戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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8話

結局のところ、医務室にて精密検査を受けた深井零中尉は全治二週間の診断を受け、同期間の雪風の搭乗を禁じられた。

一方で戦術空軍作戦参謀会議では早急に戦線へファーンⅡを配備すべく戦技フライト試験を行う事が決定した。

会議に参加した発案者のジェイムズ・ブッカー少佐が責任者となり、彼が提案したアイデアはその場で認可された。

ファーンⅡのフライトに雪風を随伴させる事、その際に雪風は完全無人飛行でファーンⅡの光電子システムの挙動をモニタし必要があれば外部から遠隔で補助を行う。

雪風はこのフェアリイ星で優秀なパイロットの操縦や機動を学習し、最も危険な戦闘を経験し、ジャムの罠をかいくぐり、そして確実に帰還している。

今回のアイデアが上手くいけば戦技フライト中のファーンⅡをジャムから守る事も出来るし、また無人でも任務を遂行できる事が証明される。

ブッカー少佐は限られた期日の中、三日間ぶっ続けでソフトを組み続けながら戦技フライトプランを練り上げた。

それを眺めながら深井零中尉は不敵に笑った。

「無駄だよ、俺無しでは雪風は飛べない」

「やって見せるさ」

そうは言って見せたがあくまで雪風はパイロットの補助がメインの機械知性体であり、最高の性能を持つ雪風で不可能なのだからファーンⅡにだって不可能であり、システム軍団は認めないだろうが完全無人化というハードルは未だソフトハード共に高いものであると認めざるを得なかった。

結局戦技フライト試験においては戦術空軍団所属実験航空隊のテストパイロット、ヒュー・オドンネル大尉がファーンⅡに乗り込む事になる。

対して雪風は無人で自律飛行、それを電子戦闘管制機から遠隔でバックアップし有事の際は深井中尉からの指示を受けて雪風は動く。

「これならお前も飛べるぞ、とは言え管制機の遊覧飛行だがな、昼寝も出来る」

「俺は雪風をラジコンの様に飛ばす訳だ、結局ファーンⅡのコンピューターは完成したのか」

「高級な光回路だが、生まれたばかりで経験が足りない。何かあった時は雪風がファーンⅡのコンピューターとリンクして雪風の指揮下に置かれることになる」

「まどろっこしいな、乗るだけでもいい、雪風に乗せてくれ」

「駄目だ、今度は肋骨じゃすまないぞ。安心しろよ、今回飛ぶのは安全空域だ、お前は黙ってみているだけでいい、お前より上手く雪風は帰って来れるさ」

ブッカー少佐は親友の肩を叩く、深井中尉は胸の傷をさすりまるで失恋したかのように儚げに笑う。

しずく、雨だれ、ほんの少し―――ゼロ、ブッカー少佐は零の名前の意味を思い出す。

「お前……何でそこまで雪風の事を……」

「ジャック、俺にはあんた以外には……雪風しかないんだ、他には本当に何も…何もないんだ」

 

 

戦技フライト試験当日に初めて会ったオドンネル大尉は気さくで明るい男だった、いつもクールで排他的なブーメラン戦士を相手するブッカー少佐からすればその明るさがとても眩しかった。

とはいえブッカー少佐から見ればオドンネル大尉の姿は頼りなさげに思えた。当然だ、常に最前線へ仲間を送り出す少佐から見ればオドンネル大尉は戦いとは無縁のテストパイロットだ。

危険ではあるが特殊戦の戦いとは意味合いが違う、正体不明で理不尽なジャムとの闘いを経験していない人間とは意識が異なる。

そしてブーメラン戦士はその殆どが何かしらの犯罪歴や地球から追いやられてFAF軍人になっているが、オドンネル大尉は自らの意思で志願してフェアリィ星へやって来た。

地球と祖国を守る為にFAFの技術パイロットに自ら志願した、彼は祖国でも一級のパイロットだった。

つまり彼はまともな人間なのだ、重い傷を負った深井中尉やブッカー少佐の様な人間とは決定的に違う人間だった。

戦技フライト目前にしてオドンネル大尉は自分の秘書と話していた、秘書官が一人に人間に着くと言うのは本来将官クラスの待遇だった、ブッカー少佐にだって一人もいやしない。

