戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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12話

坂本美緒少佐が行方不明になって三日後の事、ミーナ中佐の下に書面にてアドルフィーネ・ガランド中将からの辞令が届いた。

バルクホルン大尉は少佐に昇格の上で戦闘隊長に就任が決定し、501JFWは一人抜けたままの状態で運営される事となった。

「坂本少佐の朝の鍛錬の声がこれからも聞こえなくなるというのは、意外と寂しく感じるものだなミーナ」

「そうね……」

カールスラント四強に数えられるトップエースであるバルクホルン少佐はミーナの執務室で引継ぎを受けていた、とはいえ戦闘隊長の職務に関して坂本少佐が前もって引継ぎのマニュアルを用意していた為それはスムーズに進んだ。

今彼女達が進めているのは今後の対ネウロイ戦についてだ、しかもネウロイのコアを見抜くことが出来る坂本少佐の抜けた穴はとてつもなく大きい。

501JFWは立場的に危うい状態にある、ミーナ中佐は最高の環境と戦力を揃える為に501JFWを立ち上げているがその存在を疑問視されているのだ。

失われていく数字だけを見て上から心無い言葉をかけ、予算を出し渋り、酷い時は賄賂の要求すらある。

それでもここまでやって来れたのはこれまでの成果とミーナ中佐の政治的なバランス感覚、そしてガランド中将を始めとした政治屋の支援を得ての事だった。

しかし人類連合軍が今の501JFW求めるのは結果しかない、結果を出せなければ統合航空戦闘団は解体される。

ミーナ中佐にとってこれは自分だけの問題ではない、統合航空戦闘団の意義を失う事は人類にとって悪手であると信じている。

ミーナ中佐は自分達も大事だがネウロイを倒し平和を取り戻す事を何よりも望んでいる、統合航空戦闘団はネウロイを滅ぼす最強の矛でありシステムだ、これを失えば人類が一つとなり勝利を齎す可能性の一つを失う事を意味する。

対ネウロイの希望とされる501JFWだがネウロイの巣の破壊に成功したのは実は501JFWの成果ではない、トレヴァー・マロニー将軍の狂気の集大成、重秘匿名称ウォーロックの暴走が齎したイレギュラーな成果だ。

敵であるネウロイのコアを兵器に転用した禁忌の無人型戦闘機、ネウロイを遠隔で操作系統をジャックして同士討ちさせ、また一撃でネウロイの巣を破壊する攻撃能力を持った恐るべき兵器。

最終的にウォーロックは暴走し重大な被害を撒き散らす一歩手前で501JFWの連携を以て撃墜、無人の戦闘兵器は忌むべき存在とされネウロイ研究は凍結される、当然公表する事も出来ずに501JFWのプロバガンダとして成果は利用された。

その後502JFWの活躍により更にネウロイの巣を破壊に成功したことから統合航空戦闘団の必要性は見出されたが、ここに来て上層部できな臭い動きが出てきているのだ。

ウィッチが活躍する事を何よりも嫌う人間がいる、それが統合航空戦闘団の最も面倒な敵だ。

結果を出せば黙らせることも出来るが現在最大の激戦地と化しているベネツィア戦線に存在するネウロイの巣を中心に戦力は大きく三つ。

一つはロマーニャの首都ローマの西方に臨時基地を構えた504JFW、アルダーウィッチーズ。

次いでアドリア海側を防衛し、ベネツィアの空戦型ネウロイに対応する501JFW、ストライクウィッチーズ。

そしてロマーニャとヘルウェティア連邦の隣、501JFWがネウロイから解放したガリア共和国に駐在・防衛する506JFW・ノーブルウィッチーズのBチーム

以上の三隊が有事の際に独立して動くことが出来る攻撃魔女部隊JFWの全てである、しかしこれだけの戦力があっても互角以下の状態なのだ。

先手をとれない以上確実に損害を受ける、一部のタカ派が民衆を煽り501JFWにヘイトが溜まる、そしてFAFロマーニャ基地の周辺の街等の現状を比較され各方面からクレームが入る。

その癖他の部隊やFAFを頼るのは軍人の恥とまで言われるのだ、何度司令部を爆撃してやろうかと考えただろうか。

話は戻るが今後のウィッチ出撃のシフト、ネウロイ戦におけるフォーメーションや戦術の対策をバルクホルン少佐と話し合っていたのだが、結局話し合いはとある一言に尽きる。

 

 

―――現状維持は不可能である。

 

 

