カブトを倒したことに自分でも意外なほど高揚していた。
それは原作でカカシが出来なかった事をやったからではない。結果的に奴が治癒可能なら倒して無いのは同じだからだ。ただ……あそこで原作など関係なく倒そうと思い、その決断のままに行動しきった事に満足している。
(原作を知る効率だとか、そのために齟齬を知りたいとか言い訳を付けて……。自分の決断で自分の人生を生きてなかったんだな)
サスケが原作で格上に挑んでボロボロになりながらも生き残り、時に機先を制しているのは良くも悪くも目的のために生きているからだ。その為に全力で行動し、全身全霊で生きている。
それに対して俺は再不斬や
『なんだ。楽しそうだな』
「戻ったのか。……俺は俺のするべきことを見つけたんだ。ようやくな」
大蛇丸と三代目の戦闘が終わったのか、それとも柱間を一度で良いから斬れと言った任務を達成したのか。再不斬が俺の元に戻って来た。退散せずに報告に来るとは律義な奴だ。
『そいつは幸いなことだ。思い返せばオレにはそんな物はなかったのかもしれん。精々、大切にするんだな』
「そうさせてもらうさ。サスケ忍伝ってのがあるなら此処から始まるに違いねえ」
再不斬は水影暗殺をしようとして失敗したそうだが……。詳しい事は聞いていないんだよな。確かマダラが先代水影に何かしたくらいは覚えているが、そいつをどうにかしようとしたのか、それとも単純に下克上がしたかったのか?
いずれにせよ目的を見失ったこいつが俺の元に来て、代わりに俺が自分の目的を見つけたってのは皮肉ではある。
「今から敵中に飛び込むがお前の炎霧で周囲を覆ってくれ。その後に適当なところで捕まってるナルト達の救助を頼む」
『……チャクラを回せ。あの化け物めオレを子供扱いしやがって』
炎の体であるはずなのにかなり手酷いやられ方をしたようだ。再不斬たちは霊ごと取り込んだので、術として登録した火遁分身たちと違い呼び出し直しても元の状態になるわけではない。火遁分身よりもはるかに強いし自立行動可能なのは凄いのだが、思わぬところに穴があったもんだ。
とはいえ穢土転生みたいな自動回復があるわけでもなし、再不斬の力は今直ぐ必要なのでチャクラを回して回復しておいた。
『……誰か来たな』
「っと。このタイミングでテマリか……さて、どうすっかな……」
ナルトを救出し次第に大火力で殲滅したい。その目的は変わっていないが手段としてもう少し別の方法を選びたくなったのだ。
『好きにしろ。ただ後悔はするな』
「……判ったよ。思いっきり行った方が人生楽しいしな」
白との出逢い以外は後悔してそうな再不斬ゆえに説得力がある気もする。問題はどう説得するかなのだが……。
ここは思いっきり正面からぶち当たってみる事にした。よく考えなくともさっきまでの俺は原作知識を念頭に、チラチラと効率良い事を狙ってたしな。テマリが信用できないと思うのも判る気がする。ならばここはある程度の情報を渡して説得した方が良いと思えてきた。
「こっちはカブトを倒したが、そっちも一応は無事な様だな」
「ああ。情報通り奇妙な術を使う奴だったが……最後はバケモノになったぞ。奴の切り札だろうから言っても仕方のない事だが……」
状態2まで接戦で戦えば危険な相手だったのかもしれないが、用意しておいた罠を使ったり相打ち前提で一足先に防御を固めればテマリの方が有利だったはずだ。見た所は傷も少ないようだしおそらくは風遁をバリアのようにして矢を躱したのだと思われた。
「そいつはすまなかった。そういえばカブトと戦っている時に気が付いたんだが、あいつここでも誰かの為に情報収集しながら戦ってたんだよな。もしかして腕利きの傀儡師は数機の傀儡をいっぺんに使えるのか? だとしたら少し厄介だが」
「あ、ああ。……確かに砂で一番の傀儡師であるチヨ婆さまは十機まで行けるはずだ」
まずは状態2を暴けなかったことについて素直に謝る。その上で話し易いようにカブトの言動から気が付いたという触れ込みで、原作の事を交えて少しだけ予測してみた。試合でもカンクロウが傀儡の籠手を扱ってたし、俺が推測するのも変じゃない筈だ。