表向きは航空電子機器に関する教育をオドンネル大尉が引き受けていて、彼が感じた異常などはシステム軍団の技師である彼女が専門の技師に伝えるという事になっていた。

しかし彼女、エイヴァ・エメリー中尉は有能な技師ではあるがそれ以外にもオドンネル大尉の雑務を引き受けていて実質彼の秘書とも言える立ち位置に居た。

彼女はオドンネル大尉を『大尉』としか呼ばなかったが、深井中尉がオドンネル大尉の呼び出しを頼まれ探しているとハンガーの陰で二人は甘い密会をしている所を見つけてしまった、中尉は名実共に女房役だった。

「ねぇヒュー、いつまでこんな事を繰り返すつもりなの?何故こんな飛行機に拘り続けるの?たかが機械じゃない」

「ジャムとやらと戦うには高性能の機体が必要なんだ」

「そういう意味じゃないの分かっている癖に、あなたはいつも誤魔化してばかり。ねぇ地球に帰りましょう、こんなのもううんざりだわ、あなたの帰りを待つことしかできないのはもう」

「逃げ帰るとでもいうのか?ジャムとの戦争は続いてるんだ、俺は―――」

「もう止めて、ヒュー、お願いだから」

「……そうだな、そろそろ任期も切れる頃だ。あと二か月、二か月したら地球に帰って結婚しよう、愛しているよエイヴァ」

そうして重なる唇、流石にこの空気に割って入る事を躊躇った深井中尉は足元の小石を蹴る事で自己主張をした。

「きみは?」

「特殊戦五番隊の深井中尉だ―――ブッカー少佐が待ってる、間もなく時間だ」

「成程、君がFAF最強の機体を操るエースパイロット。今日は君の相方に面倒をみて貰う事になっている、よろしく頼むよ」

用が済んだとばかりに零は引き返し、タキシングする無人の雪風を流し見て後ろ髪を引かれるような思いで管制機に乗り込み一番に発進。

戦技フライトの護衛機として特殊戦五番隊六番機"ミンクス"が次いで発進、そしてオドンネル大尉のファーンⅡのエンジンが始動する。

「エイヴァ、帰ったらプレゼントがある」

「プレゼント?」

「左薬指を磨いておけよ」

「ヒュー!本当なのね!?」

ファーンⅡが離陸開始、続いてオートマニューバ・スイッチの入った雪風が動き出す。

雪風のエンジン、スーパーフィーニクスエンジンが吠える様に急加速、凄まじい速度で垂直上昇加速を始めた。

「見ろよ零、あれが雪風の本当の姿だ、人の枷を外した姿だ」

ファーンⅡは雪風を伴って試験を開始、その性能を発揮せんとロマーニャ上空を二機が舞う。

深井中尉はその姿を管制機のモニターで眺めていた、結果から言えばファーンⅡはその要求されたジャムの高速ミサイルに対抗出来るその性能を遺憾なく発揮させた。

特に格闘戦においては雪風を追い詰める場面すらあったがこれは短距離ランナーと長距離ランナーの違いな様なものであって、スーパーシルフの存在が脅かされたわけでは無かった。

試験は終了、後は基地へ帰還という所で警報が鳴り響く。

「ミンクス、何があった」

「ジャムだ、管制機から見て七時方向から接近中、目標は恐らくここだ」

「ここは安全空域じゃなかったのか?」

「この星ではなんだって起こるさ、ミンクスは高度を維持して電子偵察任務を続けろ、ジャムの撃墜はファーンⅡがやる、聞こえているなオドンネル大尉」

「了解、俺が初めての男だ、乗りこなして見せますよ」

ジャムは四機、以前見かけたミサイルキャリアー型だ、501JFWのウィッチと相打ちになった奴。迎撃に動いたファーンⅡの存在に気が付くと二機のジャムの高出力ECMがファーンⅡに向けられる、高速ミサイルを六発発射。

