。

 

そしてこの二つを兼ね備える事で、この四紫炎陣に干渉する事ができるのだ。白が持つ炎の体へ性質変化を起こさせ、結界を構成する炎に近づけていく。同時に結界の形状自体にも干渉を起こし、動き易いように固定化させてしまうのだ。

 

「くくく。この結界、要は焼き尽くす炎の性質と同時に、反発することで時空間忍術を弾く性質があるんだろう? なら同じ性質を持つ炎の体ならば問題ねえ」

「馬鹿な。そんな事できるわけがねーぜよ!」

「可能ですよ。とりあえず任務は何ですか?」

 炎の体ならば攻勢防壁としての炎の攻撃力には意味がなくなる。同時に反発力を形状固定によって一時的に無力化すればよい。この四紫炎陣は特化型の能力であるがゆえに『似た能力』に対して弱いのだ。

 

「三代目の援護を。俺は結界を解除してから行く。無理なら退散してくれても良いぞ」

「お安い御用」

 とはいえ炎の壁を超える経験など普通の人間にはるはずがない。同じことを俺の火遁分身でやっても無理だったろう。だがコイツは白の意識を取り込んだというか、死体と魂を呪って作り上げた存在だ。『魔鏡氷晶』で同じような事をしている白であれば、俺の援護もあって難しくはないだろう。

 

「さてと。見ての通り成功したな。……じゃあ結界師を一人か二人ほどブチ殺すか。暗部や上忍連中はまずは援護に徹してくれ。迂闊な接近は巻き込まれるぞ」

「言われるまでもない。さっさとやれ!」

 俺は印を組んで炎の剣を出現させつつ、四人の音忍を見比べた。転生で記憶が曖昧に成っているが、こいつらくらいはだいたい覚えている。忍界大戦の連中とか殆ど覚えてないけどな。

 

「頭が二つに腕が六本。それと体格が妙にデカイやつか。それぞれ防御手段は持ってそうだな。……つまり犠牲者はてめーだ」

「このゲスヤローが! 動けねえ奴をなぶり殺しにする気か!」

 狙いは紅一点の女忍者だ。こいつだけ耐久力が低いというか、特殊な防御がなさそうなので倒し易い。そして性格的にブチ切れ易いので結界を壊し易くもあるのだ。

 

原作知識がだいぶ役に立たなくなって来ているので、改めて手法を検討する。そもそも結界とは均等な術者が能力を調整しながら作り上げる物だ。ゆえに壊す方法は二つ。一つ目は言うまでも無く術者を殺す事。二つ目は単純に同調を乱してやることである。つまり、コイツを選んだのは二重の理由があるのだ。

 

「悪いな。そのまま何もできずに死んでくれ」

「このゲスチンが! やってみやがれ! その時がてめえの最後だ!」

「やめろ! 自分で結界を解く気か! ……クソ!?」

 炎の剣に先ほどと同じような性質変化、結界周囲に固定化を掛ける。すると同じようにスルスルと女忍者の腹へと突き刺さっていった。それに対して敵もただではやられたりはしない。顔の周囲から例の呪印を増殖させ始める。

 

それは結果として、連中にとって最悪の形になるだろう。既に傷付いた状態で状態1への変化、こんな状況で結界のコントロールが保てるわけがない。こんな事をするくらいならば、残り三人が相当な負担覚悟で維持するべきだったと思える。

 

「どうする!? もう保たねえぜよ!」

「てめーら! 全員で状態1になんぞ! できるだけ保たせろ! その間に体勢を整えていただく」

「……おう」

 面白いことに音忍のリーダーは全員が状態1になることを決めたようだ。流石にこちらの都合に合わせてはくれないか。まあこれはこれでアリだとは思うが。

 

四紫炎陣が一瞬だけ膨れて、泡の様になりながら周囲から俺や暗部たちを弾き飛ばした。俺は炎の剣を離して、後は剣を構成する火遁分身に任せて態勢を整える。

 

「多由也! お前は責任を取ってここで死ね!」

「ク……判ったよ! このゲスチン共を皆殺しにして! あ? 剣が……」

 音忍のリーダーが指示すると多由也と呼ばれた女忍者は懐から何かを取り出そうとした。だがその前に、残しておいた火遁分身が正体を現したのだ。それも炎の姿を戻しながら……。

 

「死ぬなら一人で死にな!」

「自爆攻撃か! しまっ……」

 火遁分身の爆発によって多由也が持っていたナニカは崩れさっていく。内側から焙られて女の方も虫の息だ。もう終わりの筈だが……こいつら状態2があるんだよな。

 