その上でサソリが一人でありながら複数の動きを取れるという前提で話を本格化する。
「ならサソリも同じことができるとして、一番困るのは人質で脅されることだ。奴らから見れば尾獣を奪って殺す相手だが、俺たちにとっては大切な仲間であり家族だからな。だからあんたには援護よりも救出を頼みたい」
「む……。言いたいことは判るが……それで勝てるのか?」
疑いたくなるのも当然だろう。事前の話し合いではテマリが傀儡の動作を教えて、俺の火遁とテマリの風遁でゴリ押しする予定だったのだ。それがテマリを戦力に数えないのであれば不安に成っても仕方はない。
だが先ほどよりもテマリは俺の言葉を素直に聞いていた。それはテマリーがガーラを救いたいという思いと、俺がナルトを救いたいという思いは同じだからだ。その上で俺が囮になり、テマリを信じて二人を任せるという手順なのだからどちらの負担が大きいかは一目瞭然だ。
「言ったろ。これは大切な物を守る戦いだってな。なら出し惜しみ話だ。俺が普段使わないでいる、
「……本当なんだな? 判った。だが最後のは余計だ」
少しだけ悩んだようだが最後には納得したようで、苦笑気味に裏拳でツッコミを入れてきた。俺がリスクのある切り札を全部使ってまで二人を助けると言ったことに、テマリもわだかまりを解いたのだろう。
「それはそれとして作戦を聞かせろ。無謀なら止めるからな」
「そりゃ当然だな。まずは霧で視界を塞ぐ。コイツは戴教の教主が一人、斬天君。炎の霧を操る術と体術であんたを守るはずだ」
『……』
作戦としては大筋で変わったりはしない。大火力に何を使うかが変化するだけだ。再不斬を紹介しながら順序立てて説明する。
「炎の霧をあんたの風遁で高速展開する。四方の視界をかなり悪くした上で一部は完全に塞ぐ。コイツの案内があれば確実に辿り着けるだろう。後は二人を担いで脱出するだけ。あんたが術を使うとしたら護衛が居るか、サソリが自棄になって撃ちまくる範囲攻撃を反らす時だけの予定になる」
「なるほど傀儡の視界そのものを封じれば多角的な攻撃も防げるという事か。判った」
テマリは状況が定まっているとかなり思考速度が早い。おそらくはシカマルのような柔軟な思考に欠けているだけで、頭のキレそのものがかなり高いのだ。
テマリが口にした通り作戦の基本コンセプトは視界を封じて傀儡を封じる事だ。炎の霧だから僅かずつでもダメージが入れば、罠が仕掛けてられていても誤作動するだろうしな。
「とはいえその条件で確定するのは二人の確保だけだぞ。お前は? ……いや、お前が倒されると直ぐに追いかけられてしまうからな」
「心配してくれるのか? そりゃありがたいが問題ねーよ。普段は避けている切り札を使うって言ったろ」
炎は防御には向かないものの、二つのカグツチを使えば弾幕を張れるからある程度の攻撃は防げる。普通の火遁よりも火力と範囲の両方が高くなるし、炎の霧の動き自体を変化させられるからかなり安全性も高くなると言えるだろう。
そして今回に限っては修行ですら出したくない『本当の切り札』を出しても良い状況だと思っている。というか効率よく戦う為なんかにゃ使いたくねえが、ナルト達の命が掛かってるなら最初から使う事を前提にしても良かったくらいだ。
「そこまで言うなら信用しよう。任せたぞ」
「ああ。二人を頼む」
俺たちは拳を打ち合わせて健闘を祈り合った。そして二人を確保しているらしき場所まで辿り着くと、判れて術の準備を始める事になった。
原作と違って洞窟ではなく谷間に結界を幾重にも張ろうとしたらしい。視線を遮る結界を張り谷の構造で音自体も遮る。その周囲にカブトが札を剥がさないと接近できなくする様にするつもりだったようだ。
洞窟ほど狭い場所じゃないが谷風は拭かない時間帯だし、粘着性も持たせた霧だから問題ない。再不斬が放つ炎の霧をテマリが風遁で押し流すと、谷間中に赤い霧が満ち始める。
「流石に作業を続行する程間抜けでもねえか」
「これほど派手にしておいて警戒するのは当然だろう。馬鹿にしてやがるのか?」
砂漠の人間はクールかつホットだ。普段は冷徹なのに妙なところで熱くなる。砂漠の砂が昼間ならば熱く夜ならば冷たくなるようなモノだろうか?
