二つの加具土命【第一部完】   作:ノイラーテム

16 / 16
後日譚。木ノ葉が茂る夏の季節

 あれから何があったかを話すと長いが公的に言うと砂の話、個人的には万華鏡の話か。

 

まず砂との戦いは早期に中断した。このことで俺たちに援軍を送れたことも大きいが、その後の話し合いが即座に持たれたことで影響が出た。大蛇丸とサソリによる陰謀だった事もあり、砂は被害者であるという面が判り易かったからだ。原作と違って風影の死体が見つかるまで待たなくとも良かった。

 

詳しく話をした事で木の葉の力が相対的に大きくなり過ぎて先に攻撃しなければ……という論に傾いたことはダンゾウをはじめとして強硬派もショックだったようだ。とはいえ力なき正義はなんとやらなので、硬柔を混ぜた政策にしようという三代目の意見が通り易く成った程度だが。

 

「綱手姫を次の火影として、その医療技術を広く世に広める。最初は砂隠れから……という訳だ。よろしくな」

「あんたがその交流一番手とは驚いたがな」

 柔かい政略面としては原作通り綱手が火影に指名されることになった。これを引退した三代目やダンゾウ、そして自来也が相談役入りして支える予定になったのだ。渋る綱手への交渉材料として彼女が勧めたかった医療改革を充てる。これは世間的にも判り易く穏健路線だからというのもある。他の里にバラしても綱手の権威に問題ない技術だしな。

 

「一応はな。ただ技術交流の枠が何名か分あるだけだから、ガーラやカンクロウが来る可能性もあるだろ。私が選ばれたのは最後まで共同戦線を張ったからだな」

「政治的な理由ってことだな。こっちの窓口はシカマルになると思うぜ。あいつは薬草に詳しい奈良家の出だからな」

 その一方で砂との交流が少し濃くなった。テマリを始めとして技術交流を始め、砂隠れの里にしか育たない貴重な薬草なども提供してもらう事になっている。おそらくは傀儡を使った義手の研究も始まるだろう。

 

「……そうか。交渉の実務ならともかくとして窓口なんて面倒くさいだけなのにな。あいつ面倒を押し付けられた訳だ」

「そんな処だろ。実際、そっちが言ったように最後まで参加したからどんな奴かも判ってるし」

 この話に関しては政治的に怪しい所がある。技術交流で得をするのは砂の方だが、発展していけばいつか手に入る技術だ。他の里には技術料を払えば教えるらしいので、真似ることもできるだろう。それに対して木の葉では手に入らない貴重な薬草や、傀儡の応用技術なんかは容易くコピーもできない。そして今までよりも深い交流を始めるという事は、イザとなれば砂の力も借り易いという事だ。連中から見れば減っていく仕事を分けてもらえるわけだから、危険度や損益さえ問題なければ乗ってくるだろうしな。

 

「そういえばなんで眼帯なんかしてるんだ? この間は無事だったろう?」

「俺の切り札はリスクが大きいと言ったの覚えてないか? 視力が一気に悪くなったから、その対策だよ。まあ治ると判ったから素直に話してるんだがな」

 もう一つの変化、俺個人の問題としては万華鏡写輪眼の交換を一つ分だが済ませたことだ。二代目の資料を漁った結果、うちは(・・・)一族に関する情報があり、そこに万華鏡の話もあったらしい。俺の言ったことも嘘ではないと判った事で段階を進めたわけだ。

 


 実験と言うか犠牲者にカカシが選ばれた。マダラらしき何者かが暁に居るらしいという話はイタチからダンゾウが仕入れていたので、そいつはオビトである可能性が高いと教えたのだ。おかげでカカシも立派な万華鏡持ちである。

 

そしてカカシが手に入れたのは原作通りに神威だった。こいつは強力だがコストの重い瞳術だったので、仮に眼に瞳術が宿る場合でも悪くない条件と言える。交換されたとしてもカカシはコストの軽い加具土命を手に入れることができるし、俺は切り札になり得る神威を永遠の万華鏡状態で使えるので何の問題も無いのだ。

 

「忍に取って視力は生命線だから本当は使いたくなかった。だがナルト達の為なら仕方ないし、今回の方法で何とかなるとは推測していたんだ」

「写輪眼を引き替えに……それほどまでのリスクを。ガーラの為にすまない」

「気にすんな。一発で失明する禁術じゃないし、言ったろナルトの為でもあるってさ」

 結果として原作通り、永遠の万華鏡写輪眼になったが瞳術は変わらなかった。原作では眼を一度奪われて取り戻した終盤のカカシが神威を使いまくったが、確かそ後に失明はしなかったと思う。その辺はウロ覚えなので怪しいが、もし眼の力が安定するならばダンゾウも交換しようとするだろう。