「大蛇丸様……申し訳ありません」

「いいのよ。サスケ君の秘めた実力が見れたのですもの。それもお為ごかしじゃない本物ののね」

 今にも結界が崩れ去ろうとしているのに大蛇丸は上機嫌だ。まあそれもそうだろう。手元にはまだ穢土転生体の火影二体。この会場に居る暗部とカカシ辺りの上忍を足しても問題なく勝てる。

 

ゆえにここは浄化の炎で穢土転生を解除できるか、それとも封印術の使い手が居るのかが全てを分ける。

 

(俺の推測通り、穢土転生が複合忍術なら問題ねえ。その手の術は重ね掛けの為に敷居を低くしてるはずだからな)

 純粋に一つの術なら生贄一人で成立するなんて都合は良くない。だから複合忍術である可能性が高いのだ。しかし複合忍術であれば、基本となる忍術はあくまでゴーレム的な肉体構築のみ、それなら生贄は最高級の素材になるので帳尻はあう。つまりは追加してサモン・ゴースト的な術で情報を元に魂を呼んで縛り付け、技術を備えた肉体を情報に合わせて加工しているに過ぎないのだ。魂を浄化できれば、原作通り何とでもなるだろう。

 

これに関してはある程度の自信があった。確か忍界大戦では封印が成功している。相当に研究しているはずのカブトの術式であるにも関わらずだ。そして二代目曰く、『この術式の利点は誰でも可能である』という事らしい。術式一つ一つはかなりランクを落として、基礎はランク6、追加術はランク7という様に術を追加で掛け易くしているのだと思われた。そして極めつけは、印さえ知って居れば自分で解除可能だという。それはつまり……コマンド・ゴーレムなりコマンド・スピリットで命令を出し直せるって事だよな。

 


 四紫炎陣が消えていく。どうやら術のバランスが崩れて維持できなくなったらしい。それでも何とかしようとしていたのは、三代目と戦いつつ態勢を整えようとした為だろう。

 

「白天君! 戻って来い、斬天君と交代させるぞ!」

「……承知」

 三代目の援護に回していた白を手元に戻し再不斬へと姿を切り替えていく。同時に俺のチャクラに合わせて調律しつつ、服装は中華系でもカンフースタイルの物にしておいた。この辺がチャイナである白との差だ。不要とは思うだろうが、霧隠れの連中が居ても困るし、意識を切り替える意味でも服装の差は割りと重要である。

 

「あいつらを斬れば良いのか? そうならさっさと得物を口寄せしろ」

「判ったよ。手持ちにゃ戦利品の首切り包丁しかないが良いな?」

 予め決めておいた口裏を合わせる。つでに口寄せした首切りに浄化の炎をまとわせて炎の大剣を作り上げれば完成だ。直接に再不斬に掛けるとこいつら浄化しちまうのが難点だから丁度良い。

 

「奇妙な格好ね。どこの国の装束かしら」

「戴教は()つ国の宗教らしいからしらねえな」

「服なんざ飾りだ。どうだっていいだろう」

 興味深そうな大蛇丸の言葉に俺は答えるが、所詮はアリバイ造りと思っている再不斬の方は取り付く島もない。誰から倒そうか、それとも俺を守って戦おうか少しだけ悩んでいるのだろう。

 

どうやって大蛇丸を倒そうか、そもそも倒せるような奴じゃねえよなあとか悩んでいると、驚きの事実が判明した。やはり原作知識なんざもうサッパリ当てにならねえ!

 

「つれないのね。でもまあそっちが意匠替えするなら、こっちも気分を切り替えようかしら。こんな風にね……」

「大蛇丸……その顔は……」

「大蛇丸……その服は……」

 顔を変え衣装を変えた大蛇丸。その姿は驚愕に値したが、三代目と俺とでは意味が異なる。三代目は大蛇丸の顔が見知らぬ若者……他人の物であった事。そして俺の驚愕は服装が見知っている物だったことだ。

 

裾の長い黒衣に赤い雲の模様だと……。

 

「まさか……。その服、暁か!」

「あら? よく知っているのね。その顔……知っているのは組織だけじゃないわね? まさかそこまで知られているとは思わなかったわ。ますます興味が出ちゃう」

 くすくすと笑う大蛇丸だが、そんなのに構わっている余裕はない。奴がまだ暁に所属しているのなら、今回の件は非常に難易度が上がる。大蛇丸相手というだけでも危険だが、奴らの目的が変わってないのであれば『別の意味で危険』な人物が出るのだ。

 

もしこの陰謀が二重性を持っていたらどうだろう? 音と風が組んで木の葉を狙うと同時に……、失敗したらそのまま風を裏切ってガーラを攫うつもりなのだとしたら!