ここで見たサソリの外見は術の影響か本体に近かった。カンクロウが造っていた籠手をもう少し洗練させて翼の様に背後を守り、やはり攻防一体の端末として尻尾を垂らしている。あえて言うなら原作で最初に見たガワと中身を足したような感じだろう。もしかしたらこれから数年の間に開発するのか、あるいはすでに作っていてその余剰パーツを呼んでいるのかもかもしれない。
「そうでもないさ。此処にはイタチが居る可能性もあったからな。その為に写輪眼対策をしていただけだ。傀儡軍団が居るなら一緒に爆破してやろうかと思ったが」
「……オレはイタチのついでか? 何時までも兄貴離れのできねえガキが」
イタチへの警戒を先にしたからか、それとも御自慢の傀儡を一蹴できると言ったからかサソリは相当にお冠の様だ。眼に見えて激高してはいないもののトサカに来ているのかもしれない。
それはそれとしてサソリに増援は居ないのだろうか? 生贄に加えて相当なチャクラを与えなければならないとはいえ、離れた場所に送り込めるならばかなり有用な術だと思う。左目の焦点はサソリから話さないように心がけて周辺を伺ってみるが特に誰か隠れているには思えない。
「誰も居やしねえよ。人間は……な」
「だと嬉しいんだがな。ありがたいような拍子抜けするような……」
サソリは霧を抜けて俺の正面から睨んで来るが少し奇妙ではある。サソリから見れば複数の傀儡を潜ませて、全体で俺を見れば済む話だ。炎の霧でダメージが行くとか、邪魔者への怒りがあるにしてもあえて位置をズラす必要はない。
だが『別の事情』があり、その影響もあってこちらを警戒しているとしたらどうだろうか? より正確にはその事情を達成するまで、『万華鏡写輪眼による瞬殺』を警戒しているとしたら……という話だ。こちらとしてもその為にという訳ではないが瞬間火力を上げるために、性質を変化させる方の左目でサソリの全体像を見ていたので間違った対応ではない。
「気にくわねえな。やはりオレ舐めて居るようだ。それも相当に……」
「いや? 最大級の警戒はして『いた』ぜ。あんたが完全な状態の赤砂のサソリだったら、暁でも上から数えた方が早いくらいの強者だろうからな。下忍にゃちとキツ過ぎる相手だ」
過去形でサソリの脅威度を評したことで奴の体はピクリと動いたような気がする。やはり本物の体ではなく、憑依体(?)では忍耐力も含めた再現度が低いのだろう。あるいはチャクラと魂に影響されているというべきか。
「てめえにオレの何が判る?」
「忍は動き一つで情報を晒してしまうと言うが……。国を一人で落とすと言われた、あの赤砂のサソリが俺の視線を外そうとしている? とんだ冗談もあったもんだ。あんた、その体は影分身なり傀儡で造った偽者か何かなんだろ? だから俺の瞳力を気にしているんだ」
奴は俺を警戒しているんじゃなく俺の眼が持つ瞳力を警戒している。特に天照のような火力系の瞳力であることを警戒しているってわけだ。そう考えれば奴の奇妙な動きにも納得ができる。
憑依体は影分身ほどじゃないが本体よりも耐久力が低く、もちろん倒されれば存在を留める術が解けてしまう。別に事情が何かは確定できないが、少なくとも俺を倒した後に儀式を続ける気ならば、継続する為に奴の憑依体は此処に居なければならないのだ。たかが下忍に本気になるのは馬鹿馬鹿しいが、かといって一瞬で燃やされては困るのだろう。
「この事から導き出される結論は二つ。一つ目はイタチから万華鏡写輪眼が存在するって情報だけしか聞いていないってことだ。
「貴様……」
ここで煽るとサソリは怒りと冷静さの両方を見せる。やはりクールかつホットだ。どんなに腹が立っても頭だけは冷静に保つのが忍びってもんだよなあ!