 

もっとも眼の力が安定化しないとしても、ダンゾウの弟子になって木の葉に協力するならば俺の強化用に交換するかもしれない。それとは別にイタチとも交換できる可能性は残っているし、数年後を目途にすれば両眼とも永遠の万華鏡にするのは難しくないだろう。

 

「話は変わるがもう一つの方は誰が来ることになったんだ?」

「ひとまずは私で統一。何の能力を必要とするかで誰が来るのかが変わるな。現状ではまだ何も聞いていないに等しいからな」

 重くなりそうな話を変えるために、木の葉と砂が関わっているもう一つノプロジェクトに話を向けた。何というか視力が落ちてすまないと言われても、永遠の万華鏡を手に入れたら劇的に強くなるからな。謝られた方がむしろ困る。

 

「オフレコって程に秘密じゃないから少しだけ話しとくか。まずは封印術式を研究しながら大蛇丸たち暁の目的に対処する。すくなくとも穢土転生だけは何とかしないと倒した奴がまた出て来るからな、その上でまずは精鋭の一班で色々な術や技術を試す形になるだろうよ」

「封印術や技術か……。となるとガーラかカンクロウだな」

 もう一つのプロジェクトというのは要するに暁対策だ。次の忍界大戦を起こして利益を得る……という前提のもとに対策を立ててある。穢土転生にしても人柱力にしても封印が有効だからな。

 

しかしガーラと聞いて俺は少し不安になった。あの性格はナルトとの決戦無しになんとかなるのだろうか?

 

「なんだ? うちの妹が来ることに文句があるのか?」

「いやそういう意味じゃなくてな。つーかカンクロウは無視かよ。どんだけシスコンなんだ」

 テマリは最初は俺の内心を探って不機嫌になっていたが……一々相手にするこちらの身にもなって欲しい。あの戦いで苦手意識を持ってくれる方がまだやり易いくらいだ。

 

と、まあそんな淡い期待を抱いていても何の工作もしなきゃ成功する訳が無い。時が経ち両眼ともに永遠の万華鏡写輪眼となる頃にはガーラがちょくちょく戦闘を仕掛けて来るようになった。

 

「サスケ、遊ぼう!」

「毎回毎回無理言いやがって! こっちは任務帰りだつーの!」

 こちらは任務を受けて戻って来るサイクルだがガーラたちは協議とか交流に来る訳で、俺らが帰って来る頃を見計らって来訪する。なのでどうしても待ち伏せられることになるし、チャクラだって消耗しているこちらに大してガーラは万全だ。

 

しかも最近は戦い方を覚えたらしく、迂闊に火遁を使ったらこっちが輻射熱で大変になるような位置取りで攻撃して来た。砂の津波がこちらを押し潰さんと襲い掛かって来る!

 

「だが運の無い奴だ。俺が新たな力を手に入れた時に来やがるなんてな!」

「新しい力!? どんなの見せてよ!!」

 とはいえこちらも万華鏡写輪眼で失明する可能性が無くなり、そいつを基軸に据えた戦い方が形になった所だ。丁度良いと言えば丁度良い。

 

何と言うかイタチの印が非常に速く、卑劣様を除けばダントツだったのを思い出した。あれはそれだけ術を繰り返し、特に得意な忍術に関しては相当修業を積んだのだろう。天照や須佐能乎の使い方まで訓練していたとしたら、そりゃ死ぬわ……というのも判らなくもない。

 

夏遁(かとん)・豪火球の術!」

 所詮は囮、威力など必要はない。重要なのは範囲と何もさせずに連続行動を行う為の速射性だ。万華鏡写輪眼によるコントロールで最低限の威力だけを持たせて、飛び込んで来る爆発の衝撃を与えて俺の周囲だけ後退させた。

 

そして今の忍術に現したように、万華鏡状態の術は夏をイメージしている。太陽というモノは過ぎれば禍になり、適度であれば恵みである。火遁と同じ韻を踏んでいるのでこの名前を付けた。後は何かのゲームの資料で、NINJYAの強者にウインター級、最上級はサマー級というのを見た覚えがあるからだが。

 

「ただの爆風じゃ駄目だよ♪ 直ぐに……」

「だろうな。だが次はこっちだ。構えろよ! 夏遁(かとん)・龍火の術!!」

「速っ!?」

 連続行動前提と言う事はこちらが本命。万華鏡状態の俺なら龍火の術でも豪龍火の術並の威力が出せる。もちろん豪龍火ならばそれ以上だが、このレベルの術で抑えれば印一つで実行可能だった。

