戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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6話

ジャムとはもう既に21年も戦争している、気づけばいつの間にかジャムが居て地球防衛軍もいた。

そして俺はジャムと無縁に育ち、裁判にかけられフェアリイ星でジャムと戦争する事になってもその意味を考えた事は無かった。

それはこうして雪風と空を飛んでいても同じだった、地球にそっくりな星ではあるが地球ではなかったし、何だかんだでジャムが現有戦力に対して突出しているわけでも無かったから緊張感も感じられない。

戦う意味を考えた事は一度も無かった。ジャムが居る、だから倒す、それ以外に何の理由が必要なのか。

例えジャムが地球を侵略し全てを焼き払おうとも答えは決まっている、俺には関係ない、だ。

深井零という男はFAFで最強の戦闘機を操る戦士だった、しかし彼の眼から通してみたジャム戦争は書類の文字を追いかける様な現実感のない光景でしかなかった。

しかしそれは現実逃避ではなく、ジャムがそれを考える暇を与えてくれなかった。

戦いを終えて帰ればデスクワークか雪風ジャムとはもう既に二十年以上も戦争している、俺が物心着いた頃にはいつの間にかジャムが居て地球防衛軍もいた。

そして俺はジャムと無縁に育ち、そこそこの罪状で裁判にかけられフェアリイ星でジャムと戦争する事になってもその意味を考えた事は無かった。

それはこうして雪風と空を飛んでいても同じだった、戦う意味を考えた事は一度も無かった。ジャムが居る、だから倒す、それ以外に何の理由が必要なのか。

地球にそっくりな星ではあるが地球ではなかったし、例えジャムが地球を侵略し全てを焼き払おうとも答えは決まっている、俺には関係ない、だ。

深井零という男はFAFで最強の戦闘機を操る戦士だった、しかし彼の眼から通してみたジャム戦争は書類の文字を追いかける様な現実感のない光景でしかなかった。

しかしそれは現実逃避ではなく、ジャムがそれを考える暇を与えてくれなかった。

戦いを終えて帰ればデスクワークか雪風の整備、或いはロマーニャ基地のバーで黒ビールを一杯飲む位だった、誰も話しかけないし俺も話さない。

いつもの同じ様にバーのカウンターで立ちながらグラスを傾けている時に隣に男が馴れ馴れしく声をかけた。

「ジャムとの闘いに人間等必要ない、機械のほうが優秀だ、そう思わないか?」彼は同意を求めた。「君は戦闘機乗りだろう、雰囲気で分かるよ」

「戦術空軍団、ロマーニャ基地戦術戦闘航空団、特殊戦第五飛行隊」

「これは驚いた、君はあの帰還率100%を誇るかのブーメラン戦隊の戦士、最強の戦闘機であるスーパーシルフを駆るシルフドライバー」

彼はシステム軍団、ノイエカールスラント――地球のアルゼンチンに相当する――共同技術開発センターのカール・グノー大佐と名乗った、彼は俺に握手を求めたが取り合わなかった。

「さすが特殊戦の人間だ、非社交的な人種だな」

グノー大佐は上げていた手を下げると店員に酒を注文した、店員がグラスを持ってくるまで二人の間に会話は無かった。

「君はこの戦争をどう考える」

こいつもかと零は内心頭を抱えた、そして届いた黒ビールで口内を湿らせると思ったままの言葉を口に出した。

「馬鹿馬鹿しいと思っている、どいつもこいつもジャムを殺すだけの戦争に何故皆余計な事を考えてるんだ」

「そうだな、流石に正気を疑うような光景だ、特に未成年の少女を飛ばして戦争させるなんてな」

「あんたは随分ウィッチに肩入れしてるんだな」

「そんなつもりは無いが私にも娘がいればこの様な気分にもなるのだろうなと思うよ」

「あんたはこの戦争を無人化して、このジャム戦争で何をしたいんだ」

「無駄な血が流れなければいいとは思ったことはあるかね。そもそも君は疑問に思わないのか、今の高性能な戦闘知性体さえいれば無人化は容易だ、人間が戦う必要なんてない」

超高性能なコンピュータである雪風と空を飛ぶことを全てと言っていい深井零としてその考えはナンセンスだったが、そう言われてもフェアリイ星から人間が居なくなる姿を想像できなかった。