万華鏡写輪眼は
「見せてもらおうか。その切り札ってのをな!」
「見せてやるよ!
炎の霧で徐々に周囲が燃えている事もあり、サソリはこのタイミングで仕掛けてきた。こちらは万華鏡以上の切り札があるとしても、これ以上の引き延ばしは問題だ。それに時間を置けば傀儡だって燃えてしまうだろうし、こちらの増援が到着する可能性もある。
実際にはこちらの増援は既に行動を開始しているはずだ。というか上手く行っているならばそろそろ連絡があってもおかしくはない。
(再不斬からの合図がねえ。それに霧が徐々に遠ざかってやがる。ここから推測できることはまだナルト達を確保できてない上に、無音戦闘の達人である再不斬ですら確保できないほどの相手がナルト達を抱えてやがる)
援軍が期待できない以上、ここで俺がサソリを倒すしかない。サソリとしては怒ってはいても俺なんか端から相手にはする気なかったのだろう。あくまで任務のために時間稼ぎをしているに過ぎない。
しかしこのことが幾つかの予想を俺に立てさせた。サソリは俺ともども増援を足止めしつつ、『誰か』に色々させているという訳だ。
「さっきの続き。二つ目の情報。……それはてめえがカブトから情報を得てるって事だ。あんたは傀儡を操るのと同じ技術で奴から情報を得たな? まずはもう片方の眼の力を見せてやろう!」
「良く回る舌だ。忍が口で語るんじゃねえ」
もっともなのでここからは眼で語ることにする。炎の霧が持つ熱量を上昇させ、気流を吹かせる事で毒霧を無効化。特に近辺の霧はちょっとしたワイヤーくらい燃やせるようにしておく。
まずは場を整える事で戦うだけでも優勢にできるようにしておく。相手は焦らせ自分はクールに、時間すらも味方につけるように誘導していく。それくらいでなければ遥かに格上のサソリには敵うまい。同時にこの状態でもサソリが焦らないのであれば、確実にナニカを実行していることになる。
「火遁・鳳仙花爪紅。そして手裏剣影分身……さっきのノリで行くなら火狐雪崩だ!」
「ちっ! イタチみてえなことを」
鳳仙花に手裏剣を混ぜるアレンジの爪紅。それをただ放つだけではなく上に向けて放った後、手裏剣術で角度を変えて落ちてくるように調整。そこから手裏剣影分身で高速で降り注がせる。もちろん炎の性質を変化させて威力を上げてあるので当たればただでは済まない。
ただしサソリに直接降り注がせるだけではなく、霧の中も含めて拡散する様に放っておいた。奴は単独に見えて隠している傀儡を何時でも操れるからだ。
「……うっとおしい炎だ。まとわりつく上に延焼ってレベルじゃねえぞ。隠しておいた傀儡が何体か燃えちまったじゃねえか。その目、形状を変えるだけじゃねえな? 火を操って上限突破してやがるのか、それとも熱量自体を操ってるのかは知らねえが」
「じゃなければ使うかよ。ただの火遁を必殺の炎遁に変える。それがもう一つの万華鏡写輪眼だ」
天照の炎は視点を元にした遠距離着火だが延焼し難い。逆にこちらは手元を起点にする代わりに延焼し易さなども自由自在に変化させられる。眼の負担も天照に比べれな相当軽いので、持久戦型の万華鏡写輪眼だと言えるだろう。もちろん天照みたいな即効性はないので、今みたいに炎の霧で誤魔化す必要があるのだが。
こちらの攻撃に対してサソリは回避しながらカンクロウから奪った傀儡で攻撃しつつ、本人の言動通り隠していた傀儡で攻撃して来る。俺の眼はチャクラだけではなく炎の状態も見切るので、熱変化の揺らぎで不意打ちを察知できる。いわばこの炎の霧は相手にとっては視覚遮断と罠であり、俺にとっては援護用の結界みたいなもんだ。
「戴教の教主たちが使う十絶陣は五つの性質変化に陰陽を加え、己の都合の良い結界を作り上げるとか。今の術はその真似事って所だな。……だが
「舌で語るなと言った!」