 

そう、基本を極めれば性質強化や精度向上の印などは不要という事になる。火遁の発現を示す印だけでちょっとしたレベルの術が発動する。後は吐息に乗せるか、体の周囲に表すかだが火遁なので当然ながら息に乗せて放つべきだろう。

 

「熱っ。フフ。サスケのキ~ス♪ サスケは情熱的♪」

「ばーか。そんなんじゃねーよ。たまたま頬に当たっただけだろうが」

 ガーラはとっさに砂の鎧をまとい、チャクラを集中させて防ぎ切った。もっと上の術ならば押し切れたはずだが、その場合は自動防御の砂が追いつくので微妙なところだ。もっと修行が必要だな。まあ修行すればするだけ身に付くのである、楽しくない筈がない。

 

「うふふ。やっぱりサスケは強いねっ! カンクロウ、アレ使おうよ。アレ!」

「ようやく出番かよ。いいじゃん、出て来いよ、悪路王!」

 ガーラが声をかけると隠れていたカンクロウが顔を出してくる。そして巻物を広げると二人を覆い隠す程の巨大傀儡が現れた。

 

その姿は上半身が巨大な鬼であり、下半身が巨大な蜘蛛になっている。言葉だけで語るとには八本の足で攻撃してきそうだが、実際には攻撃手段は太い腕だけだ。俺も提案に関わっている範囲ならそうなっていた……というレベルに過ぎないが。

 

「重戦闘傀儡! 完成していたのかよ!」

「上半身だけだけどな! それでもこいつは無敵じゃんよ!」

 重戦闘傀儡は文字通り戦闘のみを目的とした傀儡だ。忍者が情報収集を主体とし、戦闘はオマケというのには反している。だがそれだけに強力な能力を秘めており、パワー型の悪路王。高速機動型のアテルイの設計までは俺も知っていた。他にも両面宿儺だとか太郎坊とか企画の名前だけは知ってるけどな。

 


 しかし何というか、やっぱ巨大ロボというのは憧れるよな。傀儡師を守りながら戦うためとはいえ、その重厚なボディには心惹かれるものがある。俺も提案に関わったというか、余計な口を突っ込みまくってダンゾウとナルトに叱られた覚えがあった。バランスを重視するダンゾウはともかくナルトにまで怒られるのは釈然としない。

 

「やっちゃえ、悪路王!!」

『マ゛!』

「そんな反則技で襲ってくるんだ。未完成品をガラスに変えられても文句言うんじゃねえぞ!」

 俺は傀儡が動き出す前に炎で造った紫鏡を口寄せで呼び出すと、チャクラを活性化させながらその場を離れた。

 

一瞬遅れて悪路王の腕が伸びて来る。確か磁遁を反発と摩擦力低下に活かすため、今のところはガーラの協力が必須。もちろんカンクロウが操るので、外でも良いが一緒に中にいた方が安全なはずだ。

 

「小手調べだ。夏遁(かとん)・龍炎放歌の術!」

「何が小手調べじゃんよ! いきなり奥義放つんじゃねえぞ!」

「凄いよ! 防御したのにおてて溶けてる!」

 伸びて来た腕ごとやったのがいけなかったのだろう。直線状にある腕を溶かして、本体にはそれほどのダメージが与えられなかった。だがコイツの真骨頂はここからだ。

 

なんと! 溶けた腕が次第に再生されて元に戻ろうとしてやがる! 穢土転生にゴーレム系の術があると指摘して、外の国に再生する守り神の話を聞いたことがあると教えたんだが……どうやらそれも完成させたらしい。遺伝子情報なんぞなくとも傀儡ならば設計基を自前で用意できる。完成状態へと戻る様にすれば良いだけの事だ。

 

「ただの金属じゃねえ……。磁遁は摩擦低下と反発だけじゃなく装甲や筋肉の精錬にも関わってやがるな? さしずめ小さな人柱力ってところか」

「今んところガーラが居なきゃロクに戦えもしねえし、動かすにも数人掛かりになっちまうけどな。それでも凄い性能だぜ」

「カンクロウ! 主砲使おうよ主砲!」

 待て!? そんなモノは聞いてねえぞ!? つーか傀儡技術を小型化に使った義手とか、逆に大型化に使った戦艦の話をしたが……まさか合体させたのか!?

 

「アレはもう一人居ねえと一発切りじゃんよ。動けなくなっちまうじゃん?」

「このままじゃあ負けちゃうよお。だからねーえ」

「はっ! 来るなら気やがれってんだ!」

……しかし物は考えようだ。木の葉と砂が共同開発した秘密兵器の真価を見れるチャンスだ。巨大な砲門ってそれだけでロマンがありやがるしな!