 

「うふふ。それだけの頭脳を持ちながら、さっきまで戦っていたあの子を心配してるの? 妬けちゃうわね」

「どういう事だサスケ。暁はただの傭兵組織ではないのか? 何を知っておる?」

「……イタチが所属してるって噂を聞いたから調べた。……尾獣を収集してるんじゃなかったか?」

「何!?」

 大蛇丸がヒント……というか、こちらを焦らせる為に秘密を開示する。やはり俺が知っているという事を焙り出そうとしたのだろう。三代目の質問に答える事でどういう状況なのかを端的に説明していく。

 

まさか大蛇丸がまだ暁だなんて思いもしなかった。しかし原作がズレ込んでいるのだ。僅か数年のズレでそんなこともあるだろう。そして……さっき俺はガーラも守鶴も眠らせてしまった。もし奴らの手の者が……たとえばカブトが狙っていたらヤバイんじゃないか? 俺のやったことは奴らの手間を省いてやっただけなのだ。

 

「他に何を知っているのか聞き出さなくちゃ。……いいえ、それとももうこのまま収穫しちゃおうかしらね? 十分に成熟しているみたいだし」

「……俺の体を奪う気か。この眼には二人分のチャクラが見える。その体は他人の物なんだろ」

「く……。げに恐ろしきは人外のモノよ」

 原作と違って大蛇丸自らのネタ晴らしが無かったようなので解説を入れたが、三代目は少し誤解したかもしれない。尾獣を収集して中身を抜いたり、自分の中身を他人の中に入れるような連中だと思ったとか? まあチャクラを写し取って偽者のメンバーを自在に作り出す術とかあるし、あながち外れてはいないんだが。

 

「初代様は他の連中を抑えて。二代目はサスケ君を」

「ちっ! むざと掴まってたまるかよ! 火遁……鳳仙花!」

「止せ! 穢土転生に攻撃など効かぬ!」

 効かぬは承知! 俺は鳳仙花のアレンジである爪紅の為に手裏剣を投げつつ、灯す炎に浄化の性質を与えた。こっちに来るのが二代目ってのは逆に都合が良い。一番危ない人だし……もし、解除できるならば好都合だからだ。

 

「ええい! 手裏剣影分身の術!」

「……」

 ここで手裏剣影分身を掛けて、浄化の炎ごと手裏剣を追加していく。演出するのは俺の焦りであり、無数の手裏剣弾幕という手順だ。その実態は浄化の炎で二代目を焙る事。穢土転生に攻撃は効かないので、本来の二代目と違って真っ直ぐ突っ込んで来るだろうと踏んでいたからだ。

 

今狙うべきは二代目を倒す事じゃない! 二代目を操る術を破る事! もちろん穢土転生が解除されたって構わない。追加印で手裏剣の数を増やすべく、チャクラを練ってドンドン追加していく。

 

「止めんか。効かんと……」

「がっ!? クソ……」

「ふふ。知らないというのは幸せな事ね。二代目様、次はさっさと捕縛して頂戴な」

 三代目の忠告もむなしく、俺は蹴り飛ばされて屋根の瓦にかろうじて引っかかるレベルだった。もちろん再不斬や暗部たちに援助する余裕などない。むしろ下忍の癖にここまで来たことに怒りを覚えているかもしれないが。

 

だが、さっきのタイミングならば十分に捕まえられたはず。……ということはもしかして……。




 中忍試験編で一番したかったことをやってみました。
特性を操るカグツチと形状を操るカグツチ。この二つなら四紫炎陣を突破できるんじゃ?
そう思ったのでやった見た感じです。
結界張られた後にさっそうとブチ破る展開って、あまりみないなと思ったのもありますけど。

『戴教の教主が一人、白天君』
 白は追われてるので、コード-ネームとして封神演技の十天君をモデルにしてます。
炎の化身で、服装はスリットの大きなチャイナ服。
再不斬と繋がっていて、偏向にはカグツチが必要。

『戴教が教主の一人、斬天君』
 こんな十天君など居ないので創作と言うか、フジリュー版の白天君が
男女一組で一人の仙人だったので、白とペアで一人にしてみました。
白がチャイナならば再不斬はカンフースタイル。炎の化身ってのは同じ。
ちなみに白が炎の鏡に化けるのに対して、再不斬は炎の霧に化けます。
もちろん現時点での力量ではカグツチを使わなければ無理なので、滅多に使いませんが。

『火遁・鳳仙花白爪紅』
 手裏剣を投げるタイプの鳳仙花である爪紅に対し、浄化の特性を与えた物。

このシリーズに限らず、複雑な状況・行動を説明する図解はあった方がよいですか?

  • 一枚絵くらいなら見る
  • 戦闘前など、タイミング毎に見たい
  • むしろタイミング毎に一話使って説明が必要
  • 図解は要らない・読まない
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