戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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16話

再び俺の意識が徐々に浮かび上がる、夢とも現実ともつかぬ違和感で身体は未だに重く意識が朦朧とする。

目覚めたのは先ほど同じ窓の無い白い部屋、しかし雑音の無い部屋というのは異常に聴覚を研ぎ澄ませてしまう。

ずっと低周波の様な、虫の羽音の様な音が頭の中で響くような不快な音、空気でさえ粘度を持っているように纏わりつくような感覚で思考が上手く纏まらない。

そして扉が開く、さっきの看護師がこっちに向かって真っすぐ歩いてくる、ワザと鳴らしているのではないかと思えるほど鋭く靴の音が飛び込んでくる。

まるで腰を振るかの様な歩き方、豊満な胸を見せつけるかのように屈むその姿からは妖艶さよりも怪しさしか感じられなかった。

「緊張しているようです、中尉」

「惚けるな、そろそろ本当の事を言ったらどうだ、ここは何処だ」

「TAB-14ですわ」

「だったらそろそろ外に出たいな、雪風は何処だ」

「雪風は整備中です、勿論中尉が言ったように中枢コンピュータには触れていません、今は射出座席とキャノピーを取り付けています」

「スーパーシルフのユニットが前線基地にあるのか、キャノピーだってスーパーシルフ専用なんだぞ」

「地下工場で成形しているんです、何とかしてみせますわ」

「なぜロマーニャ基地に連絡をとって迎えを呼ばなかったんだ」

「申し訳ございません、通信不能なのです中尉。雪風の通信システムを使うのではどうでしょうか、私達には理解出来ないのです、いたるところに保護装置があるので」

さっきは通信出来たのに今は通信不能?ロマーニャ基地でなくても通じる場所はある筈、その癖に雪風の通信システムを作動せよとの誘いはいかにも胡散臭かった。

「君達は、味方なのか?」

「勿論ですとも、雪風の整備が終われば帰っていただきますわ」

「……喉が渇いたな、水か何か持ってきてくれないか」

「それでは流動食をお持ち致します」

「流動食だと?」

体力の回復にはこれが一番だと看護婦が持ってきた流動食は肉汁と野菜ジュースを混ぜたような酷い味だった。

無理矢理勧められて飲まされても三分の一も飲み込む事は出来なかった、もう結構だとグラスを突き返すと笑って女は外へ出ていった。

扉が閉まった事を確認すると胸元から拳銃を取り出した、口径は九ミリ、マガジンに十三発、スライドを引き薬室に一発装弾される、セイフティを解除。

これはまともではない、いつの日かと同じ、敵でなくても味方ではないならそれは敵だ。

腕につけられた航空時計を見れば既に十時間以上過ぎている、自身もまともや正常とは言えない状態にある、目を覚ます為のきっかけが必要だ、五里霧中を吹き晴らすような何かが。

そうだ、確かバーガディッシュ少尉とミーナ中佐も運び込まれている筈だ、どちらかでも会えればこの状況がはっきりするだろう。

もたれ掛かるように何とかドアまで辿り着き押し込むが開かない、このドアは引くのだと苛つく思いと共に体を起こして何とか扉を開く。

廊下は部屋と違って薄暗かった、部屋を出た途端に胃腸の不快感を覚えて堪える事も出来ずに胃の中の物を吐き出してしまう。

嘔吐しながらも、あの流動食が悪かったのだと脂汗をかきながら思った。

そのまま吐瀉物の上に倒れ込む訳にはいかず何とか部屋の床に倒れ込むことが出来た、先ほど以上の倦怠感と全身の発熱。

しかたなく俺は精一杯の声で看護婦を呼んだ、薄暗い廊下から先程の看護婦が現れる、ここには彼女しかいないのか?

「ウイルス性の疾患でしょう、フェアリィ症ですわね、分裂症に似た症状や幻覚を見たりする」

「違う……そんなものに感染していない」

「安心してください、休めばすぐに良くなりますわ。食欲はどうですか?」

言われれば俺は空腹だった、そもそも流動食もろくに飲めていないし吐き出してしまったからなおさら。

「よかった、食事が合わなかったようなので新しく持って来たんです」

入口に置いたままのワゴンから皿を看護婦は運んで移動式のテーブルの上において俺の目の前に近づけた。

スプーンを手に取って口許へ運ぶ、いい匂いがして美味かった、食事と評価できる料理をここでは初めて口に出来た。

「これはなんだ?」

「チキンブロス」

「チキン?インスタントだとは思えないな、フェアリィ星のチキンか?」

「中尉、あまり急いで食べるとお腹を壊しますよ」

チキンブロスを食べ終わる頃にヤザワ少佐が現れて、食器の下げられたベッドテーブルに小さい機器をを置いた。

「中尉もずっとここでは退屈だろう、雪風と遊びたくはないか?」

少佐の持ってきた小型のコンピューターには雪風の姿が映し出されていた、背景は白くぼやけていてよく分からない、どこかの整備室だろうか。

「このコンピュータはどんな周波数や波形でも作り出せる、雪風と話したければこれを使いたまえ、君なら雪風の保護装置を作動させずにコンタクトを取る方法を知っているだろう?」