「ジャムがこっちの動きを探ってるぞ、迎撃ミサイルを発射する」

ファーンⅡから四発の新型ミサイルを発射、管制機のディスプレイ上でミサイルを迎撃した事を確認、その前にファーンⅡは高機動回避に入る。

機首はネウロイに向けたままバレルロールで一発を回避、最後の一発は機関砲で撃ち落とした。

しかしジャムは新たに高速ミサイルを発射――――今度はファーンⅡと雪風の後方100キロメートル程で十二発のミサイルが多方向から高速で二機を襲う。

深井中尉はこれは避けられないな、と他人事のように思った、ミンクスは冷ややかに高高度から偵察任務を続けていた。

雪風を守る為に深井中尉は手元のリモートスティックを握る、しかし今回の任務で守るべきはファーンⅡだ、この状況でファーンⅡを守る為にはどうすればいいのか。

深井零の脳裏にオドンネル大尉とエイヴァ中尉の姿が思い浮かぶ、彼等の未来を守るには雪風を盾にするしか最早選択肢はないと思った。

自分でもおかしいと思う、自分には雪風しかないという思いに嘘偽りはない、雪風を盾にする?俺を置き去りにする雪風を恨んでいるとでも言うのか。

それでも深井中尉はオドンネル大尉を助ける為にリモートスティックを動かす――――エラー。

「おい、雪風……?」

雪風の挙動をモニタリングしているディスプレイにシステム言語で構成された思考プロセスが高速で流れ出す、雪風は独断でファーンⅡのコントロールを奪取。

「どうなってるんだ、止めろ雪風!!」

雪風はファーンⅡの残った四発のミサイルを全て発射、雪風を狙ったミサイルに対して優先的に誘導し撃墜に成功、残りの六発がファーンⅡを襲う。

「大尉逃げろ!雪風はファーンⅡを囮にするつもりだ!!」

深井中尉の酷く焦った声が管制機の中で響いた、特殊戦三番機、雪風に与えられた存在の根幹を成す至上命令は二つ、特殊戦の至上命令でもある「対ジャム戦の遂行」「味方を犠牲にしてでも必ず帰還せよ」だ。

雪風は己の存在意義を全うする為、深井中尉が雪風を犠牲にする命令をナンセンスなエラーとして処理する事で外部コントロールを無視した。

オドンネル大尉が緊急脱出用のレバーに手を伸ばす、しかしその手は突然襲い掛かる強烈なGが大尉をコックピットのシートに押し付けた事により引き離された。

雪風は自身の安全が確認できるとファーンⅡに急激な加速と回避機動を開始させる、ファーンⅡは二発のミサイルを間一髪で回避、後続のミサイルに搭載された近接信管が作動するが衝撃に対してファーンⅡは尾部を向けMAXアフターバーナーで脱出を試みる。

爆発の衝撃でブーメランの様に弾き飛ばされたファーンⅡは雪風の操作によって安定飛行を取り戻す、そのままファーンⅡは悠然とジャムに襲い掛かり機関砲で二機を撃墜、その隙に雪風は中距離AAMを以て二機のジャムを撃墜した。

<CAUTION LIGHT ALLCLEAR>―――全システム異常なし。

ディスプレイに雪風からのメッセージが表示されると同時に雪風は再加速、MAXアフターバーナー点火、放たれた矢のように戦線を離脱する。

「ジャック!今なら下ろせる!大尉のファーンを地面に下ろせ!」

「分かった…雪風は!?ミンクス、雪風は何処へ行った!!」

「こちらミンクス、B-3雪風は501JFW基地方面へと向かった」

「501JFWだと…?至急B-12、オニキスに繋げ!!」

「了解」

衛星回線を利用した緊急通信で"オニキス"に呼びかける、一秒がとても長く感じる中で約五秒後にようやく繋がる。

「こちらB-12、オニキス、非常事態か」

「ブッカーだ、自立制御状態の雪風が突如として暴走し501JFW方向へ向かった模様、そちらの状況を伝えよ」

「現在501JFWは対ジャム戦闘中、オニキスは任務内容を変更し対ジャム戦闘の電子偵察任務を継続している―――当空域に飛来する機体を確認、IFF照合、間違いない雪風がこっちに来たぞ、どうなっている」

 

 

 

 




最早ただの戦闘妖精雪風では…?(震え声)
もっとストライクウィッチーズ要素出せる様に頑張っていく所存でございますのでご容赦を…。

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