サソリの言葉は荒いが仕事は丁寧だ。籠手とも翼ともつかぬパーツはこちらの攻撃を防ぎ、同時に爪を飛ばしてくる。尻尾もまた同様にガードに利用しつつ鋭い突きを放ち、跳ねることでサソリを高速移動させることができる。それらの動きに一切の無駄がないどころか……同時並行で周囲からワイヤーや千本が飛んでくる。サソリを巻き込むこともあれば、逆に嵐のような攻撃でも自身を巻き込まない時がある。コレクションの百機とまともにやりあえば、今の俺では勝てなかったかもしれない。
そして、そんなサソリだからこそ判ることがある。やはり今の戦闘は文字通りの児戯であり、『本命の罠』を待つまで子供の様子を見ながら行う暇潰しなのだ。ゆえに本気で戦ってないし、百機を使ってないのも隠している別件……本命の罠にコレクションが巻き込まれることを恐れているに過ぎないのだろう。
「むしろ舌で語ってたら都合が悪いんじゃねーのか? 写輪眼に対してベラベラしゃべって居たら何もかもバレちまうもんな!」
「っ! 貴様にオレの何が判る」
怒ったと錯覚させる為か、それとも誘導から目をそらそうとしたのかこれまでにない密度の攻撃がやって来る。明らかに複数体の傀儡が攻撃に加わり、白兵戦を交えて射撃が飛んでくる。
「はっ! 数を増やしやがったか。だが……」
この攻撃には俺も参ったので、仕方なく準備しているこちらの本命を使わざるを得なかった。透明な装甲を露出させるだけで体中の細胞が軋むような気がする。徐々に準備するだけで体が痛むのに、急に動かしたために攻撃が直撃したのではないかと思う程の激痛が体を走り抜けた。
「っ!? 何がが弾いた? そいつがお前の本命か!」
「そうさ。まあ外見はともかく造形美や機能美だけならあんたの傀儡の方が上かもな。その絡繰りに関しちゃ正直脱帽するぜ。伝え聞いた人傀儡なんかよりよほどスゲーと感心する」
「ちっ! 砂の奴らか……余計な事を」
俺が用意する本命に気が付かれるのは当然なので、今度はこちらが気を散らすために声をかけた。もっとも絡繰りに対して感心してるのは本当の事だ。
傀儡は人間である必要が無く、人間を模したとしても同じような関節である必要はない。人の形をしているから違和感が無いから騙され易く、それでいて人間以上の動きをして見せるのだ。これに感心せずして何を感心しよう。
炎の霧が徐々に薄れていく。一つは術者である再不斬が離れていく事であり、もう一つは俺が利用しているためである。火力を上げるために圧縮しているせいで量が減っているのだろう。
既に残るは防壁を兼ねた遮断幕として利用している俺の近辺のみ。そろそろ決着の時だ。
「他所の里の話だ、なんでもは知らねえ。だがこれだけはハッキリと判る。人傀儡なんざ技術の一つだ。穢土転生でも構わねえくらいだしな。それに対して絡繰りの方は本当に凄い。もし技術の進歩が遅れたとしたら、あんたが人傀儡なんぞにハマっていたせいだ」
「黙れ!!」
今度こそサソリは怒りに震える。正真正銘に自身の奥底から湧き上がる怒りであり、もし憑依ならば写し取った魂に生贄が動かされてしまったのだろう。そう思えるほどに奴のチャクラはかつてない程に荒らぶっていた。
「火を使うのはてめえだけの特権じゃねえぞ。赤秘技を見せてやろう」
「ならこちらもランクを上げるだけさ。火遁・龍炎放歌の術!」
その証拠にこちらが炎を操れると知って居るはずなのに、油と火炎で炎遁並みの火炎放射を仕掛けてきた。もちろんソレは俺に二つのカグツチを使わせる囮であり、その隙をついて窮地に陥れる為の前振りなのだろうが。
俺はあえてその挑戦に乗り、二つのカグツチを利用しないとまだ使えない術を強引に行使する。この状態ならば火遁に限り火影を越えて俺の適正はマダラ並だ。火炎で火炎を圧倒することができる。