「戦いには人間が必要だ」口に出してからその考えを吟味する。「多分、予算獲得の為だろう、戦場に人が居なくては遠くの人間がその脅威を測る事が出来ない、人が無言の死体になればその時地球の人間は恐怖を覚えて自分を守る為に金をつぎ込む」

「なら君は死ぬために飛んでいるようなものだ、少なくとも君はそれを求められている事になる、悲しい事とは思わないかね」

そうなのだろうか、しかしこれ以上考える事は自分の首を絞める事になるだろうから頭を振って思考を止めた。

「すまないな中尉、酒の味を悪くさせてしまったかもしれない。貴重な意見をありがとう、ここは奢らせてくれ」

そう言ってIDカードで二人分の支払いを済ませると彼は去っていった、俺もグラスを空にするとそのままバーを出て行った。

 

 

 

 

 

 

―――敵機多数接近中。

FAFロマーニャ基地の敵はベネツェアのネウロイだけではない、戦いを挑まれれば例えアフリカ方面から侵略するネウロイとでも戦わなければならなかった。

むしろ特殊戦を除くベネツェア方面に出撃を制限されるFAFロマーニャ基地の主な相手はこのアフリカ方面から襲来するネウロイだった。

早期警戒機からの警報を受けFAFロマーニャ基地戦術戦闘航空隊第502ndTFS(飛行隊)、FAFの制空戦闘機である単座の格闘機ファーン、二十四機がスクランブル発進。

早期管制機のタクティカルデータリンクに誘導され502ndTFSは一編隊六機の四編隊に分かれる、一編隊の内の三機がジャム一機に対してトリプルアタック、他三機は警戒と援護に当たる。

重要なのはこの三機で攻撃を仕掛ける所で、ジャムの二機目が来たときは攻撃を中止して防御に徹し味方の他三機が優位を取って攻撃する。

この戦闘を特殊戦三番機雪風と俺はディスプレイの上で消えていく敵と味方のシンボルが消滅していくのを眺めていた。

FAFの戦術思想においては勝利は二の次、まずは絶対に負けるなだった、常に正体不明のジャムに対して勝利を勝ち取る戦略と兵器を持たないFAFにとっては地球をジャムから守る事が任務であり限界だった。

上空からその光景を眺め続ける深井零もFAFは上手くやっているなと思った、502ndTFSの連中は負けない戦い方をしていた、例えそれでどのような被害を受けたとしても彼等は負けないのだ。

「深井中尉、ジャムの動きに意図を感じる」

後席に収まる新任のFO、バーガディッシュ少尉がディスプレイの長距離レーダーを確認しろと促す。

「捕まえた、ジャムの第二波だ、今502ndと戦っているのは囮だ。来るぞ、高速熱源、ジャムはアウトレンジからミサイルを発射したようだ、502ndに急速接近」

雪風は戦場に向かって増速した、雪風はミサイルの種類をTDB(戦術データバンク)を参照し『未知』であると回答を示す。

「TARPSを作動、味方機に回避しろと伝えろ、PAN、コードU」

「了解した、こちらB-3、502ndリーダー応答せよ、PAN、PAN、PAN。コードU、ユニフォーム、ユニフォーム」

ジャムが放った未知のミサイルは通常のAAMの三倍以上の速度で502ndに接近する。

502ndは警報を受けて編隊を組みなおし五機のファーンが速やかに中距離AAMを発射し、ジャムのミサイル迎撃を試みるその隙の残りの502nd機が緊急退避を開始する。

「間に合わない……」

呟いたのはどちらだったのか、迎撃に失敗したジャムの放ったミサイルが地面に命中すると同時に大規模な爆発を起こす。

時間にして数秒の出来事だった、その余波に巻き込まれた502nd機は全滅した。

「502ndの全滅を確認、あれは数キロトン規模の核爆発だぞ」

雪風のブザー音と共にディスプレイにIFF不明機との編隊飛行用データリンクが繋がる、一基のスーパーシルフがいつの間にか編隊を組むかのように並列で飛行する、やめろ雪風と呟く様に深井零は雪風に声をかける。