「それをモニターをしようと言うのか?これではまるで―――」

ジャムみたいじゃないか、そう言いかけて全身が粟立つような寒気を感じた。

こいつらはジャムだ、間違いない。人間の前に初めて姿を現したジャムなのだ、ジャックが俺が行方不明になって俺をよろしく頼む等などと言って放置するわけがない、嘘だ。

「俺を雪風に会わせろ」

そう言って飛びだそうとした身体を少佐は凄まじく強い力でベッドに押さえつけてきた、その隙に再び看護婦によって腕に注射器が突き立てられる。

「お前達は……何者だ……」

「あなたの仲間ですよ、同じ有機系の」

「ちょいと違うけどな、馬鹿馬鹿しい手違いだった」

「中尉、ごめんなさい。α-アミノ酸D型だったのよね…チキンブロスは美味しかった?あれなら消化できるものね……」

再び意識は闇へ落ちていく、二人の声が聞こえていたが何を話していたのかまでは分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

特殊戦五番隊用のハンガーには漆黒の、蓮の花を思わせる様なフォルムの戦闘機がまるで獣が地に伏すように佇んでいた。

「これがFRX-00ですか」

「はい少佐、我々が最高傑作と認める世界最強の戦闘機、電子戦術魔導戦闘偵察機の一号機です」

「聞き間違いかな、魔道と聞こえたのだが」

「聞き間違えではありません、このFRX-00はFRX-99を有人機に改造した上で『ラムジェットストライカーユニット』を追加で搭載したハイブリッドのジェット戦闘機になります」

「ジェットストライカーを戦闘機に搭載したのか?あれはまだ未完成の技術では無かったのか?」

バルクホルン少佐が驚くのも無理はない、先日ジェットストライカーで生死に関わる事故が起きたばかりなのだ。

「ご安心ください、問題は全て解決済みです。FRX-00は補助としてウィッチの搭乗を前提として開発されましたが、ウィッチがいなくても戦闘機として運用する分には問題ありません」

ハルトマン中尉の説明は続く、本来であればジェットストライカーをファーンⅡに搭載しての実験を考えていたのだが軽量かつ機動性を重要視されるファーンⅡの機体強度では耐えきれず、またコンセプトからも外れる為に一度没案になったらしい。

それをFAFが持つ技術を全て継ぎ込み開発された高速離脱を目的とした新鋭機の話がシステム軍団から伝わり、技術検証機としてストライカー技術を盛り込んだのがこのFRX-00であると。

「色々メリットやデメリットはありますが他の部分はFRX-99と共通の仕様です、本格的な試験飛行の際は私も同乗してサポートしますのでご安心ください」

「自身を担保にするつもりか?ウルスラ中尉は戦闘機の操縦経験はあるのですか?」

「専門家には敵いませんがFAFの短期教育は受けていますよ、電子機器の操作もできます」

「分かった、今回はウルスラ中尉に任せず特殊戦の人間にパイロットを任せよう、俺も一緒に飛ぶ」

「少佐、いいのか?」

「仕方あるまい、今回は他の連中に任せても不安が残るからな。バルクホルン少佐は一度基地に戻ってくれ、何かあれば連絡する」

彼はただ迎えにいくだけだ、ブーメラン戦士は必ず帰る、だから例えどんなに時間が経っても深井中尉達も絶対に帰ってくる。

深井中尉とミーナ中佐にもまだ約束を果たしていないのだ、彼等は失ってはいけない人間だ。ジャムめ、絶対に取り返しに行くぞ。

その覚悟を見て取ったバルクホルン少佐は大人しく引き下がる、今頼れるのは彼等だけなのだから。

「……分かった、幸運を」

「必ず帰りますよ、俺もまだブーメラン戦士のつもりですからね」

時間は過ぎていく、FRX-00がフェアリィ星の空を飛ぶ、頂点に昇った日が落ち切る前に彼等を見つけ出さなければならない。

久しぶりに座る戦闘機のフライトオフィサ席から遥か向こうの地平をブッカー少佐は睨みつけた。

 

 

 




気付いたらUA10000越え、すっごくスゴイ嬉しいです!
多分次で終わります。


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