資材は減り続ける一方、大きな戦果を出すと言う事はそれだけの激戦が起きるという事、ウィッチが以前の様に負傷及び死亡すれば今度こそ501JFWの存続の危機。

最早自分達で出来る事には限界がある、新たな統合航空戦闘団を要求するかFAFの協力を仰がない限り。

「ミーナ、本当にFAFと協力は出来ないのか?」

「何度か上層部に進言したことはあるわ、でも私の持つ権限じゃFAF本部との話し合いすら出来なかった、最終的に人類連合軍の上層部は条約を盾にしてはぐらかされた」

「FAFロマーニャ基地に話はしたのか、他の基地はFAFと上手くやってるんだろう?」

「……それは、まだよ」

思い出すのは特殊戦の人間に対して凄まじく失礼な態度をとってしまった事、それを話せばバルクホルン少佐は呆れた顔をした。

「ミーナ……お前は……」

「ごめんなさい……反省しているわ」

確かに過去の因縁はあるが一部隊指揮官としての態度ではなかったことは自覚している、当然彼等に対する怨念が消えたわけではないのだが。

「だったら謝罪して来るべきだな、ついでに協力も取り付けられればなおいい……気まずいなら私が行くか?」

「いえ、それには及ばないわ。私が行きます、後は頼んでもいいかしら」

「任せておけ」

 

 

 

三日ぶりにFAFロマーニャ基地の地を踏んだミーナ中佐は自らの足で特殊戦の事務所を訪ねていた。

同じFAFの戦術空軍団でもネウロイと戦闘行動を行う戦闘航空軍と特殊戦は部署が違う、そして規模が違えど特殊戦はその一部隊だけでも軍団レベルの戦力と権力を誇っていると聞いていた。

そして501JFWと実際に関わり合うのは主に特殊戦だ、よって今回は特殊戦の戦隊指揮官であるブッカー少佐にアポイントメントを取り実際に会う事が出来た。

ブーメラン戦士達の長、ジェイムズ・ブッカー少佐は表面上は丁寧に、急な連絡にも素早く対応し今日という席を設けてくれた。

「ブッカー少佐……先日は―――」

「ああ、気にしていませんよ、あれぐらい特殊戦ならいつもの事です」

「それでも、大変失礼な態度だと思います、誠に申し訳ございませんでした」

「中佐殿も仲間を思っての事でしょう、特殊戦は憎まれても仕方ありません。ただその在り方だけは譲れません、それだけはご了承下さい」

「はい、失礼いたしました」

肩透かし食わされたような恰好だ、互いを邪見にする態度であれば交渉もしやすいのだがこれでは遣り辛くてしょうがない。

「それで本日の件ですが如何なさいました、501JFWの長がわざわざこんな所へ」

「実は、501JFWと特殊戦の連携を考えています、現状ベネツィア戦線は激化の一途を辿っていますので」

それを聞くとブッカー少佐は顔を曇らせた。

「ミーナ中佐、誠に申し訳ございませんが特殊戦は今後無人部隊になる、貴女の味方になる事は出来ないかもしれない」

「それは……」

「本当に申し訳ない、FAF本部の決定でそれはもう既に始まっている……」

何とも間が悪い、元々特殊戦が私達の味方であった事は無いが数少ないと言えども、そのバックアップの一切が失われるとなれば坂本少佐が抜けた穴を埋める候補が減ってしまう。

「今後、無人となった特殊戦の機体から情報は頂けるのでしょうか」

「……私には分かりません、慰めにはならないかもしれませんが丁度いい事にFAFのシステム軍団から新しい機材が届いています、お見せしましょう」

ブッカー少佐がデスクから取り出した説明書は地球の言語で書かれていた、ブリタニア連邦の言語に似ているがハッキリとは読めなかった、それに気づいたブッカー少佐が翻訳しながら話をしてくれた。

「TAISポッド、目視、熱探知、音探知の三種の情報を常に受信しジャムの出現を確認すると全力で警戒信号を発する早期警戒装置です。ジャムが居ない時は太陽光からエネルギーを回収して充電し、破壊されそうな時は地面に潜ります、上手くいけば再利用が出来る」

「地面という事は、海面では使えないのですね」

「ええその通りです、FAFでは海上の装備は使えませんからね、しかしこれを海岸線に沿って使えば少なくとも陸の上を飛ぶネウロイは発見できる」

「そして海上では特殊戦がネウロイを偵察している」

そして無言、なんともやり切れないような思いだけが部屋を占めていた。

「ミーナ中佐、私はこの前FAF本部にストライクウィッチーズの必要性を訴えてきました」

「何故、少佐が私達の事を」

「貴女は偉大な人間だ、意図していたかは別として貴女の部隊は対ジャム戦に対して凄まじく有効だ。フェアリィ星――失礼、こちらの人間はジ・インベーダーを読むべきだ」

「……FAF本部はなんと答えたのですか」

「今のFAFは人間を排除して戦争をコンピューター化したがっている、よって人間もウィッチも必要なくなると言ってきた。ありえない話だ、これはあくまで人間の戦争のはずなのに」

「少佐達は、どうなるのですか」

「新たに生まれる機械知性体の教育部隊に、転属になるでしょう。興味があるなら見てみますか?」

「見るって何を」

「今後貴女が空で見る事になるであろう次世代の戦闘機、新たな妖精の姿を」

 

 




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