「ECMか?編隊飛行用データリンクを使った通信だ―――中尉、三時方向にアンノウンを確認、IFFは反応なし、中尉の報告にあったスーパーシルフか」

戦隊マークもパーソナルマークも無いスーパーシルフが飛んでいる、しかしキャノピーの中、そこに収まっている筈のパイロットの姿を認識する事が出来ない。

「あれは――――」

 

 

<IFF ENEMY>

「ジャムだ!!!」

 

 

深井零はマスターアームスイッチを押し込みB-3雪風はエンゲージ、敵のスーパーシルフを敵機として戦術コンピューターにインプット、戦術コンピューターはレーダーの周波数や出力を最適な設定にして目標を追跡する。

ジャム機はこちらのレーダー波を受けたのを感じたのか急降下、奴をここで逃がす訳にはいかない。

「中尉、深追いをするな、俺達はこの情報を持ちかえればいい」

「奴は…誘ってるんだ!」

深井零にとってこれ以上に無い挑発だった、スロットルをMAXアフターバーナーの位置へ、スーパーシルフの全力を以て二機は雲を突き抜けドッグファイトを開始する。

敵機からはこちらに攻撃する動きは見られなかった、しかし敵機の目的はこちらの撃墜では無かった。

「敵不明機からECM、こっちの情報を探ってるぞ」

「ECCMを全力で作動、D3ウイルス起動、サブストラクチャを解放しろ」

「ラジャー」

時間にして十分に満たない追跡の最中、こちらのレーダー照準波が遂にジャムを捉えた。

深井中尉はコントロールスティックのミサイルレリーズを押してミサイルの発射を戦術コンピューターに要求、戦術コンピューターはこれを承認し短距離AAMを発射。

AAMがジャム機を捉えんとばかりに襲い掛かろうとした瞬間ジャム機が()()()()()()()()()()()()、元々敵機が居た場所をミサイルがすり抜け目標を失なったミサイルをFOがマニュアルに乗っ取り自爆処理する。

「……消えた?」

「深井中尉、六時方向に高速熱源が二個接近。ジャムの大型巡行ミサイルだ、先ほどのミサイルだ、追いつかれる」

「雪風は旧式のファーンとは違う」

雪風が秒速1000メートルで飛ぶ中、ジャムの大型巡航ミサイルは秒速5000メートルで雪風に襲い掛かる。

深井中尉はTARポッドを非常投棄しVmaxスイッチをオン、Gリミッタも解除されスーパーシルフの双発フィーニクスエンジンが安全限界値を超えた出力を絞り出す。

オートマニューバ・スイッチをオン、これでこのスーパーシルフの機体制御は全て雪風の手に渡り、高速ミサイルから自機を守る為の最適な機動方法を高速で導き出す。

警告もなく雪風は突如として右へスライド、パイロット二人は身構える間もなく狭いコックピットの中を右から左へと大きく揺さぶられる。

ジャムのミサイルが雪風の側方をかすめたミサイルの爆発による衝撃波でスーパーシルフは再び大きく揺さぶられパイロット二人はブラックアウト、意識を手放した。

後続の大型巡航ミサイルが接近、パイロットが気絶していても雪風は思考を止めない。爆発の余波から機体を立て直すのに一秒、ミサイルが雪風に直撃するまで残り二秒、回避は望めない。

 

―――突如スーパーシルフはその場で独楽の様に回転し1()8()0()()()()()、雪風は敵ミサイルの撃ち落とす事を選択。

 

<RDY GUN>

 

雪風は独断で自動発砲、内蔵されたガトリングがおよそ1.4秒射撃、雪風に命中まで残り0.2秒、ミサイルに八十数発目が当たった瞬間に爆発。

爆発に大きく煽られた雪風は全身を大きく痛めつけられたが自動操縦で帰投コースを進む、高度を下げFAFロマーニャ基地へ帰っていく。

<MISSION CMPL / RTB>

結局FAFのその後の調査であの不明機やミサイルキャリアーのジャムは見つかる事はなかった。

 

 




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多分次は501JFW編です。

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