「何度でも言うぜ。もしあんたが人傀儡の技術も使用して、新たな世代の傀儡を造って居たら……今頃は
「なんだ……それは。鋼の鬼……だと?」
俺は透明な外骨格に覆われることでサソリの攻撃をことごとく弾いた。先ほど使った肋骨や背骨で要所を守るだけではなく、外装も一部出現させて全身を守ったのだ。
現われたのは白無垢のような装甲をまとった鬼嫁。あるいは女の鬼が炎の大剣を逆手に構えた姿である。痛みに耐えて準備してなお、外骨格までしか出せないが全周攻撃すら防ぎきることができた。
「須佐能乎。これが
「なんだソレは!?」
豪刀一閃! 逆手に構えた炎の大剣が一閃する。ただそれだけで足場を切り崩し、周囲の傀儡は解け墜ちた。
だが自分だけは耐火術を持った人傀儡に防御用の術を使わせていたのだろう。一瞬だけサソリの体が耐えきったので、逃がさないに幻術で奴の関心を奪い去る。傀儡である奴に幻術は有効ではない。イタチくらい巧ければともかく、俺に出来るのはサソリが感心を持つ情報を与えることで一瞬だけ気を反らすだけだ。
用意するのは鬼神ではなく機械たる機神の姿。腕は二重関節で足は鳥足構造……磁遁で軽減した摩擦で雷遁による活性化した砲弾を撃ち込み、火遁と風遁を内蔵した柄はあらゆるものを焼き尽くする炎遁の剣となる。俺が理想とする須佐能乎は、生前に見た漫画を参考にしている。サソリが知らない世界の知識を叩きつけることで、傀儡師でもある奴の関心を奪い去ったのだ。
「下忍程度にオレが負けるだと!? 認めんぞ!」
「違うな。繰り返して言うぜ……サソリ! あんたの敗因は俺じゃねえ。あんた自身が技術の進歩を止めた事だ!」
思うに忍には世代ごとに為すべき業というものがある。サソリは四代目火影がそうであるように、無数に増えた技術の中から一芸特化で自らが求めるモノを極める世代なのだ。
サソリと大蛇丸は目的のためにむしろ逆走していると言えた。そういう意味ではこの二人のコンビは似ている。デイダラとのコンビが芸術家コンビだとするならば、永遠を……正確には失われた両親との絆を求めるコンビとでも言おうか。
「まあ……。もっと凄い物を見たかったって言う俺の感想と言うか干渉だがな。どうせここは水没するんだろ? また逢おうぜ」
「チっ……。それも見抜いていやがったのか……。しかしさっきのは面白かったな……そこだけは認めてやる」
妙に清々した顔でサソリは術と共に姿の『像』が解けて消えて行った。後に残るのは裏切者の見知らぬ誰かだ。ミズキ当たりだったら笑えるんだがと思っていたが、完全に知らぬ顔だったので笑うしかない。
そして痕跡を隠すために行われるであろう、大瀑布の術か何かを避けるために上を目指す。この世界にはゼツが居ないこともあり、峡谷で行われた儀式や憑依体を処分するには何かの方法が必要だ。場所的にもその為には水が一番自然だろうが……。
ここで水に巻き込まれたらそれこそ死が見える。須佐能乎を使った激痛に耐えながら必死に峡谷の上を目指した。
サスケ「お前の絡繰りスゲー!」
サソリ「オレは芸術家だ!」
サスケ「お前は世界一の技術屋だ!」
サソリ「……」
普通に戦っても心が折れないので、褒め殺していくスタイル。
勝てはしましたが、サソリが最初からやる気なかったことも影響してます。
人柱力二人は大蛇丸に譲ってもらった功績だし、我儘押さえてここは囮になっておくか。
というサソリのクールで大人の部分が出た感じ、百機の操演を使ったら勝てるか微妙。
少なくとも須佐能乎をガンガン使って、最後はぶっ倒れていたと思います。
『このストーリーのサスケ』の須佐能乎
赤い細身の鬼女の姿であり、その周囲を白無垢のような外装が覆っている。
高速機動用スタイルで、パワー戦を行う場合は青い炎をまとってマッチョになる。
炎の大剣はサスケがでっちあげたもので、将来的にヒノカグツチという剣になる?