 

俺は向こうが悩んでいる間に防御を固める。白ベースの鏡の術から再不斬ベースに切り替え、炎の霧を出して粘度を高めていった。視界を奪いながら、動きを鈍くさせる算段だ。

 

「可愛い妹の頼みじゃんよ。しっかたねえ。サ千代叔母さまには一緒に怒られてやんよ」

「は~い。じゃあいっくねー」

(……サ千代叔母さま? 誰だそれ? チヨ婆じゃねえのか?)

 他愛のない疑問を持ちつつも、予定よりも早く完成した重戦闘傀儡の技術者だと思っておくことにした。カンクロウほか傀儡部隊だけでなく、他に天才エンジニアがいると知って嫌な予感がする。

 

ここで俺は直観に従い、視界が悪くなったのを利用して火遁分身を出して入れ替わっておいた。そのまま転がる様に態勢を低くして、さっさと逃げて置くことにする。忍術に使われる遁という言葉は本来、紛れて逃げるという意味なのだ。遁走と言う奴だな。

 

「口寄せ。八卦炉!」

「口寄せ。火尖槍!」

(合体技……だと!?)

 呼び寄せられたのは巨大な炉心、そして巨大な筒だった。それぞれが傀儡であり、チャクラを増幅させるギミックと、火を増幅させるギミックが仕込まれている。明らかに俺を意識した造りで、一応は共同作業で造った砂と木の葉の秘密兵器という態が何とか保たれていた。

 

こんなオーバーテクノロジーを何処から持って来たんだと詳しく眺めたが……。

 

「八卦炉、最大起動じゃんよ!」

「圧力限界。いっけー! 主砲発射!」

(霧のせいで判り難いのが自業自得だが……なんで人傀儡が出してるチャクラの性質に似てやがるんだ? ……まさか)

 放たれたのは火・油そして風。何処かで見たというか……俺が『誰かさん』に見せた幻覚での作業に近い物だ。

 

そして何より主砲が稼働する前に筒先が展開し、砂やらゴミが入ったり壊れないようにするギミックが誰かさん本体の動きによく似ていた。

 

(ヤバイ! 威力も範囲もケタ違いだ。なんてものを造りやがる……ていうか、暁を抜けたの大蛇丸じゃなくてお前かよ、サソリ!!)

 俺が隠れている場所ではまだ不十分。一緒に吹き飛ばされかねないので、仕方なく豪火球を近くに放って衝撃波を発生させた。これだと自分もダメージを負うが仕方ない、死んでしまうよりマシだろう。

 

残る体力とチャクラで炎の剣を出し、周囲が煙やら蒸気に包まれている間に傀儡の後ろ側に回り込んでおいた。

 

「そこまでにしとけよ。つか上忍どもがすっ飛んで来ねえ内に逃げんぞ」

「はーい」

「ぶっ放しただけで壊れちまった。トホホじゃんよ」

 逃げても後で叱られるんだろうな……。俺のせいじゃねえのに。そう思いつつも盛大に煽ってしまったのは俺なので諦めておこう。

 

こんな風に既に原作とはかなり乖離している。

今後の世界がどうなるかは分からないのだが……それはそれで面白いのではないかと思う事にした。




ひとまず、あの後に何が起きたのか……を終わらせておきますね。
砂が同盟国に戻って、綱手が五代目になり、三代目・ダンゾウ・自来也の元老院化する。
後は無事に万華鏡写輪眼が永遠化しました!

●夏遁
 プラズマ遁、それに隠遁を混ぜてプラトーン!
とか命も形も終わらせる絶遁! とか思いましたが……やはり合わない。
そこで漢字だけ変えて、シンプルに夏遁。読みは全く同じになります。
内容でチラッと語って居ますが、NINJYAサマー級というのを何かで読んだのも影響しています。

夏の日差しの様に、状況に合わせて苛烈にも暖かくもなる。
でも基本は意識の活性化であり、威力向上であることをシンプルに示す名前ということで。

●重戦闘傀儡とサ千代叔母様
 原作通りに大蛇丸が抜けて、味方とも敵ともつかぬ位置に着くのは面白くない。あとはもう一回サソリと戦ったり、ペアでデイダラ出てくるのもなあ。と思ったので。協力者というか、自分がしたい事だけを勝手に手伝っていく迷惑な人。

悪路王はAYAKAIというゲーム・アニメで見てデザインが好きだったので参考にしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。